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夜の村
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時折聞こえる笛のような風の調べに乗って、死人の呻き声が聞こえる。
「チッ! うるせぇな。俺は昔から眠りが浅いんだよ、ボケが」
何匹か斬って静かにさせるか。
俺は飛び起きるとコートを羽織って、アマリを手に取った。
「眠い・・・」
アマリは不満そうな声で呟く。
「刀のくせに寝るな」
一階の玄関近くの部屋なので、直ぐに外には出られる。廊下に出て扉を閉めると、向かいの居間からリッチのしわがれ声が聞こえてきた。
「夜中にお出かけですか?」
入り口に現れたスペルキャスターは、虚空の眼窩で怪しく光る瞳をこちらに向けた。
「ああ、散歩だ」
「そうですか・・・」
「なぁ」
「はい?」
「お前はこの村に、何をしに来た?」
「昼間に言いませんでしたか? 珍しい村があると聞いてやって来たと・・・。私は魔法の探求者であり死霊術師でもあります」
「それだけじゃねぇだろ?」
「と言いますと?」
「知らねぇけどよ。なんか隠してる事があんだろうが?」
「どうやら私の事をお疑いのようで・・・。まぁいいでしょう。では身の上話をしましょうか。私はここから北西にある西の大陸からやってきました。祖国では私のような闇に堕ちた者に居場所はなく、はぐれメイジでもあった私はメイジギルドの暗殺者に追われ、逃げるようにしてこの島国にやってきました。この島は他の国と転移魔法で行き来できない結界が張られているので、船に乗り、島を囲む潮流に何か月も苦戦しながら、ようやく辿り着いたのです。暫くは洞窟に隠れて暮らしていましたが、最近になってこの村がアンデッドの村になったと聞き、何か私の知識になるような出来事はないかと思ってやってきたのです」
「で、解ったのは誰かが禁断の魔法を使ったという事だけか?」
「はい。これは間違いなく【不死の大禍】という特別な魔法です」
「お前がやったんじゃねぇのか? え? お前も不死なんだろ?」
「私は不死ではありません。魔力と引き換えに我が身を悪魔に売っただけなので、これでも生身なのです。斬られれば普通に死にます。それに私が禁断魔法を使ったと貴方はお疑いのようですが、これほど珍しい魔法を辺境の村に使うのは勿体ない事だと、ウィザードなら誰しもが言うでしょう。私なら巻物を広げ、文字の一文字一文字の意味を丁寧に調べあげ、複写してコピーを作ろうと試みます。この村でこの巻物を使った者は、魔法使いとしての知識が薄く、巻物の価値を知らない愚か者なのだと思います」
骸骨女は骨と皮だけの手で握りこぶしを作ってプルプル震えてやがる。怒りと興奮で鼻息が荒いな。鼻の穴が一個しかねぇから鼻息の勢いはねぇけどよ。
まぁこの女は魔法が好きで、巻物が勿体ない使われ方をした事に怒っているのはよく解った。
それに嘘つきである俺が、嘘つきな人間の仕草を一番知っている。この骸骨女は声が上ずったり、ソワソワしたりしてねぇ。
十中八九嘘はついてないだろうよ。
「まぁいいさ。俺はこの世界に来て日が浅い。よく解らねぇ事だらけだ。だから魔法の専門家であるお前が、そう言うならそうなんだろうよ」
「信じてくれてありがとうございます」
「さて、散歩でも行ってくるか」
「人修羅さん、一つ教えておきたいことが」
「なんだ?」
ルロロは魔法の水晶玉を出して何かを見ている。水晶玉はフードの奥で光るリッチの赤い瞳と同じ色をしていた。
「村の北の墓地で、貴方のお仲間がゾンビと戦っておられます。数の多いゾンビに対して二人だけなので少々手こずられている様子。助けにいかれては?」
二人って事は、間違いなくエリーと下男みたいな大男だな。エリーは大貴族なのに村の物を盗んだのか?
