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地下下水道守のブーマー
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「だかだ、おではこう言ってやったんだど。豚の尻穴を覗く奴もまた、豚の尻穴から覗かれているってな! そしたら豚はくしゃみした! アスッ! ってな! ドハハハ!」
暗い地下道で鼻水を垂らすオーガは笑う。ビャクヤが灯した魔法の光は、笑うたびに彼の揺れる鼻水を煌めかせている。
「ブハーーッ! アスとアビスをかけているのですね? ツッコミがとても上手い豚だことッ!」
笑いどころが違うのか、ビャクヤの言葉にオーガは真顔になる。
「へ? ツッコミ? 何の話だ? でも面白いだど?」
ブーマーは単純に、豚の尻から顔を出した寄生虫の話をしているのだ。
「面白いッ!」
何か深い真理が隠れていそうな話ではあるなと思いつつも、ビャクヤは禿げたオーガの他愛もない話に腹を抱えて笑った。
ツィガル城の地下下水道を守る役目を皇帝から与えられているオーガは、その役目を果たしていない。
なぜならビャクヤとリンネを城内まで案内しているからだ。
「いいの? ブーマーさんを騙すような事して。なんだか悪いわ」
リンネはブーマーの事を全く知らないわけではない。樹族国の地下書庫でナビに召喚されたオーガが彼なのだ。
頭の悪さでナビを散々手こずらし、最後には役立たずと罵られて城に戻されたお人好しのオーガ。
罪悪感で眉をハの字にするリンネを見ながら、ビャクヤはヒソヒソと返事をする。
「仕方ないでしょう。マサヨシは我々の事を知らないと言っているのですからッ! きっと顔を見れば思い出しますよ!」
「あ゛!!」
ブーマーが突然叫んだので、ビャクヤとリンネは自分たちが侵入者だとバレたのかと思って体を強張らせる。
「あのやどう!」
ブーマーがドスドスと走った先には、土食いトカゲ―――火を吐かないドラゴンと呼ばれている頑強なトカゲがいた。
ずんぐりむっくりとした体形の土食いトカゲは、城の地下の壁に穴を開けて縄張りを広げようとしていたのだ。
「ちょ! ドラゴン並みの皮膚の硬さと力を持ったトカゲですよ! 一人で戦うのは無理ですよ! ブーマーさん!」
頭が悪いと相手の強さを見極められないものなのかと、ビャクヤは諦めてワンドを取り出した。
元々ビャクヤはワンドを持たなくても、同等の効果がある装備を身に着けているのだが、ワンドを構えるメイジたちを見て格好が良いと思うようになり、自分も随分と前からワンドを構えるようになっていた。
―――ドゴン!
打撃音が聞こえた後、ビャクヤは魔法の灯りの向こう側で何が起きているかを想像した。多分ブーマーがやられたのだろう。
しかし、慎重に近づいて、状況を確かめたビャクヤの口から声が漏れ出る。
「ふぁっ?」
ブーマーは拳骨で土食いトカゲの脳天を砕いていたのだ。
「ばかなッ!」
ビャクヤはハゲ散らかしたオーガの怪力に驚く。
ドラゴン並みの防御力を持つ魔物を一撃で倒したのだから、ブーマーの膂力は弱くはない。寧ろ化け物級だ。
イエロードラゴンを一撃で倒したという、伝説の砦の戦士の話は有名だが、彼はそれと同等の力があるとビャクヤは感じた。
「なんでそんなに驚いているの?」
土食いトカゲと戦った事がないリンネが、不思議そうにビャクヤに訊いた。
「そりゃ土食いトカゲがドラゴン並みに強い魔物だからですよ。それなのにッ! 彼は難なく倒したッ! 土食いトカゲはッ! 名前の通り普段は土を食べてじっとしている大人しい魔物なのですが、縄張り意識が強くて、縄張りに入って来た侵入者に対してはッ! 凄く凶暴になるのですッ! あの鋭い爪を御覧なさいッ!」
オケラのように土を掘りやすくなっている手には長い爪が三本ある。オケラと違うのは手首を自由に回転させて相手を突き刺したり切り裂いたりできるという事だ。
「刺さると即死しそうだよね」
「そう、並みの戦士ならば即死。坑道でこの魔物とよく遭遇する屈強なドワーフでさえッ! 踵を返して逃げ出してしまうッ! なのにッ! ブーマーさんはッ! 一撃でッ! 倒しまんしたッ!」
興奮してシュバシュバとポーズをとるビャクヤを無視してリンネは、絶命した土食いトカゲを見ながら黄色い肌のオーガに訊いた。
「ブーマーさんって強いんだね! 土食いトカゲの倒し方ってあるのかな?」
