殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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カナ

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 闇に揺蕩う俺は、悪魔の力を以てしても、自分の置かれている状況を見通す事ができなかった。

 ただ一つ、俺の目に見えるのは、太陽面爆発を繰り返す大きな球体のみ。照らす対象が俺しかいねぇから、自分の手足がはっきりと見える。

「糞が。体が動かねぇ・・・。ここはどこだと思う? アマリ」

「わからないけど、あの太陽に向かって何かが飛んでいくのが見える。そして私たちも徐々にあれに引き寄せられている」

 俺は太陽を見て、卵子に群がる精子の映像でも見ているような気分になった。太陽に吸い寄せられている青白いのは一体なんだ?

「ここは誰かの体内か? そして俺は精子なのか? だとしたら俺は他の精子を押しのけてでも、あの卵子に向かうべきだが、そんな気は全く起きねぇな。寧ろあの太陽に恐怖を感じる」

「ウフフ。キリマルは想像力豊かで面白い。私たちは精子なんかじゃない。ちゃんと個体として生きている」

 刀身を振るわせて笑うアマリの声を聞いていると、確かに生きていると実感できた。

「しかしなぁ。このままでいると、いずれ俺たちはあの太陽に吸い寄せられて焼かれてお終いだ・・・。さてどうしたものか」

 この闇の中に床があるのだろうか? 誰かがトンと床に着地したような音が聞こえた。

「異物が混入してるでヤンスねぇ。時々いるでヤンスよ、君みたいなのが・・・。ん? んんん?」

 太陽は闇の中にある全てを、光で浮かび上がらせるので、突然現れた何者かの正体は直ぐに分かった。

 眼鏡をかけたゴブリンだ。

 異世界の凶悪な奴等ではなくて、ビャクヤの世界にいる知性がある方だな。ゴブリンは眼鏡をカチャカチャと鳴らしながら近づいてきて、俺の顔をじっくりと見ている。

「よぉ、グルグル眼鏡のゴブリン。ここがどこか教えてくれや」

「なんてことでヤンスか! はぁ・・・。この悪魔も? そうだ! 見なかった事にするでヤンス。地上に戻ったら自分の記憶からすっかり消し去るでヤーンス」

 話が噛み合わねぇな・・・。何の話をしてんだ?

「おい! ここがどこかを教えろと言ってんだよ、俺は!」

「煩いでヤンスねぇ。ここはビヨンド。神域ビヨンド。君のような悪魔が来る場所ではないでヤンス」

「そりゃ神様の住む場所ならそうだろうな。なんで俺はここにいる?」

「その質問は大いなる宇宙の意思にしてほしいでヤンスね。まぁ大体の察しはつくでヤンス。君が大いなる宇宙の理に縛られる者だからでヤーンスよ」

「宇宙の理? 何言ってんだ? そんな事より、俺はどうなる?」

「普通の者ならばこのまま、”記憶の太陽“に取り込まれ、魂をクリアされて転生するでヤンス。しかし、君はそのシステムから外れている特異点。役目を終えるまで太陽に取り込まれる事はないはずでヤンス。だからさっさとここから出て行ってほしいでヤンスねぇ。悪魔と神は、昔から仲が悪いと相場が決まってるでヤンスから」

「神? お前が神だってのか? ゴブリンのくせに? クハハハ!」

「馬鹿にするなでヤンス! こう見えても、君がついさっきまでいた星の神様でヤンスよ! あ~! 気分が悪い。それから今回はうっかりと侵入を許したでヤンスが、次からはその刀はビヨンドには入れないでヤンス。その刀からは神殺しの匂いがするでヤンスから! さぁ! どことなりに消えるでヤンスよ! 邪悪な悪魔め! チンカラホイ!」

 ゴブリンが俺を指さすとあれだけ眩しかった太陽が消えた。

 いや、太陽が消えたわけじゃねぇ。俺の意識がなくなったんだわ。



 
 俺はこれまでの人生で二度、夢精をしたことがある。

 一度目は小六の時だ。夢の中でよくわからない尻の化け物に追いかけられて捕まり、尻の割れ目にある縦に割れた口でチンコを吸われて射精した。

 凄く気持ち良かったのを覚えているが、起きてからは汚れた下着をどうするかで暫く悩んだな。

 二度目は大人になってからだ。友達の家で雑魚寝をしていたら急にきた。

 そん時、俺は酒をしこたま飲んで熟睡していたから、もしかしたら友達の勝則が俺のチンコを吸ってたんじゃねぇかと今でも疑っている。あいつはホモっぽかったしよ。

 そして今、三度目の夢精をした。

「くそが! やっちまった! 今日は早出なのによぉ」

 俺はチンコを洗う為にシャワーを浴びていると、バイトに遅れるのではないかと思って、慌てて上体を起こして股間を確認する。

 が、そこは自分の部屋でもなく森の中で、股間の位置には瞳の中にハートを作って、俺のペニスを咥える女がいた。

 そうだった。ここは異世界だったんだわ。もうバイトに行かなくてもいいし、俺が散発的に殺した糞どもの捜査をする警察の影に怯える必要もない。というか、俺はアッチの世界では警察に撃たれて死んだんだったわ。

「なにやってんだ。アマリ」

「眠っている間に勃起していたから・・・」

 ゴクンと喉を鳴らして精液を飲むアマリの頬は赤い。

「んなもん毎回飲んでたら、腹壊すぞ」

「平気」

 アマリはまだ俺の股間を見ている。

「小さくならない」

「ん? ああ、そうだな。なんでだろうな? なんか夢の中で太陽・・・。いや、卵子と精子の夢でも見てた気がするな。それで俺の性欲が刺激されたのかもな(どういう理屈でだ)」

