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負け惜しみ
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「この頬当ては・・・。宝箱からの拾得物!」
なんて事をあのメイジと司祭が言えば、それはそれで面白いが・・・、そんなこともなく。
彼らが口にした鑑定結果は順当なものだった。
「では私から」
薄い顔のブラックとは全然似ていない、濃い顔をした兄は、顔にかかる白い髪を払ってから咳払いをした。
「前所持者、侍大将。戦闘の後、勝利した虹色の閃光が所持」
基本的に黒ローブのメイジは悪のメイジだ。悪と言っても自己の利益を追求する者をそう呼ぶだけで、実際に悪人とは限らない。
この世界の基準で言えば、自分の名声のために、この星を利用する利己的な未来の科学者ヒジリも、悪人と言えるな。
社会的信用が薄い黒ローブのメイジとはいえ、実力の高い冒険者なのか誰も彼を疑うような素振りを見せなかった。
ブラックに賭けていた男はグッと握りこぶしを作って静かに喜んでいるが、まだシャイナの鑑定結果を聞くまでは大喜びすまいと堪えている。
「タークと同じです」
司祭の女はあっさりとそう言うと自分の座っていたテーブルへと戻っていった。
ブラック・ロックの兄はタークって呼ばれてんのか。まぁ偽名だろうな。
「うぉぉぉぉ!」
賭けに勝った数人の冒険者たちが大喜びしている。賭けた金額の割合で貰える額が変わってくる。なので金貨二枚を賭けた冒険者は大金持ちだ。
「おい、勝った奴は俺たちに奢れよ」
「そうだぞ。勝ち逃げは許さんぞ!」
負けた冒険者がブーブー言う中、愕然とするクサイダマは、ブラックに馴れ馴れしく肩を叩かれていた。
「な? これで解ったろ? 明日から格下のクサイダマ君。これに懲りたらもうモモに手を出すなよ?」
「ああ、俺は手を出さねぇさ。俺はな」
負け惜しみ、負け犬の遠吠え。色々と言い方はあるが、クサイダマはお決まりのパターンを見せてから、唾を吐き捨ててギルドから立ち去っていった。
「俺は黙るが、クランは黙ってねぇってか。いいねぇ」
俺はこの後の展開を大凡予想してほくそ笑み、席に戻ってきたブラックロックに拍手をして褒める事にした。
「俺の名を出すまでもなかったな。よくやった、ブラック。モモも良かったな、これであいつに金をせびられる事はなくなったぞ」
「ああ・・」
ブラックロックは沈んだ顔で頬当てを俺に返す。
「・・・」
やはり臭い骨の復讐を気にしてかモモも元気がない。
「気にするなって。俺がいるだろう?」
「そ、そうだな・・・」
ブラックは座るとお茶を淹れ直して啜る。モモも嫌な事はさっさと忘れたいのか、エールを給仕に注文していた。
「それにしてもレッドとアオは遅いな。もう三十分は経っただろう? ボアタックルだかボッタクリ商店はギルドから歩いて五分もしない場所にあるってのによ」
俺はこの街には詳しくはないので、ブラックの言葉になにも言う事はねぇ。
「鑑定に時間がかかっているのかなぁ? 魔法で鑑定するからすぐなんだけどぉ」
モモがのんびりとした声でそう言った時、悪魔の耳が少し離れた場所で聞き覚えのある呻き声と、足を引きずるような音を拾った。
酒場の喧噪の中で僅かに違和感のある音を拾える自分に驚きながらも、俺はいくつか予想していたシナリオの一つに進んだのだと確信する。
「あ~。あいつらは犯罪に手を染めたな~。いけないなぁ」
「なにがだ?」
イエローは冷めて硬くなったステーキを、何度も噛みながら訊いてくるので、くちゃくちゃと咀嚼音がウザい。
「クランが犯罪に手を染めた場合、どう処罰されるんだ?」
「ん?」
イエローは俺の言いたい事がわからねぇようだが、ウッドペックとブラックは「まさか」と言って顔を見合わせた。
「まぁそういう事だ。さっきの騒ぎの中、賭け事をしないでギルドから出て行った奴が二人いる。ブラックが侍大将の頬当てを見せた時にな」
「クサイダマの仲間が俺の話が本当かどうか、確かめに行ったって事か?」
「だろうな。戦利品は頬当てだけじゃねぇからな。いつも一緒にいるレッドとアオがいないって事は、店に侍大将の装備品を売りに行ったと考えるのが妥当だろうよ」
顔面蒼白になるブラックとウッドペックは椅子から立ち上がってギルドの入り口まで向かうが、俺は立とうとは思わなかった。
なぜならもうギルドのドアの前で、レッドかアオのどっちかが荒い息をして立っているからな。多分アオだ。
ベル付きの扉を開けると―――、ビンゴ!
