殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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うさちゃんパンツ

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 たった三日。

 たった三日間、竜の尻尾亭にいただけで、ビャクヤとリンネは引く手数多の冒険者となっていた。

 昼間から酒を飲むオーガは、他のパーティにビャクヤとリンネを取られて今日は不貞腐れて休業中だ。

 顔の赤いオーガは仲間のゴブリンシャーマンに管を巻いていた。

「こんななんでもない冒険者ギルドにのメイジが二人もいるなんて奇跡だよな。しかも一人は魔人族だぞ! 頭の良い種族なのに冒険者になるなんてよ。俺の知る限りじゃ魔人族は、高官か魔法関連の生産職になる奴等ばかりだってのに!」

「正規じゃなくてわりぃな。どうした? お前の中でえらくスペルキャスターの評価が上がってるじゃねぇか。今まで散々俺らの事を馬鹿にしてたくせに」

 勿論、この酒場兼冒険者ギルドにもスペルキャスターはいる。オーガの嫌味に他のスペルキャスターたちも顔をしかめた。

 オーガの愚痴をエールと共に飲み込んで、ゴブリンシャーマンも悔しそうにした。

「ヴャーンズ皇帝陛下みたいに、貴族の生まれなら俺らも魔法学校に行けただろうさ。だが、そうじゃあない。貧乏人は才能があっても独学でやるしかねぇんだ」

 ゴブリンシャーマンの泣き言に他のスペルキャスターは頷いているが、オーガにとって泣き言は恥ずべき事なので、鼻の横に皺を寄せて嫌悪の表情を作る。

「ゴブリンは大人しく盗賊か暗殺者でも目指せばよかったんだ。お前は確かバートラの生まれだろ? あそこのゴブリンは生まれつき暗殺者だと聞いたぞ」

「そんなもん、嘘に決まってるだろ。バートラの殆どの奴らはスカウト系の素質はあるが、俺みたいに不器用なのもいる」

「不器用だし、頭もそんな良くねぇだろ。お前にもっと才能が有れば、この国でもスペルキャスターの地位は高かっただろうなぁ」

 オーガのからかいにゴブリンメイジはロングスタッフを手に持って立ち上がったが、別のオーガが止めろと言わんばかりにゴブレットの底をテーブルに叩きつけた。

「喧嘩ばっかりすんなって。お前ら知ってっか? 樹族国とグランデモニウム王国の戦争は立ち消えになったってよ。実質的にグランデモニウム王国の負けなんだけどな。大黒柱の狂王が行方不明になって、王族や貴族も国を捨てて逃げ出したからよ。で、だ。今誰がグランデモニウム王国を統治していると思う? お前らが馬鹿にするスペルキャスターだぞ。オーガメイジのヒジリだ」

「オーガメイジ? 出身はどこだ? 変な名前だな」

「樹族国の元奴隷らしいぞ。それ以外はなにも知られてはいない」

「オーガメイジか。ビャクヤの恋人と同じだな。それにしても魔人族とオーガか・・・。良い未来は見えねぇな」

 話の途中でガチャリとドアが開いてパーティの一団が入ってくる。それを見た冒険者の誰かが口に手を添えて囃し立てる。

「お、龍の尻尾亭の花形様がお帰りだ」

 ビャクヤがパーティーメンバーのオーガやオークたちに肩を叩かれて、褒められながら入ってきた。

「おい! 聞け! お前ら !今日、ビャクヤとリンネは何を倒したと思う?」

 上機嫌のオークが黒いヒレのような物を持っているので、酒場のベテラン冒険者たちは目を丸くした。

「おいおいおい! まさかヒュドラ―を倒したのか?」

「そのまさか! 俺たちが注意を引き付けている間に、ビャクヤとリンネが複合魔法【黒雷】で一撃よ! 俺ァ初めて複合魔法を見たからよ! 腰抜かしてちょっと糞が漏れたぜ!」

