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過去の世界
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小さな女の子は樹族だな。長く垂れ下がったツインテールとは対照的に、水平に張った尖り耳で分かった。冒険者ギルで受付をしているリッチのルロロと同じ種族。しかし、ちょっと肌の緑が濃いか?
ルロロは色白で血管が僅かに緑色をしていた。しかし、この少女は肌自体が新緑のような色してんな。部族が違うとかそんな感じか? 人間でいう白人、アジア人、黒人みたいな感じの差かなのかねぇ?
確か樹族ってのは傲慢で謀略が好きだと誰かが言っていたな。こいつは俺を警戒しているが、俺もこいつを警戒した方が良いのかもしれねぇ。
まぁあれこれ考えても仕方ない。邪魔になったら殺せばいいだけだ。
「か、刀を見せてくれるカナァ?」
悪魔である俺相手に破れかぶれになっているのか、声が無駄に大きい。殺されるかもしれないという恐怖を大声を出す事で紛らわそうとしているんだな。ふひひ。可愛いじゃねぇか。
「その代わり俺たちの欲しい情報は全部よこすんだぜ? お嬢ちゃん」
「お、お嬢ちゃん? こう見えても150歳なんだから! 馬鹿にしないでほしいカナ!」
「うぉ! とんでもねぇババァじゃねぇかよ! 樹族は死に際まで歳を取らないってのは本当だったんだな」
「ババァって言うな~! そこまで耳は垂れさがってないカナ!」
耳? ああ。きっと耳の角度で年齢がバレてしまうんだな? 人間の女の首とか手の皺で年齢がバレるように。
「ほらよ」
俺は鞘の中に納まるアマリを渡した。しかし女は柄を持とうとしたのでストップをかける。
「おっと、待ちな。それは呪いの武器でな。お前ら常人が柄を握ると気が狂うんだ。刀を鞘から引き抜きたいなら俺がやる」
「そそそ、そんな事言って刀を抜いた途端、私を殺す気カナ? 騙されないカナ! 本当は鞘から抜かなくてもいいカナ。鑑定がしたいだけだから」
女は柄を持つのを止めて両手で鞘を掴んでいる。
「さよか。まぁ俺に殺す気があったらお前さんが姿を現した時点で殺しているカナ? おっといけねぇ、クセが移った」
樹族の女はもう人の話を聞いていねぇ。夢中になってアマリを鑑定している。
「ここここここ!」
「なんだ? 鶏か?」
女が突然奇妙な声を上げた。
「どうやってこれを研究所から持ち出したのカナ?」
「は? いやこれはとある森に突き刺さっていたんだが?」
「魔刀天邪鬼はディヴァイン研究所に保管されている、博士専用の刀カナ! 悪魔が持っているって事は・・・。まさか! 反神派が蜂起したのカナ?」
「何の話をしてんだ。博士ってどの博士だ? 俺が知っている博士はアマリが教えてくれたサカモトとかいう博士だがな」
「そうカナ! ハイヤット・ダイクタ・サカモト博士カナ! やっぱりこれは魔刀天邪鬼カナ!」
「ちょっと待て、そのサカモト博士は神話の時代に死んでんだろ。なんで今いるんだ? なぁ? アマリ」
「博士は邪神と相打ちになって虚無の向こう側へと消え去った。私はその場にはいなかったけど研究所のモニターでその様子を見ていた。悲しかった」
「邪神とかお伽話みたいな事言って・・・。下手が嘘カナ。いや、嘘が下手カナ! 悪魔の貴方がこの刀を盗んだのでカナ? 白状するカナ!」
震えながらもワンドを俺に向ける樹族の女は、やはり齢を重ねているせいか肝が据わっている。
「なにかがおかしいカナ。キリマル」
アマリも語尾にカナが付き始めたな。恐るべし、キャラ付けの語尾。
「ああ、確かにおかしいな。今はいつだと聞いても、時代によって呼び名が違うだろうし、聞くだけ無駄だな」
「キリマルもこの世界が、過去の世界だと気付いていたのね」
