31 / 299
犯人探し
しおりを挟む
俺たちは寝泊まりした家に戻ろうとしたが、生き返った村人が帰って来るかもしれないので、荷物を取ると宿屋へと向かった。
「あの・・・、ありがとうございます。ビャクヤさん」
今は可愛らしい見た目の樹族は、ビャクヤがあの場を上手く収めてくれた事に感謝している。
「なぁにッ! 罪なきマダムが理不尽な目に遭っていたのですッ! 助けて当然ッ! それにしても咄嗟の出まかせで、あそこまで上手くいくとは思いませんでした!」
「やっぱ嘘ついてたんじゃん」
リンネが不満そうな顔をしてビャクヤを睨んでいる。
「いえ、さっきのお話自体は事実ですよッ! んんん主様! ただ魔法のメダリオンがッ! 樹族を魔物と誤って認識したというお話が嘘なのデスッ! 彼女は正真正銘ッ! 闇の眷属ッ!」
「どういう事かしら?」
エリーが話に加わってきた。
迂闊だねぇ、ビャクヤは。すぐ後ろをエリーとクドウが歩いているんだが?
「えっと・・・」
「その樹族のルロロは、リッチなんだわ」
聞かれたのなら仕方ねえ。俺は隠すことなくルロロの正体を言うと、エリーの前にと音もなくクドウが立ちはだかった。
堀の深い顔に眉根を寄せて、リッチを警戒を表している。主を守ろうとしているのだ。
「リッチは邪なる魔法使いだど・・・。お嬢様は下がっててつかーさい」
慌ててリンネが誤解を解こうとする。
「違うの、クドウ君。見て、彼女は白ローブのメイジで、邪悪なメイジなんかじゃないわよ。ね? ビャクヤ」
「はぁい! 主殿! この大魔法使いビャクヤは幾度となく彼女の心を覗きましたがッ! 邪なる心の欠片すら見つけられませんでしたッ!」
何が大魔法使いだ。覗き魔の変態め。
「聞こえているのだがねッ! キリマルッ!」
へいへい、すんまへん。
「で、そのリッチが何をしに来たのかしら?」
それでもエリーは疑いの眼差しをクロロに向ける。
「リンネさんにもお話しましたが、ゾンビだらけの村があるという話を聞いて、好奇心でこの村に来ました。私はウィザードでもあり、ネクロマンサーでもありますので、そういった出来事に興味があります・・・」
「じゃあゾンビの原因は貴方じゃないの?」
信じられないという態度でエリーは腕を組んだ。まぁリッチは基本的に悪人だし、そういう態度になるわな。
「はい、星のオーガに誓ってッ!」
なんだ、ビャクヤ? 星のオーガってよ。神様の名前か? オーガって種族名だよな? 樹族の神を信仰していないのか?
「思うにエリー様ッ! 誰かがこの状況を事前に作り出したのでは、と吾輩は思うのですッ!」
変態仮面が踊るようにして、エリーの肩の埃を払い横に立つ。
監視を掻い潜っていつの間にか主の横に立つビャクヤに、クドウは驚いたがすぐに冷静になった。ビャクヤは使い魔。学園の生徒に手出しはできないので、心配無用なのだろう。そういう制約があるのだ。
「で、誰が企てを行っているの?」
「・・・」
エリーはビャクヤの考えを待つ。
「恐らくッ! 何かを企む者がッ! この状況を仕立て上げたのではとッ!」
だから犯人は誰だって聞いてんだろうがよ! お前は時々、人の話を全く聞いてねぇな。自称天才。
エリーはビャクヤの頓珍漢さに慣れているのか、スルーして話を続けた。
「考えすぎでしょう。リッチが原因じゃないとなれば、バカな誰かの、迂闊な行動でこうなったんじゃないのかしら? どこかに呪いの原因となった証拠があるはずよ」
本当にそうかねぇ? な~んか、引っかかるんだわ。
「ルロロ曰く、これは魔法の巻物によるものらしい。俺ぁよぉ、あの聖騎士見習いが、怪しいと思うんだわ」
「なぜかしら? 理由は?」
生意気な口をきくメス豚を睨むと、メス豚エリーは最後に小さな声で「ブヒ」と付け加えた。
「勘だよ、勘。根拠なんてねぇ。エリー、お前が行って情報を探ってこい」
「な、なぜ私なのかしら? 【読心】の使えるビャクヤの方がよくってよ? ・・・・ブヒ」
「あのな? ああいった聖人君主を気取る輩は大抵童貞なんだわ。仲間の女も不細工ばかりだったろ。敢えてそういうのを置いて、清い体を貫こうとしてんだよ。だから色仕掛けに弱いに違いねぇ。で、こんなかで一番可愛いのはお前だ。わかったなら、さっさと行って、奴が何を企んでいるのか聞いてこい」