さて・・・どうする? 見殺しにしたほうがリンネにとっちゃありがたいだろうな。
しかし、だ。寝る前に運動すれば、きっと疲れて泥のように眠れるだろうよ。
なんならゾンビ諸共エリーも殺すか。
「仲間なんかじゃねぇけどよ。まぁいいだろう。助けに行ってやるよ・・・。キヒヒ」
俺はエリーやウスノロをどうやって殺すかを想像しながら、玄関の扉を開けて村の北にある墓地へと向かった。
「チッ! うるせぇな。俺は昔から眠りが浅いんだよ、ボケが」
何匹か斬って静かにさせるか。
俺は飛び起きるとコートを羽織って、アマリを手に取った。
「眠い・・・」
アマリは不満そうな声で呟く。
「刀のくせに寝るな」
一階の玄関近くの部屋なので、直ぐに外には出られる。廊下に出て扉を閉めると、向かいの居間からリッチのしわがれ声が聞こえてきた。
「夜中にお出かけですか?」
入り口に現れたスペルキャスターは、虚空の眼窩で怪しく光る瞳をこちらに向けた。
「ああ、散歩だ」
「そうですか・・・」
「なぁ」
「はい?」
「お前はこの村に、何をしに来た?」
「昼間に言いませんでしたか? 珍しい村があると聞いてやって来たと・・・。私は魔法の探求者であり死霊術師でもあります」
「それだけじゃねぇだろ?」
「と言いますと?」
「知らねぇけどよ。なんか隠してる事があんだろうが?」
「どうやら私の事をお疑いのようで・・・。まぁいいでしょう。では身の上話をしましょうか。私はここから北西にある西の大陸からやってきました。祖国では私のような闇に堕ちた者に居場所はなく、はぐれメイジでもあった私はメイジギルドの暗殺者に追われ、逃げるようにしてこの島国にやってきました。この島は他の国と転移魔法で行き来できない結界が張られているので、船に乗り、島を囲む潮流に何か月も苦戦しながら、ようやく辿り着いたのです。暫くは洞窟に隠れて暮らしていましたが、最近になってこの村がアンデッドの村になったと聞き、何か私の知識になるような出来事はないかと思ってやってきたのです」
「で、解ったのは誰かが禁断の魔法を使ったという事だけか?」
「はい。これは間違いなく【不死の大禍】という特別な魔法です」
「お前がやったんじゃねぇのか? え? お前も不死なんだろ?」
「私は不死ではありません。魔力と引き換えに我が身を悪魔に売っただけなので、これでも生身なのです。斬られれば普通に死にます。それに私が禁断魔法を使ったと貴方はお疑いのようですが、これほど珍しい魔法を辺境の村に使うのは勿体ない事だと、ウィザードなら誰しもが言うでしょう。私なら巻物を広げ、文字の一文字一文字の意味を丁寧に調べあげ、複写してコピーを作ろうと試みます。この村でこの巻物を使った者は、魔法使いとしての知識が薄く、巻物の価値を知らない愚か者なのだと思います」
骸骨女は骨と皮だけの手で握りこぶしを作ってプルプル震えてやがる。怒りと興奮で鼻息が荒いな。鼻の穴が一個しかねぇから鼻息の勢いはねぇけどよ。
まぁこの女は魔法が好きで、巻物が勿体ない使われ方をした事に怒っているのはよく解った。
それに嘘つきである俺が、嘘つきな人間の仕草を一番知っている。この骸骨女は声が上ずったり、ソワソワしたりしてねぇ。
十中八九嘘はついてないだろうよ。
「まぁいいさ。俺はこの世界に来て日が浅い。よく解らねぇ事だらけだ。だから魔法の専門家であるお前が、そう言うならそうなんだろうよ」
「信じてくれてありがとうございます」
「さて、散歩でも行ってくるか」
「人修羅さん、一つ教えておきたいことが」
「なんだ?」
ルロロは魔法の水晶玉を出して何かを見ている。水晶玉はフードの奥で光るリッチの赤い瞳と同じ色をしていた。
「村の北の墓地で、貴方のお仲間がゾンビと戦っておられます。数の多いゾンビに対して二人だけなので少々手こずられている様子。助けにいかれては?」
二人って事は、間違いなくエリーと下男みたいな大男だな。エリーは大貴族なのに村の物を盗んだのか?
さて・・・どうする? 見殺しにしたほうがリンネにとっちゃありがたいだろうな。
しかし、だ。寝る前に運動すれば、きっと疲れて泥のように眠れるだろうよ。
なんならゾンビ諸共エリーも殺すか。
「仲間なんかじゃねぇけどよ。まぁいいだろう。助けに行ってやるよ・・・。キヒヒ」
俺はエリーやウスノロをどうやって殺すかを想像しながら、玄関の扉を開けて村の北にある墓地へと向かった。
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