婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

文字の大きさ
530 / 756

内緒の着付けタイム 2 (ルーク)

しおりを挟む
コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
従者が取り次ぎに出迎え……って扉を開けた瞬間、そのまま入って来た。
……夫人の専属侍女二名。
シルヴァニアの里出身の手練れか。

「お早うございますルーク殿下。エリーゼ様よりお着物を預かって参りました、着付けするよう言われましたのであちらでお着替え致しましょう」

どうやら羽織袴じゃあなさそうだ。

「分かった」

「後、そちらの分も預かって参りましたからルーク殿下の着替えが終わりましたら着付けます」

そちら?ノエルとルチルを見たって事は向こうもタマ達も何か着るのか?

「そうか。ノエル、ルチル、ちょっと待っててくれ」

「ちかくでまつにゃ!」

「そうピカ!」

不安そうな顔で俺を見ているのを放っておける訳無い。

「済まないが向こうに連れて行って構わないか?」

「勿論です。邪魔にならなければ一緒で構いません」

シンシアだっけ、冷たい感じがするけど仕事は出来そうだな。
いや出来るに決まってるか。
夫人は冷徹と噂の切れ者宰相アーネストの娘だ、その娘が己の手足として置いているんだ有能で当たり前か。
寝室へ移動すると手早く服が脱がされる。

「あら?意外と鍛えてらっしゃるんですね。おや、ふんどしを着けてらっしゃいましたか」

気が付けばスッポンポンだ。
言わばフルチンだ。
別に慣れたもんだが、ここまで慣れるのには少し苦労した。

「では腕を……」

ああ、両腕を真横に伸ばして言われるままにする。
サラサラとした布は滑らかで気持ちが良い。
前世では何回か着付けて貰ったから抵抗は無い。
……黒い着物?いや、黒い刺繍が施されてって……よしなが大奥かよ?って裃じゃないから気にしすぎか……
一通り着付けて貰い後は足袋に履き物と……マフラーか?いや、まて足袋なら爪があるはずだ。
コレには爪が無いって事は……靴下?か……
サッと跪いたもう一人の侍女、ソニアだったか?靴下を履かせてくれる。

「こちらは草履ですが履けますか?」

「大丈夫だ。ノエルとルチルを頼む」

そう頼んで草履を履く。
草履って言うか雪駄だよな、コレ。
着物も羽織も上品だしセンス良いな。
残ってる一枚を手に取り広げてみる。
幅広な黒い薄手のマフラーはして手に持っただけで暖かい。

「や~~ん♡ノエルちゃん可愛い~~♡」

「ルチルちゃんも可愛い♡」

え?さっきまで淡々と俺の着付けしてた筈の侍女二人が相好を崩してノエルとルチルに集っていた。

「着付け終わっただろうか?」

「ただ今終わりました。では私達は下がります。ルーク殿下はこちらでエリーゼ様をお待ち致しますか?」

一瞬で笑顔を消して俺に挨拶をした。

「いや、エントランスに行く。エリーゼには伝えておいてくれ、エントランスで待ってると」

「畏まりました」

美しい一礼をして足音を立てずに退出する。

「さ、エントランスで皆を待つか」

すっかりお正月に相応しい格好になったノエルとルチルを連れてエントランスへと向かう。
しおりを挟む
感想 3,411

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

処理中です...