そこには脚にナイフの刺さったアオが立っていた。
「有り金を全部強盗に奪われて、抵抗したレッドが殺されてしまいました・・・。私は怖くなって透明化の魔法で自分だけ逃げてきたんです! ・・・ごめんなさいぃ!」
うわぁぁと泣き崩れるアオを、ウッドペックが支えてこちらを見ている。
はいはい、わかってますよぉ。事件解決に動けばいいんだろう?
まぁ予想してたがよ・・・。俺がそうなるように仕向けたからな。ならなかったらモモの事で無理やり正義を振りかざして、臭い骨とかいうクランに因縁つけるところだったけどよ。クヒッ! 面白い事になってきたなぁ。
俺はよっこらせと腰を上げると、パーティメンバーと共にレッドが殺された路地裏まで行く事にした。
「さぁレッドの弔い合戦といきますか。臭い骨のアジトはどこだ?」
弔い、と聞いてパーティメンバーが不安そうな顔をする。俺が生き返らせてくれない、或いは蘇生条件の不備でできない、とでも思っているのだろうか。
「勿論レッドは生き返らせるが、街の自警団か警邏中の騎士にレッドの死体を見せてからだ。そうする事で俺たちに被害者のフラグがしっかりと立つからよぉ」
ブラックたちのホッとする顔を見て、俺はクハハと笑って皆の後を歩き出した。
なんて事をあのメイジと司祭が言えば、それはそれで面白いが・・・、そんなこともなく。
彼らが口にした鑑定結果は順当なものだった。
「では私から」
薄い顔のブラックとは全然似ていない、濃い顔をした兄は、顔にかかる白い髪を払ってから咳払いをした。
「前所持者、侍大将。戦闘の後、勝利した虹色の閃光が所持」
基本的に黒ローブのメイジは悪のメイジだ。悪と言っても自己の利益を追求する者をそう呼ぶだけで、実際に悪人とは限らない。
この世界の基準で言えば、自分の名声のために、この星を利用する利己的な未来の科学者ヒジリも、悪人と言えるな。
社会的信用が薄い黒ローブのメイジとはいえ、実力の高い冒険者なのか誰も彼を疑うような素振りを見せなかった。
ブラックに賭けていた男はグッと握りこぶしを作って静かに喜んでいるが、まだシャイナの鑑定結果を聞くまでは大喜びすまいと堪えている。
「タークと同じです」
司祭の女はあっさりとそう言うと自分の座っていたテーブルへと戻っていった。
ブラック・ロックの兄はタークって呼ばれてんのか。まぁ偽名だろうな。
「うぉぉぉぉ!」
賭けに勝った数人の冒険者たちが大喜びしている。賭けた金額の割合で貰える額が変わってくる。なので金貨二枚を賭けた冒険者は大金持ちだ。
「おい、勝った奴は俺たちに奢れよ」
「そうだぞ。勝ち逃げは許さんぞ!」
負けた冒険者がブーブー言う中、愕然とするクサイダマは、ブラックに馴れ馴れしく肩を叩かれていた。
「な? これで解ったろ? 明日から格下のクサイダマ君。これに懲りたらもうモモに手を出すなよ?」
「ああ、俺は手を出さねぇさ。俺はな」
負け惜しみ、負け犬の遠吠え。色々と言い方はあるが、クサイダマはお決まりのパターンを見せてから、唾を吐き捨ててギルドから立ち去っていった。
「俺は黙るが、クランは黙ってねぇってか。いいねぇ」
俺はこの後の展開を大凡予想してほくそ笑み、席に戻ってきたブラックロックに拍手をして褒める事にした。
「俺の名を出すまでもなかったな。よくやった、ブラック。モモも良かったな、これであいつに金をせびられる事はなくなったぞ」
「ああ・・」
ブラックロックは沈んだ顔で頬当てを俺に返す。
