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「ふぁぁぁ! おはようオビオ。なんで端っこで寝てるん?」
「お前らがベッドの真ん中を占領したからだろ!」
癖毛と見分けがつかない寝癖を撫でつけて、リュウグはキャンプ敷地内の変化に気が付いた。
「ん? あれ? 焚火に寝袋が三つあるけど? 夜中に旅人でも来たんか?」
俺は目を擦りながら白々しい演技をする。
「さぁ~誰かな~。俺も知らないな~」
駄目だ、嬉しくて顔が笑ってしまう。
しばらく俺の顔をぼんやり見ていたリュウグだったが、頭が良いので察しが早い。
「まさか!」
くぅー。サプラーイズ! とか言いたかったのにもうバレた。
リュウグは寝巻のまま、皮でできた寝袋に近寄るとフードをまくり上げた。
ハズレ。一番最初に出てきた顔はウィングだった。健やかな寝顔がムカツクぜ。
「誰や! あんたは! 紛らわしいな! アホ!」
リュウグは爪で彼の顔を引っかく。ウィングにとっては、とんでもねぇとばっちりだが、ちょっとスカッとする。
「ああぁ! 僕の美しい顔が!」
芋虫のようにウネウネと動いて、ウィングは手を寝袋から出すと顔を押さえた。
ざまぁ! イケメンが台無しだな! ひゃはー!
リュウグはウィングのことなど気にせず、直ぐに他の寝袋に飛びついた。
「お父さん! お母さん!」
「キュル!」
「キュル!」
相変わらずノームは早口で何を言っているのかわかんねぇ。でも娘の名を呼んでいるのだと思う。
リュウグの両親は目を覚まして娘の顔を見ると、急いで寝袋から這い出て抱き着いた。
「よかった! お父さんもお母さんも無事だった! うわ~ん!」
皆も起きてきて抱き合う家族に笑顔を送る。
「良かったな! リュウグ!」
俺は嬉しさのあまり、近くにいたトウスさんを背中から抱きしめてしまった。
しかしトウスさんも、それが俺の感情の高まりからくるものだと理解してくれているので、然程気にした様子はない。
それを良い事に俺は存分にライオン丸のような鬣を堪能した。
「たまんね、モフモフだ」
「なんか言ったか? オビオ。まぁ嬉しくなると誰かに抱き着きたくなるのは解るけどよ。あんまりひっつくな」
「へへへ、ごめん」
トウスさんから離れ、俺は共に喜びを分かち合う仲間を探した。
ピーターが両手を広げて待っている。ほら、来いよ! 的な顔がムカツクが、まぁこの際いいか。
俺は小さな地走り族を抱き上げてギュッとハグしてみた。子供を抱っこしているようで悪くはない。
しかし抱っこした瞬間、ピーターの下半身から料理で匂った事のある匂いがしてきた。
「イカくせぇ! イカの煮物かよ!」
まーた昨晩ゴソゴソしてたんか!
地面に叩きつけるようにピーターを下したが、彼は猫のようにシュタっと着地すると邪悪な顔で俺を睨んだ。
「シコってねぇし!」
「シコっただろ! いい加減に事実を認めろ! このシコリ魔!」
「お前ら・・・。親子の再会を、生臭い下ネタで汚すな。バカが」
サーカが手から放電して威嚇したので、俺たちは直立不動になり口を閉じた。
「で、どういう事なんだ? オビオ」
「昨日の夜中にトウスさんが、見知らぬ人の気配に気が付いて、賊かと思って攻撃したんだ。だよな?」
「ああ、ウィングは手練の魔法使いだったぞ」
「傷はもう大丈夫?」
「オビオのパンのお陰で問題ないぜ。ありがとな」
「どういたしまして。で、そのウィングはカク・カクイって司祭の誤解を解きに来た使者なんだわ」
寝袋からゴソゴソ起きてきたウィングは、手鏡を出すと念入りに自分の顔のチェックをしている。そして光魔法にもある【再生】の魔法を唱えた。光魔法の【再生】は樹族に対して特に効果が高い。
「酷い目にあったよ、全く」
顔を引っかかれた事に恨み言をいうウィングに、ピーターが邪悪な顔を向けた。
「これまで酷い目に遭ってきたのは俺たちなんだがァ? 宗教団体の一支部を乗っ取り、関係ない村を巻き込んで俺たちを待ち構えていたり、リュウグを騙してオビオを襲わせたり、盗賊の集団を仕向けたり! なんなんだお前らはよ! なにが神聖国モティだ! 邪悪国じゃないか!」
邪悪なピーター君がモティの事をそう言うのだから間違いなくそうなのだ。俺もピーターの後に続く。
「ほんとだぜ。現人神である大神聖にあてつけるなら、俺たちなんかを狙わずに直接本人を狙えばいいだろ!」
「何かの間違いじゃないのかね? オーガ神の再来は、我々も喜んでいるよ。なにせ我らは神に見放されたと何千年も嘆いてきたのだからね。どんな神でもいてくれるだけ嬉しいよ」
よく言うぜ。どうせ、大神聖もお前らの懐に大打撃を与えるから消そうって考えてるんだろ。最近、星のオーガの信者がモリモリ増えてるしな?
