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宇宙の成り立ち
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銀色の部屋というのはどうも落ち着かない。
ビャクヤはベッドに寝転んで、天井を見つめながらそう思った。
恐らくだが、自分たちは監視されている。部屋の角の天井にあるあの半球体はそういった類の装置なのだろう。あそこから思念を感じる。
なぜ思念を感じるかというと、我が身に【読心】の魔法を常駐させているからだ。
あの装置に意識を集中すると、監視している相手の内心までは読み取れないが、こちらを見ているという意識は感じ取れる。
この人の心を読む魔法は上級者ほど、指定した相手の心を読めるようになる。初心者の場合は、騒音のように周りの人々の声が聞こえてしまうのでコントロールができず、せっかくこの魔法を覚えても使わなくなってしまう者が多い。
しかも人の声が聞こえるというのは色々と厄介で、自分に対する敵意や悪意まで聞こえてしまうのだ。だから早めに特定の相手の声だけが聞こえるように訓練しなければならない。
勿論、初心者メイジではないビャクヤは、この魔法で失敗することはほぼない。
「食事中に常駐させるべきだったッ!」
「なんの話?」
甘えるように自分に寄り添うリンネの頭を撫でながらビャクヤは答える。
「【読心】の魔法だよッ! 主さ・・・、リンネ」
「魔法であの自称神の末裔の心を読もうと思ったの? 神の末裔だと豪語する人なんだし、それなりの実力があるんじゃないかな? 多分、心を読もうとしてもレジストされたと思うよ? それに一晩の宿と食事用意してくれる人を疑うのは良くないよ」
「確かにッ!」
リンネに説得されてウンモスへの警戒を解きリラックスをすると、今まで感じなかった良い匂いに気が付いた。リンネの香水の匂いだ。
貧乏貴族だったリンネはよく自分で材料を集めて香水を作っていた。なんの材料かは知らないが、自然で嫌味のない匂いで、ビャクヤもこの匂いが好きだ。
今まで自称神の末裔のヤモリ人の事ばかり考えていたが、今はリンネと同じベッドに寝ているのだと意識しだし、十七歳の欲望がムクムクと頭をもたげる。
(駄目だぞッ! ビャクヤ! 今は監視されているッ! リンネとそういう事をすればッ! あのヤモリ人の自慰のおかずになってしまうではなかッ! それにッ! リンネの裸を他人に見せたくないッ!)
「ビャクヤぁ・・・」
(うぉっ! 我が主・・・いやっ! リンネが欲情しているように見えるッ!)
なぜか急に顔を上気させて息の荒くなったリンネが、潤んだ目でをして股間を自分の太腿に押し当ててきた。
「どうしたのですッ? 言っておきますが、この部屋は監視されてますよッ!」
「でも・・・。さっきから股間がむずむずして切ないよぉ」
(おかしい。彼女の方から誘ってくるなんてッ!)
「人間族以外の種族にはッ! 処女膜や処女信仰は無いのですがッ! 今やリンネはホムンクルスではなくッ! 本物の人間ッ! すなわち処女なのだからッ! 大事にした方がいいのではッ?」
「そんな事言ったって・・・」
自分の太腿に押し付ける股間はいつの間にか素肌の感触になっており、クチュと湿った音をさせている。
「いつの間に脱いだのかッ!」
「私はビャクヤが思ってるほど清楚じゃないよ。真面目そうな顔してるから皆そう思ってるみたいだけど。毎晩ビャクヤをおかずにしてオナニーもしてるもん」
(うほぉぉぉ! 男としてこんな嬉しい告白はないッ! 好きな人のおかずになっているなんてッ!)
「で、でも吾輩の顔は見えないのに・・・。どんな妄想をしているのですかッ!?」
リンネの腰の動きが激しくなってきた。
「はぁはぁ・・・。だって、ビャクヤの顔を見た事があるキリマルが言ってたもん。ビャクヤの顔はキラキ様より遥かに上だって。見るだけで頭がおかしくなるって。だから私が想像できる、めいいっぱいの美少年が色んなことをしてくる想像をしてアソコを触っているんだよ。・・・ん!」
リンネの体が小刻みに震えた。顔を赤くして眉間に皺をよせ、口は半開きでエクスタシーに到達している。
(あぁぁぁ! なんという地獄かッ! 拷問ッ! まさに生殺しッ! あの監視装置さえなければッ! すぐにでもリンネに覆いかぶさっているのにッ!)
