婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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そしてメイドは覚醒する(笑)

「そろそろ婚約者様戻ってくるみたいよ」

「じゃあ、しっかり磨いて差し上げないとね!」

「ドレスとかの事は考えずに磨き上げて、明日の為にしっかり休んで貰いましょう!」

「「「はいっ!」」」

今日初めて来た次期侯爵キャスバル様の婚約者様ラーラルーナ様。シュバルツバルト家のメイドの目から見ても肌は何だかくすんでるし、髪も艶が足りない。爪もきちんとお手入れされてないようだし、メイド達は目をギラつかせて待ち構えていた。
浴室には様々な道具に水石鹸、香油も何種類も用意し柔らかく織った布もたっぷり用意している。
一緒に来た侍女は与えられた部屋に籠もって休んでる様子で、メイド達や部屋付きの仮の侍女達はラーラルーナ様付きの侍女を軽蔑し始めていた。
やがて執事の案内で客室に戻ってきたラーラルーナ様。

「さぁ、お疲れでしょう。湯浴みの支度は整っております、さ!浴室へと参りましょう!」

食後だと言うのに、時間が惜しいとばがりにラーラルーナ様を浴室へと連れ込んだ。
運も寸も無くドレスから何から脱がされ、広い浴室の浅い猫脚の浴槽へと押されチャポンと座れば磨き上げスタートです。
水石鹸が溶かされた浴槽内で指先からつま先までヘチマで擦られます。

「あら?ラーラルーナ様、今日はしっかり磨きましようね!」

メイドは良い笑顔で声をかけます。なぜなら、湯の表面にはキャスバル様が帰って来た時の様な汚れが浮かんでいたからです。

「え?」

ラーラルーナ様の驚きの余り声を漏らしてしまったんでしょうね。
そりゃあもう全身くまなく擦られてます。

「あら?髪も何回か洗いましょうね!」

メイドが二人掛かりで長い髪を根元からしっかり洗っていきます。

「楽しいわ……」

「ええ!こんなに洗い概があると燃えるわ!」

「私の技術が生かされる……!」

「必ず美しく磨き上げてみせる!」

メイド達は何かに目覚めたようです。全員がやる気に満ち満ちてます。

「待って……」

ラーラルーナ様の言葉はもうメイド達の耳には入って来ませんでした。
何度となく髪も体も洗われ、濯がれて「湯に浸かって下さい」と言われて入れられたのは前世で見た事のある深めの浴槽でした。
肩まで浸かり、「癒される……」と呟いて十分した後「こちらにお出で下さい」と言われて冷たそうな大理石の寝台みたいな所に連れてこられ、笑顔で「横になって下さいませ」と言われればもはや逆らう事も出来ずに横になったラーラルーナ様。

「え?冷たくない?」

「当然でございます。頭の下に布をお入れします」

そう言われサッと布が敷かれると、今度は全身くまなく香油がかけられユルユルと擦られました。
気持ち良かったのは最初だけで、気が付けばザラザラとした感触を感じて嫌な気分になる。

「さ、湯をおかけしますね」

温かいお湯がかけられ、再度香油がかけられる。
顔もたっぷりの香油を塗られ、同じように擦られました。
そんな事を三度も四度もされてる内にトロトロと瞼が閉じかかってしまうラーラルーナ様。

「少しの間、目を閉じてらっしゃって下さい。終わりましたら、お声をおかけ致します。ああ……体をうつ伏せにして下さいますか?お顔は横向きで構いませんよ」

その言葉を聞いてラーラルーナ様はうつ伏せになり柔らかい布な頬をあて、目を閉じてしまわれました。

「やるわよ!」

コクコクとメイド達は頷き、何度も香油で体の小さな汚れを浮かせては取り除きました。
最後は丁寧に香油を拭き取る。

「ラーラルーナ様……ラーラルーナ様……終わりましたよ」

「ん……」

「さ、お立ち台下さいませ」

「うん……」

もう、眠くて眠くて仕方ないラーラルーナ様は良く分からないまま夜着を着せられ、ベッドへと連れて行かれるとモソモソと入り込み気持ち良さそうにお眠りになりました。

「まだまだ磨き足りないです……」

「ええ……まだまだです」

「明日も可能なら磨きたいです」

「ええ!磨きましょう!」

メイド達はラーラルーナ様を磨き上げる事を心に誓い浴室の片付けへと向かいました。
ラーラルーナ様付きの侍女様ですか?全く出て来ませんでしたね。
まぁ、良く分からない方なので食事もこちらに運んで貰いましたし、滞在中は大人しくして下されば問題無いですよ。ええ。
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