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殺人鬼転生 終
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「ギ・ギ・ギ・・・」
「くそ! 悪魔の目でも、ビャクヤの異常が分からねえ。あれはどうなっていると思う? アマリ」
俺はクラックから混乱を示す虹色の光を放ってオロオロし、アマリに頼った。
「恐らく、私のナノマシンが残存していた。そして今、凄まじい早さで増殖しているのだと思う」
「適応力の高いナノマシンめ。なんとかならねぇのか! 俺ぁ、ビャクヤとリンネと、その子供の行く末が知りてぇんだよ。ニムゲイン王国の成長を見届けてぇんだ!」
ギリギリとビャクヤの頭が回って、嘆く俺に向いた。
「ギ・ギ・ギリマル・・・・。た・・・たずけ・・・て・・・」
くそおおおお!! 勿論、助けてぇッ! だが、俺は純粋なアタッカーだ。癒やしの術を知らねぇ。どんなに強力な敵を倒せても仲間を治す事はできねぇ!
なんたる皮肉! 悪人の時は死人を生き返らせることが出来たのに! 善人になるとそれが出来ねぇなんてよ!
「ウォォン! どうすりゃあいいんだ!」
俺は泣き声を上げてビャクヤを抱きしめた。メイジにしてはいい体をしてるが、悪魔からすればか細くて小さい。力を籠めれば砕け散りそうだ。
折角これから幸せな生活が待っていると思ったのによぉ。
業ってやつか? 人を殺しをしてきたツケが、今になって回ってきたのか? もう少し先延ばしにしてくれよ! ヒジリでもいい、ヤンスでもいい!
――――俺のビャクヤを助けてくれ!!
「し、幸せ・・・」
ビャクヤは俺の腕の中でそう呟いた。
「ん? 今、ビャクヤは普通の声で“幸せ”と呟いたな?」
俺は確かめるようにしてリンネやアマリの反応を待つ。
「うん、言ったね」
「言った」
「ホワア」
赤ん坊まで返事しやがった。
「あぁぁl! 助けて下さいッ! 吾輩ッ! 幸せ過ぎてッ! 震えがッ! ンンンンンッ! 止まりませんぬッ! いつの間にか無の侵食は止まりッ! キリマルが戻ってきたうえに、善人化しているッ! そして我が子まで産まれているではありませんかッ! この幸せのミルフィーユを前にしてッ! 震えない者がおりましょうかッ!」
「かぁぁぁ! とっくに正気を取り戻していたのかよ! お前は常に狂っているみたいだから紛らわしいんだよ!」
心配して損したわ! 俺がウォォンと泣いていた時、お前はどういう気持でいたんだ? クソが!
俺はビャクヤの頭を叩いた。魔人族の黒髪がファサリと揺れる。
「痛いっ! でも痛いって事は生きている証拠ッ!」
「もういいわ。早く息子を抱いてやれ」
俺は後ろにいるリンネを親指で指した。
しかしビャクヤは自分の陰部を持ち上げただけだった。
「そっちの息子じゃねぇ! ぶち殺すぞ!」
俺の言葉に、我が子孫は仮面に意地悪な表情を浮かべる。
「ハハッ! 善人であるキリマルがッ! ぶち殺すなんてッ! 言ってはいけませんよぉ!」
ビャクヤはナンベルばりのタップを踏んで、床をカカカと鳴らす。
「ではでは、くだらない冗談はここまでにしてッ! 愛しい愛しい、我が息子を抱きますかッ!」
皺くちゃの真っ赤な猿みたいな子供を、仮面の父親は脆い陶器でも触るように抱いた。