「ビャクヤぁ・・・」
リンネが懇願するようにビャクヤを見て彼の怒張する竿に触れる。
「いけません、リンネッ!」
「お願い・・・、入れて」
「ダメですってッ!」
「何がダメなの?」
ポワンポワンポワンと音が聞こえてきそうなほどの場面転換をして、ビャクヤは目を覚ます。
「はらぁ? 朝?」
自分の顔を心配そうにのぞき込むリンネを見て、ビャクヤは慌てて飛び起きて股間を触る。
(セーフ! 意外と勃起していなかったッ! テントを張っている恥ずかしい姿をリンネに見られずにすんだヨッ!)
そう。若き魔神族は夢を見ていたのだ。淫らなる夢を。
「おはようございマスッ! リンネッ!」
ビャクヤはいつものように上半身だけを右に曲げて挨拶をした。
「おはよう、ビャクヤ」
「はぁ~。あんな夢を見た割になんだか、気分がスッキリしています!」
「あんな夢? ビャクヤは昨日は凄く疲れてフラフラしてたし、ご飯食べて湯あみをしたら、すぐにベッドに入って寝っちゃったもんね」
リンネはウフフと笑ったが、同時に口から異臭がした。
「おわl ぷッ? リンネ様・・・、もとい! リンネの口から生臭い臭いがッ!」
リンネは慌てて口を押える。
「え! そう? あ! ビャクヤが中々起きないから先に朝食を頂いたの! 魚系の料理が多かったからそれでじゃないかな?」
「そうなんですか? じゃあ吾輩もご飯食べてきますかなッ!」
「うん、行ってらっしゃい! 私は部屋で出発の準備してるね?」
「はぁいッ!」
部屋を出ていくビャクヤの背中を見送ってリンネが額の汗を拭く。
「ふー、あぶなかった。バレたら恥ずかしいもんね。・・・だって、私が起きてからずっとビャクヤのあそこカチカチで大変そうだったから・・・。寝ている間にお口でしてあげたなんて言えない・・・。凄い量で飲むの大変だった・・・」
リンネはその時の事を思い出して悶々としながら、リュックの中身を整理しだした。
「やぁ、おそよう。朝食はいつでも出せますよ」
「すみませんッ! 何から何までッ!」
ビャクヤは頭を掻きながら椅子に座るとテーブルに料理が瞬時に出てきた。
紅茶の目玉焼きにサラダにパン。リンネが言うような魚料理など一切出ていないが、寝起きであまり食欲のないビャクヤにとっては、魚料理ですら重く感じる。なので軽食は有難かった。
「いいんですよ。僕は体が弱くて外には出られませんからね。お客さんが来てくれると嬉しいのです。(それがバカップルでも)」
「でもなぜ、ずっとここに留まっているのですか?」
「それは・・・。まぁこれを貴方に話したところでどうこうなるものではないと思いますので、話してもいいかな・・・」
ウンモスはそう言うとホログラムタッチパネルのボタンを押した。
すると食事中のビャクヤの頭の中に映像が浮かぶ。
「おお、頭の片隅に映像が! 食事をしながら映像を見る事ができるなんてッ! 不思議な感じッ!」
「僕の先祖は何十億年も昔に、別の宇宙からやって来たのです」
次元の壁を破って船のようなものが現れる。つるんとした卵のような船だ。
「この宇宙は事前に僕たちの先祖が作った宇宙でね。宇宙の成り立ちをリアルにシミュレートするために作ったのです。特に生命が発生する環境で、知的生命体はどう進化していくかを調べたかったようです」
ビャクヤはあまりのスケールの大きい話に面食らう。映像では二つの星を実験の場に定めたような絵が映っている。
(やはり・・・、この人はマジモノッ!? まぁすべては、この幻を見てから判断しましょう!)