「・・・」
やはり臭い骨の復讐を気にしてかモモも元気がない。
「気にするなって。俺がいるだろう?」
「そ、そうだな・・・」
ブラックは座るとお茶を淹れ直して啜る。モモも嫌な事はさっさと忘れたいのか、エールを給仕に注文していた。
「それにしてもレッドとアオは遅いな。もう三十分は経っただろう? ボアタックルだかボッタクリ商店はギルドから歩いて五分もしない場所にあるってのによ」
俺はこの街には詳しくはないので、ブラックの言葉になにも言う事はねぇ。
「鑑定に時間がかかっているのかなぁ? 魔法で鑑定するからすぐなんだけどぉ」
モモがのんびりとした声でそう言った時、悪魔の耳が少し離れた場所で聞き覚えのある呻き声と、足を引きずるような音を拾った。
酒場の喧噪の中で僅かに違和感のある音を拾える自分に驚きながらも、俺はいくつか予想していたシナリオの一つに進んだのだと確信する。
「あ~。あいつらは犯罪に手を染めたな~。いけないなぁ」
「なにがだ?」
イエローは冷めて硬くなったステーキを、何度も噛みながら訊いてくるので、くちゃくちゃと咀嚼音がウザい。
「クランが犯罪に手を染めた場合、どう処罰されるんだ?」
「ん?」
イエローは俺の言いたい事がわからねぇようだが、ウッドペックとブラックは「まさか」と言って顔を見合わせた。
「まぁそういう事だ。さっきの騒ぎの中、賭け事をしないでギルドから出て行った奴が二人いる。ブラックが侍大将の頬当てを見せた時にな」
「クサイダマの仲間が俺の話が本当かどうか、確かめに行ったって事か?」
「だろうな。戦利品は頬当てだけじゃねぇからな。いつも一緒にいるレッドとアオがいないって事は、店に侍大将の装備品を売りに行ったと考えるのが妥当だろうよ」
顔面蒼白になるブラックとウッドペックは椅子から立ち上がってギルドの入り口まで向かうが、俺は立とうとは思わなかった。
なぜならもうギルドのドアの前で、レッドかアオのどっちかが荒い息をして立っているからな。多分アオだ。
ベル付きの扉を開けると―――、ビンゴ!
そこには脚にナイフの刺さったアオが立っていた。
「有り金を全部強盗に奪われて、抵抗したレッドが殺されてしまいました・・・。私は怖くなって透明化の魔法で自分だけ逃げてきたんです! ・・・ごめんなさいぃ!」
うわぁぁと泣き崩れるアオを、ウッドペックが支えてこちらを見ている。
はいはい、わかってますよぉ。事件解決に動けばいいんだろう?
まぁ予想してたがよ・・・。俺がそうなるように仕向けたからな。ならなかったらモモの事で無理やり正義を振りかざして、臭い骨とかいうクランに因縁つけるところだったけどよ。クヒッ! 面白い事になってきたなぁ。
俺はよっこらせと腰を上げると、パーティメンバーと共にレッドが殺された路地裏まで行く事にした。
「さぁレッドの弔い合戦といきますか。臭い骨のアジトはどこだ?」
弔い、と聞いてパーティメンバーが不安そうな顔をする。俺が生き返らせてくれない、或いは蘇生条件の不備でできない、とでも思っているのだろうか。
「勿論レッドは生き返らせるが、街の自警団か警邏中の騎士にレッドの死体を見せてからだ。そうする事で俺たちに被害者のフラグがしっかりと立つからよぉ」
ブラックたちのホッとする顔を見て、俺はクハハと笑って皆の後を歩き出した。
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