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兄弟の絆
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囲まれても尚、レバシュは冷静さを崩さなかった。いつ獣人の持つ剣が喉を切り裂くか、いつあの鋭い爪が腹を切り裂くかわからねぇのにだ。
いや、すぐにはそうはならねぇか。俺たちはシルビィの強力な魔法の庇護下にいる。
有能な騎士の、練度の高い【物理防壁】は力自慢の象人をもってしても壊れはしない。それを知っているからこそ、レバシュは冷静でいられたのだ。
まぁ、シルビィの助けがなくても何とかしていたのだろうがよ。
「なるべく私の近くから離れない方がいいですわよ?」
レバシュがそう言っている間にも空気が乾いて暑くなってくる。仕掛けなのか、窓とドアの全てが完全に閉まっている事に獣人たちは気が付いていねぇ。
「なんだ・・・? なんか妙に暑くねぇか?」
獣人たちは半透明の壁の向こう側で、ハァハァと口で息をして舌を出し始めた。
「いいのか? 商品が台無しになるぞ?」
シルビィがレバシュに言うも彼女は気にした様子がない。
「また連れてこればいいだけの事です」
「くそ! 肌がヒリヒリするブヒ!」
毛のない豚人(マサヨシではない)が「ブホッ!」と鼻を鳴らす。
「おい! ドレスの女! 何をした?」
トウバが魔法の壁を殴って引っ掻く。
「反抗的過ぎる奴隷は必要ありません。従順でない貴方たちは、売り物にならないから。だから魔法や呪術の触媒にでもなってもらおうと思いまして。獣人の手は【死】の触媒になります。本当は悪魔の手が良いのだけど、貴方たちの手でもそこそこの効果が出ますわ」
「こんな魔法は見た事がない。能力か?」
「そうよ。この広間程度なら乾燥させることができるの。ツィガル帝国の巨人砂漠に行った事はあるかしら? これから、あの砂漠よりも乾燥するのよ」
「おい! 窓とドアを蹴り破れ!」
「無駄よ。砦全体に【固定化】の魔法をかけたから、暫く壊れないし動かないわ。残念だったわね。うふふ」
あ~、こいつもサイコパスかなんかなんだろうな。殺しを楽しんでやがる。同類か。
「仕置き程度で止めるのだろう? レバシュ」
シルビィが甘い考えをレバシュに抱く。
「どうして? 聞かなかったの? 私は彼らを必要としていないわ」
まぁそうだろうな。人殺しってのはな、殺すと決めたら、とことんやるんだわ。歯止めが利かないから際限なく殺す。
「そこまでにしろ、ドレスの女。こいつはお前の仲間だろう?」
ほー。中々賢いじゃねぇか、トウバは。敵を皆殺しにはせずちゃんと駆け引き用にとっておいたのか。
ん? トウバに捕らわれているのは、ステコの腹違いの兄、トメオじゃねぇか。客を楽しませるステージの上で跪かされてはいるが、目はまだ死んじゃいねぇ。落とし子とはいえ流石は元騎士か。
俺はステコの方に視線を送って、顎で広間のステージを指す。
トメオの弟は立ち上がって、人質の顔を確認し表情を強張らせた。
「おい! 今すぐその力を止めろ! レバシュ! あれは私の兄だ! おい!」
「そうはいかないわ。私の能力の弱点を言いたくないけど、一度力を行使して中断すると、次からはここの獣人たちには通用しなくなるの。そういう制約があるからこそ私の能力は強力なのよ。もしこの”敵を乾燥させる力“を止めたら、彼らは一気に私たちを八つ裂きにするでしょうね」
まぁ俺がいる限りそうはならねぇけど、面白そうだし成り行きに任せるか。
「お前はトメオ兄さんがワンドリッターの者だとは知らないのか? 家を追い出されたとはいえ、まだ貴族と繋がりがあるのだぞ!」
多分レバシュを思いとどまらせるブラフだな。ステコの食い下がり方が必死過ぎて嘘だとわかる。