「【知識の欲】!」
何の前触れもなくビャクヤは我が子の情報を調べ始めた。
「なんで赤ちゃんを調べてるの? まさか我が子かどうか疑っているんじゃないでしょうね?」
リンネが腰に手を当てて、眉根を寄せる。
「んんん、とんでもないッ! 我が子のッ! 可能性を見ておきたいだけでんすッ!」
そんなもん、もうとっくに俺の目に情報として映っているけどよ。まぁいいだろう。親として実感しておきたいんだろうさ。
「ああッ! この子にはッ! 我らが子孫ッ! ダークんの片鱗がッ! 暗黒騎士の素質が見えマッスルッ!」
「あいつみたいな中二病は勘弁だぜ」
ビャクヤは息子をリンネに預けると、うやうやしく俺の前で跪いた。
「なんだ? 急に」
「数ヶ月の間ッ! 吾輩を苛んだ、狂気を! なんとか耐え凌げたのはッ! 愛するリンネの中に宿りしッ! 小さな鼓動と! 常に吾輩の面倒を見てくれていた! キリマルの献身性!」
「ここ数ヶ月の記憶が蘇ってきたのか?」
「如何にも、我が始祖様ッ!」
「始祖様って呼ぶな。そう呼ばれると俺が爺になったみたいで嫌だと前に言ったろ。二十代後半になったとはいえ、まだまだビンビンなんだが?」
「失礼ッ! ではキリマルッ! 改めてお礼をッ! 無の侵食を止めたのは貴方なのでしょう?」
「残念ながら、それをしたのはお前の大嫌いな現人神ヒジリだ」
「ぼぉえっ! ごくり!(喉までこみ上げた胃液を飲み込む音) し、しかぁし! その為の時間稼ぎをしたのはッ! 確かに我らが始祖キリマル!」
神の名を聞いて一口ゲロを吐きそうになるとは・・・。そこまでヒジリが嫌いなのか。よしよし、流石は我が子孫。
「ああ、謎の門の中で人の心に宿る恐怖の化身を、何十万体と倒してきたぜ。お陰で実力値は666だ」
「666ッ! 恐らくそれはッ! 地上最強の悪魔と言っていいでしょうッ! いえ、キリマルの属性がッ! 今や善人である以上、人の善意を背負いし地上最強の聖魔! これでニムゲイン王国は安泰デスッ。さてッ! 聖魔キリマルッ! 我が息子の名付け親になってもらえないでしょうかッ?」
「いいのか? リンネ」
リンネは疲れた顔に柔らかな笑みを湛えて頷いた。その笑顔は母親のそれだ。
「だって、キリマルは世界を救った英雄だもん。寧ろ、光栄だよ」
「クハハ! そうか! いきなり泉の水を浴びて属性が変わった時は戸惑ったがな。善人でいるのも悪くねぇ! じゃあ、お前らの子の名前は・・・」
「名前はッ?」
「ウンコだ!」
ウンコと言った途端にアマリの顔が輝く。
「ウンコ?! ウンコって言った? キリマル! ねえ! ウンコぉ?」
排泄物の名を我が子に付けられたビャクヤは、軽くよろめく。
「酷いッ! 冗談はヨシ子さんッ! ちゃんとした名前をキボンヌッ!」
「ウンコだって! うふふふ! 聞いた? ビャクヤ! 赤ちゃんの名前、ウンコだって!」
アマリは嬉しそうにビャクヤの周りを、衛星のようにぐるぐる回ってはしゃいでいる。
「否ッ! 虚無の力を使ってでもッ! その名は拒否しますッ!」
「じゃあ、ヒジリ・ウィンにでもするか」
「きゃああああ↑! だめーーー↓! 却下ぁぁぁぁッ! 吾輩は拒絶するッ! ヒジリという名を・・・・」
サカモト粒子がビャクヤの周りに集まりだしたので、俺は慌てて訂正する。虚無で一体何を消すつもりだったんだ? 俺の記憶か?
