婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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その頃のお母様

「それにしても、領民から上がって来る陳述書とか日に日に増えてるのには困りはしても嬉しい気持ちの方が強いわね。」

フェリシアは少しだけ微笑んで手紙の束を見つめる。それらは暮らしぶりが豊かな領民からの要望が書かれた物だった。元王都民から旅の間に振る舞われた料理や甘味の話を聞いたのだろう。領都にも、話に聞く料理や甘味を食べれる店を作ってくれ!特に甘味は贅沢品だが、是非とも味わってみたい!と強い関心が寄せられていた。我が領は豊かで、それなりに甘味はあるし領民も口にはしている。だが、エリーゼが振る舞った飴は幼い子供達も喜んで口にしていた。かく言う自分も気に入って口の中なコロリと含んでしまうのだ。

「如何なさいますか?」

「そうね。領都の料理店の者達に幾つか料理を覚えて貰いましょう。簡単な物ならばすぐに覚えて店に出せるでしょう。甘味についてはエリーゼが旅から帰って来た次第かしら?」

「畏まりました。では、そのように料理長と相談しましょう。」

「待って!相談なら早い方が良い気がするわ!エミリ、今すぐ行って頂戴。」

丁度この頃、厨房でのやり取りが終わりエリーゼはハインリッヒの執務室に突入する頃合であった。

「はっ!はいっ!」

慌ててフェリシアの部屋から飛び出るエミリであった。

「何故かしら?ちっとも嫌な感じが消えないわ。料理長だからかしら?……ジムなら大丈夫なのかしら?……あら?ジムなら平気だわ。」

シンシアとソニアはキョトンとフェリシアを見つめた。

「まぁ……ジムがいれば大丈夫だから良いかしら。」

「奥様、予感ですか?」

シンシアが気になったのか聞いてきた。

「そうね、予感と言えば予感ね。でも大した問題でも無いみたいだから、大丈夫だと思うわ。アニス、お茶を淹れて頂戴。」

エリーゼが旅立つまではエリーゼがくれた甘味は我慢よ!でも旅に出たら、食べちゃうわね。きっと。
……料理長だと食後に甘味は期待出来ないわね……はぁ……ジムが付いて行ったら善哉は暫く無理だわね。良かったわ、ショウロってアンコのお菓子作ってくれてて。

「お待たせ致しました。」

桃の香りのする紅茶を飲んで一息つく。

「せめて今日位はうんと甘い物が出てくると嬉しいのに。」

「そうですね。」

シンシアがそう相槌を打った後にエミリが飛び込んで来た。

「フェリシア様!料理長はエリーゼ様の旅に付いて行きます!こちらにはジムが残ると!」

エミリの言葉に反射的に立ち上がるフェリシア。

「でかした!これで食後に甘味を要求出来るわ!ジムならば幾つか作れる物があるものね!」

「あ……それは……良うございました。」



お母様のお部屋は平和な笑いに満ちたそうです。
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