「残念だが、ウィング助祭。これまでの証拠の数々を、私はシルビィ様に送っている。モティの一司祭がやった事とはいえ、樹族国の主権を侵害したと我が王が判断すれば、国家間の問題に発展するだろう。それに宗教の監視者である修道騎士も、これまでの出来事を見ている。司祭カク・カクイの神前審問は避けられないと思うのだが? 一司祭程度であれば、メリィでも即時に裁くことが可能だ」
ちょっと威厳をこめて、真面目な口調で言ってみたが・・・。
「全ては神の御心のままに。カクイ司祭が裏で何かをやっていたのであれば、因果は必ず巡りましょう」
成り行きを見守るって事か? まぁウィングには直接関係ない話だもんな。
「一応、俺はお前を視るからな? お前、なんか怪しいんだわ」
俺の直感は滅多に外れない。この金髪野郎はなにかを隠している。
「どうぞ」
俺はウィングの頭に手を置いた。
「名前はウィング・ライトフット。40歳。短命種換算で二十歳。つまり大人になりたての新米ちゃんか。アライメントはローフル・ニュートラル・・・。サーカと同じだな。実力値は11の司祭兼戦士。昨日言ってた通りだな。魅力値が16もありやがる! それ以外は如何にも司祭と言った感じか。信仰する神が星のオーガだと? 樹族なのに?」
「何を驚くことがある? どの神だろうと信仰心を持つことは尊き事で、それを咎める事などできなはずだがね」
「まぁ信仰する神なんて今はどうでもいいか。他に何か怪しい情報は・・・。こいつ、能力者だ! 女になれる能力がある!」
女になって姿を変えて潜入任務をこなしたりするわけだ?
「能力は神が与えし恩恵。つまり僕は神に愛されている男なのだよ、君ぃ」
「あっそ。うちにも能力持ちがいるけどな。誰がそうなのかは教えてやんね、相手の情報は出来るだけ手に入れて、こちらの情報は一切出さない。怪しい奴に出会った時の常識な、これ」
「馬鹿だな・・・オビオは。能力持ちがいるっていう情報を、相手に与えているじゃないか」
うぐっ! ピーターめ! 俺に恥をかかせやがって。
俺はイカくさピーターのツッコミを無視して、更に情報を探る。
「なんつーか、怪しいところが一個もねぇ・・・」
俺は躍起になって情報を探ったが、特に何も出てこなかった事が悔しかった。こいつにはもっと裏があるはずなのに・・・。それをズバリと指摘してドヤ顔がしたかった・・・。
「当たり前だよ。僕はこのノーム二人をバトルコック団に会わせるように命令されただけだからね」
「ふん、でも腹の中では何を考えているかはわからないけどな」
「それは誰だってそうだろう?」
くっそー! ああいえばこういう。憎たらしい奴め。まだピーターが可愛く見えるほどだ!