「わかった、わかった。そうだな・・・。ダークだ!」
「へぇ・・・。なぜ、ダーク・マターの名をッ?」
「あれは、コズミック・ペンが悪戯で作り上げた過去のない男。過去はないが、お前も知っての通り、俺らの一族でもある。創造主の気まぐれで、勝手に生み出されて勝手に消されてよぉ・・・。可哀想過ぎるだろ。だから今後生まれるだろう奴の礎を作っておくんだ」
「というとッ?」
「悪いが、お前達にはこの国の統治者となってもらう。後人が建国者一族の名前を付けるなんてぇのは、割とあるからな。・・・が、ダーク・マターは名字からして本家から離れている。いつかマター家の存在を確認したらよぉ、俺はそいつらも見守る事にするぜぇ。ダークという名前の男が生まれりゃ、奴の存在は本物になるからな。可哀想なダークが可哀想でなくなるんだ。俺は信じているぜ、ダーク・マターという最強の暗黒騎士がこの世に産まれてくる事を」
「ああ、我らの始祖様はなんと優しいのかッ! いいでしょう。ならばッ! 今日からこの子の名前はダーク・ウィンとしますッ!」
ビャクヤは立ち上がって、息子を手で指す。
「しかしッ! 王となるにしてもッ! 砦の皆の承認も必要! 吾輩ッ! 皆を説得できるだけの自信はありませんがッ! 何事も行動してみなければわかりませんぬッ! なので早速、皆の集まる酒場にでも行って宣言してみまんすッ!」
「ああ、そうしてくれ。ビャクヤ。お前は元々、ツィガル皇帝の孫。頭も良いし、実力も有る。おまけに超絶美形だ。まぁ若干精神面に打たれ弱さがあるが、そこは俺様がサポートしてやるさ。さぁ行って来い。この国の未来はお前の手の中にある」
ビャクヤは机に置いてあったシルクハットを被ると、“説得する自信はない”という言葉とは逆に、胸を張ってマントの襟元を正した。
「それではッ! 愛しき我妻リンネ、始祖キリマル、そして魔刀アマリちゃん! 吾輩、行って参りマンモスッ!」
ビャクヤが小屋の扉を開けると、秋の心地よい風と暖かな光が彼を包みこんだ。
そして扉は静かに閉まった。
「ねぇ、キリマル。さっきの話本当? 私達がニムゲイン王国の王族になるの?」
リンネは我が子に乳をやりながら尋ねてきた。
「ああ、そうだ。お前らが王族にならなきゃいけねぇ。かつてニムゲイン王国の伝承にあった国神、赤い鎧のオビオも姫サーカもいねぇ。それに神は尽く消えた。いや、一人残っているか。眼鏡のゴブリンが・・・。しかし奴は力を殆ど失ってしまった。だからよぉ、いいか? これから歩む道は俺達自身で決めるんだ」
「そう。なんだか寂しいわね。心の支えになる神様がいないなんて」
「なぁに、代わりに俺様がいる! それにこれからは一度限りの時間が流れていくんだ。前のように観測者が本を閉じると世界が止まるなんて事はねぇ。未来永劫、俺達の物語は俺達の手で紡ぐ」
「よく分からないけど、なんだかとっても素敵な未来が待っていそうね」
「ああ、待っているとも。俺様がそうしてみせる」
この世界は何重にも次元が重なり合っており、複数の観測者が存在する。誰かしらが必ず俺たちをどこかで見ているのだ。だから物語が止まる事はない。
コズミック・ペンたち以外の観測者――――、開いた本を読む“お前ら”がいなくても、俺たちの世界は前に進む。
逆にこれからは、お前たちは俺たちの世界を観測できなくなるってこった。残念だな! またいつの日か、どこかで出会える日を待っているぜ。
その日まで俺様の名前を忘れるなよ。
俺は殺人鬼で、物語を終わらせる反逆の悪魔で、今はニムゲインの守護者、聖魔キリマルだ。しっかりと、そのツルンツルンの脳みそに刻んどけ! じゃあな! あばよ!
