婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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絶凍 (アンネローゼ)

今日も朝から雪が降っている。
止まない雪は王宮から見える全てを白く覆っている。

「アンネローゼ様、あまり窓辺に寄りますとお体が冷えます」

ばあやの声に窓辺から離れ、毛足の長い絨毯が敷いてある上に設置したソファへと戻る。
婆やの心配は分かる。
お腹の中、やや子がいれば過保護になっても仕方ない。
目の前に置かれるのは紅茶ではなく、干した桃を沈めたポットのお湯。
ほんのり甘くて優しい香りのお湯をゆっくり頂く。

「雪が止まない日が中々来ないわね……」

「そうでございますね。王宮は王都が良く見えませんから良いですが……」

ばあやの口が重い。

「やはり王都は良くない事になってるのね……」

「はい……あちこちを彷徨う者が耐えきれなくなったようで、餓死や凍死が相次いでおります」

王都に漂う死臭は王宮に届くのかしら?
そう言えば殿下とお会いしてないけど、お元気なのかしら?

「どうかなさいましたか?」

ばあやは私が無言なのに気が付いた。

「最近殿下と会って無いと思って。どうか為さったのかしら?」

「討伐に出掛けられてませんでしたか?」

「そうだったかしら?興味無いから何をしてるのかなんて、どうでも良かったわ」

そう言ってエリーゼ様から贈られたお菓子を頂く。
バタークッキーと書かれた札の付いた容器なたっぷり詰まっていた、それを一枚齧る。
口の中でほろほろと崩れる、甘くて何とも言えない香りのお菓子。
きっと紅茶に合うと思われる口当たりと味。

「ばあや、私はこの部屋から出られないけど王都の様子をもっと教えて頂戴」

ばあやの顔がしかめっ面になったけど、何も面白い事が無いからき聞きたいのよ!

「王都は随分と寂しくなりました。多くの店が無くなり、行商人も来なくなりました。昼間でも人影はまばらで買い物するにも何もかもが高騰し、まともに買うことなぞ出来やしない」

「ヒドイものね。どうにかならないのかしら?」

「唯一の救いはシュバルツバルト侯爵家が随分と手助けしてるようですが、それでも知らない者や手遅れな者が多くて……」

寒い中、彷徨い耐えられなくなって死んでいくなんて……エリーゼ様、今王都は死にゆくように酷く冷たい都なのですよ……
このまま王都民が次々と亡くなれば王宮もただでは済みません。
温かい筈の王宮なのに心が凍えて動けなくなりそうです。
エリーゼ様の笑顔が見たくて仕方ありません。
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