俺は念のためリュウグの両親にも触れてみる。健康状態に異常なし。魔法による意識操作もなし。
「リュウグ。一応両親に【解除】の巻物使っといたら? なんか怪しいんだわ」
「うん」
リュウグが巻物を広げると光がリュウグの両親を包んだ。
これで安心だろ。もしかしたら情報を偽装する類の魔法があるかもしれねぇし。
「メリィは何か尋問する事があるか?」
「ううん、無いよぉ」
最後まで観察者として通すのかな? この件に関する判断は、神前審問まで出さないってわけか。
「まぁひと段落ついたし朝飯にすっか」
「わぁーい!」
メリィが両手を挙げて喜んだ。昨晩寝ながらパンを食ったの覚えてないんだろうなぁ~。
俺は急いで作り置きしておいた丸パンを、レンジで軽く温め、バターをたっぷり塗る。
スープは野草スープだ。ハマボウフウに似た名もなき野草は、スープに清々しさを与える。俺は勝手にこの茎の赤い野草を「爽やか草」と呼んでいる。香りは形容しがたいが、とにかく爽やかなのだ。味は若干塩味がする。朝にぴったりの味だ。
これだけでは寂しいので目玉焼きを作ろうかと思ったが、面白くない。なので四角い玉子焼きフライパンに塩とチキンストックで味を付けた卵液を流して、その上に薄いハムを乗せて火が通ったら巻く。
9人もいるので卵焼きを三本作って、三つずつに切り分けた。それでも厚めに作ったので結構なボリュームがある。
プレートにパンと卵焼きとスープのお椀を乗せて皆に配る。
「頂きます!」
俺はいつものように手を合わせてそう言うと、リュウグの両親も同じ様に手を合わせている。
「キュル!」
「キュル!」
きっと食事前の祈りなんだろうな。キュルしか言ってないけど、長いお祈りの言葉を言ったに違いない。ノームは早口だからな。
「この卵料理は変わっているね。樹族の”千枚の葉“というお菓子に似ているよ」
ミルフィーユ的なやつか?
「優しい味だ。寝起きに濃い味の料理は食べたくないのだが、これなら無理なく食べられる。オビオは料理人なのかね?」
ウィングが鼻声で訊いてくる。
「そうだ」
「パン、とても美味しいよ! 外は香ばしく焼けているのに中はふわふわだ。僕はこのようなパンを初めて食べるね。いつも食べる白パンはもっとギュッと詰まっていて重い。でもこのパンは軽くていいね」
うぐぅ・・・。ウィングが褒めてくれている。さっきまでこの金髪野郎に対する猜疑心でいっぱいだったのに、もう心がほぐれてきた。こいつの魅力の高さは厄介だぞ!
「そりゃどうも。ところでリュウグはどうするんだ? 両親も見つかったし、帰るのか?」
リュウグが寂しそうな顔をした。やめろ、俺まで寂しくなる。
「・・・うん、そうなるけどな。でも飛空艇乗り場は、ポルロンドまで行かんとないねん」
「まぁ最初からリュウグの両親を探しにポルロンドに行く予定だったし、俺らが護衛するよ。でも先にブラッドに寄っていい?」
「ええの? まだもうちょっとだけオビオと一緒にいれるのは嬉しいわ! お父さん、ブラッドに寄ってからでいい?」
「キュル!」
なんで翻訳機使わねぇんだよ。ってかまた使うの忘れてるな? ノームってうっかりさんなんだな。
「やった! ええって!」
「じゃあ朝ごはんを食べたら早速出発だな」
「うん!」
ブラッド辺境伯には剣を返すだけだし、厄介なことには巻き込まれないだろう。あそこは霧の魔物がよく出るらしいけど、それはエリート種の皆さんに任せますか。
「僕もついて行くよ。僕の任務はノームの家族を無事帰国させる事だからね」
金髪君は前髪をファサっと振り払って目を瞑りながらそう言った。目を開けて喋れ!
