お狐様にお願い!

竹本 芳生

文字の大きさ
上 下
41 / 57

為当神社の祭りの日(日曜日) 2

しおりを挟む
朝ご飯を食べ終わり、コーヒーを飲んでる間に母さんは食器を洗いしまってしまう。
母さんは自分のコーヒーを飲み干すと、カップをササッと洗ってしまう。

「ご馳走さま。」

俺は空になったマグカップを母さんに渡すと「どういたした!」と笑いながらマグカップを受け取り洗ってしまう。

「そろそろ行こうか。」

「うん。」

母さんは昨日と同じ荷物を持つ、俺も中身は違うけど昨日と同じポーチを持って母さんの後をついて行く。

「美香ちゃん、気を付けてな。隼もな!」

父さんが玄関まで出てきて、声をかけてくる。うちでは普通だけど、よそは違うらしい。

「父さん、行ってきます。」

「ありがとー!じゃあ、たーくん行ってくるね!」

母さんは父さんの事を『たーくん』と呼ぶ。いい年したオッサンが、たーくんと呼ばれて嬉しそうにする。ちょっと前まで嫌だった事が、今は少しだけ羨ましい。いつまでも仲が良いって、こー言う事なんだって分かったからだ。
母さんが父さんにバイバイと手を振れば、父さんもバイバイと手を振る。
母さんは今日も元気いっぱいに扉を開けて、外に出る。そんな母さんを見て、俺は黙って後を付いて行く。

母さんの車の後部座席に座ると、母さんは「出すよ-!」と一声掛けてから発進した。
車内で話はしなかったけど、そんなの良くある事で今日が初めてじゃない。
ぼんやりと流れる景色を見てるだけで、車はどんどん進み為当の集会所に着いてしまう。

「到着!あっ、お金後でも良い?」

「うん、良いよ。俺、ちゃんとお小遣い持って来てるし大丈夫だから。」

母さんは心配性な訳しないけど、お金は無いよりあった方が色々都合が良いから持ってなさいなタイプだ。だからと言って無駄遣いしてる風には見えないから、どんな風にどう使ってるのかは良く分からない。
車から降りて、集会所に向かう。
大人も子供も出たり入ったりしている……智子さんと……やっちゃんさんと順ちゃんさんが入口でたむろってた。

「おはよー!今日もよろしく~!」

「おはよ-!今日もよろしく~!」

母さんと智子さんは同じ言葉を交わしてる……

「おはよう、よろしく~!」

「おはよう、頑張ろうね~!」

こっちはちょっと違うんだな……でも、テンションは似てる気がする。
あっと……いけね……

「おはようございます。」

挨拶は基本だった、頭を下げる。
……すぐに頭を上げると、なんか温かい眼差しです……

「おはよう!」

「おはよう~!美香ちゃんとこの子、しっかりしてる~」

「おはよう、うちの子どっか行ったまんまだよ……」

「ありがと~、うちの子ちゃんと挨拶出来る子で……ホント~に!良かった!」

なんでブルゾン風に言うんだよ、母さん……しかも、ちょっとアクション混ぜて……

「じゃあ、行こっか!」

智子さんの掛け声で、ワラワラと集会所に入ってく。

「あっ、隼君。優輝なら中でゲームやってるから!」

「はい、ありがとうございます。」

為当集会所は板張りの広間と和室が一つずつある、昔っから優輝達はゲームを和室でやる。板張りの上って言っても座布団もあるし、和室じゃなくても良いのにって思うけど大抵和室でやってる。でも、智子さんが教えてくれたからスマホで連絡取らなくても良いし楽って言えば楽だ。捜す手間が省けたんだしな。
母さん達はバタバタと事務室の方に楽しそうに向かった、毎年お化粧をするのは事務室になっている。理由は集会所入口と事務室の間に窓が設けてあって、やり取りがしやすいかららしい。
俺は勝手知ったるってやつで、入り込み和室の襖を開くと壁にもたれてゲームをしてる優輝を見つけた。
しおりを挟む

処理中です...