「太陽の周りに二つの似たような星を作って同じような環境なら、同じ様に生き物は進化するのか、というのが目下の観察目標だったのですが・・・。母星で高次元進化法という、人類として次の段階へと進化する法が成立してしまったので、急遽ご先祖様は帰っていきました。しかし、宇宙をこのまま放置できないという事で、デリートするための存在を作っておいたのですが・・・。その存在を・・・、Qと呼びましょうか。その存在Qは、命令に従わずに自分の世界を作って閉じこもってしまいました。で、仕方なく、Qを作った我らの先祖が残り、任務を全うするように呼び掛け続けて、今に至るわけです」
「はぁ? え? 何十億年も? 世代交代をして世界を滅亡へといざなっているのですか?」
「如何にも」
永遠とも思える長い時間をウンモスの一族は細々と生きてきたのと、Qという恐ろしい存在の事をさらっと言った神の末裔にビャクヤの冷汗は止まらなかった。
(もしッ! この話が本当でッ! このウンモスが破壊神の仲間ならばッ! ここでとどめを刺しておかねばならないッ! しかしッ! それで問題は解決するのだろうかッ!)
胸の中で何とも言えない色んな感情が綯交ぜになっているビャクヤに、ウンモスはまだ話を続ける。
「そういえば長い年月の間、一つだけ激しく怒りを覚えた事がありました。別銀河の惑星で自然発生した知的生命体が生まれ、それらが高度な科学文明社会にまで発展し、神気取りでこの星と青い星を、実験の場とした事があったのです。流石の僕もその時は、はらわたが煮えくりかえりました。しかし僕の任務はQに仕事をさせること。なにも手出ししないでいたら、彼らはこの星で面白い実験をして去って行ったのです」
「面白い?」
「ええ、実に興味深い実験を。マナ粒子という粒子をこの星で発生させ、尚且つ次元の壁をあやふやにしていったのです」
「一体なんの為にッ!」
「さぁ、それは僕にもわかりません。アヌンナキたちは後先考えずに行動をする宇宙人ですからね。気まぐれや思い付きで行動する彼らが、これまでよく生き延びてこれたものだと感心すらしています。彼らは中型以上の生物が棲むには中途半端だったこの星と青い星に手を加え、樹族と人間を作ったのです」
「サカモト神が、我らを創造するずっと前の話ですか?」
「勿論。貴方がサカモト神と呼ぶ彼も人間ですし、アヌンナキの創造物と言えます」
「途方もない話で頭がクラクラするッ!」
「でしょうね。ちっぽけな存在である貴方に、真実を語ったところで何も変わらない。だからお話したのですよ」
「はぁ・・・。確かに・・・。この話は心の内に留めておきましょう。墓まで持っていきますッ!」
「それが賢明でしょう。話しても誰も信じようとはしないでしょうし」
「質問、いいですかッ?」
「どうぞ」
「存在Qが活動する兆しはッ! ありますか?」
「ないとも言えるし、あるとも言える」
「我らとしてはできるだけ、貴方にその呼びかけをッ! サボってほしいのですがッ!」
「あはは! そうでしょうね! でもこの話は気にしなくても大丈夫ですよ。多分貴方の生きている間に”彼女“がこの世界に関心を持つとは思えないですし。彼女が全宇宙を破壊するのは千年後、或いは一億年先かもしれません。僕が滅んで呼びかける者がいなくなり、更には全宇宙に知的生命体がいなくなった頃に、重い腰を上げる可能性が高いですから」
「そう願いたいものですッ!」
このウンモスは決して悪人ではない。ただ任務を全うしようとしているだけだ。先祖代々の生まれ持った使命を果たそうとして。
だが彼をこの場で殺せば、もしかしたら未来永劫全宇宙は安泰かもしれない。
殺したところで別手段でウンモスの代わりをする人だか装置だかが同じ事をするかもしれない。
どのみち、善人のビャクヤに彼を殺すという選択肢はなかった。
(もしこの場にキリマルがいれば、彼は容赦なくウンモスを殺していただろうッ! 恐らく話を聞いてすぐに、前触れもなく首を刎ねたはずだッ! 吾輩にもその冷徹さや残酷さがあれば・・・。ああ、もしウンモスの呼びかけに応じた存在Qが、この世界の破壊に興味を持ってしまったなら・・・。吾輩はッ! 全人類に顔向けができないッ!)