 オークはお道化て尻を扇いで、皆に風を送っている。

「グハハハ! さっさと行水してこいや、ボヤード! くせぇくせぇ!」

「その前に報酬だ!」

 オークのボヤードがカウンターに行くと、ヒレを店の主であるオーガに渡した。

 酒場の主は、黒いゴムのようなヒレの先にある毒針を確認すると頷く。

「まさか、水田を荒らしてたのがヒュドラ―とはな。誰だ、ジャイアントイールが荒らしているとか言ってた奴は。ヒュドラ―はリザードマンが嫌がらせで送り込んだのかもな。ビャクヤとリンネがいなけりゃ死人が出てたな、こりゃあ。ほれ、報酬とヒュドラ―のヒレの分を上乗せだ」

 ドチャリと音をさせて、報酬分のコインが入った袋と追加の小袋を置いた。

「おほー! ビャクヤたちが来てから景気がいいわ~! 山分けだ、お前ら」

 ボヤードは皆、均等になるように報酬を仲間に配った。六等分しても三か月は酒場でのんべんだらりとしていられる金額だ。

 酒場の下っ端冒険者が、ボヤードたちの報酬を見て羨ましがる。

「いいな~。俺も早くビャクヤたちと組みてぇぜ」

「身の程を知れ。お前らなんかと組んだら、陣形がすぐに崩れて、二人の詠唱が間に合わねぇだろ」

 先輩冒険者にたしなめられて、新米たちはチェッと拗ねる。

 ビャクヤは新米冒険者から羨望の的になっているとは知らず、その中を歩いて掲示板の依頼表を見た。

「ふむふむ。わぁ! リンネ! 城からの依頼がありますよッ!」

「ほんと?」

 リンネが駆け寄ってビャクヤの腕に抱き着きながら依頼表を見る。

「斥候かぁ・・・。グランデモニウム王国を偵察・・・。私たち向きじゃないかなぁ・・・。でも受けないとヴャーンズ皇帝に出会う取っ掛かりがないもんねぇ」

「まぁ転移魔法でサッと行けるのはいいのですが、その先が・・・」

 混乱しているグランデモニウム王国に入るのは簡単だが、潜んで書類を盗んでくるというようなミッションがあれば、難易度はぐっと上がる。【透明化】で消えても気配で察知する者もいるからだ。

「まぁなんとかなるでしょうッ! 今回は二人だけで行きますかッ!」

「そうね。ゾロゾロ行く任務じゃないし」

 二人の会話に聞き耳を立てる冒険者たちの「あおぉ~」と落胆する声があちこちで漏れ聞こえた。

「次回の依頼は二人だけだってよ。残念だったな、お前ら」

 酒場の主が冒険者たちに笑って、手で散れ散れと合図する。

 ビャクヤはこれまでに得た報酬から、樹族国の金貨に匹敵するチタン硬貨を何枚かカウンターに置いて、酒場の主に言った。

「これで皆に飲めるだけのエールを」

「いいのか? ビャクヤ。こんだけありゃ皆、吐くまで飲めるぜ」

「ええ。どんどん飲んでください。我々は先に休ませてもらいます」

 酒場の主は声を張り上げた。

「今日はビャクヤの奢りだってよ! じゃんじゃん飲め!」

「ヒャッハー!」

 酒樽の前に冒険者たちが、ビアマグを持って並ぶ。

「二人ともよい夜を!」

「エッチし過ぎんなよ。仕事に響くぞ」

 部屋に戻る二人に皆が声を掛ける。大抵は下品な内容だが彼らに悪気はない。闇側の住人は口が悪いのが当たり前なのだ。

「気前がいいね、ビャクヤ」

 階段を上りながらリンネは、大技を使って疲れているビャクヤに言った。

「ええ・・・。何もお人好しでやっているわけではないのです。ツィガル人は気が荒く、すぐにマウント取り合戦をしたがる人達ばかりですが、義理堅い者も多いのです。だから気前良く振る舞えば、後々自分にいい結果となって返ってくるのですよ」

