婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

文字の大きさ
468 / 756

その頃のピカ太郎とルチルとユキ

ユキの背中に乗り、広いシュバルツバルト邸の中を案内それてるピカ太郎はご機嫌でした。
大好きなユキの背中は温かくて、フワフワの毛はうんと気持ち良かった。
前庭を駆けて林の中も駆けて行く。
水底がキラキラと輝く小さな池で喉を潤し、違う林へと目指して駆ける。
途中で大きな馬達と一緒に走ったりして、ピカ太郎はとても楽しかった。
でも、そんなピカ太郎は少しだけ……ほんの少しだけ心残りがありました。
この楽しい時間、弟分のルチルがいない事です。
ユキはピカ太郎のそんな少しだけ残念そうにする気持ちを察してました。
主人の違う以上、同じように寝起きする訳では無いから仕方ない事ですがユキはピカ太郎のママなのでルチルが出て来たらすぐに会いに行こうと思ってました。
暫くするとふわりとルチルの匂いを感じます。
ユキはタッ!と方向転換しルチルの匂いを追って駆けていきます。

「どうしたピカ?」

ユキは何も言わず、ただひたすらに駆けて行く。
やがて見えるその黄色い小さな姿。

「ルチル!」

ピカ太郎の叫びにルチルとルークはピカ太郎とユキの姿を確認すると、ルークは肩に乗っていたルチルを地面に下ろしそっと背を押す。

「いいピカ?」

「行っておいで。」

「いってくるピカ!にいにー!」

走ってユキとピカ太郎の元へ行くルチルを見送り邸へと消えるルークに気づく事なくルチルはピカ太郎にくっついてユキの背に乗る。

「ユキママ!ありがとピカ!」

ユキは笑うような顔をして走る。
背中に乗るピカ太郎とルチルが楽しそうに笑ってるのを聞いてユキは嬉しくてお気に入りの椿の細道へと向かう。
真っ赤な椿が次々と咲いて、その花は濃い緑色の苔の絨毯の上を飾るように落ちている。

「すごいピカ……」

「キレイピカ……」

アオオォォォン
(お気に入りなのよ美しいでしょう)

「ホントピカ」

「こんなにキレイなのはじめてピカ……」

ポトリ……と椿の花がまた一つ落ちる。
静かな林の奥の椿ご植えられた一角にはユキとピカ太郎とルチルしかいない。
その静けさの中、ピカ太郎とルチルは何も言わずに見入っていた。

やがてユキは鼻先でクイ……とピカ太郎を押す。
ピカ太郎はルチルを引いてユキの背に再び乗る。
そうしてユキはエリーゼの畑へと向かう。

畑にいる老いた男の服の裾をクイクイと口で引っ張り、赤い唐辛子の生えてる場所へと向かう。

「うん?コイツが欲しいのか?まぁ、一本位なら嬢様も怒らんだろ。」

そう言って真っ赤な唐辛子を一本引き抜き差し出すとピカ太郎がその唐辛子を受け取る。
ユキはペコリと頭を下げると日当たりの良い場所へと向かう。
馬達も来ない日当たりの良い場所でユキは唐辛子を二匹で食べるように前足で押し付ける。

「イイピカ?」

「たべていいピカ?」

ユキは再度唐辛子を押し付け二匹の姿が良く見える場所に伏せる。
ピカ太郎とルチルが仲良く唐辛子を食べる姿をパタリパタリとフサフサの尾を振って見ていた。
感想 3,411

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん
恋愛
【モブ】シリーズ①(本編) 異世界を救うために聖女として、3人の女性が召喚された。しかし、召喚された先に4人の女性が顕れた。そう、私はその召喚に巻き込まれたのだ。巻き込まれなので、特に何かを持っていると言う事は無く…と思っていたが、この世界ではレアな魔法使いらしい。でも、日本に還りたいから秘密にしておく。ただただ、目立ちたくないのでひっそりと過ごす事を心掛けていた。 それなのに、周りはおまけのくせにと悪意を向けてくる。それでも、聖女3人のお姉さん達が私を可愛がって守ってくれるお陰でやり過ごす事ができました。 そして、3年後、聖女の仕事が終わり、皆で日本に還れる事に。いざ、魔法陣展開で日本へ!となったところで…!? R4.6.5 なろうでの投稿を始めました。