殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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ビャクヤの呼び声

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 麻痺毒クッキーなんかで悪魔の体は痺れたりしないが、俺は獅子人の攻撃を敢えて受ける。剣、爪、牙、格闘術。あらゆる攻撃が休みなく続き、その連撃の一つだけでも普通の人間なら死んでいる。

 だが成長とともに増えた俺の生命点が、戦士の必殺技に耐えきった。

「うごぉ! げふぅ! こはぁ!」

 吹き飛んで集会所の木の壁にぶつかって、俺は重力によって床に叩きつけられる。

「げふぉっ!」

 そして一応、戦闘不能のようなフリをしてみる。フリをしてみたものの、流石に頭がクラクラするな・・・。

 そんな俺にオビオが近づいてきた。

「これで少しは他人の痛みや恐怖が解ったか? キリマル・・・」

 トウスではなく、お前が勝ち誇るのかよ。

「へへへ・・・。わかんねぇな・・・。人なんてもんはよぉ、殺してナンボだろうが。虫を殺すのと何が違うんだ。ゴフッ!」

 ゴフッ! は痰がからんだだけだ。

「最後までどうしようもない奴だったな。俺を騙して、多くの人を殺して・・・クソッ!」

 だから厚かましいつってんだ。お前ごときに何ができるってんだ。この場の全ての責任を追う義務が料理人にあるわけねぇだろうが!

「俺はよぉ、オビオ・・・。呪われてんだわ・・・」

 ゴボゴボと痰がからむ。演技の途中じゃなければ、カーペッ! と吐いているが、今は痰が下手な演技を誤魔化してくれている。

「死んでも別世界で生き返る呪いでよぉ、何度でも蘇るけど死に際の苦痛も同じ数だけ味わうんだ・・・」

 まぁ嘘なんだけどよ。これは俺ではなくマサヨシのチート能力の話だ。

 俺はコズミックペンの意向に、逆らえているかどうかの結果を待ってんだわ。だから少々時間稼ぎさせてもらうぜ。

「だったら・・・」

 悔しそうな顔をするオビオの声を遮って、頭に聞き覚えのある声が響いた。

 ――――キリマルッ!

 ビャクヤの涙声。

 親を呼ぶ子猫のような可愛い声だ。どうやら俺はペンの機嫌を損ねたか、あるいはあの変態仮面が強引に俺を引き寄せているのか。我が子孫の思念が頭に流れ込んでくるような気がした。

 今、ビャクヤとの強い一体感を感じる。これまでにない、なにか熱い一体感を。

 絆を伴う風・・・? なんだろう。吹いてきてる・・・。確実に、着実に、俺のほうに。(カバオ)

 ビャクヤは確かに俺を必要としているんだわ。その強い思いと呼びかけは、しっかりと交わされた契約に等しい。

 あいつは自分の信じる神ではなく、悪魔の俺を頼った! ウィン家の始祖である俺の力を!

 俺は痰を吐き捨てて大口を開けて笑う。

「クハハ! それでもな、オビオぉ! 改心なんて出来ねぇ奴もいるって事よ、ここになぁ! 俺は今までフラフラと異世界を渡り歩いてきたが、今、この瞬間! 俺を完全に契約で縛り付けた阿呆が現れた。いいタイミングだぜぇ、ビャクヤ! ってことだからよぉ、俺は奴が願う限り、何度でもこの世界に復活する。召喚主が完全に定まった悪魔だからな! ケヒヒヒ」

 俺はやっと自分のいるべき世界に戻れる事に嬉しくなって、ブルブルと震えた。もうペンの玩具はゴメンだ。

 まぁ元の時代だか、世界だかに戻ったとしても、コズミックペンが俺に飽きてくれる保証なんてねぇがな。

「なぁ、オビオ。こんな胸糞悪い奴、さっさと始末しようぜ。俺ぁこういう根っからの悪人が許せない性質でよ」

 お! やはり父ちゃん似の正義漢だねぇ、トウス。ついでに邪悪なるピーター君も始末しろ。奴はいつかお前らを裏切るぞ。

「もうすぐ俺は死ぬ。まぁ待てや、獣人」

 実のところ、俺はピンピンしているがな。

 まだか? ビャクヤ。もうちょい時間稼ぎが必要か? じゃあもう少しなんか喋るか。

「もう一つ呪いがあってな。俺はそれを見ずに多分死ねるのだから、ざまぁみろって感じなんだが、それでも呪いは呪いだ。妖刀天邪鬼にはな・・・(蘇生効果がある)」

 最後まで言い切る前に俺とアマリは、ビャクヤのいる世界へと転送され始めた。

 まぁ言わなくてもすぐに結果はわかるだろうからな。

 チャイは凄く美味かったぜ、オビオ。

 最後の最後でリキャストタイムの終わった悪魔の目が発動して、オビオの二つ名が見えた。

 ――――運命の神に愛されし料理人。

 ハ! 幸運な奴め! あばよ。
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