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静かなる波のように・番外
カチャカチャと茶器の音が幾つも鳴る。
皇帝アレクシオンは目を細め眺める。
ここは皇帝の私的な庭園の一画にある豪奢な温室だ。
「陛下、この様に呼ばれるのは久方ぶりでございますね」
皺だらけとはいえ、上品な佇まいの女性は皇后アマリエーチェである。
「うむ、実はアーネストの娘フェリシア嬢を覚えておるか?」
トントンとテーブルを叩く、節くれ立った指はやはり皺だらけで皇帝アレクシオンの老いを如実に表していた。
「覚えておりますわ。ジョルジオに輿入れして欲しいと願っておりましたから……ですがシルヴァニア家と言えば女性は皆夫は自ら選ぶもの、ジョルジオは選ばれなかったのが今でも悔やまれるわ。ですが、何故今フェリシア嬢の事を?」
ふうわりと紅茶の香りが漂う。
が、それとは違う香りも漂って来た。
「うむ、フェリシア嬢から贈り物を頂いたのだ……その……アマリエーチェはきっと気に入ってくれると思ってな」
「あら?まぁ……ふふっ、ご執心のアーネスト殿からではなくて?」
少し離れた場所から皇帝陛下と皇后陛下を見つめる侍女や侍従は会話の内容が耳には入らないが、楽しげに会話する二人の姿に年老いても仲が良いと恭しく見つめていた。
「いや、アーネストからではない。王国にいるフェリシア嬢からだ。何でもジョルジオの息子……第三側妃ノーマ嬢の生んだ子がフェリシア嬢の娘と婚姻するのだが、そのご令嬢が料理人に作らせた甘味だ。食べてみたが驚く程美味でな、アマリエーチェに食べさせたいと思ったのだ」
「まぁ……」
アマリエーチェは驚きを隠さなかった。
今までアレクシオンとは適度な距離感で、私的なお呼ばれも年老いた昨今は本当に少なかったからだ。
「今まで苦労ばかりかけた。そろそろこの様な時間を取っても責められまい。さ、紅茶が冷める前に口にするが良い」
そう言うとアレクシオンはクッキーを一枚手に取りサクリと齧る。
その様を見て、皇帝陛下たるお方が毒味もさせずに口にするなんて……と思いながらも同じ様に一枚手に取り齧る。
アマリエーチェは驚き呆然とクッキーを見つめる。
「何でもクッキーと言うらしい。紅茶に実に良く合う」
そう言ってアレクシオンは紅茶を一口、口に含む。
同じようにアマリエーチェも紅茶に口をつけた。
温かな日差しの中、温かい温室の中老夫婦は穏やかな時間を過ごした。
離れた場所から見ていた者達はいつか自分達もこんな風になりたいと思ったとか……
皇帝アレクシオンは目を細め眺める。
ここは皇帝の私的な庭園の一画にある豪奢な温室だ。
「陛下、この様に呼ばれるのは久方ぶりでございますね」
皺だらけとはいえ、上品な佇まいの女性は皇后アマリエーチェである。
「うむ、実はアーネストの娘フェリシア嬢を覚えておるか?」
トントンとテーブルを叩く、節くれ立った指はやはり皺だらけで皇帝アレクシオンの老いを如実に表していた。
「覚えておりますわ。ジョルジオに輿入れして欲しいと願っておりましたから……ですがシルヴァニア家と言えば女性は皆夫は自ら選ぶもの、ジョルジオは選ばれなかったのが今でも悔やまれるわ。ですが、何故今フェリシア嬢の事を?」
ふうわりと紅茶の香りが漂う。
が、それとは違う香りも漂って来た。
「うむ、フェリシア嬢から贈り物を頂いたのだ……その……アマリエーチェはきっと気に入ってくれると思ってな」
「あら?まぁ……ふふっ、ご執心のアーネスト殿からではなくて?」
少し離れた場所から皇帝陛下と皇后陛下を見つめる侍女や侍従は会話の内容が耳には入らないが、楽しげに会話する二人の姿に年老いても仲が良いと恭しく見つめていた。
「いや、アーネストからではない。王国にいるフェリシア嬢からだ。何でもジョルジオの息子……第三側妃ノーマ嬢の生んだ子がフェリシア嬢の娘と婚姻するのだが、そのご令嬢が料理人に作らせた甘味だ。食べてみたが驚く程美味でな、アマリエーチェに食べさせたいと思ったのだ」
「まぁ……」
アマリエーチェは驚きを隠さなかった。
今までアレクシオンとは適度な距離感で、私的なお呼ばれも年老いた昨今は本当に少なかったからだ。
「今まで苦労ばかりかけた。そろそろこの様な時間を取っても責められまい。さ、紅茶が冷める前に口にするが良い」
そう言うとアレクシオンはクッキーを一枚手に取りサクリと齧る。
その様を見て、皇帝陛下たるお方が毒味もさせずに口にするなんて……と思いながらも同じ様に一枚手に取り齧る。
アマリエーチェは驚き呆然とクッキーを見つめる。
「何でもクッキーと言うらしい。紅茶に実に良く合う」
そう言ってアレクシオンは紅茶を一口、口に含む。
同じようにアマリエーチェも紅茶に口をつけた。
温かな日差しの中、温かい温室の中老夫婦は穏やかな時間を過ごした。
離れた場所から見ていた者達はいつか自分達もこんな風になりたいと思ったとか……
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