「ここでは素性なんて何の意味もないの。仕事を遂行してお金を貰うか、失敗して死ぬかだけ」
酔っぱらっていたはずのステコの目は、もう濁ってはおらず、涙が浮いていた。
「駄目だ! 俺の兄さんなんだぞ! 一緒に馬駆けもしたし、狩りにも行った! 殺させなんてしないぞ!」
意外と兄思いだな。普段の皮肉ばかり言っているステコからは想像できない。
「じゃあどうするの? 背中から私を魔法で殺す? そうしたら次に死ぬのは貴方よ」
このやり取りをしている間にも、獣人たちは暑さと乾燥で苦しみ始めた。乾燥していないのは、俺たちがいる魔法の壁の中だけだ。
窓やドアを殴って何とか脱出を試みようとするも、失敗に終わって更に獣人達は苦しみだした。そして人質を構っている余裕すら消えた。
皆口を手で押さえてゆっくりと呼吸をしている。体の水分をなるべく外に出さないようにし、乾燥と熱で肺が焼けるのを防いでいる。
しかし、トメオは両手を縛られていてそれができず、皆よりも一層苦しんでいる。
「あぁ! 兄さんが! くそ! どうしたらいい! ガノダ、シルビィ! 教えてくれ! 私は兄を見殺しにしたくはない!」
しかし誰もその手段を知らない。簡単に止める方法はただ一つ、レバシュを殺す事だ。が、俺には彼女を殺すだけの理由がない。理由がないと、未だ繋がりのあるビャクヤの制約が発動するかもしれねぇ。今度制約を破れば、捻れ潰れて死ぬかもな。
なにせ、この奴隷競り場の女主人はただ自分の身を守っているだけなのだから。ゆえにシルビィもガノダも行動しかねている。大義のない俺もな。
今の段階でレバシュが力を使うのを止めれば、獣人たちはすぐに襲い掛かって来るだろう。かといって立ち上がれない程の乾燥状態にすれば、それはもうすぐ死ぬって事だ。
(まぁ誰が死のうが、知ったこっちゃねぇか)
「頼む、誰か。兄さんが・・・。兄さんが・・・。そうだ! 剣士キリマル!」
目を背ける二人を諦めてステコは俺を見つめ、跪き懇願した。
「お前ェは、散々兄を見下していただろ。なんだ急に」
「それは相手に自分を大きく見させる教育を、貴族は受けているからだ。貴族なんてものは、弱みを見せれば食い殺される小魚のようなものだ。相手を出し抜いて泳ぎ続けなければ、あっという間に大きな魚に飲み込まれるか、仲間に啄まれて死ぬのだ」
「ふ~ん。海の中も大変だな。でもなぜそこまでして助けたい? トメオだっていつかは貴族に返り咲いて、お前を苦しめる存在になるかもしれねぇんだぞ?」
「それでもいい。その時はその時だ! 兄さんは僕を唯一弟と呼んでくれた。他の兄弟は私の事をオイ! としか呼ばない。名前すら呼んでくれないのだ! でも兄さんは私をステコと呼んで弟扱いをしてくれた! トメオ兄さんは落とし子だけど・・・。でも私と兄さんの絆は本物だ! 頼むぅ!」
ステコはとうとう俺の脚に縋って泣き始めた。
「絆ねぇ・・・」
安っぽいアニメのように、この俺様がステコの言葉で心が動かされると思うか? お前の兄弟愛など知った事か。アホが。何が絆だ。
俺はステコを蹴って突き放し、刀を構えた。
「無残一閃!」
必殺技名は言っていねぇ。アマリが勝手に言った。手が勝手に動いたんだわ。誰かを殺してぇと。
使用頻度ナンバー1の凪払いが、目の前のレバシュの背中を羊羹のように横に斬って真っ二つにし、そのまま突き抜けて獣人どもを一人残さず斬り殺す。勿論、ステコの兄もな。
「!!」
ステコもガノダもシルビィも、俺がなぜこんなことをしたのか理解できていない。まぁ当然か。アマリの力を知らねぇからな、こいつら。
「キリマル!」
真っ先にメイスを抜いたのはシルビィだった。メイスには光属性の魔法がいつの間に付与されていた。悪魔の俺には有効だぜ。こいつ、俺が悪魔だって事に気が付いてんじゃねぇのか?