「まぁな。俺ぁアホじゃねぇんだ。しかしどうやってここに来たのかは全くわからねぇ・・・。魔法院の奴らの罠かなんかで飛ばされたのか? だが、過去や未来を行き来できるのはそう簡単な事ではないだろ。ヤイバのように強力な虚無の魔法か、ビャクヤのリスクの伴う時間移動でもしない限りはな」
俺とアマリの会話を聞いて、カナカナ女は鑑定を止めて話に入ってきた。
「ん? 悪魔は未来から来たのカナ?」
「そうだ、と言ったら信じるのか?」
「えへへ、信じない・・・、カナ」
「じゃあ訊くなよ」
参ったな。俺の予想だとこの世界は何千年も前の―――、まだ博士が生きていた時代だ。
まぁでも・・・。この世界は何でもありなところがあるしな。俺が何かの拍子に過去に来たとしてもおかしくはねぇ。これまた深く考える必要はないのかもな。
「さてどうすっかな。目的もやる事も教えられないまま、世界に放り出される系のゲームをやっている気分だぜ」
ビャクヤたちはどうしてるだろうか? 今頃慌てているか? いや、それはねぇか。あいつからしてみれば、俺は所詮、契約してるだけの悪魔だしな。
「行く当てがないのカナ?」
「まぁな」
「だったら私が素材採取用に、寝泊まりしている小屋に来るといいカナ」
「そりゃあ、ありがてぇが俺は悪魔だぜ? いつお前さんを殺すかわからねぇぞ」
「そんな事にならないように・・・。わわわ私もエッチな事をしてお主の殺人衝動を抑えるカナ!」
「ババァはお断りだ!」
「酷い! 樹族は寿命が長い分、出生率が低いカナ! だから種が絶えないように死ぬ間際まで、子供を産めるようになっているカナ! つまり完全に老化するまで若いって事カナ! 私だってできるもん!」
「因みにした事あるのか?」
「えへへ・・・。ない・・・、カナ」
ババァになるまでセックスした事がないだと! めんどくせぇ! キスしたら子供ができるとか思ってそうだぞ、こいつ。
「わーった、わーった。お前さんは絶対殺さねぇから、変な事を俺にするなよ?」
「それにキリマルの寵愛は私のもの。貴方にはあげない」
アマリが人間の姿をとって俺の腕にしがみつくと、ババァを睨む。睨むといってもいつものジト目だが。
「わ、天邪鬼が人型になったカナ! 凄いカナ! でも人型にはまだなれなかったはずだけど・・・。不思議カナ!」
「そんな事よりも小屋まで案内してくれ。トイレあるか? 俺は糞がしてぇ。そういや名前を言ってなかったな。キリマルだ(村雨 霧丸とは名乗らねぇぞ。もしかしたら契約が成立してしまうかもしれねぇからな)」
「カナ・キムラです。よろしくカナ」
カナは小屋まで先導しようと先を歩いて名乗った。
「なんだか日本人みたいな名前だな(語尾に自分の名前付けているのか、こいつは)」
「日本人? それが誰かは分からないけど、博士に付けてもらったカナ」
「博士とは親しい仲なのか?」
「とんでもない! 尊敬すべき神様カナ! 親しいなんて恐れ多いカナ!」
「博士はスケベだから、女の人からは結構軽蔑されているのに、珍しい」
アマリがさらりと酷い事を言う。
「博士は私たちの親みたいなものカナ。確かにオーガの女の子のお尻を触って、張り飛ばされたりするけど・・・」
「まぁそういう話は小屋で、美味しい料理でも食いながら聞かせてもらいてぇもんだな。あるんだろ? 食い物と酒。あとトイレも」
ウンコしなくてもいい体になりてぇわ。アマリみたいに。アマリは飯を食う事もあるが、食わなくても死んだりはしねぇし。俺も惑星プロメシュームに行って機械の体にしてもらうか。なんつってな。
「勿論! カナは料理が得意カナ! 楽しみにするカナ!」
「ああ、頼むぜ」
俺はグルグル鳴るお腹を擦りながらカナの後をついていった。
ルロロは色白で血管が僅かに緑色をしていた。しかし、この少女は肌自体が新緑のような色してんな。部族が違うとかそんな感じか? 人間でいう白人、アジア人、黒人みたいな感じの差かなのかねぇ?
