婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

文字の大きさ
688 / 756

農園には必要不可欠な物 (トール)

それは昼間の事だった。
三人の隊員が慌てた様子でやって来た。

「隊長!大変です!」

「そんなに慌ててどうした」

「肥溜めがありません!」

糞便処理の穴。通称肥溜め。エリノユの街は農作物の街として開拓されたのに、肝心の肥溜めが無ければ農作物に影響する。
この肥溜めがありとあらゆる農作物の実りを良くし、味も良くする事は今では常識だ。
それが無いだと?一体エリーゼは何で忘れてしまったのか……土地はまだまだ有り余ってるから作るのは問題無い。

「良く気が付いたな」

「俺の父が桃園をやってて……」

「俺んトコは畑……」

「俺の親は小麦畑が……」

「なる程、全員農作物に携わってたか」

普通は農作物の一家は同じように農作物を作るものなのに隊員になるなんてな……
まぁ、おかげで助かったんだがな。

「土魔法が使える隊員を呼んで来てくれ、幾つか穴を作らせる」

「「「はいっ!」」」

走って行く三人を見送る。

「意外でしたね」

「ああ。忘れてたと思うからエリーゼには帰ったら言いに行くか」

「そうですか……」

「フレイ、まさかと思うけど俺一人で行かせないよな?」

一人で行って俺だけエリーゼに何か言われたら傷ついちゃうだろ?

「分かりました。でも一緒に行くだけですよ」

「勿論だ」


そしてエリノユの街外れに五つ穴を作らせ邸に帰ってエリーゼに伝えればドライを使ったらどうかと言われなる程と感心した。
乾いていれば重さも違ってくるし、運ぶ者達も仕事が楽になる。
エリーゼの元からさっさと退出して父上の所に行く。
丁度一息入れていたのかすぐに通された。

「父上、今エリーゼと話した所なのですが糞便の事ですがドライの魔法で乾燥させるのはどうかと」

「ほう……一度試してみて問題が無ければその様にするか」

「軽くなるでしょうし荷運びする者も楽になるでしょう」

父上とアレクが賛成してる。

「こちらで試すのが良いかも知れん」

「問題が無いのが一番だが、一カ所だけに止めとくか……結果は数年後だが変わりなければ非常に有効だ」

「はい」

やはり父上は尊敬に値する。
領都の周りの広大な農作地全てを支えてる……俺が幼い頃はいつでも父上は難しい顔をしていた。
エリーゼが生まれて、数年して幼いエリーゼが悩む父上に土の事をあれこれ言いだしたんだよな。
肥溜めもだけど、腐葉土ってのも言ったな……それから年追う毎に不作から遠のいて気が付けば沢山のため池に小川……
不作とは縁遠い農作地ばかりになった。
領地全域に広がった農法に備蓄も順調で近隣の領地に売る事も出来るようになった。

「順調に行くと良いな」

「はい。では失礼致します」

「うむ」

一つ礼をして父上の元から下がる。
他領よりも多い魔物。でも魔物だけで生きてる訳じゃない。
野菜も果物も必要だ。
だが雨に一喜一憂するのでは無く、ある程度は対策しなくてはダメなのだと言った幼かった妹。
今の我が領があるのはエリーゼの知識の恩恵が大きい。
分かってるかい?エリーゼ。
小さな頃から不思議な事を言ってたけど、エリーゼのおかげで多くの領民が救われ俺達も救われた。
俺達には分からない事も沢山言ってたけど、それでも何とか出来た事はそれなりにある。
今度の事も上手くいけば良い。
可愛いエリーゼ。
クルクルと変わる表情もハキハキと言ってのける所も可愛いって思ってる。
エリーゼはいつまでも俺の可愛い妹だ。
だから悲しい顔とかすんなよ。ルークに泣かされたら俺がぶん殴ってやるから。
だから幸せになってくれ……
感想 3,411

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん
恋愛
【モブ】シリーズ①(本編) 異世界を救うために聖女として、3人の女性が召喚された。しかし、召喚された先に4人の女性が顕れた。そう、私はその召喚に巻き込まれたのだ。巻き込まれなので、特に何かを持っていると言う事は無く…と思っていたが、この世界ではレアな魔法使いらしい。でも、日本に還りたいから秘密にしておく。ただただ、目立ちたくないのでひっそりと過ごす事を心掛けていた。 それなのに、周りはおまけのくせにと悪意を向けてくる。それでも、聖女3人のお姉さん達が私を可愛がって守ってくれるお陰でやり過ごす事ができました。 そして、3年後、聖女の仕事が終わり、皆で日本に還れる事に。いざ、魔法陣展開で日本へ!となったところで…!? R4.6.5 なろうでの投稿を始めました。