「なぜ皆殺しにした!」
メイスを小さく一回転させて小手を狙うシルビィだったが、俺はメイスが振り切られる前に、鞘の先で女騎士の手元を突いて攻撃を阻止した。
「そう激昂するなって、シルビィ。お前もだステコ。ワンドをしまえ。魔法点がゼロなのに、どうやって俺を殺すつもりだ?」
ステコは震える手でワンドを両手で持っている。
「私は! 平民であるお前に跪いて懇願したのだぞ! その見返りがこれか! 魔法はなくとも! このワンドで貴様を突く!」
それで? 細い木の棒で俺の目でも突くつもりか?
「クハハハ! 落ち着けと言ってんだ、お前ら。王の使いである俺が、無駄に人殺しをすると思うか?」
「どういうことだ?」
シルビィが少しだけ構えを解いて俺を見る。
「まず疑いを捨てて、今のうちに獣人の死体を縛っておく事だな」
「なぜだ?」
「いいからそうしろ。時間はあと4分ってとこか?」
シルビィが渋々といった感じで50人ほどの獣人の腕を【捕縛】とは違う魔法の蔓で縛っていく。何の魔法かは知らねぇが多分、土系の魔法だろう。
「言うとおりにしたぞ。さぁどうなる? 言え、キリマル」
まだ疑いの色を赤い瞳に浮かべて、シルビィは俺を睨んでいる。
「疑り深い奴だな。コズミックペン・・・、ゴホン。神が死ぬべきではないと判断した者はじきに蘇る」
過去への干渉は難しい。難しいというより不可能じゃねぇかな。恐らく俺が殺さずとも必ず誰かがこいつらを殺していただろう。それが全員かどうかは知らねぇが。
それをしたのはレバシュかもしれねぇし、戦いに巻き込まれたシルビィ達かもしれねぇ。そして歴史の中で死ぬる運命だった者は生き返らねぇ。
「そんな奇跡が起こせるものか。キリマルは神の僕ではないだろう」
シルビィはそう言ったが、数分後に目を丸くして驚くのだった。
「ふぅ。どうやら制約は干渉してこなかったみたいだな」
俺は一息ついて額の汗を拭った。
いや、すぐにはそうはならねぇか。俺たちはシルビィの強力な魔法の庇護下にいる。
有能な騎士の、練度の高い【物理防壁】は力自慢の象人をもってしても壊れはしない。それを知っているからこそ、レバシュは冷静でいられたのだ。
まぁ、シルビィの助けがなくても何とかしていたのだろうがよ。
「なるべく私の近くから離れない方がいいですわよ?」
レバシュがそう言っている間にも空気が乾いて暑くなってくる。仕掛けなのか、窓とドアの全てが完全に閉まっている事に獣人たちは気が付いていねぇ。
「なんだ・・・? なんか妙に暑くねぇか?」
獣人たちは半透明の壁の向こう側で、ハァハァと口で息をして舌を出し始めた。
「いいのか? 商品が台無しになるぞ?」
シルビィがレバシュに言うも彼女は気にした様子がない。
「また連れてこればいいだけの事です」
「くそ! 肌がヒリヒリするブヒ!」
毛のない豚人(マサヨシではない)が「ブホッ!」と鼻を鳴らす。
「おい! ドレスの女! 何をした?」
トウバが魔法の壁を殴って引っ掻く。
「反抗的過ぎる奴隷は必要ありません。従順でない貴方たちは、売り物にならないから。だから魔法や呪術の触媒にでもなってもらおうと思いまして。獣人の手は【死】の触媒になります。本当は悪魔の手が良いのだけど、貴方たちの手でもそこそこの効果が出ますわ」
「こんな魔法は見た事がない。能力か?」
「そうよ。この広間程度なら乾燥させることができるの。ツィガル帝国の巨人砂漠に行った事はあるかしら? これから、あの砂漠よりも乾燥するのよ」
「おい! 窓とドアを蹴り破れ!」
「無駄よ。砦全体に【固定化】の魔法をかけたから、暫く壊れないし動かないわ。残念だったわね。うふふ」
