婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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夫婦の時間(ハインリッヒ&フェリシア)

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新年が差し迫ったある日、親子三代とエリーゼの婚約者ルークとテイムされた一見すると可愛らしい魔物達が食堂で食事し終えた時だった。

「ハインリッヒ、今夜そちらに伺いますから」

現・領主夫人フェリシアははっきりと領主たる夫ハインリッヒにそう声を掛けた。

「分かった。では自室で待っている」

ほんの僅かだけ目尻を下げたハインリッヒが答えるとフェリシアは微笑み一つ頷いた。

「では、後程」

そう述べた後、静かに立ち上がり食堂から出て行った。
ハインリッヒは無言で見送り、自身もまた立ち上がると無言のまま食堂から出て行った。


各々の部屋でたっぷりと時間を掛けて湯浴みをしたのはハインリッヒもフェリシアもだった。
ハインリッヒは一人、寝室に置いてあるソファセットで夜着に分厚いガウンを纏ってワインを飲んで寛いでいた。
既に食堂を出て一時間以上経っている。
居間には側近であるアレクがフェリシアが来るのを待っている。
やがて扉の向こうで人の気配が増えた。
フェリシアがエミリを伴って来たのだろう。
そうこうする内に寝室の扉が開き、髪を降ろし夜着に白いガウンを纏ったフェリシアが入って来た。

「明日の朝までは人払いを」

「「畏まりました」」

アレクとエミリが声を揃えて返事をすると、そのまま部屋から下がったようだ。
後ろ手に扉を閉め音も無くハインリッヒに近付き、中身の入ったワイングラスを優しく奪い取るとクイッと飲み干したフェリシアの紅い唇が弧をかいた。

「ハインリッヒ、今夜は可愛がって頂戴」

ハインリッヒは立ち上がりフェリシアを抱き締め紅い唇を舐め、そのまま深い口付けへと変えていく。

「疲れてるんじゃないのか?」

「疲れてるからこそよ。愛するばかりでは疲れてしまうわ、だから愛されたくて来たのよ」

「俺は愛するばかりだな」

「でも、疲れた様に見えない貴方の強さを尊敬してるわ」

「フェリシア……ここで愛を語るのはやめにしないか?」

「なら連れて行って」

困ったように笑うとハインリッヒはフェリシアを抱き抱えベッドへと歩いて行く。
昔から変わらない妻の重さにハインリッヒは薄く笑う。
昔から変わらない力強さで抱き抱えてくれる夫の逞しさにトロリと甘さが溢れるように微笑むフェリシア。
大人の男が三・四人寝転んでも余裕のあるベッドに妻を横たえ口付けしながらガウンを剥ぎ取るハインリッヒの手は優しい。
だが、自分のガウンは一気に脱ぎ捨てハインリッヒはフェリシアの体に覆い被さった。
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