婚約破棄されまして(笑)

連載

嫁入り支度 108

「違うっ！今は可愛いって言うより綺麗って事をっ」

「あら、そう」

ルークが慌てて何か言ってるけど、それは笑顔で受け止めておきましょう。問題はルークではなく、私の幼い頃をごそごそ言い合ってるお父様とお兄様達です。
なんで私の目の前で小さい頃の私がいかに可愛かったかトークをしているのか……

「お父様もお兄様達もそろそろ止めて下さらないかしら？」

私の一言でビクリと動きを止めて、ギギギ……と音が聞こえそうな動きで私を見てきたけど、何で怯えた顔して私を見てくるのかしら？イヤだわ。

「エ……エリーゼ、怒って……怒ってはいかんぞ……」

「お父様、私は怒ってはいませんわよ」

笑顔！笑顔です！

「母上そっくりになってきたぞ……」

誰よっ！ギロリと目だけで声のしたほうを見やればイケボお兄様のキャスバルお兄様でした。

「ヤベッ！母上そっくりだっ……」

トールお兄様まで！

「私は娘ですからお母様に似て当たり前でしょう」

声を荒げず、笑顔で言ったのですがお父様とお兄様達の引き攣ったお顔は変わりません。

「エリーゼ、その笑顔マジで怖いから……」

「ルーク、何を言ってるの？」

笑顔怖いって失礼じゃないかしら？

「いや、マジで義母上そっくりだから……」

「だから、お母様から生まれたんだから似てて当たり前でしょう？」

「いや、雰囲気がヤバいって！」

……雰囲気？私の今の雰囲気がお母様に似てるって事？

「主、おこってるにゃ？ピリピリするにゃ……」

「タマ……怒ってないけど、そんなにピリピリしてる？」

「ピリピリするにゃ……」

ピッタリくっついてるタマがおずおずとそう言ってるなら、私本当にピリピリしてるって事かしら……
トラジとノエルを見ればトラジは心配そうだし、ノエルはちょっと目が潤んでる。

「ゴメンね、怒ってないからね」

「主……わかってるにゃ……」

キュと私の手にトラジの肉球がポムチと押しつけられる。温かい……少しだけ心が癒される。

「おこってるみたいでこわかったにゃ……」

うん、相変わらずノエルは素直に気持ち述べるわね。そこが良い所だと思ってるけどね。

「ノエルもゴメンね。さ、ノエルはルークの所に行きなさい」

「わかったにゃ！ありがとにゃ！」

パッと離れてルークの元へと走って行くノエルを見やってフゥと大きく息を吐く。
ノエルの安心するかの様な顔を見て、お父様もお兄様達もどんだけノエルを愛でたのか……分からないじゃないけどいい加減にしないと……