婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

文字の大きさ
641 / 756

初陣 37 (ルーク)

領都を目指した帰路は、寄り道ありきと言うより寄り道だらけの帰路だった。
バートンを始め多くの隊員達が騎乗したまま街道の先へ行ったり街道から外れた場所で獲物や魔物を狩りあげ、実に良い笑顔で隊列に戻ってくる……その手に獲物や魔物を引っ掴んで。
それらの獲物や魔物は最寄りの集落(街や町、たまに村)で売ったりするが生肉だけは隊で消費する事が多かった。

「ルーク隊長、今最寄りの町に毛皮や牙何かを売りに行ったらこの辺りの魔物の討伐を要請されました。話しでは小型ばかりですが如何せん数が多いらしく町人だけではどうにも対応出来ないと」

「なら討伐していこう」

昼間だが、それならこの辺りに野営地を設営して明日討伐すれば良いだろう。

「あ!」

「ん?」

空からチラチラと雪が降って来る。
小さな町に入る訳にもいかず、隊員達に号令を出して手早く設営をさせる。
街道は雪が積もらないようになってるが、そこらの草原なんかは積もってしまう。
街道から近い場所は街道からの影響もあって積もらないが、街道から離れた場所は関係無い。
海が近い場所だと殆ど雪は積もらない。代わりに凍ったりするようだが……
天幕も馬車も中に入れば暖かい。
外は露出してる部分は痛い程寒い。
それでも武装が良いとその寒さも軽減されてるのが分かる。
バートンからうっかりでも武装を着ないで外に出たら体の芯から冷えて大変だと言われた。
キースは安物の武装は寒くて大変だと愚痴っていた。
今着ている武装は寒さを感じなくて重宝してると笑っていた。
こんなに寒さの厳しい国で自分の側近に安物の武装を着せるとかバカだろ。
次々と建てられる天幕を見ながら自分の馬車を見る。小さく扉が開いてノエルとルチルがソロリと出て来る。

「ノエル!ルチル!」

離れているが声を掛ければ二匹ともトテトテと走って来る。
しゃがんで両手を拡げれば二匹とも飛びついて来る。
ふんわりとしたノエルの柔らかい毛が頬に当たって気持ち良い。

「ノエル、ルチル。今日はここで野営して明日一日この近隣の討伐をするんだ」

「ホントにゃ?」

「やるピカ?」

どうやら二匹共明日はやる気のようだ。なら俺もやらないとな……

「ああ、そうだな。討伐やるか!」

「ガンバルにゃ!たくさんやっつけるにゃ!」

「ボクもやるピカ!」

「じゃあ明日は頑張って沢山やっつけましょう」

キースの言葉にノエルもルチルもご機嫌になって尻尾を振る。
俺もキースを見て笑う。
領都はまだ遠いが帰路が楽しくなってきて、少しだけ義父上の気持ちが分かった気がした。
感想 3,411

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん
恋愛
【モブ】シリーズ①(本編) 異世界を救うために聖女として、3人の女性が召喚された。しかし、召喚された先に4人の女性が顕れた。そう、私はその召喚に巻き込まれたのだ。巻き込まれなので、特に何かを持っていると言う事は無く…と思っていたが、この世界ではレアな魔法使いらしい。でも、日本に還りたいから秘密にしておく。ただただ、目立ちたくないのでひっそりと過ごす事を心掛けていた。 それなのに、周りはおまけのくせにと悪意を向けてくる。それでも、聖女3人のお姉さん達が私を可愛がって守ってくれるお陰でやり過ごす事ができました。 そして、3年後、聖女の仕事が終わり、皆で日本に還れる事に。いざ、魔法陣展開で日本へ!となったところで…!? R4.6.5 なろうでの投稿を始めました。