「私(わたくし)が一番可愛いですって?」
エリーはリンネをチラリと見た。その視線には優越感がたっぷりと練り込まれている。俺様の主観で本音を言うとな、お前は可愛い系でリンネが可愛いと美人の間だ。
「ま、まぁ、それは事実ですから仕方がない事だけど・・・・。い、いいでしょう。ちょっと甘い顔をしてあげれば、本心を吐くんでしょう? 簡単なお仕事ですわ!」
「お嬢様ッ! バンガルド家の名に傷がつくかもしれんど! 止めとくだ!」
「お黙りなさい。クドウ。私だって社交界に出れば、こういった駆け引きをしないといけない時がくるのです。その予行演習だといえば、父上も納得してくれるでしょう」
「しかしっ! だったら、おだが! おだが行くだ!」
「あんたみたいな大男が女装するというの? 馬鹿を言わないで」
「ぐむぅ・・・」
クドウは焦るとアホになるんだな。
「ほんとにいいの? エリー様」
リンネは心配そうな顔でエリーを見ている。お前をイジメた相手を心配するなんてお人好しだな。
まぁリンネのドMな性質上、エリーにもっとイジメて欲しいのかもしれねぇな。
「仕方がないでしょう? 私の方が貴方より可愛いのですから。・・・あら? さっきからキリマル様の刀がカタカタと鳴っていますが・・・?」
「なんでもねぇ。早く行け」
アマリが笑ってやがる。ひとしきり、ハ、ハ、ハ、と無感情な声で笑った後に、テレパシーで「私が一番」と言いやがった。何張り合ってんだ?
「それでは行ってきます」
「お嬢様ぁ・・・」
エリーについて行こうとするクドウの服を掴んで止める。
「主様の成長するチャンスを潰す気か? クドウ」
俺は真剣な顔でそう言ったが、内心ではエリーに良からぬことが起きるよう祈っていたりする。殺されるとか、あと殺されるとか。他には・・・。殺されるとか?
「わがった。おではここにいる・・・」
背後で俺の心を読んだビャクヤが、ボソッと呟いた。
「クズのッ! 極みッィ!」
うるせぇ。
「あの・・・、ありがとうございます。ビャクヤさん」
今は可愛らしい見た目の樹族は、ビャクヤがあの場を上手く収めてくれた事に感謝している。
「なぁにッ! 罪なきマダムが理不尽な目に遭っていたのですッ! 助けて当然ッ! それにしても咄嗟の出まかせで、あそこまで上手くいくとは思いませんでした!」
「やっぱ嘘ついてたんじゃん」
リンネが不満そうな顔をしてビャクヤを睨んでいる。
「いえ、さっきのお話自体は事実ですよッ! んんん主様! ただ魔法のメダリオンがッ! 樹族を魔物と誤って認識したというお話が嘘なのデスッ! 彼女は正真正銘ッ! 闇の眷属ッ!」
「どういう事かしら?」
エリーが話に加わってきた。
迂闊だねぇ、ビャクヤは。すぐ後ろをエリーとクドウが歩いているんだが?
「えっと・・・」
「その樹族のルロロは、リッチなんだわ」
聞かれたのなら仕方ねえ。俺は隠すことなくルロロの正体を言うと、エリーの前にと音もなくクドウが立ちはだかった。
堀の深い顔に眉根を寄せて、リッチを警戒を表している。主を守ろうとしているのだ。
「リッチは邪なる魔法使いだど・・・。お嬢様は下がっててつかーさい」
慌ててリンネが誤解を解こうとする。
「違うの、クドウ君。見て、彼女は白ローブのメイジで、邪悪なメイジなんかじゃないわよ。ね? ビャクヤ」
「はぁい! 主殿! この大魔法使いビャクヤは幾度となく彼女の心を覗きましたがッ! 邪なる心の欠片すら見つけられませんでしたッ!」
何が大魔法使いだ。覗き魔の変態め。
「聞こえているのだがねッ! キリマルッ!」
へいへい、すんまへん。
「で、そのリッチが何をしに来たのかしら?」
それでもエリーは疑いの眼差しをクロロに向ける。
「リンネさんにもお話しましたが、ゾンビだらけの村があるという話を聞いて、好奇心でこの村に来ました。私はウィザードでもあり、ネクロマンサーでもありますので、そういった出来事に興味があります・・・」
「じゃあゾンビの原因は貴方じゃないの?」
信じられないという態度でエリーは腕を組んだ。まぁリッチは基本的に悪人だし、そういう態度になるわな。
「はい、星のオーガに誓ってッ!」
なんだ、ビャクヤ? 星のオーガってよ。神様の名前か? オーガって種族名だよな? 樹族の神を信仰していないのか?
