婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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婚約者 13 (ラーラルーナ)

野営地の中、ゆったりと見て回って軍馬が繋がれている辺りまで来てちょっとだけ驚く。
軍馬ってサラブレッドよりちょっとがっしりしてるのね……少し離れた所に一頭だけ余裕を作られる様に繋がれてる軍馬がいたけど、あれがシルヴァニア産の馬だとすぐに見てとれた。きっとキャスバル様の馬よね、だって侯爵夫人はあのシルヴァニア公爵家から嫁がれたんですものね!
それにしても美しくて立派な馬だわ!ってあら?キャスバル様?
……颯爽とシルヴァニア産の馬に乗って行ってしまったわ。

「フフ……イケメンでスパダリ……言うこと無しだわ……」

周りに人がいないのを確認して小さく呟く。
軍馬の向こうに杭が等間隔で打たれ、あれが魔物除けなのだと確認する。
思ったよりも広めに作られてるのね……馬達を眺めながら繋がれた馬に沿って歩く。
馬達の間に小さな天幕が張られ、そこに時折人が出入りしてる。これ……何かしら?
丁度出て来る人がいたわ。

「こちらはいったい何の天幕かしら?」

ん?何か木札を……

「はっ!こちらはあの……ご不浄所で……その、使う時は木札の赤い方を出して終わったら青い方にするんです」

なる程、トイレね。今は木札が青い方になってる。

「馬達の間にある天幕は全部そうなのかしら?」

「はい。天幕に近い所を使う様に出来てますが、広いので数カ所必要なんですよ。使いたい時が被る事もあるんで」

「そうね。分かったわ」

「はっ!」

男性はサッと挨拶をするとさっさと行ってしまった。とにかく一周したら天幕に戻って一休みして夕食を待ちましょうか。

野営地を一周してきました。広い……ザッと見て天幕の数も多いし、配置されてる馬車も大きい物が何台もある。
私達が乗ってきた馬車は割と中側に配置され、馬車止めで動かない様にされていた。
中央は広場の様になっていて、木製のテーブルが幾つも出されベンチみたいなイスが出されてる。先程私が食事をした場所は少し離れた場所でイスも個人個人で座れるタイプの物。多分、キャスバル様やレイが食事を取る所なのね。

「さすがに歩き疲れたわ。天幕に行こうっと……」

思ったより静かだし、本当に大型なんて呼ばれる大きくて残酷な魔物が襲って来るなんて嘘じゃないかと思った。

グォォォォォォォォォ!

え?何?今の鳴き声……信じられないほど大きな鳴き声に体が竦んで固まる。
急に周りがザワついて多くの男性が出て来る。

「安心して下さい、この辺りは色んな大型がいますからね。この程度なら離れてますし、野営地を襲って来る様な事はありません」

「そ……そうなのね……」

この程度は離れてる?あんなに大きな鳴き声なのに離れてるなんて……私達だけだったら怖くて動けなかったし、あっという間に襲われていたんじゃないかしら?

「ラーラルーナ様!天幕の辺りなら大型に襲われる事もありませんから安心して下さいね」

走ってやって来たレイが安心させる様に微笑み、声をかけてくれる。

「そうなのね。それにしても大型?の鳴き声は良く聞こえるものなのかしら?」

「そうですね……聞こえる時は何種類もの鳴き声が聞こえますし、煩いな……と思う時もありますね」

「そう……」

何度となく聞いてるから怖くないのね。

「私達は大型専門の討伐隊なので、何度となく大型を討伐してきております。ラーラルーナ様に傷一つ付けない様にと命じられております。恐ろしいと思うかも知れませんが、どうか安心して下さい」

「ありがとう」

丁寧に教えてくれたレイはさすがと言うべきなのかしら。それにしても大型専門の討伐隊ねぇ……だからかしら?こんなに落ち着いているのは。
とにかく天幕に引っ込んでいた方が良さそうね。

「では天幕におりますから」

「はい」

レイに告げて天幕に入れば侍女がいました。わぁ……嫌そうな顔?え?いや、そんなに嫌そうじゃないわ。

「こちらの天幕は宿より良いですね」

「ええ、私も驚いたわ」

履いてた靴を脱いで上がり込んでベッドに腰掛ける。

「寝る前に体を拭きに参ります」

「ええ、よろしくね。それまではゆっくりしてて良いわよ」

食事は好き勝手に食べたいのよね。だって前世で食べてた様な料理なんだもん。
パタッと上半身を倒して瞼を閉じる。
さっきまでの騒々しさが嘘みたい……気が付けば寝落ちしてました。
侍女が来てないし、お腹の空き具合からいってもそれ程時間は経ってないと予想して外へと向かう。
天幕の外は夕日を受けて朱色の世界になっていた。
漂う美味しそうな匂いにお腹がキュウ……と鳴った。
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