キリマルはせめて生きている間、全宇宙が安泰でありますようにと祈って、食事を終える事しかできなかった。
ビャクヤはベッドに寝転んで、天井を見つめながらそう思った。
恐らくだが、自分たちは監視されている。部屋の角の天井にあるあの半球体はそういった類の装置なのだろう。あそこから思念を感じる。
なぜ思念を感じるかというと、我が身に【読心】の魔法を常駐させているからだ。
あの装置に意識を集中すると、監視している相手の内心までは読み取れないが、こちらを見ているという意識は感じ取れる。
この人の心を読む魔法は上級者ほど、指定した相手の心を読めるようになる。初心者の場合は、騒音のように周りの人々の声が聞こえてしまうのでコントロールができず、せっかくこの魔法を覚えても使わなくなってしまう者が多い。
しかも人の声が聞こえるというのは色々と厄介で、自分に対する敵意や悪意まで聞こえてしまうのだ。だから早めに特定の相手の声だけが聞こえるように訓練しなければならない。
勿論、初心者メイジではないビャクヤは、この魔法で失敗することはほぼない。
「食事中に常駐させるべきだったッ!」
「なんの話?」
甘えるように自分に寄り添うリンネの頭を撫でながらビャクヤは答える。
「【読心】の魔法だよッ! 主さ・・・、リンネ」
「魔法であの自称神の末裔の心を読もうと思ったの? 神の末裔だと豪語する人なんだし、それなりの実力があるんじゃないかな? 多分、心を読もうとしてもレジストされたと思うよ? それに一晩の宿と食事用意してくれる人を疑うのは良くないよ」
「確かにッ!」
リンネに説得されてウンモスへの警戒を解きリラックスをすると、今まで感じなかった良い匂いに気が付いた。リンネの香水の匂いだ。
貧乏貴族だったリンネはよく自分で材料を集めて香水を作っていた。なんの材料かは知らないが、自然で嫌味のない匂いで、ビャクヤもこの匂いが好きだ。
今まで自称神の末裔のヤモリ人の事ばかり考えていたが、今はリンネと同じベッドに寝ているのだと意識しだし、十七歳の欲望がムクムクと頭をもたげる。
(駄目だぞッ! ビャクヤ! 今は監視されているッ! リンネとそういう事をすればッ! あのヤモリ人の自慰のおかずになってしまうではなかッ! それにッ! リンネの裸を他人に見せたくないッ!)
「ビャクヤぁ・・・」
(うぉっ! 我が主・・・いやっ! リンネが欲情しているように見えるッ!)
なぜか急に顔を上気させて息の荒くなったリンネが、潤んだ目でをして股間を自分の太腿に押し当ててきた。
「どうしたのですッ? 言っておきますが、この部屋は監視されてますよッ!」
「でも・・・。さっきから股間がむずむずして切ないよぉ」
(おかしい。彼女の方から誘ってくるなんてッ!)
「人間族以外の種族にはッ! 処女膜や処女信仰は無いのですがッ! 今やリンネはホムンクルスではなくッ! 本物の人間ッ! すなわち処女なのだからッ! 大事にした方がいいのではッ?」
「そんな事言ったって・・・」
自分の太腿に押し付ける股間はいつの間にか素肌の感触になっており、クチュと湿った音をさせている。
「いつの間に脱いだのかッ!」
「私はビャクヤが思ってるほど清楚じゃないよ。真面目そうな顔してるから皆そう思ってるみたいだけど。毎晩ビャクヤをおかずにしてオナニーもしてるもん」
(うほぉぉぉ! 男としてこんな嬉しい告白はないッ! 好きな人のおかずになっているなんてッ!)
「で、でも吾輩の顔は見えないのに・・・。どんな妄想をしているのですかッ!?」
リンネの腰の動きが激しくなってきた。
「はぁはぁ・・・。だって、ビャクヤの顔を見た事があるキリマルが言ってたもん。ビャクヤの顔はキラキ様より遥かに上だって。見るだけで頭がおかしくなるって。だから私が想像できる、めいいっぱいの美少年が色んなことをしてくる想像をしてアソコを触っているんだよ。・・・ん!」
リンネの体が小刻みに震えた。顔を赤くして眉間に皺をよせ、口は半開きでエクスタシーに到達している。
(あぁぁぁ! なんという地獄かッ! 拷問ッ! まさに生殺しッ! あの監視装置さえなければッ! すぐにでもリンネに覆いかぶさっているのにッ!)
