婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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婚約者 20 (キャスバル)

以前、母上から女性は褒めるべきだと教わった。それは親しければ親しい程大切な事だと。
婚約者であるラーラルーナ嬢の美点を褒めれば頬を赤らめ、照れて見せる彼女は淑女たる笑顔ではなく年相応の若々しい笑顔で実に可愛らしいと感じた。
気になる部分はあるけれど、細かい事は気にせずにいた方が良いだろう。
それよりも気にすべきはラーラルーナ嬢の侍女だ。主として敬っている様には見えない……ただの俺の主観かも知れないが、余りにも素っ気ないと言うか侍女らしからぬと言うか……大した迷惑でも無いのに決めつけ、小煩く急かすのは気に食わない。
大体、まだ出発の準備も整ってない状態で他にも隊員達が食べていたのだから急かす理由にならないのに。

「キャスバル様、お顔がよろしくないですよ」

「む……」

食べ終わって自分の馬車へと歩き出したラーラルーナ嬢と付き従う侍女の背中を見ながら溜息を吐き出す。

「レイ。あの侍女だが、おかしくないか?」

「おかしいですね」

隣で同じように二人の背中を見ているレイは即座に返答する。

「同じ上級使用人の仲間に加えるには些か問題があります。彼女は主に対しての心構えが出来てない様に感じます」

レイの率直な意見にやはり……と思う。

「帰ったらラーラルーナ嬢の専属侍女の事を相談しようと思う。このままでは先行きが不安だ。俺の妻として動くにはあの程度の侍女では持たない」

「全く同意です」

独立して国となれば彼女は妃となる。その妃の専属侍女があれでは話しにならない。出来る事なら母上から譲り受けたい程だが難しいだろう。

慌ただしく動き回る隊員達を纏め上げ、隊列を組み直し出発の準備が整っていく。
更地になった野営地を後に俺達は領都を目指して動き出す。帝国の馬車には簡易魔物除けを取り付け、同道してきた騎士達には馬車の前後に入っては貰い俺達が周りを固めて進む。
町を抜け、町の前の野営地に待機していた領主隊第五・第六に武運を祈る様手で胸を軽く叩けば向こうも胸を軽く叩いて来る。

「さて、速歩で進めるか」

「はっ!」

馬達に無理をしない程度に街道を進む。
野営地は以前に比べると数が増やされ、休憩も入れやすい。そこで馬達を休ませ、俺達も昼食を取る。
何、この旅も一日二日程経験すれば慣れるだろう。

「余り気が急いてはなりませんよ」

「ははっ分かってるさ」

俺の隣でレイがいつものように微笑んで俺を諭す。俺も笑顔でレイを見詰め微笑んだ。
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