殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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なりそこないの味

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「乱技―――、桜花斬!」

「そんな技はない」

 適当な必殺技名を叫ぶと、アマリが即ツッコんだ。

 ただの薙ぎ払いだったが、なりそこないのキマイラは口から横に裂けて二つになった。一応頭に手を置いて爆発させる。これで復活は無理だろうぜ。

 もう一匹を見ると跳躍して体をくの字に折って、口から野太いレーザービームのようなブレスを吐いていた。

 が、ブレスから身を守る魔法があるのか、シルビィの周囲が仄かに光りそれを弾く。

 そしてシルビィの背後からトウバが跳躍して、なりそこないキマイラを爪で引っ掻いた。

 が、キマイラには物理防御魔法が掛かっており、トウバの鋭い攻撃をかすり傷程度に抑えている。後方から援護射撃する坊ちゃん二人の魔法も、簡単にレジストされてダメージは半分しか通らない。

「俺でなければ、そこそこ強い敵との戦いはこんな感じになるのか。攻撃魔法はレジストされて決め手になりにくく、通常攻撃も躱される。なりそこないでこんなに強いなら、ちゃんとしたキマイラはもっと強いのだろうな」

 紙一重の攻防を繰り返すトウバとなりそこないの戦いにイライラしてきた俺は、腰を下ろして左手をまっすぐ伸ばし、右手に持つ刀の照準とする。狙うは勿論、なりそこないキマイラ。

 気合のような何かが溜まったので、息をスッと吐いて必殺技名を叫んだ。

「喰らえ! 穿孔一突き!」

 レイピアで突くようにして刀を突き出すと、刀の先から貫通力の高い剣圧が飛ぶ。

「割と溜め時間が必要な上に、この技はポーズがあまりかっこよくねぇな・・・」

 パンツライオンのこめかみを狙ったつもりだったが、思いの外威力が大きくて、頭が吹き飛んでしまった。

「やべぇ。頭を爆発させるつもりだったのに。しゃあねぇ。足でも吹き飛ばしておくか」

 俺は刀を鞘にしまって、急いでパンツライオンの四本の足を爆発の手で吹き飛ばすと、血がどくどくと流れ出てくる。

「これで良し。ところでコイツの肉は食えるのか? 体がヤギだしいけるだろ? 尻は兎だし」

「食った事ねぇよ。俺らが食われる確率の方が高いからな」

 トウバが額の汗を拭いて、体に傷は無いかを確認しながら答えた。

「そうか」

 俺は内臓を傷つけないように腹を裂いて、臓物を引っ張り出す。ドビシャアと音を立てて内臓が地面に落ちた。そこから先は獣人たちに任せる事にした。

 獣人たちはナイフで器用に毛皮を剥いでいく。そしてあっという間に肉の塊が草の上に並んだ。

「プフーッ。血生臭いねぇ。我々も時々肉を食べるとはいえ、解体がこんなに臭いとは思わなかったよ」

 ガノダが眉間に皺を寄せて肉から離れて座り、干しリンゴを鼻に擦りつけている。

 俺はそんなガノダが毒見に適役だと思った。食いしん坊キャラは胃も丈夫だから(偏見)。

「おい、ガノダ。毒見しろ」

「なんでかね? まさか私がデブで食いしん坊キャラだから、とかじゃなかろうね?」

「その通りだが?」

「君も樹族なら解るだろう。我らは草食寄りの雑種だ。肉はあまり口にしない」

「さよか。じゃあマサヨシ」

 俺は焚火で適当に炙った肉の切り身を枝に刺して、マサヨシに渡す。

「まぁ拙者は死んでも大丈夫ですしね。オフッオフッって、おい!」

 「おい!」と言った口に肉を突っ込む。

「あちっ!」

 と熱々コンニャクを口に突っ込まれた芸人のようにオーバーリアクションをとりつつも、マサヨシは咀嚼する。

「ん? おおお、美味しい! 臭みも何もないですぞ! 肉の旨味と肉汁が、喉でダンスを踊っているようだ! うっまいぞぉぉぉ!」

 頬を両手で押さえて美味しい顔をするマサヨシだったが、獣人はまだ食べようとはしない。毒が回るまで様子を見ているのだ。

「毒なんてないないっつーの。拙者が地球にいる頃に食べた、生産地偽装をしていそうなイベリコ豚は、カメムシのような臭いがしましたし。それに比べたらこれは正真正銘、美味い肉のかほり! ほら、嗅いでみ」

