殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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リッチのルロロ

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 エリー・バンガルドは、クドウから綺麗な飾りの付いた細身の剣を受け取ると、腰に差してこちらに歩いてきた。

 彼女はリンネより小さく、金髪のツインテールが幼さをより強調しているように見える。

「へぇ、これがお兄様を倒したキリマルとかいう悪魔? 種族は何かしら?」

 生意気にもエリーは鑑定魔法で俺の能力を見ようとした。

 彼女が光る手をかざして俺に触ろうとすると、魔刀アマリのせいで体が勝手に動く。

「魔法を拒絶する」

 平坦な声が刀から聞こえたと同時に、俺は彼女の手を切り裂こうとしたが、咄嗟に割って入ったビャクヤがリフレクトマントで跳ね返した。

「エリー様、この悪魔は見境なく攻撃してきますゆえッ! あまり近寄らない方がいいかとッ!」

 一瞬の事で何が起きたのか直ぐに理解できなかったエリーは、驚いて下がると体勢を崩してしまった。すぐに牛のような大男クドウが彼女を支える。

「ビャクヤの言う通りでんす、お嬢様。あの長髪の悪魔には近寄らないほうがいいど。おででもキリマルの攻撃は見えなかっただ」

 エリーはクドウの言葉を無視してリンネを睨む。

「ふ、ふん。下級貴族のくせに、どうやってこんな強力な悪魔を手に入れたのかしら? もしかして悪魔に魂を売ったんじゃないでしょうね? 貴方もこの村にいるリッチと同じ類なんじゃなくて? 今日の任務で、ここのゾンビどもの仲間になるかもしれませんわね。ホホホ」

 如何にもと言いたくなる、お嬢様笑いをしてエリーは自分を支えるクドウの手を振り払い、村へと歩き始めた。

「こないだリンネをイジメた時と話し方が違うな。前はもっとこう・・・イキってた感じがしたが」

「友達といる時とそうでない時じゃ、態度も変わるんじゃないかな?」

「そういえば、取り巻きの仲間たちはどうしたのだろうかッ! 今日は一緒じゃないのかねッ!」

「流石にアンデッド関連は来たがらなかったんじゃないかな? 実地訓練でも死者はでる事もあるし、アンデッド相手となると、魔法か魔法の武器か、祝福された武器しか通用しないから」

「より死ぬ確率の低い訓練に、皆流れていったというわけですなッ!」

「そういう事ね。ここに来る事になったのはエリーとクドウ。そして他のクラスの6人パーティ」

 他のクラスのパーティは中々バランスの良さそうな編成だ。前衛が三人、中衛が一人、後衛が二人。仕方なく来たというよりは望んできたという雰囲気があった。

「あれは対アンデッドパーティっぽいね。戦士は皆、祝福されたメイスを持ってるし」

「なんで、あのメイスが祝福されてるかどうかわかるんだ?」

「だって微かに白く光ってるでしょ? 中衛のレンジャーも鏃(やじり)を聖水に浸してるし。後衛はメイジとヒーラーね」

「ふーん。でもゾンビどもが襲ってくる気配はねぇな。あいつらこっちを見てもアーアー言うだけで、ウロウロしてるだけだ。あのパーティの出番はなさそうだな」

 俺たちは臭いゾンビの中を縫い歩いて、リッチのいそうな場所を探した。どこの村にもいる錬金術師やらの地下作業所、カビ臭い霊廟、納屋。

 しかしリッチも警戒心が強いのか見つからない。

 そうこうしている間に日は暮れてしまった。今日中に帰れると思ったのにめんどくせぇ・・・。

「仕方ないわね。どこか家の中で休ませてもらいましょう」

 リンネは誰もいない家を律儀にノックした。

「コンコン、入りますよー」

「口でコンコン言ってる主様、かわゆいッ!」

 リンネに萌えて悶絶するビャクヤきめぇな。斬り殺してぇわ。

「お入りなさい」

 普通に返事が返ってきたので、リンネとビャクヤは驚いている。相手はかすれた声なので男か女かは解らねぇ。

 俺は刀の柄を握ったまま部屋の中へと入っていくと、ランタンを置いたテーブルの前に白ローブを纏った小さな骸骨が座っていた。

「初めまして皆さん。私はリッチのルロロと申します」

「意外と普通に暮らしてたー!」

 リンネがそう言いたくなるのも解る。今日は散々、霊廟や隠し部屋や隠し階段はないかと探したからな。

「俺たちが村に来ている事は知ってたのか?」

「ええ、調査に来たのでしょう? 先に言っておきますが、ここのゾンビは私が原因ではありませんよ」

 リンネがビャクヤにコソコソと喋っているのが聞こえてくる。

「なんか人の好さそうなリッチだね・・・」

「まぁ友好的なリッチは、吾輩の世界でもいましたからねッ!」

「しかも白ローブのリッチ! つまりこのリッチは悪魔と契約した善人だって事! 驚きだよ」

「何か事情がるのでしょうッ! それよりも彼・・・彼女? から情報を、主様ッ!」

 白ローブのリッチは肉のない頬を掻いて困った表情をした。顔の肉がないから解らねぇけど、そんな雰囲気を出していると感じた。

「情報と言っても、私もゾンビだらけの村があると聞いてやってきたので・・・」

「そうですか・・・。何か気が付いたこととかありますか?」

「一つ言えるのは、ここのゾンビは魔法による人為的なものです。こんな姿ですが、私は樹族なので魔法の気配を探知できます。だからここの村人が無理やりゾンビにさせられた事がわかるのです」

「樹族って・・・? ビャクヤが時々話す他の種族の事? 正直、嘘話だと思ってたわ」

「しどいっ! ノームがいるのですから樹族がいてもおかしくないでしょうッ! そういえば経験を積んだ樹族のメイジはオートで【魔法探知】を使えるようになると聞いたことがありますッ! それに白ローブの彼・・・? 彼女? のいう事は信用できるでしょう」

「一応女です・・・」

「失礼、マドモワゼルッ!」

「既婚者なんですが!」

 ルロロは腕を組んでそっぽを向き怒っている。お前が既婚者かどうかなんてどうでもいいわ・・・。

「しかしどうやって、ゾンビにしたんだ?」

「誰かが禁断の巻物を使ったのでしょう。生き物を贄として、広範囲にアンデッドを生み出す魔法の巻物です」

「でもいったい誰が何のために・・・?」

「そこまでは・・・」

「まぁでも、これで実地訓練は終わりだね。リッチの動向を探るってミッションもクリアしたわ。今の会話も魔法水晶に記録したし。今日はここに泊まっていっていいですか? ルロロさん」

「ええ。というか私の家ではないので、自由に使えばいいと思いますよ。この家の主は気の毒にもゾンビになってしまわれたのですから。今も外を彷徨っているのでしょう。一つ忠告しておきますが、家の物は外に持ち出さないでください。盗んだことがばれたら、ゾンビたちは襲ってきます」

「村人だった時の名残なんですかねッ! 辺境の村人は盗人に厳しいッ! 袋叩きにされる盗人をよく見ましたゆえッ!」

「そうかもしれませんね。二階に部屋が余っていますので、そこで寝るといいでしょう。私は眠る必要がないので安心してお休みください」

「ありがとうございます」

 しっかし、つまんねぇ終わり方だな。ひと悶着あっても良かったんだがよ。

 だが、まだ油断は禁物だな。あの骸骨女が夜中に襲ってくるかもしれねぇ。白ローブだかなんだが知らねぇがよ、悪魔に身を売った奴の言葉なんて信用できるか。アホが。
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