「ビャクヤぁ・・・」
リンネが懇願するようにビャクヤを見て彼の怒張する竿に触れる。
「いけません、リンネッ!」
「お願い・・・、入れて」
「ダメですってッ!」
「何がダメなの?」
ポワンポワンポワンと音が聞こえてきそうなほどの場面転換をして、ビャクヤは目を覚ます。
「はらぁ? 朝?」
自分の顔を心配そうにのぞき込むリンネを見て、ビャクヤは慌てて飛び起きて股間を触る。
(セーフ! 意外と勃起していなかったッ! テントを張っている恥ずかしい姿をリンネに見られずにすんだヨッ!)
そう。若き魔神族は夢を見ていたのだ。淫らなる夢を。
「おはようございマスッ! リンネッ!」
ビャクヤはいつものように上半身だけを右に曲げて挨拶をした。
「おはよう、ビャクヤ」
「はぁ~。あんな夢を見た割になんだか、気分がスッキリしています!」
「あんな夢? ビャクヤは昨日は凄く疲れてフラフラしてたし、ご飯食べて湯あみをしたら、すぐにベッドに入って寝っちゃったもんね」
リンネはウフフと笑ったが、同時に口から異臭がした。
「おわl ぷッ? リンネ様・・・、もとい! リンネの口から生臭い臭いがッ!」
リンネは慌てて口を押える。
「え! そう? あ! ビャクヤが中々起きないから先に朝食を頂いたの! 魚系の料理が多かったからそれでじゃないかな?」
「そうなんですか? じゃあ吾輩もご飯食べてきますかなッ!」
「うん、行ってらっしゃい! 私は部屋で出発の準備してるね?」
「はぁいッ!」
部屋を出ていくビャクヤの背中を見送ってリンネが額の汗を拭く。
「ふー、あぶなかった。バレたら恥ずかしいもんね。・・・だって、私が起きてからずっとビャクヤのあそこカチカチで大変そうだったから・・・。寝ている間にお口でしてあげたなんて言えない・・・。凄い量で飲むの大変だった・・・」
リンネはその時の事を思い出して悶々としながら、リュックの中身を整理しだした。
「やぁ、おそよう。朝食はいつでも出せますよ」
「すみませんッ! 何から何までッ!」
ビャクヤは頭を掻きながら椅子に座るとテーブルに料理が瞬時に出てきた。
紅茶の目玉焼きにサラダにパン。リンネが言うような魚料理など一切出ていないが、寝起きであまり食欲のないビャクヤにとっては、魚料理ですら重く感じる。なので軽食は有難かった。
「いいんですよ。僕は体が弱くて外には出られませんからね。お客さんが来てくれると嬉しいのです。(それがバカップルでも)」
「でもなぜ、ずっとここに留まっているのですか?」
「それは・・・。まぁこれを貴方に話したところでどうこうなるものではないと思いますので、話してもいいかな・・・」
ウンモスはそう言うとホログラムタッチパネルのボタンを押した。
すると食事中のビャクヤの頭の中に映像が浮かぶ。
「おお、頭の片隅に映像が! 食事をしながら映像を見る事ができるなんてッ! 不思議な感じッ!」
「僕の先祖は何十億年も昔に、別の宇宙からやって来たのです」
次元の壁を破って船のようなものが現れる。つるんとした卵のような船だ。
「この宇宙は事前に僕たちの先祖が作った宇宙でね。宇宙の成り立ちをリアルにシミュレートするために作ったのです。特に生命が発生する環境で、知的生命体はどう進化していくかを調べたかったようです」
ビャクヤはあまりのスケールの大きい話に面食らう。映像では二つの星を実験の場に定めたような絵が映っている。
(やはり・・・、この人はマジモノッ!? まぁすべては、この幻を見てから判断しましょう!)
