726 / 756
婚約者 18 (キャスバル)
日の出と共に目を覚ますが、隣で寝ていた筈のレイは既に起き出して目覚めた俺の為の準備を済ませていた。
「お早うございます。紅茶は少し冷ましておきました、どうぞ」
差し出された桃の香りの紅茶にエリーゼの笑顔を思い浮かべる。桃の香りの紅茶はエリーゼの一番のお気に入りだ。
いつだって笑顔を浮かべて口にする、その笑顔は小さな頃から何一つ変わらない。
飲みきってカップをレイに渡してクリーンの魔法で汗や汚れを取りきる。
昨夜レイを抱いた後もクリーンの魔法でこざっぱりしたが、寝汗は別物だ。
「お着替えを手伝います」
「頼む」
そう言って用意された服を着付けていく。一人でも着れるが、やはり手伝って貰った方が着終わった後が違う。
武装も気付けてしっかりと身嗜みを整えた後、レイがあちらこちらを点検するまで天幕の隅に置かれた椅子に座り地図を確認する。
新たに作られた地図はエリーゼの意見が幅広く採用され、今までの物より遥に見やすく正確だった。
「お待たせ致しました」
「ん?ああ、大丈夫だ。もう良いのか?」
「はい。このまま天幕を片付けさせても問題無いです」
「なら外に出るか」
「はい」
レイを連れて天幕から出ると数名の隊員が待っていた。夜の見回りを行っていた者達だ。俺はいつも通り報告を受け、レイは別の隊員へと天幕の片付けをする様に伝えていた。これはいつもと変わらない事だが、今日からは客用天幕の事もあるから少しだけ隊員達が浮き足立ってる様に感じる。
報告では異常は何一つ無く、いつもと変わらないとの事だった。
ラーラルーナ嬢も天幕から出て来る事も無く、至って平常で安心したと全員がホッとしている。
少し好奇心が強いかと思っていたが、弁えているようで良かったと俺も安心だ。
調理班が朝食の支度をしていて、今朝も美味しそうだと口元が綻ぶ。
「む?」
俄に騒がしくなり、そちらに目を向ければ小走りで向かって来る二名の伝令の姿が見える。
「お早うございます!第五隊から伝令です!」
「お早うございます!第六隊から伝令です!」
「お早う。何かあったか?」
「本日よりこちらに待機し、帝国賓客と合流し次第領都を目指します。我等も速度重視での装備をと言われております、なるべく第二隊に追い付く様にすると隊長から次期様に伝える様にと!」
第五隊伝令は少し緊張してるのか顔が赤い。
「私共も第五隊と同じく速度重視の装備です!無事帝国賓客の方々を送り届ける所存です!」
まだ年若い伝令も一生懸命に背筋を伸ばして伝えてくれる。
「分かった。こちらも朝食が済み、天幕の片付けが済み次第出発するつもりだ。だがこちらは帝国令嬢を抱えてる為、予定より時間が掛かるかも知れない。無理して合流をする必要は無いと思うから、怪我等に気を付けてくれ」
無用の怪我なぞ領主隊の名折れだ。送迎に大型討伐は含まれてない、せいぜい道すがら出て来た小型や中型を手早く討伐して道を進めた方が良い。
「はいっ!」
「はっ!」
「では、隊に戻ってくれ」
俺の言葉にパッと一礼して走って隊へと戻って行く後ろ姿に少しだけ懐かしい気持ちになる。誰だって若い頃には年上の経験豊富な隊長には緊張も憧れもある。
まぁ、俺は父上が凄かったから父上目指して討伐に出て回っていたが……お祖父さまには勝てないな。豪傑過ぎるからな……
「キャスバル様、朝食の用意が出来ました」
「分かった」
向かった先にはしっかりと旅仕度を整えたラーラルーナ嬢が立って待っていた。
「お早うございます。今日からはキャスバル様達に合わせて行ける様にと言っておきました、私も至らない所があるかも知れませんがよろしくお願いします」
スッとお辞儀をしたラーラルーナ嬢に合わせる様に少し離れた所に立っていた侍女も一礼する。
……普通、お付きの侍女とは主の近くで待機しないか?母上と専属侍女の距離を見慣れているとあの侍女は離れ過ぎな感じがする。