―――― 殺人鬼転生 終 ――――
「くそ! 悪魔の目でも、ビャクヤの異常が分からねえ。あれはどうなっていると思う? アマリ」
俺はクラックから混乱を示す虹色の光を放ってオロオロし、アマリに頼った。
「恐らく、私のナノマシンが残存していた。そして今、凄まじい早さで増殖しているのだと思う」
「適応力の高いナノマシンめ。なんとかならねぇのか! 俺ぁ、ビャクヤとリンネと、その子供の行く末が知りてぇんだよ。ニムゲイン王国の成長を見届けてぇんだ!」
ギリギリとビャクヤの頭が回って、嘆く俺に向いた。
「ギ・ギ・ギリマル・・・・。た・・・たずけ・・・て・・・」
くそおおおお!! 勿論、助けてぇッ! だが、俺は純粋なアタッカーだ。癒やしの術を知らねぇ。どんなに強力な敵を倒せても仲間を治す事はできねぇ!
なんたる皮肉! 悪人の時は死人を生き返らせることが出来たのに! 善人になるとそれが出来ねぇなんてよ!
「ウォォン! どうすりゃあいいんだ!」
俺は泣き声を上げてビャクヤを抱きしめた。メイジにしてはいい体をしてるが、悪魔からすればか細くて小さい。力を籠めれば砕け散りそうだ。
折角これから幸せな生活が待っていると思ったのによぉ。
業ってやつか? 人を殺しをしてきたツケが、今になって回ってきたのか? もう少し先延ばしにしてくれよ! ヒジリでもいい、ヤンスでもいい!
――――俺のビャクヤを助けてくれ!!
「し、幸せ・・・」
ビャクヤは俺の腕の中でそう呟いた。
「ん? 今、ビャクヤは普通の声で“幸せ”と呟いたな?」
俺は確かめるようにしてリンネやアマリの反応を待つ。
「うん、言ったね」
「言った」
「ホワア」
赤ん坊まで返事しやがった。
「あぁぁl! 助けて下さいッ! 吾輩ッ! 幸せ過ぎてッ! 震えがッ! ンンンンンッ! 止まりませんぬッ! いつの間にか無の侵食は止まりッ! キリマルが戻ってきたうえに、善人化しているッ! そして我が子まで産まれているではありませんかッ! この幸せのミルフィーユを前にしてッ! 震えない者がおりましょうかッ!」
「かぁぁぁ! とっくに正気を取り戻していたのかよ! お前は常に狂っているみたいだから紛らわしいんだよ!」
心配して損したわ! 俺がウォォンと泣いていた時、お前はどういう気持でいたんだ? クソが!
俺はビャクヤの頭を叩いた。魔人族の黒髪がファサリと揺れる。
「痛いっ! でも痛いって事は生きている証拠ッ!」
「もういいわ。早く息子を抱いてやれ」
俺は後ろにいるリンネを親指で指した。
しかしビャクヤは自分の陰部を持ち上げただけだった。
「そっちの息子じゃねぇ! ぶち殺すぞ!」
俺の言葉に、我が子孫は仮面に意地悪な表情を浮かべる。
「ハハッ! 善人であるキリマルがッ! ぶち殺すなんてッ! 言ってはいけませんよぉ!」
ビャクヤはナンベルばりのタップを踏んで、床をカカカと鳴らす。
「ではでは、くだらない冗談はここまでにしてッ! 愛しい愛しい、我が息子を抱きますかッ!」
皺くちゃの真っ赤な猿みたいな子供を、仮面の父親は脆い陶器でも触るように抱いた。
「【知識の欲】!」
何の前触れもなくビャクヤは我が子の情報を調べ始めた。
