殺人鬼転生

藤岡 フジオ

文字の大きさ
26 / 299

夜の村

しおりを挟む
 時折聞こえる笛のような風の調べに乗って、死人の呻き声が聞こえる。

「チッ! うるせぇな。俺は昔から眠りが浅いんだよ、ボケが」

 何匹か斬って静かにさせるか。

 俺は飛び起きるとコートを羽織って、アマリを手に取った。

「眠い・・・」

 アマリは不満そうな声で呟く。

「刀のくせに寝るな」

 一階の玄関近くの部屋なので、直ぐに外には出られる。廊下に出て扉を閉めると、向かいの居間からリッチのしわがれ声が聞こえてきた。

「夜中にお出かけですか?」

 入り口に現れたスペルキャスターは、虚空の眼窩で怪しく光る瞳をこちらに向けた。

「ああ、散歩だ」

「そうですか・・・」

「なぁ」

「はい?」

「お前はこの村に、何をしに来た?」

「昼間に言いませんでしたか? 珍しい村があると聞いてやって来たと・・・。私は魔法の探求者であり死霊術師でもあります」

「それだけじゃねぇだろ?」

「と言いますと?」

「知らねぇけどよ。なんか隠してる事があんだろうが?」

「どうやら私の事をお疑いのようで・・・。まぁいいでしょう。では身の上話をしましょうか。私はここから北西にある西の大陸からやってきました。祖国では私のような闇に堕ちた者に居場所はなく、はぐれメイジでもあった私はメイジギルドの暗殺者に追われ、逃げるようにしてこの島国にやってきました。この島は他の国と転移魔法で行き来できない結界が張られているので、船に乗り、島を囲む潮流に何か月も苦戦しながら、ようやく辿り着いたのです。暫くは洞窟に隠れて暮らしていましたが、最近になってこの村がアンデッドの村になったと聞き、何か私の知識になるような出来事はないかと思ってやってきたのです」

「で、解ったのは誰かが禁断の魔法を使ったという事だけか?」

「はい。これは間違いなく【不死の大禍】という特別な魔法です」

「お前がやったんじゃねぇのか? え? お前も不死なんだろ?」

「私は不死ではありません。魔力と引き換えに我が身を悪魔に売っただけなので、これでも生身なのです。斬られれば普通に死にます。それに私が禁断魔法を使ったと貴方はお疑いのようですが、これほど珍しい魔法を辺境の村に使うのは勿体ない事だと、ウィザードなら誰しもが言うでしょう。私なら巻物を広げ、文字の一文字一文字の意味を丁寧に調べあげ、複写してコピーを作ろうと試みます。この村でこの巻物を使った者は、魔法使いとしての知識が薄く、巻物の価値を知らない愚か者なのだと思います」

 骸骨女は骨と皮だけの手で握りこぶしを作ってプルプル震えてやがる。怒りと興奮で鼻息が荒いな。鼻の穴が一個しかねぇから鼻息の勢いはねぇけどよ。

 まぁこの女は魔法が好きで、巻物が勿体ない使われ方をした事に怒っているのはよく解った。

 それに嘘つきである俺が、嘘つきな人間の仕草を一番知っている。この骸骨女は声が上ずったり、ソワソワしたりしてねぇ。

 十中八九嘘はついてないだろうよ。

「まぁいいさ。俺はこの世界に来て日が浅い。よく解らねぇ事だらけだ。だから魔法の専門家であるお前が、そう言うならそうなんだろうよ」

「信じてくれてありがとうございます」

「さて、散歩でも行ってくるか」

「人修羅さん、一つ教えておきたいことが」

「なんだ?」

 ルロロは魔法の水晶玉を出して何かを見ている。水晶玉はフードの奥で光るリッチの赤い瞳と同じ色をしていた。

「村の北の墓地で、貴方のお仲間がゾンビと戦っておられます。数の多いゾンビに対して二人だけなので少々手こずられている様子。助けにいかれては?」

 二人って事は、間違いなくエリーと下男みたいな大男だな。エリーは大貴族なのに村の物を盗んだのか?

 さて・・・どうする? 見殺しにしたほうがリンネにとっちゃありがたいだろうな。

 しかし、だ。寝る前に運動すれば、きっと疲れて泥のように眠れるだろうよ。

 なんならゾンビ諸共エリーも殺すか。

「仲間なんかじゃねぇけどよ。まぁいいだろう。助けに行ってやるよ・・・。キヒヒ」

 俺はエリーやウスノロをどうやって殺すかを想像しながら、玄関の扉を開けて村の北にある墓地へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

処理中です...