まぁ、良い。旅の間に分かる事だろう。
「少々勝手が違うと感じるかも知れないが慣れてくれると有難い。街道はかなり整備しているし、野営地も大抵は決まっているから安心して欲しい。時間は有意義だ、一緒に朝食を食べましょう。その間に天幕を片付けますが、天幕は使用者が分かる様になっているので荷物等が手違いで他の者へと渡る事は無いのでそこも安心して欲しい」
天幕の模様や垂れ幕等細かい所で区別がつくようになっているし、ラーラルーナ嬢の天幕は客用天幕でも一等良い物だ。勝手に誰かが入ろうとすればうちの隊員が止めるし、安心な筈だ。いや、侍女だけは自由に入れるが……まぁ、大丈夫だろう。
「嬉しいですわ。こちらの食事が美味しくて待ち遠しかったんですの」
「そうですか。では行きましょう」
ラーラルーナ嬢をエスコートしてテーブルへと向かう。彼女を座らせ、俺も席に着くとレイが小さく耳打ちしてきた。
「お付きの者達も既にこちらに集合しております」
俺もレイの耳元へと「片付け次第出発だな」と囁けばレイが頬を染めてはにかむ。
チリ……と視線を感じてさり気なく視線の先を辿る。
ラーラルーナ嬢が瞳をキラキラさせながらこちらをチラチラと見ている。何なんだ?
「お早うございます。紅茶は少し冷ましておきました、どうぞ」
差し出された桃の香りの紅茶にエリーゼの笑顔を思い浮かべる。桃の香りの紅茶はエリーゼの一番のお気に入りだ。
いつだって笑顔を浮かべて口にする、その笑顔は小さな頃から何一つ変わらない。
飲みきってカップをレイに渡してクリーンの魔法で汗や汚れを取りきる。
昨夜レイを抱いた後もクリーンの魔法でこざっぱりしたが、寝汗は別物だ。
「お着替えを手伝います」
「頼む」
そう言って用意された服を着付けていく。一人でも着れるが、やはり手伝って貰った方が着終わった後が違う。
武装も気付けてしっかりと身嗜みを整えた後、レイがあちらこちらを点検するまで天幕の隅に置かれた椅子に座り地図を確認する。
新たに作られた地図はエリーゼの意見が幅広く採用され、今までの物より遥に見やすく正確だった。
「お待たせ致しました」
「ん?ああ、大丈夫だ。もう良いのか?」
「はい。このまま天幕を片付けさせても問題無いです」
「なら外に出るか」
「はい」
レイを連れて天幕から出ると数名の隊員が待っていた。夜の見回りを行っていた者達だ。俺はいつも通り報告を受け、レイは別の隊員へと天幕の片付けをする様に伝えていた。これはいつもと変わらない事だが、今日からは客用天幕の事もあるから少しだけ隊員達が浮き足立ってる様に感じる。
報告では異常は何一つ無く、いつもと変わらないとの事だった。
ラーラルーナ嬢も天幕から出て来る事も無く、至って平常で安心したと全員がホッとしている。
少し好奇心が強いかと思っていたが、弁えているようで良かったと俺も安心だ。
調理班が朝食の支度をしていて、今朝も美味しそうだと口元が綻ぶ。
「む?」
俄に騒がしくなり、そちらに目を向ければ小走りで向かって来る二名の伝令の姿が見える。
「お早うございます!第五隊から伝令です!」
「お早うございます!第六隊から伝令です!」
「お早う。何かあったか?」
「本日よりこちらに待機し、帝国賓客と合流し次第領都を目指します。我等も速度重視での装備をと言われております、なるべく第二隊に追い付く様にすると隊長から次期様に伝える様にと!」
第五隊伝令は少し緊張してるのか顔が赤い。
「私共も第五隊と同じく速度重視の装備です!無事帝国賓客の方々を送り届ける所存です!」
まだ年若い伝令も一生懸命に背筋を伸ばして伝えてくれる。
「分かった。こちらも朝食が済み、天幕の片付けが済み次第出発するつもりだ。だがこちらは帝国令嬢を抱えてる為、予定より時間が掛かるかも知れない。無理して合流をする必要は無いと思うから、怪我等に気を付けてくれ」