確か樹族ってのは傲慢で謀略が好きだと誰かが言っていたな。こいつは俺を警戒しているが、俺もこいつを警戒した方が良いのかもしれねぇ。
まぁあれこれ考えても仕方ない。邪魔になったら殺せばいいだけだ。
「か、刀を見せてくれるカナァ?」
悪魔である俺相手に破れかぶれになっているのか、声が無駄に大きい。殺されるかもしれないという恐怖を大声を出す事で紛らわそうとしているんだな。ふひひ。可愛いじゃねぇか。
「その代わり俺たちの欲しい情報は全部よこすんだぜ? お嬢ちゃん」
「お、お嬢ちゃん? こう見えても150歳なんだから! 馬鹿にしないでほしいカナ!」
「うぉ! とんでもねぇババァじゃねぇかよ! 樹族は死に際まで歳を取らないってのは本当だったんだな」
「ババァって言うな~! そこまで耳は垂れさがってないカナ!」
耳? ああ。きっと耳の角度で年齢がバレてしまうんだな? 人間の女の首とか手の皺で年齢がバレるように。
「ほらよ」
俺は鞘の中に納まるアマリを渡した。しかし女は柄を持とうとしたのでストップをかける。
「おっと、待ちな。それは呪いの武器でな。お前ら常人が柄を握ると気が狂うんだ。刀を鞘から引き抜きたいなら俺がやる」
「そそそ、そんな事言って刀を抜いた途端、私を殺す気カナ? 騙されないカナ! 本当は鞘から抜かなくてもいいカナ。鑑定がしたいだけだから」
女は柄を持つのを止めて両手で鞘を掴んでいる。
「さよか。まぁ俺に殺す気があったらお前さんが姿を現した時点で殺しているカナ? おっといけねぇ、クセが移った」
樹族の女はもう人の話を聞いていねぇ。夢中になってアマリを鑑定している。
「ここここここ!」
「なんだ? 鶏か?」
女が突然奇妙な声を上げた。
「どうやってこれを研究所から持ち出したのカナ?」
「は? いやこれはとある森に突き刺さっていたんだが?」
「魔刀天邪鬼はディヴァイン研究所に保管されている、博士専用の刀カナ! 悪魔が持っているって事は・・・。まさか! 反神派が蜂起したのカナ?」
「何の話をしてんだ。博士ってどの博士だ? 俺が知っている博士はアマリが教えてくれたサカモトとかいう博士だがな」
「そうカナ! ハイヤット・ダイクタ・サカモト博士カナ! やっぱりこれは魔刀天邪鬼カナ!」
「ちょっと待て、そのサカモト博士は神話の時代に死んでんだろ。なんで今いるんだ? なぁ? アマリ」
「博士は邪神と相打ちになって虚無の向こう側へと消え去った。私はその場にはいなかったけど研究所のモニターでその様子を見ていた。悲しかった」
「邪神とかお伽話みたいな事言って・・・。下手が嘘カナ。いや、嘘が下手カナ! 悪魔の貴方がこの刀を盗んだのでカナ? 白状するカナ!」
震えながらもワンドを俺に向ける樹族の女は、やはり齢を重ねているせいか肝が据わっている。
「なにかがおかしいカナ。キリマル」
アマリも語尾にカナが付き始めたな。恐るべし、キャラ付けの語尾。
「ああ、確かにおかしいな。今はいつだと聞いても、時代によって呼び名が違うだろうし、聞くだけ無駄だな」
「キリマルもこの世界が、過去の世界だと気付いていたのね」
「まぁな。俺ぁアホじゃねぇんだ。しかしどうやってここに来たのかは全くわからねぇ・・・。魔法院の奴らの罠かなんかで飛ばされたのか? だが、過去や未来を行き来できるのはそう簡単な事ではないだろ。ヤイバのように強力な虚無の魔法か、ビャクヤのリスクの伴う時間移動でもしない限りはな」
