婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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遠い思い出(アレックス殿下) 後半にBL感あり!

「兄上-!」

小さかった頃のルークを思い出す。
私が十五歳、ルークが五歳。ルークは小さいながらも、礼儀作法も座学も体作りも一生懸命に努力しているとジェンキンスから伝えられた。
小さな体は跳ねるように走って私の元に来ては笑っていた。
赤い髪が日の光を受けてキラキラと輝いて、まるで宝石のようだった。
私がいずれ皇太子、そして皇帝となるために必要不可欠な教育を受け始め悩む事もあったが多くの妹達や弟達が生きていく帝国にとって必要な事だと受け入れるしかなかった。聞けば皇帝たる祖父も皇太子たる父上も受け入れ、帝国をより良い未来へと導いている。
ルークのこの笑顔を曇らせるような事があってはならない。

「兄上?どこかイタイのですか?」

キュッと眉根を寄せてクシャリと顔が心配気に歪む。赤く輝く髪を撫でると気持ち良さそうに目を伏せるのに、すぐ思い出して気持ち良いのに眉根だけが寄って何だか可愛くなる。

「兄上!」

「うん、心配してるんだね。大丈夫だよ、そんな顔しなくて良い。私の事より、ルークは座学も体作りも頑張ってると聞いたよ。」

私の言葉に力む弟は何だか可愛くて、撫でる手が止まらない。

「はいっ!兄上のようなりっぱな男になるのです!」

「頼りにしてるよ。」

「はいっ!帝国が栄えるよう、兄上の力になれるようがんばります!」



…………あんな事を言っていたのに、王国に行ってしまうなんてな。だが、帝国の為にはなったのだろうか……
シルヴァニアに連なる姫君の元に婿入りとなれば、シルヴァニア家から何かしらあるだろうか?いや、あったとしても父上か宰相……アーネスト殿の所で話が決まるか。
ルークは大きくなってもどこか可愛くて、私だけじゃない父上も祖父も気に掛け甘やかしたいと思っても何故かルークはあまり甘えなくて残念に思ってるが……折角の婚姻だ、うんと立派な婿入りにしないとな。

「ジェンキンス!」

「どうなさいました?」

「皇帝陛下も父上もルークの婿入りにそれぞれ何か用意してるだろうが、私も可愛い弟に何かしら用意したい。」

冷静沈着な男が微笑んで頷く。山積みの書類も彼等のお陰で随分とやりやすい。まだまだ今日の書類は片付かない。
昨日はそれどころじゃなかったし、朝方もそれどころじゃなかったしな。

「はぁ……まだ、体が気怠いな。」

「後、これだけです。本日は正妃様の所も側妃様の所も行かなくて良いのですから、頑張って下さい。」

「では、今宵は優しくしておくれ。」

「ご随意のままに。」

ジェンキンスの言葉に補佐官達が頭を垂れる。さて、残りわずかだ、頑張るか。
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