「太陽の周りに二つの似たような星を作って同じような環境なら、同じ様に生き物は進化するのか、というのが目下の観察目標だったのですが・・・。母星で高次元進化法という、人類として次の段階へと進化する法が成立してしまったので、急遽ご先祖様は帰っていきました。しかし、宇宙をこのまま放置できないという事で、デリートするための存在を作っておいたのですが・・・。その存在を・・・、Qと呼びましょうか。その存在Qは、命令に従わずに自分の世界を作って閉じこもってしまいました。で、仕方なく、Qを作った我らの先祖が残り、任務を全うするように呼び掛け続けて、今に至るわけです」
「はぁ? え? 何十億年も? 世代交代をして世界を滅亡へといざなっているのですか?」
「如何にも」
永遠とも思える長い時間をウンモスの一族は細々と生きてきたのと、Qという恐ろしい存在の事をさらっと言った神の末裔にビャクヤの冷汗は止まらなかった。
(もしッ! この話が本当でッ! このウンモスが破壊神の仲間ならばッ! ここでとどめを刺しておかねばならないッ! しかしッ! それで問題は解決するのだろうかッ!)
胸の中で何とも言えない色んな感情が綯交ぜになっているビャクヤに、ウンモスはまだ話を続ける。
「そういえば長い年月の間、一つだけ激しく怒りを覚えた事がありました。別銀河の惑星で自然発生した知的生命体が生まれ、それらが高度な科学文明社会にまで発展し、神気取りでこの星と青い星を、実験の場とした事があったのです。流石の僕もその時は、はらわたが煮えくりかえりました。しかし僕の任務はQに仕事をさせること。なにも手出ししないでいたら、彼らはこの星で面白い実験をして去って行ったのです」
「面白い?」
「ええ、実に興味深い実験を。マナ粒子という粒子をこの星で発生させ、尚且つ次元の壁をあやふやにしていったのです」
「一体なんの為にッ!」
「さぁ、それは僕にもわかりません。アヌンナキたちは後先考えずに行動をする宇宙人ですからね。気まぐれや思い付きで行動する彼らが、これまでよく生き延びてこれたものだと感心すらしています。彼らは中型以上の生物が棲むには中途半端だったこの星と青い星に手を加え、樹族と人間を作ったのです」
「サカモト神が、我らを創造するずっと前の話ですか?」
「勿論。貴方がサカモト神と呼ぶ彼も人間ですし、アヌンナキの創造物と言えます」
「途方もない話で頭がクラクラするッ!」
「でしょうね。ちっぽけな存在である貴方に、真実を語ったところで何も変わらない。だからお話したのですよ」
「はぁ・・・。確かに・・・。この話は心の内に留めておきましょう。墓まで持っていきますッ!」
「それが賢明でしょう。話しても誰も信じようとはしないでしょうし」
「質問、いいですかッ?」
「どうぞ」
「存在Qが活動する兆しはッ! ありますか?」
「ないとも言えるし、あるとも言える」
「我らとしてはできるだけ、貴方にその呼びかけをッ! サボってほしいのですがッ!」
「あはは! そうでしょうね! でもこの話は気にしなくても大丈夫ですよ。多分貴方の生きている間に”彼女“がこの世界に関心を持つとは思えないですし。彼女が全宇宙を破壊するのは千年後、或いは一億年先かもしれません。僕が滅んで呼びかける者がいなくなり、更には全宇宙に知的生命体がいなくなった頃に、重い腰を上げる可能性が高いですから」
「そう願いたいものですッ!」
このウンモスは決して悪人ではない。ただ任務を全うしようとしているだけだ。先祖代々の生まれ持った使命を果たそうとして。
だが彼をこの場で殺せば、もしかしたら未来永劫全宇宙は安泰かもしれない。
殺したところで別手段でウンモスの代わりをする人だか装置だかが同じ事をするかもしれない。
どのみち、善人のビャクヤに彼を殺すという選択肢はなかった。
(もしこの場にキリマルがいれば、彼は容赦なくウンモスを殺していただろうッ! 恐らく話を聞いてすぐに、前触れもなく首を刎ねたはずだッ! 吾輩にもその冷徹さや残酷さがあれば・・・。ああ、もしウンモスの呼びかけに応じた存在Qが、この世界の破壊に興味を持ってしまったなら・・・。吾輩はッ! 全人類に顔向けができないッ!)
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