婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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凍える王宮

王都を見下ろす小高い丘の上に建つ王宮は、常に王都や少し離れた街道からでも見える様に建っている。
適度に伐採されているせいで風通しも良く、日当たりも良い。
王宮の二階からは黒と灰色と白にしか見えない王都が見える。
貴族達のタウンハウスが建ち並ぶ貴族街は植えられている木々があるから濃い緑がある事で、あそこは誰それの邸だとか王宮に住まう者や長い事勤めてる者はすぐに分かる。

王宮でも王子達が住まう王子宮は王が住まう後宮とは離れており、また王子宮も幾つかに分かれて建っている。
王太子と第二王子は既に別棟に移り住み、それぞれの小さな後宮を抱えて暮らしている。
これはそれぞれの正妃・側妃達が子供を生み後宮へと移ったからだ。
ただ一人第三王子はいまだ正妃にその兆しは無く、側妃二名のみが懐妊している状態だった。
だがろくな後ろ盾も無く、側妃二名の後ろ盾はあってもその立場故援助も僅かばかりで出来る事も少ない為第三王子は魔物討伐に行く事位しか出来ないでいた。
物資輸送がろくに行われなくなった王都で貧困に喘ぐのは王都民だけでは無かった。
王宮に住まう者達も今までとはあり得ない程の困窮に晒された。
それでも正妃・側妃達は実家からの仕送り等で何とか夫や子供達を満腹にする事が出来た。
商隊が来なくても、実家からの荷馬車は来る事が出来たからだ。
それでも日持ちする物ばかり……新鮮な野菜や果物は数に限りがあった。
王族とはいえ、彼等は硬いパンと干し肉を戻したスープ……塩漬けにされた肉や日持ちのする野菜を食べていた。
それらも妻達の実家から……今まで味わった事の無い食事でも食べれるだけマシだと理解していた。王都では食べられずに儚くなった者達が多くいる事も理解していたからだった。
だが、その王族の中にただ一人実家からの支援も無くひもじさに喘ぐ正妃マリアンヌがいた。
唯一の低位貴族令嬢、しかも父親である前当主も亡くなり新しく引き継いだ正妃マリアンヌの兄は領地の荒廃振りを立て直す為に妹を支援する事も出来ないでいた。

「お腹……空いた……」

正妃マリアンヌは側妃二名から日に一食だけだがと支援を受けていた。ろくに薪も買う事も出来なくなった正妃マリアンヌは自分付きの侍女や女官にして貰う事も夕食とその前に入る湯浴みだけだからと昼過ぎまで控え室にいて良い事にした。
正妃マリアンヌは昼過ぎまでベッドの中で何とか暖をとり、僅かばかりの時間を広く寒々しい王子宮で過ごす。
正妃マリアンヌは空腹で目が覚め空腹を訴えるも、側妃二名の慈悲で生きている状態故文句一つも言う事無く凍える王宮で一人ベッドの中丸まって耐える。
王都も王宮もただ耐えるだけの凍える日々はまだ続く。
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