「だったら毎回その夢を見てほしい」

 アマリは勝手に俺に跨って、股間の上でゆっくりと腰を静めた。

「はぁぁぁ! 気持ちいい・・・。はぁ! ん! ふっ! ふっ!」

 十分に濡れていたせいか、ぐちょぐちょと音を鳴らしてアマリは腰を振る。

 膣が短いせいか、直ぐに子宮口に当たるので深い挿入感は味わえないが、俺は竿の途中に性感帯があるので寧ろ具合がいい。

「お前はほんと、イヤラシイ淫乱雌豚になったなぁ?」

「ご主人様だけの雌豚だもん・・・」

 アマリが少し拗ねた声でそう言う。

「その性欲はマスターベーションを覚えた猿の如しだな、フハハ!」

「私にエッチな事を教えたのはキリマル。それから豚か猿、どっちかにしてほしい」

「まぁお前は猿でも豚でも人間でもないしな。だからこうしてセックスもできるわけだ。お前が人間だったら絶頂の最中に殺しているだろうよ」

 こうやってな。

 俺は長い腕を伸ばしてアマリの首を絞める。しかしアマリは平気な顔をしていた。それどころか、俺の手に頬ずりしながら夢中になって腰を振っている。

「チッ! やっぱ死なねぇか」

 ってか、何で俺らは森の中にいるんだ?

 俺はアマリがイクまでの間に周囲を観察したが、ここはどこにでもありそうな森の中だ。

「んくっ!」

 アマリの体が震えた。今回はイクまでが早かったな。セックスの度に感度が上がっているのか? アマリが男だったら、女から早漏だと馬鹿にされていただろう。

 こいつの絶頂は一回では済まない。一回イクと直ぐに二回目が来るので、それが終わるのを待ってやる。挿入時に軽く一回、腰を振って一回、その後に最後の大波が一回。こいつは一回のセックスで三回イク欲張りさんだ。

「気持ち良かったか?」

「うん、幸せ」

 アマリは俺の上で果てて、ハァハァと息を吐きながら胸にキスをした。

「セックスは好きか?」

「好き。こんな気持ちいい事を毎日しない人間はおかしい。人間は寿命が短い。その中で一番気持ちよくセックスができる時期は更に短い。しないのは損」

「まぁ寿命が短いがゆえに、他にも色々とやらねぇといけない事があるんだわ、人間も」

「勿体ない。でも大好きなキリマルが悪魔で良かった。寿命がないから」

「まじか。俺って寿命がねぇのかよ。いい事聞いたわ。ヒャハハ」
 
 この世界に存在し得る限り俺は人を殺せる・・・。そういや俺は魔法院で暴れていたはずだが、なんでこんな森にいる?

 俺は立ち上がると、愛液まみれの股間をアマリの口で掃除をさせる。

 まだビンビンのイチモツを名残惜しそうに見つめる、ジト目のアマリの額にキスをして下着とズボンを穿いた。

「アマリ。刀に戻れ。俺たちに気付いた誰かがやって来る」

「わかった」

 ボンと煙がたつとアマリが刀に戻った。

 と同時に何者かの攻撃が開始された。

「【貫通の水】!」

 茂みを円形に穿って音もなく、水のビームが飛んでくる。

「キリマル、避けて!」

 アマリの声に反応して俺は刀で魔法を斬るのを止めて、咄嗟に回避行動をとった。

 バク転で回避した水のビームは木を何本も貫通して森の奥に消えていく。

「ひゅ~! 今のは受けてたらヤバかったな。助かったわ、アマリ。時々物理的要素の強い魔法があるからな・・・」

 魔法には魔法要素の強いものとそうでないものがある。今回の水のビームは、ウォーターカッターみたいなもんだ。

 マナで魔法そのものを作り出すのではなく、魔法で物理的な作用を補助しているのだ。なので触媒に大量の水が必要だろう。近くに小川が流れているから、そこから調達しているのだと推測する。

「誰だぁ、ゴラァ! 姿を現せ!」

「悪魔を相手に、姿を現す馬鹿がどこにいるのカナ」

「今さっきまでセックスしてたからよ、随分と殺意は減ってるはずだぜ? 俺は性欲か殺人欲か、だからな。つまり今は賢者モードだってことだ。お前を殺す気はこれっぽっちもねぇんだわ。いいから出てこいよ」

「んな? セセセ、セックスとな? 君はいやらしい悪魔インキュバスなのカナ?」

 カナカナカナカナうるせぇな、お前は。ひぐらしか?或いは語尾に特徴を付けるアニメキャラか!

「俺は今んとこ情報が欲しいんだわ。さっさと出てこい。ここがどこだか教えろ」 

「悪魔の言葉は人を騙すためだけにあるカナ。だから君を信用できないカナ」

「さよか。じゃあお前に用はねぇ。取り敢えず森を出るか、アマリ」

「うん」

「ちょっと待つカナ! その武器はインテリジェンスソードカナ?」

「そうだが、なんだ?」

 俺は魔法で姿を消す何者かを探して、さっきまで匂いのした場所を見る。勿論そこには誰の姿もないが、地面に小さな人影だけがあった。 

「あれは【姿隠し】の魔法」

 アマリがそう教えてくれた。なんだったかな。確か異次元に身を隠す魔法だったか。こちらの攻撃が通じない代わりに、向こうも攻撃ができない。こいつは魔法で攻撃をした後に【姿隠し】を使ったんだな。だから今は攻撃してこない。

「んんん! 駄目カナ! 好奇心には勝てないカナ! インテリジェンスソードを見せてほしいカナ!」

 【姿隠し】の魔法を解除して出てきたのは大きなツインテールの小さな女の子だった。
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