 マサヨシはフハーッと近くのガノダに息を吹きかけた。

「うわ! くさっ! 何かね? ドブ水でも飲んだか? 豚人!」

「飲んでねぇお! 言っときますが、拙者は地球でチミたちよりも贅沢な暮らしをしているのだからね! 失礼な事言わないでくれ!」

 ハハハとシルビィが笑って水袋に入っているワインを一口呷った。

「大袈裟だな、ガノダ。肉を食べたのにドブの臭いがするわけないだろう。どれ、私も嗅いでみようか」

 シルビィが顔を近づけたのでマサヨシは頬を染めて口を細くし、遠慮気味に息を吐いた。

「ふ、ふふーっ。おふっふふーーっ」

 途中で面白くなったのか、マサヨシは笑いだしてしまった。

「くさっ! ドブというか、これはアンデッドの臭いだ!」

 マサヨシの顔から笑みが消え、わかりやすい怒りの表情になる。

「し、しどい! シルビィたんまで!」

「フフフ。冗談だ。ほら、肉を鑑定してやる。そこの坊や。焼いた肉を一枚持ってきてくれ」

 シルビィは犬人の子供に、毒見用の焼いた肉を持ってこさせると【知識の欲】で鑑定し始めた。

「毒はない。怪我の回復と体力の回復が早まる効果があるな。こんなもの、アルケディアで食べたら一口、一銀貨はするぞ」

 鑑定結果を出した途端、獣人たちは一斉に肉を手に取って火で炙り始めた。

 大型な魔物だったので肉は十二分にあるが、中にはまだ切り分けていない腿肉まで切り取って革袋に突っ込む奴までいる。多分干し肉か何かにして持っておくのだろうさ。

「こういう時、道具を持った料理人がいれば良かったのにな」

 俺が味のしない毒見用の肉を食ってそう言うと、ガノダが無限鞄から大きな岩塩を取り出した。

「塩ならあるが、残念ながら大きな岩塩しかない。残念だったね」

「よこせ」

 俺はガノダから岩塩の塊を奪うと、里芋の葉によく似た大きな葉を切り取ってその上に岩塩を置いた。

「シュッ!」

 居合斬りで岩塩を細かく削り砕いて大粒の塩にしていく。アマリはショッパイと文句を言ったが無視だ。

「ほら、獣人ども! 塩があるぞ! 肉にかければ美味しくなる!」

「おお!」

 獣人たちは肉を持って嬉しそうに俺の前に並んだが、俺は面倒なのでガノダに塩を配らせた。

「な、なんで私が給仕のような事をしないといけないのだ」

 ガノタの後ろで無造作に座るシルビィがニヤニヤしている。

「いいではないか。リオンの獣人の食事風景を見れる事なんてないだろう? 彼らの事を少しでも知れば、王子と会った時に話が合うかもしれない。話が合えば説得して連れて帰る可能性が増える」

 あ~、シルビィは酔ってるな。らしくない失敗だ。迂闊にも旅の目的を言ってしまった。勿論、少し離れた場所に立つトウバはそれを聞いた。耳をこっちに向けていたからだ。まぁ樹族の大貴族が、獣人国レオンに来た時点でバレバレか。

 ステコがシルビィに肘付きをして、情報漏洩した事に気付かせる。

「・・・。すまない」

「いいさ。どうせバレるのは時間の問題だったろう。後はトウバがどう出るかだ」

 俺はシルビィに小声でそう言ってトウバを見た。勿論、奴は聞こえなかったフリをしているが、間違いなく情報を得たはずだ。

 今の会話をトウバが聞いたのであれば、俺たちが王子を連れ戻しに来たと考えるだろう。だったら奴はすぐに敵対行動はとらねぇ。平和的な交渉だと思っているからだ。

 だが俺たちの本当の目的を知ったら、是が非でもこちらを殺しにかかるだろう。そう簡単に奴隷解放同盟、あるいは獣人国レオンの切り札を失くすわけにはいけねぇからだ。

 まぁ俺様にとっちゃ、こんなライオン丸、これっぽっちも怖くはねぇが。しかし油断はしない方がいいな。もうレバシュ戦のような展開はこりごりだ。
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