「なんで赤ちゃんを調べてるの? まさか我が子かどうか疑っているんじゃないでしょうね?」
リンネが腰に手を当てて、眉根を寄せる。
「んんん、とんでもないッ! 我が子のッ! 可能性を見ておきたいだけでんすッ!」
そんなもん、もうとっくに俺の目に情報として映っているけどよ。まぁいいだろう。親として実感しておきたいんだろうさ。
「ああッ! この子にはッ! 我らが子孫ッ! ダークんの片鱗がッ! 暗黒騎士の素質が見えマッスルッ!」
「あいつみたいな中二病は勘弁だぜ」
ビャクヤは息子をリンネに預けると、うやうやしく俺の前で跪いた。
「なんだ? 急に」
「数ヶ月の間ッ! 吾輩を苛んだ、狂気を! なんとか耐え凌げたのはッ! 愛するリンネの中に宿りしッ! 小さな鼓動と! 常に吾輩の面倒を見てくれていた! キリマルの献身性!」
「ここ数ヶ月の記憶が蘇ってきたのか?」
「如何にも、我が始祖様ッ!」
「始祖様って呼ぶな。そう呼ばれると俺が爺になったみたいで嫌だと前に言ったろ。二十代後半になったとはいえ、まだまだビンビンなんだが?」
「失礼ッ! ではキリマルッ! 改めてお礼をッ! 無の侵食を止めたのは貴方なのでしょう?」
「残念ながら、それをしたのはお前の大嫌いな現人神ヒジリだ」
「ぼぉえっ! ごくり!(喉までこみ上げた胃液を飲み込む音) し、しかぁし! その為の時間稼ぎをしたのはッ! 確かに我らが始祖キリマル!」
神の名を聞いて一口ゲロを吐きそうになるとは・・・。そこまでヒジリが嫌いなのか。よしよし、流石は我が子孫。
「ああ、謎の門の中で人の心に宿る恐怖の化身を、何十万体と倒してきたぜ。お陰で実力値は666だ」
「666ッ! 恐らくそれはッ! 地上最強の悪魔と言っていいでしょうッ! いえ、キリマルの属性がッ! 今や善人である以上、人の善意を背負いし地上最強の聖魔! これでニムゲイン王国は安泰デスッ。さてッ! 聖魔キリマルッ! 我が息子の名付け親になってもらえないでしょうかッ?」
「いいのか? リンネ」
リンネは疲れた顔に柔らかな笑みを湛えて頷いた。その笑顔は母親のそれだ。
「だって、キリマルは世界を救った英雄だもん。寧ろ、光栄だよ」
「クハハ! そうか! いきなり泉の水を浴びて属性が変わった時は戸惑ったがな。善人でいるのも悪くねぇ! じゃあ、お前らの子の名前は・・・」
「名前はッ?」
「ウンコだ!」
ウンコと言った途端にアマリの顔が輝く。
「ウンコ?! ウンコって言った? キリマル! ねえ! ウンコぉ?」
排泄物の名を我が子に付けられたビャクヤは、軽くよろめく。
「酷いッ! 冗談はヨシ子さんッ! ちゃんとした名前をキボンヌッ!」
「ウンコだって! うふふふ! 聞いた? ビャクヤ! 赤ちゃんの名前、ウンコだって!」
アマリは嬉しそうにビャクヤの周りを、衛星のようにぐるぐる回ってはしゃいでいる。
「否ッ! 虚無の力を使ってでもッ! その名は拒否しますッ!」
「じゃあ、ヒジリ・ウィンにでもするか」
「きゃああああ↑! だめーーー↓! 却下ぁぁぁぁッ! 吾輩は拒絶するッ! ヒジリという名を・・・・」
サカモト粒子がビャクヤの周りに集まりだしたので、俺は慌てて訂正する。虚無で一体何を消すつもりだったんだ? 俺の記憶か?