あ~、こいつもサイコパスかなんかなんだろうな。殺しを楽しんでやがる。同類か。
「仕置き程度で止めるのだろう? レバシュ」
シルビィが甘い考えをレバシュに抱く。
「どうして? 聞かなかったの? 私は彼らを必要としていないわ」
まぁそうだろうな。人殺しってのはな、殺すと決めたら、とことんやるんだわ。歯止めが利かないから際限なく殺す。
「そこまでにしろ、ドレスの女。こいつはお前の仲間だろう?」
ほー。中々賢いじゃねぇか、トウバは。敵を皆殺しにはせずちゃんと駆け引き用にとっておいたのか。
ん? トウバに捕らわれているのは、ステコの腹違いの兄、トメオじゃねぇか。客を楽しませるステージの上で跪かされてはいるが、目はまだ死んじゃいねぇ。落とし子とはいえ流石は元騎士か。
俺はステコの方に視線を送って、顎で広間のステージを指す。
トメオの弟は立ち上がって、人質の顔を確認し表情を強張らせた。
「おい! 今すぐその力を止めろ! レバシュ! あれは私の兄だ! おい!」
「そうはいかないわ。私の能力の弱点を言いたくないけど、一度力を行使して中断すると、次からはここの獣人たちには通用しなくなるの。そういう制約があるからこそ私の能力は強力なのよ。もしこの”敵を乾燥させる力“を止めたら、彼らは一気に私たちを八つ裂きにするでしょうね」
まぁ俺がいる限りそうはならねぇけど、面白そうだし成り行きに任せるか。
「お前はトメオ兄さんがワンドリッターの者だとは知らないのか? 家を追い出されたとはいえ、まだ貴族と繋がりがあるのだぞ!」
多分レバシュを思いとどまらせるブラフだな。ステコの食い下がり方が必死過ぎて嘘だとわかる。
「ここでは素性なんて何の意味もないの。仕事を遂行してお金を貰うか、失敗して死ぬかだけ」
酔っぱらっていたはずのステコの目は、もう濁ってはおらず、涙が浮いていた。
「駄目だ! 俺の兄さんなんだぞ! 一緒に馬駆けもしたし、狩りにも行った! 殺させなんてしないぞ!」
意外と兄思いだな。普段の皮肉ばかり言っているステコからは想像できない。
「じゃあどうするの? 背中から私を魔法で殺す? そうしたら次に死ぬのは貴方よ」
このやり取りをしている間にも、獣人たちは暑さと乾燥で苦しみ始めた。乾燥していないのは、俺たちがいる魔法の壁の中だけだ。
窓やドアを殴って何とか脱出を試みようとするも、失敗に終わって更に獣人達は苦しみだした。そして人質を構っている余裕すら消えた。
皆口を手で押さえてゆっくりと呼吸をしている。体の水分をなるべく外に出さないようにし、乾燥と熱で肺が焼けるのを防いでいる。
しかし、トメオは両手を縛られていてそれができず、皆よりも一層苦しんでいる。
「あぁ! 兄さんが! くそ! どうしたらいい! ガノダ、シルビィ! 教えてくれ! 私は兄を見殺しにしたくはない!」
しかし誰もその手段を知らない。簡単に止める方法はただ一つ、レバシュを殺す事だ。が、俺には彼女を殺すだけの理由がない。理由がないと、未だ繋がりのあるビャクヤの制約が発動するかもしれねぇ。今度制約を破れば、捻れ潰れて死ぬかもな。
なにせ、この奴隷競り場の女主人はただ自分の身を守っているだけなのだから。ゆえにシルビィもガノダも行動しかねている。大義のない俺もな。
今の段階でレバシュが力を使うのを止めれば、獣人たちはすぐに襲い掛かって来るだろう。かといって立ち上がれない程の乾燥状態にすれば、それはもうすぐ死ぬって事だ。
(まぁ誰が死のうが、知ったこっちゃねぇか)
「頼む、誰か。兄さんが・・・。兄さんが・・・。そうだ! 剣士キリマル!」
目を背ける二人を諦めてステコは俺を見つめ、跪き懇願した。
「お前ェは、散々兄を見下していただろ。なんだ急に」
