殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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強敵! オビオ

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 いつ決勝戦を開始したのか分からねぇほど、俺は興奮していた。久々の強者との対戦。いや、久々でもねぇか。ヒジリと一週間前に戦ったばかりだ。

 レフェリーの開始の合図と同時に、オビオは竜のような咆哮をあげてパワードスーツを纏う。

「キヒヒ。チート野郎め」

 俺が悪魔の姿で笑っていると、オビオはさながらバーサーカーのように、体中に狂気のオーラを溜めて向かってくる。

「せっかちな奴だ。後ろにはビャクヤたちがいるんだぞ。ちったぁ考えて行動したらどうだ。殺したら負けだからな? わかってんのか?」

「ブオッ!」

 なんだ? 奇妙な返事しやがって。様子がおかしいぞ。パワードスーツを纏うと喋れなくなるのか?

 そういや、オビオはどういう扱いでいいんだ? 竜人か? 殺しても良いのか?

 取り敢えず、パワードスーツのグローブから伸びるウォーズマンみたいな爪を、人修羅の長い爪で往なす。

 すると、オビオの竜の口から間髪入れずに火炎放射の舌が伸びる。

 ――――ゴォォォ!

 オビオの野郎!

 人の話を聞いてんのか! 後ろには殺すとアウトな奴らがいるって言ってんだろうが。それで試合終了なんてのは糞つまらねぇぞ!

「お前ら防御態勢を取れ!(できればこのブレスが魔法的なものである事を祈る。リアルな火炎なら特殊防御の壁じゃ防げねぇからな)」

 俺は後ろにいるビャクヤたちに指示を出して、炎の下を掻い潜りオビオの龍の口舌から殴り上げる。ブレスは地面から空を舐めるように放たれた。

 やべぇ、何人か火傷を負ったか? 俺は全方位を見ることのできる体中のクラックの隙間から後ろを見る。

「んんん、そんな予感はしていまんしたッ!」

 ビャクヤは特殊攻撃を防ぐ防御魔法+リフレクトマントで仲間の前に立ち、炎を防いでいた。

 流石は自称天才。魔法的なブレスなら魔法で防げるし、物理攻撃ならリフレクトマントで防げる。

 ダークとピーターは影に潜ったか。バックスタブ狙いか?

 無理だな。サーカが自チームの後衛の影を見張っている。ビャクヤが天才ならサーカは秀才ってとこか。意外と隙がねぇぞ。

 俺とオビオがノミのように跳ねて攻防を繰り広げている間に、リンネがサーカや後衛たちを挑発していた。

 いや、挑発というよりは目立とうとしている。大盾で地面を叩いているのだ。

(なんか策でもあるのか? 注意を引きつけている間に、ダークたちがバックスタブ敢行すんのか? 敵チームは中途半端に強いから手加減が難しいぞ。ダメージに耐えきれば必ず反撃をしてくるだろうしよ)

 しかし、俺の目論見は外れる。リンネは目立とうとしていたわけではなかった。

 ――――ズドドド!

 音を立てて敵チームの足元に地割れが出来る。地割れといっても、ちょっとよろめく程度の小さな地割れだ。サーカ以外がスタンしている。

 よーくリンネを見ると、大盾に隠したワンドで行動阻害系の魔法を唱えていたのだ。

 敵のメイジが詠唱中だったので、リンネのお陰でそれが止まる。

 よくやったリンネ。魔法の詠唱中断は意外と重要。敵はそれだけで貴重な魔法点を一つ失うからな。

「おっと!」

 よそ見をしている場合じゃなかった。オビオのパンチを流すように受け止めて、捻じりあげる。

 普通の人間ならこれで腕がねじ切れるが、オビオは違った。筋肉繊維の一本一本がまるでハリガネムシのように強靭なのだ。

 竜人は強引なパワープレイで腕を解くと、下段蹴りで俺の脚をへし折ろうとした。勿論ジャンプをして避ける。

「力や防御力は俺と同程度かもしれねぇが、素早さが全然ダメだ」

 と、余裕をかましていたが、観客席から魔法の気配を感じる。

(チッ! 横槍を入れられないようにしとけよ、運営側も)

 まぁそれをしようとしているのが、主催者であるクロノに乗り移ったQなのだから仕方がねぇか。

 俺はオビオの腹を蹴って闘技場の壁まで突き飛ばすと、アマリを構えて何かしらの魔法を切断した。懐中時計の針がゆっくりと動く幻影が真っ二つになっている・・・ってこたぁ、時間系のなんかだ。

「おい!」

 俺はクロノの不正を指摘しようとしたが、オビオが壊れた壁の中から猛突進してきた。

 竜人を応援する歓声で俺の声は埋もれ、手四つになって踏ん張る。

「コォォォ!」

 オビオの口の中が火炎で燃えていた。正確にはオビオの竜の兜から突き出た口先辺りだが。オビオの顔はその奥にある。

「させるかよ!」

 口が突き出てるのはお前だけじゃねぇぞ。時々リンネがアヒル口で俺の顔真似をしているのを知っているんだからな。

 悪魔のギザギザの歯が、竜の兜の口を噛んでひしゃげさせる。

「これで炎は吐けねぇだろ。ヒヒャヒャヒャ!」

 歪んだ声で笑って、オビオに体当たりをしようとしたその時。

 また魔法の気配。

 Qのクソが! 俺の攻撃にタイミングを被せて時間魔法を使ってきやがったな。

 一体、日に何度時間停止魔法を使えるんだ? と思っていたが、俺は多少動きが鈍くなっただけだった。

(なるほど。オビオへの支援はこれが精一杯ってわけか)

 オビオは俺の巨体から繰り出される体当たりを躱すと、自分の手で強引に口の部分をこじ開けた。そしてもう一度ブレスを試みたが、歪んだ口が炎を分散してしまい、著しく命中率が下がり、攻撃手段にならない。なので途中で止めた。

「へぇ。それぐらいの判断力はあるのか」

 芯まで狂っていなさそうだ。

 パンチや蹴りの応酬、噛みつき攻撃に切り裂き攻撃を繰り広げる俺とオビオに向けて、ボソリと声が聞こえてくる。

「さながら昭和の怪獣大決戦でつな」

 観客席で煎餅を食う、テンションの低いマサヨシの声だ。退屈してるのか? だからなんだって話だが。

 しかし・・・なんでマサヨシの言葉がこんなに引っかかるのだろうかねぇ。

 怪獣大決戦か・・・。

 怪獣はどちらかというと俺の方だな。いつの間にかぶっとい尻尾も生えているしよ。

 オビオは寧ろ竜を模した人だ。

 嫌な予感がするぞ。マサヨシは自分に都合よくマナを発生させる。それはつまり飽きない展開を作り出す事も可能だって事だ。もし何かが起こるとすれば、Qかマサヨシの仕業だって事になる。

 俺の憂いは当たった。

 近接戦で劣勢に感じたオビオは俺から大きく退くと、体をブルブルと震わせ始めた。

 パワードスーツが砕けてナノマシンに戻る。

 そしてまた赤い革鎧に戻るのかと想いきや――――!

 ナノマシンはオビオの体全体を覆って光った。
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