やだなぁ。こいつがトラブルの素になったりしないかな・・・。
「お前らがベッドの真ん中を占領したからだろ!」
癖毛と見分けがつかない寝癖を撫でつけて、リュウグはキャンプ敷地内の変化に気が付いた。
「ん? あれ? 焚火に寝袋が三つあるけど? 夜中に旅人でも来たんか?」
俺は目を擦りながら白々しい演技をする。
「さぁ~誰かな~。俺も知らないな~」
駄目だ、嬉しくて顔が笑ってしまう。
しばらく俺の顔をぼんやり見ていたリュウグだったが、頭が良いので察しが早い。
「まさか!」
くぅー。サプラーイズ! とか言いたかったのにもうバレた。
リュウグは寝巻のまま、皮でできた寝袋に近寄るとフードをまくり上げた。
ハズレ。一番最初に出てきた顔はウィングだった。健やかな寝顔がムカツクぜ。
「誰や! あんたは! 紛らわしいな! アホ!」
リュウグは爪で彼の顔を引っかく。ウィングにとっては、とんでもねぇとばっちりだが、ちょっとスカッとする。
「ああぁ! 僕の美しい顔が!」
芋虫のようにウネウネと動いて、ウィングは手を寝袋から出すと顔を押さえた。
ざまぁ! イケメンが台無しだな! ひゃはー!
リュウグはウィングのことなど気にせず、直ぐに他の寝袋に飛びついた。
「お父さん! お母さん!」
「キュル!」
「キュル!」
相変わらずノームは早口で何を言っているのかわかんねぇ。でも娘の名を呼んでいるのだと思う。
リュウグの両親は目を覚まして娘の顔を見ると、急いで寝袋から這い出て抱き着いた。
「よかった! お父さんもお母さんも無事だった! うわ~ん!」
皆も起きてきて抱き合う家族に笑顔を送る。
「良かったな! リュウグ!」
俺は嬉しさのあまり、近くにいたトウスさんを背中から抱きしめてしまった。
しかしトウスさんも、それが俺の感情の高まりからくるものだと理解してくれているので、然程気にした様子はない。
それを良い事に俺は存分にライオン丸のような鬣を堪能した。
「たまんね、モフモフだ」
「なんか言ったか? オビオ。まぁ嬉しくなると誰かに抱き着きたくなるのは解るけどよ。あんまりひっつくな」
「へへへ、ごめん」
トウスさんから離れ、俺は共に喜びを分かち合う仲間を探した。
ピーターが両手を広げて待っている。ほら、来いよ! 的な顔がムカツクが、まぁこの際いいか。
俺は小さな地走り族を抱き上げてギュッとハグしてみた。子供を抱っこしているようで悪くはない。
しかし抱っこした瞬間、ピーターの下半身から料理で匂った事のある匂いがしてきた。
「イカくせぇ! イカの煮物かよ!」
まーた昨晩ゴソゴソしてたんか!
地面に叩きつけるようにピーターを下したが、彼は猫のようにシュタっと着地すると邪悪な顔で俺を睨んだ。
「シコってねぇし!」
「シコっただろ! いい加減に事実を認めろ! このシコリ魔!」
「お前ら・・・。親子の再会を、生臭い下ネタで汚すな。バカが」
サーカが手から放電して威嚇したので、俺たちは直立不動になり口を閉じた。
「で、どういう事なんだ? オビオ」
「昨日の夜中にトウスさんが、見知らぬ人の気配に気が付いて、賊かと思って攻撃したんだ。だよな?」
「ああ、ウィングは手練の魔法使いだったぞ」
「傷はもう大丈夫?」
「オビオのパンのお陰で問題ないぜ。ありがとな」
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「何かの間違いじゃないのかね? オーガ神の再来は、我々も喜んでいるよ。なにせ我らは神に見放されたと何千年も嘆いてきたのだからね。どんな神でもいてくれるだけ嬉しいよ」
よく言うぜ。どうせ、大神聖もお前らの懐に大打撃を与えるから消そうって考えてるんだろ。最近、星のオーガの信者がモリモリ増えてるしな?