「それは相手に自分を大きく見させる教育を、貴族は受けているからだ。貴族なんてものは、弱みを見せれば食い殺される小魚のようなものだ。相手を出し抜いて泳ぎ続けなければ、あっという間に大きな魚に飲み込まれるか、仲間に啄まれて死ぬのだ」
「ふ~ん。海の中も大変だな。でもなぜそこまでして助けたい? トメオだっていつかは貴族に返り咲いて、お前を苦しめる存在になるかもしれねぇんだぞ?」
「それでもいい。その時はその時だ! 兄さんは僕を唯一弟と呼んでくれた。他の兄弟は私の事をオイ! としか呼ばない。名前すら呼んでくれないのだ! でも兄さんは私をステコと呼んで弟扱いをしてくれた! トメオ兄さんは落とし子だけど・・・。でも私と兄さんの絆は本物だ! 頼むぅ!」
ステコはとうとう俺の脚に縋って泣き始めた。
「絆ねぇ・・・」
安っぽいアニメのように、この俺様がステコの言葉で心が動かされると思うか? お前の兄弟愛など知った事か。アホが。何が絆だ。
俺はステコを蹴って突き放し、刀を構えた。
「無残一閃!」
必殺技名は言っていねぇ。アマリが勝手に言った。手が勝手に動いたんだわ。誰かを殺してぇと。
使用頻度ナンバー1の凪払いが、目の前のレバシュの背中を羊羹のように横に斬って真っ二つにし、そのまま突き抜けて獣人どもを一人残さず斬り殺す。勿論、ステコの兄もな。
「!!」
ステコもガノダもシルビィも、俺がなぜこんなことをしたのか理解できていない。まぁ当然か。アマリの力を知らねぇからな、こいつら。
「キリマル!」
真っ先にメイスを抜いたのはシルビィだった。メイスには光属性の魔法がいつの間に付与されていた。悪魔の俺には有効だぜ。こいつ、俺が悪魔だって事に気が付いてんじゃねぇのか?
「なぜ皆殺しにした!」
メイスを小さく一回転させて小手を狙うシルビィだったが、俺はメイスが振り切られる前に、鞘の先で女騎士の手元を突いて攻撃を阻止した。
「そう激昂するなって、シルビィ。お前もだステコ。ワンドをしまえ。魔法点がゼロなのに、どうやって俺を殺すつもりだ?」
ステコは震える手でワンドを両手で持っている。
「私は! 平民であるお前に跪いて懇願したのだぞ! その見返りがこれか! 魔法はなくとも! このワンドで貴様を突く!」
それで? 細い木の棒で俺の目でも突くつもりか?
「クハハハ! 落ち着けと言ってんだ、お前ら。王の使いである俺が、無駄に人殺しをすると思うか?」
「どういうことだ?」
シルビィが少しだけ構えを解いて俺を見る。
「まず疑いを捨てて、今のうちに獣人の死体を縛っておく事だな」
「なぜだ?」
「いいからそうしろ。時間はあと4分ってとこか?」
シルビィが渋々といった感じで50人ほどの獣人の腕を【捕縛】とは違う魔法の蔓で縛っていく。何の魔法かは知らねぇが多分、土系の魔法だろう。
「言うとおりにしたぞ。さぁどうなる? 言え、キリマル」
まだ疑いの色を赤い瞳に浮かべて、シルビィは俺を睨んでいる。
「疑り深い奴だな。コズミックペン・・・、ゴホン。神が死ぬべきではないと判断した者はじきに蘇る」
過去への干渉は難しい。難しいというより不可能じゃねぇかな。恐らく俺が殺さずとも必ず誰かがこいつらを殺していただろう。それが全員かどうかは知らねぇが。
それをしたのはレバシュかもしれねぇし、戦いに巻き込まれたシルビィ達かもしれねぇ。そして歴史の中で死ぬる運命だった者は生き返らねぇ。
「そんな奇跡が起こせるものか。キリマルは神の僕ではないだろう」
シルビィはそう言ったが、数分後に目を丸くして驚くのだった。
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