殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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ウッドペック

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 キリマルに待っていろと言われて、臭い骨の館の近くで待機する虹色の閃光パーティは、結局塀を乗り越えて中庭へと来ていた。

「いいのか? 外で待ってなくても」

 イエローの言葉にブラックはハエを追い払うような仕草をする。

「いいんだよ! 館から逃げ出てきた冒険者が、誰だったかを後で報告しろなんて、ガキの使いもいいとこだ。俺たちだってやれるところを見せてやらなきゃ、キリマルは今後もずっと似たような扱いをしてくるぞ?」

「とはいえ、忍び込んでどうする? まぁ忍び込むってのも変な話だけどな。表向き冒険者クランの拠点だから、門戸は普通に開かれているし、クランに加わりたいから試験を受けに来たと言えば、誰でも正面からでも堂々と入れる」

「そう。だからここにお前らがいても誰も不思議には思わねぇ。俺以外はな」

 誰かが隠遁スキルを解いて姿を現した。

「チッ! クサイダマ!」

 レッドが怒りを露わにしつつも、今は勝てない相手に歯ぎしりをする。

「やぁレッド。あれ? お前殺されたんじゃなかったか? うちのアサッシンが殺したと報告してたがな。ああ。あれか! 身代わり人形を持ってたのか。よくあんな高価な物買えたな、万年新米なのに」

「うるせぇ! 騎士まで買収しやがって! 少し前までチンピラ集団だったくせに、よくそんな金があったな!」

「ん~、まぁ、お前らはどうせ奴隷として売り飛ばすから教えてやるか。うちのお頭はつい最近能力に目覚めてな。見た相手の情報を知る事ができる能力だ。そいつが今朝何を食べたか、どこで誰と会ったか、何回女を抱いたかと、何だってわかるんだわ。その力で脅して、上の連中を従わせる事だってできる」

「世の中そんなに甘くはねぇ。クアックは危険人物だと判断されて暗殺されるだけだ」

「勿論、普通はそうするだろうなぁ、貴族のレッド君。だから貴族に取り入る金も必要となってくる。まぁ飴と鞭って奴だ。相手の弱みを握りつつ、金を渡して旨味がある事を教える。それにいくら貴族とはいえ、冒険者クランの中でも大規模な“臭い骨”を相手に、戦いを挑むのは正気の沙汰ではないな」

 冒険者を名乗っているものの、貴族の三男坊であるレッドは思う。冒険者というのは実に厄介な相手だと。

 あの手この手、どんな汚い手を使おうとも勝てば良いのだ、と考える者が多い。

 虹色の閃光が中々成長しなかったのも、汚い手を使って勝とうとしないからだ。いつも正面から挑もうとする帰来がある。

「今は上手くいっても、そう長くは持たないぞ。神は常にお前たちの事を見てる。今に天罰が下るだろうさ」

「っていうけどな、神がいてよ、公正な裁きを行っていれば、世の中こんな風にはなっていないはずだろ?」

 そう言ってクサイダマが指を鳴らすと、眠気がレッドたちを襲った。茂みから臭い牙のメイジが睡眠の魔法を放ったのだ。

「ハハハ! こんな初歩の魔法にすら抵抗できねぇとはなぁ。まぁそのまま寝とけや。明日には他の国の奴隷小屋にいるからよ・・・。ん? なんだ? 館が騒がしいな」

 クサイダマは、レッドたちを仲間に任せて館の方へと走った。




 俺は眉毛もねぇし、目は大きいが三白眼で垂れ目だ。鼻も無駄に高い。だがよ、そんな顔でも愛着はあるんだわ。何かのカスがこびり付いた汚いメイスで殴られるのは御免被りたい。

 顔目掛けてスィングされるメイスを俺は見極めて、手を添えて軌道を逸らす。

 突進しつつも攻撃をしてきた戦士は、そのまま流されてよろめいた。

「おっとっと・・・。ノームみたいな技使いやがって。柔術とかいったか? そんなもんで俺は倒せないぞ」

 俺は脚を影縫いで固定されているので、素早く動けねぇ。なのでカウンターや受け流しを狙う事にしたが、初めてにしては上出来だ。

 戦士を援護するように飛んできたレンジャーの矢を刀で撃ち落とし、俺は神速居合斬りで狙撃してくる奴らの一人を真空波で殺した。

「テーブルを盾にして隠れろ。あの斬撃に貫通力はねぇ! だが突きのポーズをとったら回避の準備をしろ! 受けようなんて思うなよ? 奴の穿孔一突きは離れていても、分厚い鎧を余裕で貫通するからな。まぁ連発できないからそこまでビビる必要なないけどよ! クワッ!」

 クアックが皆にアドバイスをすると、冒険者たちは一斉にテーブルを倒してその後ろに隠れた。

「あいつ、厄介だな・・・」

 俺は視界の端で戦士のメイスが爆発するのを確認する。触れた時に爆弾に変えておいたのだ。

 前まで小石程度の大きさの物しか、爆弾に変えられなかったが、今は武器を爆弾に変えられるようになっていた。どうも爆発の手を使いまくったせいか熟練度が上がったらしい。

「ブワッ!」

 戦士は右手が小手ごと砕け散って、手首から大量の血を流して床に倒れた。直ぐに隠遁スキルを解除したスカウトたちが、負傷した戦士をヒーラーのいる場所まで引っ張っていった。

「状況をみて誰が何をすべきか。クアックが指示をしていなくても、上手く連携が取れている。冒険者ってのは実に厄介だねぇ」

 さぁどうする? イキりながら意気揚々と殴り込みに来たはいいが、最早俺はピンチじゃねぇか。

「魔物ってのはよ」

 クアックが隠遁スキルで消えてどこからか喋っている。

「滅茶苦茶強い代わりに弱点があるんだよなぁ。動物系は頭が悪かったり、アンデッドは光魔法や火に弱かったりでな? で、悪魔はよぉ・・・」

 くそが、あれか? あれをするのか? 僧侶はどこだ? どいつもこいつも盗賊みたいな見た目だからわからねぇ。

 俺の足元が光り輝き始めた。やべぇやべぇやべぇ!!

「帰還の祈りに弱いんだわ。この祈りでは悪魔を殺せやしねぇが、魔界や地獄に戻す事はできる。まぁ、そもそも悪魔を完全に殺すのは無理なんだが。クワッ!」

 チィ! こりゃあ今度こそ完全におしまいか? ビャクヤとの繋がりも消えていくような感覚がある。

 光の向こう側でクアックが姿を現した。ニヤニヤと笑ってやがるぜ。糞が。

 クアックの背後の大部屋の入り口には、酒場で見た奴が立ってるな。名前はそう・・・クサイダマ。喉の奥に出来るあれか。たまにご飯粒だと思って噛み砕いてしまって、臭いのなんの・・・。

 消えゆく今、臭い玉の事なんて考えている場合じゃないだろうがよ。現実逃避は焦っている証拠。落ち着け、俺様。

 ん? おいおい、どういう事だ?

 クサイダマに飛び掛かる小さな影を俺は見た。奴は俺にウィンクしているぞ。

 なんであいつがここにいる? 館の外で待てと言ったはずだぞ?

 そう。俺はクサイダマを背後から奇襲する、無表情の地走り族を見ている。

 クサイダマは静かに喉を掻き切られて、その死体は誰にも見つからずに部屋の外まで引きづられていった。

(クハハ! やるじゃねぇか! ウッドペック!)
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