婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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ある日ある場所にて(ある推薦者)

「参ったな……」

執務室で熱い紅茶を啜る。
溢したくない愚痴が溢れる。

「そうですね。将来有望と思える若者が二人もこちらに来るとは思いもよりませんでしたね」

応えたのは推薦者である男の側近であった。

「日も無い。残りの二人はあっさり決まったって言うのもな……」

「早馬で報せが来た時は焦りましたね。ですが仕方ないのかも知れません。まさかエリーゼ様が婚約破棄され領地に戻って来るだなんて思いもよりませんでしたから」

「そうなんだよな。どの家でも親方様のお子に合わせて教育してきた後だからな。まさかだよな……エリーゼ様と同じ位の年頃の側近候補で妥当なのはうちに来たあの二人だもんな……」

まだ熱い紅茶を煽る事は出来ない。

「新年のお祝いには向かうのでしょう。ならば事情を話してお許しを頂きましょう。駄目で元々です」

何とか飲み干して空になったカップをカチャリとソーサーに戻す。

「そうだな。親方様は驚かれるかも知れんが将来有望な者を連れて行かないで元一番隊なぞ笑われる」

「そうです!その通りです。それでこそ私がお慕いする旦那様です」

「では、明日あの二人を領都に連れて行く。その様に明日の朝伝えてくれ」

「畏まりました。きっと新年のお祝いは賑やかになるでしょうね、婿殿のお披露目も兼ねてるんでしょう?」

「ああ。婿殿をお披露目して、側近が決まって討伐遠征だ。その後生きて帰ってくれば婚姻式だ」

「生きてって……尻込みもしない中々見所のある若者じゃないですか。それにあの立ち歩きネコに雷ネズミ、小さくて可愛いのにしっかり手伝っていましたしね」

「あー……ありゃあ凄かったよな。特にあの立ち歩きネコは有用だ、動きを止めれるなんてな。あれだけで討伐がうんと楽になる」

「エリーゼ様も凄かったですね。堂には入っていましたし……」

「婿殿との連携も素晴らしかったな……もしエリーゼ様が女でなければ……」

「旦那様、それは言ってはいけない事です」

「そうだな失言だな。気をつけんとな……」

「今日は奥様とでしょう?」

「うむ。久方ぶりに可愛がらねば拗ねてしまうからな」

「ありがとうございます。私も妻に妬かれてしまうのは不本意ですので」

「はは……そうか。妻とは仲が良いのは良いことだ」

「勿論です。大事な女性ですから。では失礼致します」

「うむ」

そうして執務室は推薦者一人となった。
チリンとベルが鳴らされメイドが茶器を片付けに来、時間が動き出すように人の気配が動く。
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