俺とアマリの会話を聞いて、カナカナ女は鑑定を止めて話に入ってきた。
「ん? 悪魔は未来から来たのカナ?」
「そうだ、と言ったら信じるのか?」
「えへへ、信じない・・・、カナ」
「じゃあ訊くなよ」
参ったな。俺の予想だとこの世界は何千年も前の―――、まだ博士が生きていた時代だ。
まぁでも・・・。この世界は何でもありなところがあるしな。俺が何かの拍子に過去に来たとしてもおかしくはねぇ。これまた深く考える必要はないのかもな。
「さてどうすっかな。目的もやる事も教えられないまま、世界に放り出される系のゲームをやっている気分だぜ」
ビャクヤたちはどうしてるだろうか? 今頃慌てているか? いや、それはねぇか。あいつからしてみれば、俺は所詮、契約してるだけの悪魔だしな。
「行く当てがないのカナ?」
「まぁな」
「だったら私が素材採取用に、寝泊まりしている小屋に来るといいカナ」
「そりゃあ、ありがてぇが俺は悪魔だぜ? いつお前さんを殺すかわからねぇぞ」
「そんな事にならないように・・・。わわわ私もエッチな事をしてお主の殺人衝動を抑えるカナ!」
「ババァはお断りだ!」
「酷い! 樹族は寿命が長い分、出生率が低いカナ! だから種が絶えないように死ぬ間際まで、子供を産めるようになっているカナ! つまり完全に老化するまで若いって事カナ! 私だってできるもん!」
「因みにした事あるのか?」
「えへへ・・・。ない・・・、カナ」
ババァになるまでセックスした事がないだと! めんどくせぇ! キスしたら子供ができるとか思ってそうだぞ、こいつ。
「わーった、わーった。お前さんは絶対殺さねぇから、変な事を俺にするなよ?」
「それにキリマルの寵愛は私のもの。貴方にはあげない」
アマリが人間の姿をとって俺の腕にしがみつくと、ババァを睨む。睨むといってもいつものジト目だが。
「わ、天邪鬼が人型になったカナ! 凄いカナ! でも人型にはまだなれなかったはずだけど・・・。不思議カナ!」
「そんな事よりも小屋まで案内してくれ。トイレあるか? 俺は糞がしてぇ。そういや名前を言ってなかったな。キリマルだ(村雨 霧丸とは名乗らねぇぞ。もしかしたら契約が成立してしまうかもしれねぇからな)」
「カナ・キムラです。よろしくカナ」
カナは小屋まで先導しようと先を歩いて名乗った。
「なんだか日本人みたいな名前だな(語尾に自分の名前付けているのか、こいつは)」
「日本人? それが誰かは分からないけど、博士に付けてもらったカナ」
「博士とは親しい仲なのか?」
「とんでもない! 尊敬すべき神様カナ! 親しいなんて恐れ多いカナ!」
「博士はスケベだから、女の人からは結構軽蔑されているのに、珍しい」
アマリがさらりと酷い事を言う。
「博士は私たちの親みたいなものカナ。確かにオーガの女の子のお尻を触って、張り飛ばされたりするけど・・・」
「まぁそういう話は小屋で、美味しい料理でも食いながら聞かせてもらいてぇもんだな。あるんだろ? 食い物と酒。あとトイレも」
ウンコしなくてもいい体になりてぇわ。アマリみたいに。アマリは飯を食う事もあるが、食わなくても死んだりはしねぇし。俺も惑星プロメシュームに行って機械の体にしてもらうか。なんつってな。
「勿論! カナは料理が得意カナ! 楽しみにするカナ!」
「ああ、頼むぜ」
俺はグルグル鳴るお腹を擦りながらカナの後をついていった。
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