殺人鬼転生

藤岡 フジオ

文字の大きさ
29 / 299

フードをはずせ

しおりを挟む
 別に神の奇跡云々はどうでもいいんだが、こいつらが人の手柄を厚かましく横取りするのが気に入らねぇ。

「おい・・・」

 リーダーらしきフルヘルムを被る戦士に文句を言おうと、前に出るとビャクヤが手を伸ばして俺を止めた。

「待ちたまえ、キリマル。これは彼らの手柄にした方が良いッ!」

「んでだよ?」

「君は人を簡単に蘇生し過ぎなのだッ! もしこの事が世間に知れ渡ればどうなるかッ! 蘇生や治療の利権を持つ司祭たちに目を付けられるのは間違いないし、毎日ひっきりなしに死者を生き返らせてくれと、頼む者が現れるだろうッ! 何せ君の蘇生はコスト0だからねッ!」

「だったら金を取ればいいじゃねぇか」

「そうすれば今度は主様に怒りが向くッ! 高価な触媒や高レベルの司祭の祈りを必要としない蘇生術が使える悪魔を召しかかえているのに金を取るのか! この業突く張り女め! とねッ!」

(知った事か。人々の怒りを買って勝手に死ね!)

「ノンノンノン! 主様が死ねばッ! 吾輩はッ! 元の世界に帰らないといけなくなるッ! そうなると君はッ! 吾輩との契約が切れてこの世から綺麗さっぱり消えてしまうのだよッ!」

「なんでそうなる? 俺も元居た世界に帰るだけだろ?」

「そうはならない。キリマルは人間だと言い張っているが、明らかに悪魔なのだよ。君と出会った時にこっそりと鑑定魔法で調べてあるからね。そしてこれは吾輩の想像でしかないがッ! 君は一度死んでこの世界に悪魔として転生している。つまり帰る場所がないのだ。君は魔界出身の悪魔でもないからねッ! この世界に突然悪魔として転生した元人間ッ! 種族は人修羅、またの名を悪魔人間ッ!」

「だったら俺を召喚したゴブリンを殺した時点で、俺は消えてたはずだろうが」

「力のある悪魔は暫く人間界に留まれると聞いた事があるッ! 君がそうだったのかもしれないッ! 消え去る前に吾輩と契約できたことはッ! キリマルにとって凄く僥倖だったと言えるッ!」

「嘘クセェ」

「んんんならばッ! 契約を繋がりを斬ればどうかね? 君の刀は吾輩との契約を切れるぞッ! サキュバスの時のようにッ!」

(そういえば、そうだったな。俺はやろうと思えばビャクヤとの契約を無効にできる。しかし、この変態仮面が言う事が本当だったらどうする? まだまだ殺したりねぇぞ)

「生きていれば斬り放題だよッ! キリマルッ!」

「チィー! 糞がッ! 仕方ねえ。他に方法を見つけるまでお前と契約しておいてやる」

「それが賢明だねッ! (どう足掻いても契約を切れば君は消えるッ。よしんば契約を無効にできッ、尚且つ都合よく実体をこの世界に置く事ができてもッ、アッシャー界で悪魔の体を維持するには、膨大なエネルギーが必要だ。ゆえに独立できたとしてもッ! 精々君は一日か二日しか存在できないだろうッ! どの道、君は僕に従い続けるしかないのだよッ!)」

 俺が小さな声でビャクヤと話している間に、聖人君主を気取る白銀の鎧を着た戦士の視線は、ルロロを捉えていた。

「すまないが、そこの白ローブのメイジ殿。フードを取ってはもらえないだろうか?」

 ルロロの体がビクリとする。

「おい、リンネ。あの男は何者だ? なぜルロロの正体を瞬時に見破った?」

「彼らとちょっと話をしたから解ったんだけど、あのパーティのリーダーは、聖騎士を目指しているリッド・セイク君だよ。他のパーティーメンバーも、神殿騎士やら白メイジや僧侶を目指している子ばかりだね」

「対アンデッドの専門家ばかりってわけか。道理で祝福されたメイスを持っているわけだ。でもルロロはアンデッドではないのにどうして奴は気付いた?」

「さぁ?勘じゃないかしら?」

「勘、ねぇ・・・」

 どうもあのリッドって奴の、村人を容易に虜にするカリスマ性や爽やかさを嘘臭く感じるんだわ。

「・・・どうしてですか? どうして私の素顔を見たがるのでしょうか?」

 ルロロも正体をばらしたくないので必死に抵抗する。

「何もやましいところがなければ、フードをおろせるはずだが?」

 リッドがフルヘルムを取ると長い金髪がはらりと落ちて、整った顔に目立つ青い目が、ルロロを睨む。

「私は・・・、顔に火傷を負っていますので・・・」

「嘘だね・・・」

 なんだ? どうしてルロロが嘘をついていると解る? こいつもビャクヤと同じく心を読む魔法を覚えているのか?

 しかし、そうではなかった。リッドは首にかかるチェーンを引っ張ってメダリオンを見せる。

 星が輝く絵の描かれたそれは僅かに赤く光っており、ルロロの近くで掲げるとより一層強く光ったので、それが魔物を見破るアイテムだと誰にでも理解できた。

「これは人ならざる者や、悪魔を察知する先祖代々から伝わる魔法のメダリオンだ。使い魔には反応しない。僕がざっと見渡したところ、村人の中で目深にフードを被っている怪しい者は君しかいなかった。そして君にメダリオンを近づけてみればこの通りだ。この意味が解るね?」

「・・・」

 ルロロは黙っている。俺の隣で、リンネがルロロを庇うべきかどうか迷っているのか慌てふためき、時々俺を見上げている。

 リンネの代わりに俺がしゃしゃり出て、ルロロを庇うか? そうすればリンネに対してのいい点数稼ぎにもなる。

 一応ルロロを庇う大義はあるかどうか、確かめておいたほうがいいな。

「おい、リッチってまだ辛うじて人なんじゃねぇのかよ? ビャクヤ」

 俺はビャクヤに訊くと、何も知らない赤子に物を教えるのは面倒だという反応が返ってきた。

「キリマルはもう少しこの世界の事を勉強した方がいい。学園に帰ったら図書館で本を読みたまえッ! リッチは悪魔に身を売った以上、闇側の者に属するッ! あのメダリオンは反応して当然だッ!」

「さぁ! フードを下したまえ! 白ローブのメイジ殿!」

 リッドの爽やかな顔の眉間に皺が寄り、口調が強くなった。

 ルロロの近くにいた村人たちもササっと離れていく。

 仕方ねぇ。もう少し成り行きを見守るか・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

処理中です...