「おでは城にいる誰よりも力持ち。土食いトカゲは頭のてっぺんに穴があいている。昔はそこに目があったと言われているど。そんな所に目があれば女の下着を見放題という助平な目だ。無ぐなってよがった。で、その穴をぶっ叩くと簡単に頭が割れる」
「なんとッ!」
ビャクヤが大袈裟に驚いて両手を広げた。
「土食いトカゲの弱点は、まだ冒険者ギルドにも出回っていないッ! 凄いじゃないですかッ! 貴重な情報を自力で発見するなんてッ!」
動きこそ大袈裟だが、ビャクヤは心の底からブーマーに尊敬の眼差しを向けている。
「そ、そうか? ディヒヒ」
気を良くしたブーマーは頬を赤く染め、鼻の下を擦り、腰にぶら下げている麻袋から何かを取り出した。
「お前はおでを褒めてくでたから、特別にこでをやる」
彼の大きな手の中にあったのは、干からびたドブネズミだった。
「(ほげぇぇぇ! い、要りませんッ! ・・・などと言えるはずもなくッ!)わぁ! これは素敵なプレゼントッ! いいのですか? こんな高価な物ッ! 市場でもこんな大きなドブネズミは売っていませんよッ!」
「ドハッ! ドハッ! いいど。お前といると、おでは楽しい。友達の証だ。お前も友達の証になんかくで」
ビャクヤは悩む。
(きっとこのドブネズミの干物は彼にとって一番の宝物。それに見合う物が何かといえば・・・)
空間に手を突っ込んでビャクヤは無限鞄から、自分へのご褒美用に取っておいたステーキを指先で摘まみ出す。
「おわぁ! 美味そう! そでをおでにくれるのか?」
「ええ、勿論ッ!」
ブーマーはひったくるようにしてステーキをビャクヤの手から取ると、口の中に放り込んだ。
「う、うめぇ! 冷めてるのに肉汁がジュン、ジュワ~って出てくるど!」
「そうでしょうとも(嗚呼、吾輩のオティムポ牛ステーキ・・・)」
「これは何の肉だ?」
大事に大事に咀嚼してごくりと飲み込むと、ブーマーはビャクヤに訊いた。
「それは・・・」
「おチンポの肉だよ」
リンネが下手糞な発音でそう言った。彼女はちゃんとオティムポと言えるが、半々くらいの確率で男性器の名称を言ってしまう。それぐらいニムゲイン人には難しい発音なのだ。
オーガは呆然とし、両膝を下水道の石畳に突いて泣き出した。
「ひどいど! ビャクヤは、おでにおチンチンを食べさせたど! わぁぁ!! 友達なのに!」
ビャクヤは仮面に般若のような表情を映してリンネを睨む。
「ご、ごめんなさい・・・。上手に言えたつもりだったんだけど」
「ブーマー、それはおチンチンではありません。彼女には発音が難しいのです。本当はオティムポ牛のステーキですよ」
「わぁぁ。オチンポォ!」
まだブーマーは泣き喚いている。
「違う違う。オティムポ牛」
「おチンポ牛ィ! どわああぁぁ!」
「違いまんもすッ! リピートッ! アフタッ! ンミーッ! 『オ!』」
「オ!」
ブーマーはビャクヤの口を真似して発音する。
「ティ!」
「ティ」
「ンポ」
「チンポ! うわぁぁぁ!」
禿げ頭を抱えてから喉に指を突っ込んで、食べた肉を吐き出そうとするブーマーを見て悪いと思ったのか、リンネが飴玉を腰のポーチから出して彼に渡す。
「じ、実はドッキリでしたぁ~! ブーマーさんが食べたのは! ドゥルルルルル! ジャーン! 牛の肉でした~!」
「ほんとぉ?」
よく見ると丸くて可愛いオーガの潤んだ瞳がビャクヤを見つめる。
「オーガの神(ヒジリではなく始祖神)に誓ってほんとッ!」
「な~んだ。よぐもやったなぁ! ビャクヤ!」
ブーマーは立ち上がるとニヤリと笑い、飴玉を口に放り込んだ。(ように見えた)
「おでも、仕返しドッキリするど! 飴玉は今、どこにあるでしょ~か」
大きなオーガは、目を斜め上に向けて頬を飴玉で膨らます。が、どう見てもその口の中の飴は舌の先っぽだ。
「く、口の中かな?」
敢えてビャクヤは騙された。
するとブーマーは嬉しそうに手の中の飴を見せつけてくる。
「ざぁ~んねん! ビャクヤはあまり賢くない。ドッキリ成功~! ドハッ! ドハッ! こででお相子だな」
「悔しいッ!」
「ドハハハハ!」
勝ち誇るブーマーは上階に続く階段を一段抜かしで進んでいく。慌てて追いつこうとするビャクヤたちは大きな階段を登るのに必死だ。
「マサヨシはこの先ですか? ブーマーさんッ!」
廊下の脇に立つ鎧お化けのようなガードナイトに怯えながら、ビャクヤは見覚えのある廊下を歩く。
(なぜ近衛兵たちは我らに襲い掛かってこないのだろうかッ! ブーマーさんがいるからか?)