「わかった、わかった。そうだな・・・。ダークだ!」
「へぇ・・・。なぜ、ダーク・マターの名をッ?」
「あれは、コズミック・ペンが悪戯で作り上げた過去のない男。過去はないが、お前も知っての通り、俺らの一族でもある。創造主の気まぐれで、勝手に生み出されて勝手に消されてよぉ・・・。可哀想過ぎるだろ。だから今後生まれるだろう奴の礎を作っておくんだ」
「というとッ?」
「悪いが、お前達にはこの国の統治者となってもらう。後人が建国者一族の名前を付けるなんてぇのは、割とあるからな。・・・が、ダーク・マターは名字からして本家から離れている。いつかマター家の存在を確認したらよぉ、俺はそいつらも見守る事にするぜぇ。ダークという名前の男が生まれりゃ、奴の存在は本物になるからな。可哀想なダークが可哀想でなくなるんだ。俺は信じているぜ、ダーク・マターという最強の暗黒騎士がこの世に産まれてくる事を」
「ああ、我らの始祖様はなんと優しいのかッ! いいでしょう。ならばッ! 今日からこの子の名前はダーク・ウィンとしますッ!」
ビャクヤは立ち上がって、息子を手で指す。
「しかしッ! 王となるにしてもッ! 砦の皆の承認も必要! 吾輩ッ! 皆を説得できるだけの自信はありませんがッ! 何事も行動してみなければわかりませんぬッ! なので早速、皆の集まる酒場にでも行って宣言してみまんすッ!」
「ああ、そうしてくれ。ビャクヤ。お前は元々、ツィガル皇帝の孫。頭も良いし、実力も有る。おまけに超絶美形だ。まぁ若干精神面に打たれ弱さがあるが、そこは俺様がサポートしてやるさ。さぁ行って来い。この国の未来はお前の手の中にある」
ビャクヤは机に置いてあったシルクハットを被ると、“説得する自信はない”という言葉とは逆に、胸を張ってマントの襟元を正した。
「それではッ! 愛しき我妻リンネ、始祖キリマル、そして魔刀アマリちゃん! 吾輩、行って参りマンモスッ!」
ビャクヤが小屋の扉を開けると、秋の心地よい風と暖かな光が彼を包みこんだ。
そして扉は静かに閉まった。
「ねぇ、キリマル。さっきの話本当? 私達がニムゲイン王国の王族になるの?」
リンネは我が子に乳をやりながら尋ねてきた。
「ああ、そうだ。お前らが王族にならなきゃいけねぇ。かつてニムゲイン王国の伝承にあった国神、赤い鎧のオビオも姫サーカもいねぇ。それに神は尽く消えた。いや、一人残っているか。眼鏡のゴブリンが・・・。しかし奴は力を殆ど失ってしまった。だからよぉ、いいか? これから歩む道は俺達自身で決めるんだ」
「そう。なんだか寂しいわね。心の支えになる神様がいないなんて」
「なぁに、代わりに俺様がいる! それにこれからは一度限りの時間が流れていくんだ。前のように観測者が本を閉じると世界が止まるなんて事はねぇ。未来永劫、俺達の物語は俺達の手で紡ぐ」
「よく分からないけど、なんだかとっても素敵な未来が待っていそうね」
「ああ、待っているとも。俺様がそうしてみせる」
この世界は何重にも次元が重なり合っており、複数の観測者が存在する。誰かしらが必ず俺たちをどこかで見ているのだ。だから物語が止まる事はない。
コズミック・ペンたち以外の観測者――――、開いた本を読む“お前ら”がいなくても、俺たちの世界は前に進む。
逆にこれからは、お前たちは俺たちの世界を観測できなくなるってこった。残念だな! またいつの日か、どこかで出会える日を待っているぜ。
その日まで俺様の名前を忘れるなよ。
俺は殺人鬼で、物語を終わらせる反逆の悪魔で、今はニムゲインの守護者、聖魔キリマルだ。しっかりと、そのツルンツルンの脳みそに刻んどけ! じゃあな! あばよ!
―――― 殺人鬼転生 終 ――――
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