婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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食後の二人(キャスバルとレイ)

朝から愛する妹に会えて良かった。色々思う所はあるが致し方ない。

「キャスバル様。向かうのはそちらのお部屋ではありません。」

ん?

「レイ。自室に戻るのに違うとは、どうした事だ。」

レイの笑顔が黒く染まる……嫌な予感しかしない……

「キャスバル様、自室に戻る前にこちらに。」

自室の手前の部屋に案内される。いずれ侯爵家を継ぐ為にと誂えた執務室だった。不味い……一月の間留守にしてたんだ、仕事はとんでもなく滞ってるはずだ。チロリと見たレイは笑顔を貼り付けたままだった。駄目だ、これは逃げられない……だが、俺はマシな筈だ!父上が居るからな。よし、そう思えば一安心だ。扉を開けて……閉めた。

「レイ……あれは俺の気のせいかな?」

「気のせいではございません。現実です。侯爵様に至ってはこれの三倍はありました。」

…………!何て事だ!とんでもない量だぞ!父上と俺だけか?

「トール様もこれと同じ位の仕事が回されております。」

逃げ場は断たれた。目の前が暗くなる気がする……クソ……父上の量を聞けばルークは父上に持っていかれる……楽は出来ない。やるしかないのか……

「そうか、分かった。少しずつでも片付けないとな。」

「はい。」

ニッコリ笑ったレイの顔はいつもの顔だった。
意識をしっかり持って扉を開ける……凄まじい量の羊皮紙。これを確認して返信なり人なりしなければならないのか……それだけじゃない。エリーゼが出した農作物の件もエリーゼの事だ、種とか山ほど出して来るに違いない。領が豊かになるのは喜ばしい事だ、国一番の美姫と言って差し支えない可愛い妹だし本当なら自慢にしたい……したいのだが、これ程の量の仕事に追われると思うとちょっと待っていてほしい。
俺は内心泣きそうな気持ちで室内を見回す。

「さあ!どんどん片付けて行きましょう!」

レイは俺の事を良く分かってる。俺は諦めて執務机に向かい椅子に座る。机の上に積まれた物から読んでいく。レイはレイで内容毎に分けている。


…………ふぅ……

「キャスバル様、お茶を入れました。一休みとしましょう。それとこちらを。」

温かい紅茶と小さな皿に乗せられた飴玉。エリーゼが楽しそうに作っていた飴玉。キラキラと輝く飴玉を眺めながら紅茶を飲む。

「楽しい旅路だったな。」

「はい。」

「紅茶も飲み終わったし、飴玉を舐めて頑張るか。レイ、お前も舐めろよ。」

「勿論です。」

二人笑って飴玉を口の中に放り込む。飴玉の甘さが疲れた頭と心に染みる。俺はバサリと束で目の前に羊皮紙を置いて仕事の続きを始める。
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