「マサヨシはこの先の大扉の向こうにいる」
「そこは謁見の間なのですがッ!」
「んだ。マサヨシは、昨日帰って来たロロム様と一緒」
助言者であるロロムは多くの時間をいとこの皇帝と過ごす。つまりロロムのお気に入りであるマサヨシも常に皇帝と共にいるのだ。
ビャクヤは手のひらに汗をかく。会うのはこれで二度目となる。そしてあのゴブリンメイジの半円形の目に睨まれると、祖父に睨まれた時のように緊張する。
――――魔法を極めしメイジだからこそわかる彼の実力。
世界に片手ほどしかいない虚無魔法の使い手の一人。能力的には魔法特化種族である魔人族が有利ではあるが、ツィガルのゴブリンメイジ皇帝が、虚無魔法を使えるのは大きなアドバンテージとなる。
(もし皇帝と敵対なんかして戦う事になればッ! 勝てる見込みはブーマーさんの頭の毛ほどに無いッ!)
チョールズ・ヴャーンズという名の小さな皇帝はメイジとしても一流。そして、もっと厄介なものを彼が隠し持っている事をビャクヤは知っている。
(対応策を知っているとはいえッ! その準備はしていないッ! まさかもう一度皇帝の前に出るとは思っていなかったのでッ!)
ビャクヤは動揺を抑えつつ、精神を平坦に保つ努力をしながら、謁見の間の扉が開くのを待った。
暗い地下道で鼻水を垂らすオーガは笑う。ビャクヤが灯した魔法の光は、笑うたびに彼の揺れる鼻水を煌めかせている。
「ブハーーッ! アスとアビスをかけているのですね? ツッコミがとても上手い豚だことッ!」
笑いどころが違うのか、ビャクヤの言葉にオーガは真顔になる。
「へ? ツッコミ? 何の話だ? でも面白いだど?」
ブーマーは単純に、豚の尻から顔を出した寄生虫の話をしているのだ。
「面白いッ!」
何か深い真理が隠れていそうな話ではあるなと思いつつも、ビャクヤは禿げたオーガの他愛もない話に腹を抱えて笑った。
ツィガル城の地下下水道を守る役目を皇帝から与えられているオーガは、その役目を果たしていない。
なぜならビャクヤとリンネを城内まで案内しているからだ。
「いいの? ブーマーさんを騙すような事して。なんだか悪いわ」
リンネはブーマーの事を全く知らないわけではない。樹族国の地下書庫でナビに召喚されたオーガが彼なのだ。
頭の悪さでナビを散々手こずらし、最後には役立たずと罵られて城に戻されたお人好しのオーガ。
罪悪感で眉をハの字にするリンネを見ながら、ビャクヤはヒソヒソと返事をする。
「仕方ないでしょう。マサヨシは我々の事を知らないと言っているのですからッ! きっと顔を見れば思い出しますよ!」
「あ゛!!」
ブーマーが突然叫んだので、ビャクヤとリンネは自分たちが侵入者だとバレたのかと思って体を強張らせる。
「あのやどう!」
ブーマーがドスドスと走った先には、土食いトカゲ―――火を吐かないドラゴンと呼ばれている頑強なトカゲがいた。
ずんぐりむっくりとした体形の土食いトカゲは、城の地下の壁に穴を開けて縄張りを広げようとしていたのだ。
「ちょ! ドラゴン並みの皮膚の硬さと力を持ったトカゲですよ! 一人で戦うのは無理ですよ! ブーマーさん!」
頭が悪いと相手の強さを見極められないものなのかと、ビャクヤは諦めてワンドを取り出した。
元々ビャクヤはワンドを持たなくても、同等の効果がある装備を身に着けているのだが、ワンドを構えるメイジたちを見て格好が良いと思うようになり、自分も随分と前からワンドを構えるようになっていた。
―――ドゴン!