「思うにエリー様ッ! 誰かがこの状況を事前に作り出したのでは、と吾輩は思うのですッ!」
変態仮面が踊るようにして、エリーの肩の埃を払い横に立つ。
監視を掻い潜っていつの間にか主の横に立つビャクヤに、クドウは驚いたがすぐに冷静になった。ビャクヤは使い魔。学園の生徒に手出しはできないので、心配無用なのだろう。そういう制約があるのだ。
「で、誰が企てを行っているの?」
「・・・」
エリーはビャクヤの考えを待つ。
「恐らくッ! 何かを企む者がッ! この状況を仕立て上げたのではとッ!」
だから犯人は誰だって聞いてんだろうがよ! お前は時々、人の話を全く聞いてねぇな。自称天才。
エリーはビャクヤの頓珍漢さに慣れているのか、スルーして話を続けた。
「考えすぎでしょう。リッチが原因じゃないとなれば、バカな誰かの、迂闊な行動でこうなったんじゃないのかしら? どこかに呪いの原因となった証拠があるはずよ」
本当にそうかねぇ? な~んか、引っかかるんだわ。
「ルロロ曰く、これは魔法の巻物によるものらしい。俺ぁよぉ、あの聖騎士見習いが、怪しいと思うんだわ」
「なぜかしら? 理由は?」
生意気な口をきくメス豚を睨むと、メス豚エリーは最後に小さな声で「ブヒ」と付け加えた。
「勘だよ、勘。根拠なんてねぇ。エリー、お前が行って情報を探ってこい」
「な、なぜ私なのかしら? 【読心】の使えるビャクヤの方がよくってよ? ・・・・ブヒ」
「あのな? ああいった聖人君主を気取る輩は大抵童貞なんだわ。仲間の女も不細工ばかりだったろ。敢えてそういうのを置いて、清い体を貫こうとしてんだよ。だから色仕掛けに弱いに違いねぇ。で、こんなかで一番可愛いのはお前だ。わかったなら、さっさと行って、奴が何を企んでいるのか聞いてこい」
「私(わたくし)が一番可愛いですって?」
エリーはリンネをチラリと見た。その視線には優越感がたっぷりと練り込まれている。俺様の主観で本音を言うとな、お前は可愛い系でリンネが可愛いと美人の間だ。
「ま、まぁ、それは事実ですから仕方がない事だけど・・・・。い、いいでしょう。ちょっと甘い顔をしてあげれば、本心を吐くんでしょう? 簡単なお仕事ですわ!」
「お嬢様ッ! バンガルド家の名に傷がつくかもしれんど! 止めとくだ!」
「お黙りなさい。クドウ。私だって社交界に出れば、こういった駆け引きをしないといけない時がくるのです。その予行演習だといえば、父上も納得してくれるでしょう」
「しかしっ! だったら、おだが! おだが行くだ!」
「あんたみたいな大男が女装するというの? 馬鹿を言わないで」
「ぐむぅ・・・」
クドウは焦るとアホになるんだな。
「ほんとにいいの? エリー様」
リンネは心配そうな顔でエリーを見ている。お前をイジメた相手を心配するなんてお人好しだな。
まぁリンネのドMな性質上、エリーにもっとイジメて欲しいのかもしれねぇな。
「仕方がないでしょう? 私の方が貴方より可愛いのですから。・・・あら? さっきからキリマル様の刀がカタカタと鳴っていますが・・・?」
「なんでもねぇ。早く行け」
アマリが笑ってやがる。ひとしきり、ハ、ハ、ハ、と無感情な声で笑った後に、テレパシーで「私が一番」と言いやがった。何張り合ってんだ?
「それでは行ってきます」
「お嬢様ぁ・・・」
エリーについて行こうとするクドウの服を掴んで止める。
「主様の成長するチャンスを潰す気か? クドウ」
俺は真剣な顔でそう言ったが、内心ではエリーに良からぬことが起きるよう祈っていたりする。殺されるとか、あと殺されるとか。他には・・・。殺されるとか?
「わがった。おではここにいる・・・」
背後で俺の心を読んだビャクヤが、ボソッと呟いた。
「クズのッ! 極みッィ!」
うるせぇ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
27
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる