婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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婿様のご帰還。

「おいっ!四番隊が帰って来たぞ!」

「何っ!いやっ、ちょっと待て。四番隊ってアレだろ、姫様に婿入りする帝国の皇子様だろ?怪我なんてしてねぇだろうな?」

「ピンシャンしてるってよ!おいっ!見に行こうぜ!」

「おうっ!」

領都の端だが、様々な店が領都を突っ切るような街道に並んでいる。
その裏通りにも領民達が足繁く通うような安い酒場や鍛冶屋が点在している。ルーク率いる四番隊が領都に帰還してあちらこちらから無事を確認するために、どんな大型を討伐したのか見物する為に店やら家やら閉めて街道へと出て行く。
先頭を真っ黒な巨馬に跨がり堂々と進む、若くて美しい若者の姿に領都に住む娘所か妙齢な姉さん達までもが黄色い声で帰還を祝ってる。
威風堂々と帰還する四番隊の面々、そして隊列の中程にある領主と同じ造りの馬車とその後ろに何頭もの軍馬に引かれる巨大な大型専用の荷馬車。
女達は四番隊の隊員達の無事を、男達は見るからに巨大な竜と大型の鳥……言わば大型の二体同時討伐に沸いた。
叫び声にも似た帰還を喜ぶ声。
強者を称え、荒ぶる怒号のような歓喜の叫び。
領都の街道には多くの領民達で埋め尽くされる。
その多さに隊列は速度を落とし進む。

「お帰りーっ!」

女の声に軍馬に跨がった隊員がキョロキョロと見回し、やがて声のした方に大きく手を振り笑顔を零す。
王都と同じくらい大きな領都でノロノロと進む四番隊の面々は皆明るく嬉しそうだった。
隊長であるルークとその側近キースだけは嬉しそうであったが、破顔して喜んではいなかった。
いやルークは皇子様スマイルで手を振っているが、それはルークからしたら慣れ親しんだ行動でしかなかった。
キースに至ってはぎこちない笑顔でたまに手を振る程度である。不慣れなのが見てとれる有様だった。
行く先には屋台が出始め、領民達が飲み食いし出したのも見てとれた。

「キース、いつもこんな感じなのか?」

「いや。俺は初めてだから……」

「ハハッ!初陣ってのは特別ですからな!今日はあちこちでお祭り騒ぎですよ」

元四番隊隊長だったバートンが現隊長であるルークとその側近キースに笑いながら答えた。

「そうか……特別か……」

「ええ、その隊の命運を司るようなもんですから」

ニヤリと笑ったバートンはあちこちに大きく手を振って「隊長が強ければ隊員は長生き出来るんでね」そうルークだけに聞こえるよう告げた。
なる程とルークは頷き、バートンと同じように大きく手を振ってユルユルと隊列を進めた。


隊列の中程にあるルークの馬車の上、ノエルとルチルが立ち上がったまま前足を振って「可愛い~♡」と叫ばれていた事はルークとキースの耳には届いてなかった。
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