打撃音が聞こえた後、ビャクヤは魔法の灯りの向こう側で何が起きているかを想像した。多分ブーマーがやられたのだろう。
しかし、慎重に近づいて、状況を確かめたビャクヤの口から声が漏れ出る。
「ふぁっ?」
ブーマーは拳骨で土食いトカゲの脳天を砕いていたのだ。
「ばかなッ!」
ビャクヤはハゲ散らかしたオーガの怪力に驚く。
ドラゴン並みの防御力を持つ魔物を一撃で倒したのだから、ブーマーの膂力は弱くはない。寧ろ化け物級だ。
イエロードラゴンを一撃で倒したという、伝説の砦の戦士の話は有名だが、彼はそれと同等の力があるとビャクヤは感じた。
「なんでそんなに驚いているの?」
土食いトカゲと戦った事がないリンネが、不思議そうにビャクヤに訊いた。
「そりゃ土食いトカゲがドラゴン並みに強い魔物だからですよ。それなのにッ! 彼は難なく倒したッ! 土食いトカゲはッ! 名前の通り普段は土を食べてじっとしている大人しい魔物なのですが、縄張り意識が強くて、縄張りに入って来た侵入者に対してはッ! 凄く凶暴になるのですッ! あの鋭い爪を御覧なさいッ!」
オケラのように土を掘りやすくなっている手には長い爪が三本ある。オケラと違うのは手首を自由に回転させて相手を突き刺したり切り裂いたりできるという事だ。
「刺さると即死しそうだよね」
「そう、並みの戦士ならば即死。坑道でこの魔物とよく遭遇する屈強なドワーフでさえッ! 踵を返して逃げ出してしまうッ! なのにッ! ブーマーさんはッ! 一撃でッ! 倒しまんしたッ!」
興奮してシュバシュバとポーズをとるビャクヤを無視してリンネは、絶命した土食いトカゲを見ながら黄色い肌のオーガに訊いた。
「ブーマーさんって強いんだね! 土食いトカゲの倒し方ってあるのかな?」
「おでは城にいる誰よりも力持ち。土食いトカゲは頭のてっぺんに穴があいている。昔はそこに目があったと言われているど。そんな所に目があれば女の下着を見放題という助平な目だ。無ぐなってよがった。で、その穴をぶっ叩くと簡単に頭が割れる」
「なんとッ!」
ビャクヤが大袈裟に驚いて両手を広げた。
「土食いトカゲの弱点は、まだ冒険者ギルドにも出回っていないッ! 凄いじゃないですかッ! 貴重な情報を自力で発見するなんてッ!」
動きこそ大袈裟だが、ビャクヤは心の底からブーマーに尊敬の眼差しを向けている。
「そ、そうか? ディヒヒ」
気を良くしたブーマーは頬を赤く染め、鼻の下を擦り、腰にぶら下げている麻袋から何かを取り出した。
「お前はおでを褒めてくでたから、特別にこでをやる」
彼の大きな手の中にあったのは、干からびたドブネズミだった。
「(ほげぇぇぇ! い、要りませんッ! ・・・などと言えるはずもなくッ!)わぁ! これは素敵なプレゼントッ! いいのですか? こんな高価な物ッ! 市場でもこんな大きなドブネズミは売っていませんよッ!」
「ドハッ! ドハッ! いいど。お前といると、おでは楽しい。友達の証だ。お前も友達の証になんかくで」
ビャクヤは悩む。
(きっとこのドブネズミの干物は彼にとって一番の宝物。それに見合う物が何かといえば・・・)
空間に手を突っ込んでビャクヤは無限鞄から、自分へのご褒美用に取っておいたステーキを指先で摘まみ出す。
「おわぁ! 美味そう! そでをおでにくれるのか?」
「ええ、勿論ッ!」
ブーマーはひったくるようにしてステーキをビャクヤの手から取ると、口の中に放り込んだ。
「う、うめぇ! 冷めてるのに肉汁がジュン、ジュワ~って出てくるど!」
「そうでしょうとも(嗚呼、吾輩のオティムポ牛ステーキ・・・)」
「これは何の肉だ?」
大事に大事に咀嚼してごくりと飲み込むと、ブーマーはビャクヤに訊いた。
「それは・・・」
「おチンポの肉だよ」
リンネが下手糞な発音でそう言った。彼女はちゃんとオティムポと言えるが、半々くらいの確率で男性器の名称を言ってしまう。それぐらいニムゲイン人には難しい発音なのだ。
オーガは呆然とし、両膝を下水道の石畳に突いて泣き出した。
「ひどいど! ビャクヤは、おでにおチンチンを食べさせたど! わぁぁ!! 友達なのに!」
ビャクヤは仮面に般若のような表情を映してリンネを睨む。
「ご、ごめんなさい・・・。上手に言えたつもりだったんだけど」
「ブーマー、それはおチンチンではありません。彼女には発音が難しいのです。本当はオティムポ牛のステーキですよ」
「わぁぁ。オチンポォ!」
まだブーマーは泣き喚いている。
「違う違う。オティムポ牛」
「おチンポ牛ィ! どわああぁぁ!」
「違いまんもすッ! リピートッ! アフタッ! ンミーッ! 『オ!』」
「オ!」
ブーマーはビャクヤの口を真似して発音する。
「ティ!」
「ティ」
「ンポ」
「チンポ! うわぁぁぁ!」
禿げ頭を抱えてから喉に指を突っ込んで、食べた肉を吐き出そうとするブーマーを見て悪いと思ったのか、リンネが飴玉を腰のポーチから出して彼に渡す。
「じ、実はドッキリでしたぁ~! ブーマーさんが食べたのは! ドゥルルルルル! ジャーン! 牛の肉でした~!」
「ほんとぉ?」
よく見ると丸くて可愛いオーガの潤んだ瞳がビャクヤを見つめる。
「オーガの神(ヒジリではなく始祖神)に誓ってほんとッ!」
「な~んだ。よぐもやったなぁ! ビャクヤ!」
ブーマーは立ち上がるとニヤリと笑い、飴玉を口に放り込んだ。(ように見えた)
「おでも、仕返しドッキリするど! 飴玉は今、どこにあるでしょ~か」
大きなオーガは、目を斜め上に向けて頬を飴玉で膨らます。が、どう見てもその口の中の飴は舌の先っぽだ。
「く、口の中かな?」
敢えてビャクヤは騙された。
するとブーマーは嬉しそうに手の中の飴を見せつけてくる。
「ざぁ~んねん! ビャクヤはあまり賢くない。ドッキリ成功~! ドハッ! ドハッ! こででお相子だな」
「悔しいッ!」
「ドハハハハ!」
勝ち誇るブーマーは上階に続く階段を一段抜かしで進んでいく。慌てて追いつこうとするビャクヤたちは大きな階段を登るのに必死だ。
「マサヨシはこの先ですか? ブーマーさんッ!」
廊下の脇に立つ鎧お化けのようなガードナイトに怯えながら、ビャクヤは見覚えのある廊下を歩く。
(なぜ近衛兵たちは我らに襲い掛かってこないのだろうかッ! ブーマーさんがいるからか?)
「マサヨシはこの先の大扉の向こうにいる」
「そこは謁見の間なのですがッ!」
「んだ。マサヨシは、昨日帰って来たロロム様と一緒」
助言者であるロロムは多くの時間をいとこの皇帝と過ごす。つまりロロムのお気に入りであるマサヨシも常に皇帝と共にいるのだ。
ビャクヤは手のひらに汗をかく。会うのはこれで二度目となる。そしてあのゴブリンメイジの半円形の目に睨まれると、祖父に睨まれた時のように緊張する。
――――魔法を極めしメイジだからこそわかる彼の実力。
世界に片手ほどしかいない虚無魔法の使い手の一人。能力的には魔法特化種族である魔人族が有利ではあるが、ツィガルのゴブリンメイジ皇帝が、虚無魔法を使えるのは大きなアドバンテージとなる。
(もし皇帝と敵対なんかして戦う事になればッ! 勝てる見込みはブーマーさんの頭の毛ほどに無いッ!)
チョールズ・ヴャーンズという名の小さな皇帝はメイジとしても一流。そして、もっと厄介なものを彼が隠し持っている事をビャクヤは知っている。
(対応策を知っているとはいえッ! その準備はしていないッ! まさかもう一度皇帝の前に出るとは思っていなかったのでッ!)
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