婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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嬢様との思い出(サムソン)

立派になって帰って来られた嬢様は婚約破棄されて、さぞ気落ちしてるかと思ったら全く気落ちせず元気一杯だった。
それどころか、新しい婚約者が出来たと聞いて驚いたものだが新しい婚約者が帝国の皇子様と聞いて腰が抜けるかと思うほど驚いた。
嬢様だけじゃなく、王都の住人が何人も一緒で、それも使用人の間であっという間に噂になった。
あんまりパッとした話しの無い第三王子だったが、よもや王国に貢献してきた領主様を馬鹿にする様な振る舞いをするとは思いも寄らなかった。
そんな事をツラツラと思いながら挿し木作業をしていた所に嬢様がやって来た。
一頻り話しを聞いて、あれこれ持って嬢様と楽しい時間を過ごした。
託された二つの鉢植えは何とも可愛らしく、目新しく感じる植え込み方だった。

「後ろ姿は何も変わっておらんなぁ……」

小さな小さな後ろ姿を思い出す。
いつでも元気一杯で、姫様だっていうのに男の子みたいに駆けて来て良く抱き付いてきた小さな体。
季節季節の花々を「可愛い」だの「美しい」だの声高らかに言って、何とも愛らしかったものじゃ。
そういやぁ、しょうの木を持って来た時は驚いたなぁ……

「たべるの!」

「嬢様、コイツは辛くて食べられんぞ」

何度となく会話していたせいか、儂と嬢様は砕けた会話をするようにすぐなった。

「ふ……ぇ……たべれるもん!たべるぅ!」

「ダメじゃ!辛くて体を壊しちまう!絶対ダメじゃ!」

「ふ……たべるぅ!うぇーん!たべるのぉ!サムじいのバカァ!」

大泣きしなすって、目が真っ赤になっておったなぁ……
あのしょうの木が本当に食べるってのとはちぃと違うが口に出来るとはなぁ。
大きくなっても嬢様は変わらんなぁ。

「さて、もぅちぃと挿し木をせんとなぁ」

途中で止まったままの作業を再開する。
空が朱くなるまでやったら今日は終わりじゃ。
昨日に続き今日も振る舞いじゃと聞いた。
たらふく飲めるのは嬉しいもんじゃなぁ。
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