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静かなる波の様に(アーネスト)
広い皇宮の中早足で移動する。
フェリシアからの情報を持って、皇太子殿下の所に行かねばならない。
ロバートは私の長男でフェリシアのすぐ上の子供だ。どうやら王国王家がかなり不味い状況に陥ったようで、キャロライン皇女殿下からの直訴文がシルヴァニア・ファミリーに属する侍女から届けられた。
フェリシアから家族みんな揃って領地に戻った事は知らされていたが……
皇帝管轄の場所を抜け、皇太子管轄の場所に入り執務室を目指す。
すれ違う者達は皆腰を曲げ深々と頭を下げる。その景色もいい加減見飽きたし、陛下が早く退位してくれないかとも思ってる。
陛下の退位と共に私も職務から解放され、この騒がしい皇宮から身を引ける。だからこそ退位せずにいる、のだとも理解してる。
皇后・皇妃よりも長い付き合いであれば離れるのは死ぬより辛い。だが政務も既に半分以上皇太子殿下に渡してるのだし……いや、殿下が外孫とはいえ私の孫娘とルーク殿下との婚姻式に行く以上それまでは退位は出来ないか……
「宰相閣下」
やっと執務室に着き番をしてる近衛が驚いたように呟いた。
それもそうだろう、普通はロバートが私の所に来るのだからな。
「ロバートに聞かねばならぬ事がある。開けよ」
「はっ!」
誰何される事なく扉が開けられ、私は躊躇いなく執務室へと入る。
多くの仕事に囲まれ殿下を始め我等シルヴァニアの男達が忙しなく仕事を捌いてる。
「殿下、仕事中ですが失礼致します」
「うむ……」
適当な返事だが、仕方ない事だ。
「ロバートよ。フェリシアからの連絡で王国の……王家へと物資輸送をせねばならんが……」
「父上。シアは何と言ってるのですか?」
ふむ……話しをせねばならないか……
「フェリシアは一旦王国を帝国預かりにして貰いたいといってるな。王国のやりようには呆れてものが言えぬと……な」
立ち上がり私の近くまでやって来たロバートは少し考え込み、困ったように笑った。
「キャロライン皇女殿下もご苦労されてるようですしね、一度梃子入れした方が良いでしょう。少々腐っているようですしね。まあ、シアは別の思惑が在るんでしょうが」
「だろうな。元々あの辺りは公国として王国とは別の流れでもって民を導いていたからな」
「ああ、シュバルツバルト公国ですね。なる程、シアなら王国から離れたいし今なら丁度良い時期だと思ってると……」
「アーネスト殿、フェリシア嬢の思惑に乗るのは構わんがルークの婚姻式後にしてくれ」
「殿下、勿論です。ロバート、キャロライン皇女殿下への差し入れは多めにしてやれ。恩は売っておかないとな」
「勿論です。たんと恩を売っておかないと」
ロバートと二人ニヤリと笑う。
大体、あの国は貴族を纏める力が足りぬのだ。
フェリシアが王国と離れたがるのも無理も無い。
「後日、草案を持って来い」
「承知いたしました」
親子であればこそ分かる。数日の内に仕上げて許可取りに来るであろう事を。
さて、私も少々仕込みの準備をせねばな……
「では殿下、失礼致した」
「ああ」
すぐさま退室し、陛下の待つ執務室へと戻る。
フェリシアからの情報を持って、皇太子殿下の所に行かねばならない。
ロバートは私の長男でフェリシアのすぐ上の子供だ。どうやら王国王家がかなり不味い状況に陥ったようで、キャロライン皇女殿下からの直訴文がシルヴァニア・ファミリーに属する侍女から届けられた。
フェリシアから家族みんな揃って領地に戻った事は知らされていたが……
皇帝管轄の場所を抜け、皇太子管轄の場所に入り執務室を目指す。
すれ違う者達は皆腰を曲げ深々と頭を下げる。その景色もいい加減見飽きたし、陛下が早く退位してくれないかとも思ってる。
陛下の退位と共に私も職務から解放され、この騒がしい皇宮から身を引ける。だからこそ退位せずにいる、のだとも理解してる。
皇后・皇妃よりも長い付き合いであれば離れるのは死ぬより辛い。だが政務も既に半分以上皇太子殿下に渡してるのだし……いや、殿下が外孫とはいえ私の孫娘とルーク殿下との婚姻式に行く以上それまでは退位は出来ないか……
「宰相閣下」
やっと執務室に着き番をしてる近衛が驚いたように呟いた。
それもそうだろう、普通はロバートが私の所に来るのだからな。
「ロバートに聞かねばならぬ事がある。開けよ」
「はっ!」
誰何される事なく扉が開けられ、私は躊躇いなく執務室へと入る。
多くの仕事に囲まれ殿下を始め我等シルヴァニアの男達が忙しなく仕事を捌いてる。
「殿下、仕事中ですが失礼致します」
「うむ……」
適当な返事だが、仕方ない事だ。
「ロバートよ。フェリシアからの連絡で王国の……王家へと物資輸送をせねばならんが……」
「父上。シアは何と言ってるのですか?」
ふむ……話しをせねばならないか……
「フェリシアは一旦王国を帝国預かりにして貰いたいといってるな。王国のやりようには呆れてものが言えぬと……な」
立ち上がり私の近くまでやって来たロバートは少し考え込み、困ったように笑った。
「キャロライン皇女殿下もご苦労されてるようですしね、一度梃子入れした方が良いでしょう。少々腐っているようですしね。まあ、シアは別の思惑が在るんでしょうが」
「だろうな。元々あの辺りは公国として王国とは別の流れでもって民を導いていたからな」
「ああ、シュバルツバルト公国ですね。なる程、シアなら王国から離れたいし今なら丁度良い時期だと思ってると……」
「アーネスト殿、フェリシア嬢の思惑に乗るのは構わんがルークの婚姻式後にしてくれ」
「殿下、勿論です。ロバート、キャロライン皇女殿下への差し入れは多めにしてやれ。恩は売っておかないとな」
「勿論です。たんと恩を売っておかないと」
ロバートと二人ニヤリと笑う。
大体、あの国は貴族を纏める力が足りぬのだ。
フェリシアが王国と離れたがるのも無理も無い。
「後日、草案を持って来い」
「承知いたしました」
親子であればこそ分かる。数日の内に仕上げて許可取りに来るであろう事を。
さて、私も少々仕込みの準備をせねばな……
「では殿下、失礼致した」
「ああ」
すぐさま退室し、陛下の待つ執務室へと戻る。
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