無用の怪我なぞ領主隊の名折れだ。送迎に大型討伐は含まれてない、せいぜい道すがら出て来た小型や中型を手早く討伐して道を進めた方が良い。
「はいっ!」
「はっ!」
「では、隊に戻ってくれ」
俺の言葉にパッと一礼して走って隊へと戻って行く後ろ姿に少しだけ懐かしい気持ちになる。誰だって若い頃には年上の経験豊富な隊長には緊張も憧れもある。
まぁ、俺は父上が凄かったから父上目指して討伐に出て回っていたが……お祖父さまには勝てないな。豪傑過ぎるからな……
「キャスバル様、朝食の用意が出来ました」
「分かった」
向かった先にはしっかりと旅仕度を整えたラーラルーナ嬢が立って待っていた。
「お早うございます。今日からはキャスバル様達に合わせて行ける様にと言っておきました、私も至らない所があるかも知れませんがよろしくお願いします」
スッとお辞儀をしたラーラルーナ嬢に合わせる様に少し離れた所に立っていた侍女も一礼する。
……普通、お付きの侍女とは主の近くで待機しないか?母上と専属侍女の距離を見慣れているとあの侍女は離れ過ぎな感じがする。
まぁ、良い。旅の間に分かる事だろう。
「少々勝手が違うと感じるかも知れないが慣れてくれると有難い。街道はかなり整備しているし、野営地も大抵は決まっているから安心して欲しい。時間は有意義だ、一緒に朝食を食べましょう。その間に天幕を片付けますが、天幕は使用者が分かる様になっているので荷物等が手違いで他の者へと渡る事は無いのでそこも安心して欲しい」
天幕の模様や垂れ幕等細かい所で区別がつくようになっているし、ラーラルーナ嬢の天幕は客用天幕でも一等良い物だ。勝手に誰かが入ろうとすればうちの隊員が止めるし、安心な筈だ。いや、侍女だけは自由に入れるが……まぁ、大丈夫だろう。
「嬉しいですわ。こちらの食事が美味しくて待ち遠しかったんですの」
「そうですか。では行きましょう」
ラーラルーナ嬢をエスコートしてテーブルへと向かう。彼女を座らせ、俺も席に着くとレイが小さく耳打ちしてきた。
「お付きの者達も既にこちらに集合しております」
俺もレイの耳元へと「片付け次第出発だな」と囁けばレイが頬を染めてはにかむ。
チリ……と視線を感じてさり気なく視線の先を辿る。
ラーラルーナ嬢が瞳をキラキラさせながらこちらをチラチラと見ている。何なんだ?
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです
ほーみ
恋愛
「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」
その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。
──王都の学園で、私は彼と出会った。
彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。
貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について
みん
恋愛
【モブ】シリーズ①(本編)
異世界を救うために聖女として、3人の女性が召喚された。しかし、召喚された先に4人の女性が顕れた。そう、私はその召喚に巻き込まれたのだ。巻き込まれなので、特に何かを持っていると言う事は無く…と思っていたが、この世界ではレアな魔法使いらしい。でも、日本に還りたいから秘密にしておく。ただただ、目立ちたくないのでひっそりと過ごす事を心掛けていた。
それなのに、周りはおまけのくせにと悪意を向けてくる。それでも、聖女3人のお姉さん達が私を可愛がって守ってくれるお陰でやり過ごす事ができました。
そして、3年後、聖女の仕事が終わり、皆で日本に還れる事に。いざ、魔法陣展開で日本へ!となったところで…!?
R4.6.5
なろうでの投稿を始めました。