「そうなんだ? 色々考えているんだね。それにしても今日はビャクヤ、ヘトヘトだね。いつも複合魔法でマナの負担が大きい方をやらせてごめんね?」

「何を仰る兎さん。魔人族はマナの回復が早いですから当然ですよ。ただ今日は張り切り過ぎました。マナを籠めすぎてオーバーキルです。危うくヒュドラ―のヒレまで焦がすところでした」

「お疲れ様。後でマッサージしたげるね?」

「マッサージだけ・・・、ですかッ?」

「ハハッ。ごめんね、さっき生理がきちゃったから・・・」

「そうだったのですかッ! 人間族も大変ですねッ! 体調はどうです?」

「私は軽い方だから全然平気。気を遣ってくれてありがとうね、ビャクヤ」

「恋人なんだから当然ですよ」

「その・・・。ムラムラしているなら口でしてあげようか?」

 リンネが頬を赤くして目をそらしながら言うので、その気のなかったビャクヤの股間がふっくらしてくる。

「今日は疲れマラでビンビンですし、お、お願いしましょうか・・・。多分すぐに出してしまうと思いますがッ!」

 本当は今のリンネの表情でマントの下がムクムクとしてきたのだが、ビャクヤは嘘をつく。

「うふふ。私ね、ビャクヤが気持ちいい顔していると・・・」

「おい! さっさと部屋に入れ! いつまでも部屋の前でイチャイチャしてんじゃねぇど!」

 ビャクヤとリンネは、食事を運んできた給仕のオーガにそう言われてびくりとする。

「い、いつの間にッ!」

「飯食ったら食器はドアの前な。シーツをお前らの臭い汁で汚したら、追加で100銅貨もらうかだな!」

 オーガの女はそう言って食事の乗ったトレーをビャクヤに渡して階段を降りていった。

 気まずい雰囲気の中、二人は部屋に入る。

「あ! ビャクヤ、両手が塞がってるね!」

 その気まずい雰囲気を吹き飛ばすような明るい声でそう言って、悪戯っぽく笑うリンネはビャクヤのマントを開いて膨らんだビキニの中からイチモツをとり出して舐め始めた。

「ひゃああ! トレイ落としちゃいますってッ! トレイでリンネの顔が見れないのは残念過ぎるッ! こんなのってないですよぅ! あぁ! 出てしまいますッ! 出てしまいますってばッ!」

 疲れている時のアソコはなぜこうも感じやすいのかと考えながら、ビャクヤは容赦なくリンネの喉奥に精液をぶちまけた。




 キリマルは暗くなった街道脇で野宿をしていたが、獣の気配を感じて皆に警告を出す。

「おい、戦える奴は森側に並べ。森から獣が来るぞ」

 樹族の剣士が獣人よりも察知能力が高いわけないと、誰もがキリマルの言う事を真に受けなかった。

「チッ! 無能の糞どもめ」

 キリマルの警戒に気付いたシルビィも森側に立つ。

 暫くしてから聞こえてくる枯葉を激しく踏む走る音や枝の折れる音で、キリマルの言った事が本当だと獣人たちは気づく。

 そして彼らが陣形を固める前にその魔獣はやって来た。

「グルルル・・・」

「二匹か。なんだこいつら」

 俺はライオンに見える獣を見てトウバに訊く。

「”できそこない“だ。いつもは遺跡の近くにいるんだがよ、今日は遠出してきたみたいだな」

「出来損ないって、なんの出来損ないだ?」

「キマイラだよ。キマイラの群れの中に時々いるんだわ。こういう羽の無いキマイラが」

 キマイラのできそこないは、森と獣人たちの間をウロウロしている。飛び掛かるタイミングを計っているのだ。獣人も弱くはねぇからな。

「なんでケツだけ白いんだ? オムツでも穿いているのか?」

 俺の真剣な質問にシルビィが笑った。

「尻がウサちゃんなんだよ、キリマル。普通はヤギの胴体なんだが、こいつができそこないと言われる由縁はこれだ」

「へぇ。じゃあ奴のウサちゃんパンツを、お前にプレゼントしてやるぜ」

「ああ、それは嬉しいな。一生大事にするよ」

 シルビィは皮肉を言うと自己強化魔法を唱え始めた。
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