「残念だが、ウィング助祭。これまでの証拠の数々を、私はシルビィ様に送っている。モティの一司祭がやった事とはいえ、樹族国の主権を侵害したと我が王が判断すれば、国家間の問題に発展するだろう。それに宗教の監視者である修道騎士も、これまでの出来事を見ている。司祭カク・カクイの神前審問は避けられないと思うのだが? 一司祭程度であれば、メリィでも即時に裁くことが可能だ」
ちょっと威厳をこめて、真面目な口調で言ってみたが・・・。
「全ては神の御心のままに。カクイ司祭が裏で何かをやっていたのであれば、因果は必ず巡りましょう」
成り行きを見守るって事か? まぁウィングには直接関係ない話だもんな。
「一応、俺はお前を視るからな? お前、なんか怪しいんだわ」
俺の直感は滅多に外れない。この金髪野郎はなにかを隠している。
「どうぞ」
俺はウィングの頭に手を置いた。
「名前はウィング・ライトフット。40歳。短命種換算で二十歳。つまり大人になりたての新米ちゃんか。アライメントはローフル・ニュートラル・・・。サーカと同じだな。実力値は11の司祭兼戦士。昨日言ってた通りだな。魅力値が16もありやがる! それ以外は如何にも司祭と言った感じか。信仰する神が星のオーガだと? 樹族なのに?」
「何を驚くことがある? どの神だろうと信仰心を持つことは尊き事で、それを咎める事などできなはずだがね」
「まぁ信仰する神なんて今はどうでもいいか。他に何か怪しい情報は・・・。こいつ、能力者だ! 女になれる能力がある!」
女になって姿を変えて潜入任務をこなしたりするわけだ?
「能力は神が与えし恩恵。つまり僕は神に愛されている男なのだよ、君ぃ」
「あっそ。うちにも能力持ちがいるけどな。誰がそうなのかは教えてやんね、相手の情報は出来るだけ手に入れて、こちらの情報は一切出さない。怪しい奴に出会った時の常識な、これ」
「馬鹿だな・・・オビオは。能力持ちがいるっていう情報を、相手に与えているじゃないか」
うぐっ! ピーターめ! 俺に恥をかかせやがって。
俺はイカくさピーターのツッコミを無視して、更に情報を探る。
「なんつーか、怪しいところが一個もねぇ・・・」
俺は躍起になって情報を探ったが、特に何も出てこなかった事が悔しかった。こいつにはもっと裏があるはずなのに・・・。それをズバリと指摘してドヤ顔がしたかった・・・。
「当たり前だよ。僕はこのノーム二人をバトルコック団に会わせるように命令されただけだからね」
「ふん、でも腹の中では何を考えているかはわからないけどな」
「それは誰だってそうだろう?」
くっそー! ああいえばこういう。憎たらしい奴め。まだピーターが可愛く見えるほどだ!
俺は念のためリュウグの両親にも触れてみる。健康状態に異常なし。魔法による意識操作もなし。
「リュウグ。一応両親に【解除】の巻物使っといたら? なんか怪しいんだわ」
「うん」
リュウグが巻物を広げると光がリュウグの両親を包んだ。
これで安心だろ。もしかしたら情報を偽装する類の魔法があるかもしれねぇし。
「メリィは何か尋問する事があるか?」
「ううん、無いよぉ」
最後まで観察者として通すのかな? この件に関する判断は、神前審問まで出さないってわけか。
「まぁひと段落ついたし朝飯にすっか」
「わぁーい!」
メリィが両手を挙げて喜んだ。昨晩寝ながらパンを食ったの覚えてないんだろうなぁ~。
俺は急いで作り置きしておいた丸パンを、レンジで軽く温め、バターをたっぷり塗る。
スープは野草スープだ。ハマボウフウに似た名もなき野草は、スープに清々しさを与える。俺は勝手にこの茎の赤い野草を「爽やか草」と呼んでいる。香りは形容しがたいが、とにかく爽やかなのだ。味は若干塩味がする。朝にぴったりの味だ。
これだけでは寂しいので目玉焼きを作ろうかと思ったが、面白くない。なので四角い玉子焼きフライパンに塩とチキンストックで味を付けた卵液を流して、その上に薄いハムを乗せて火が通ったら巻く。
9人もいるので卵焼きを三本作って、三つずつに切り分けた。それでも厚めに作ったので結構なボリュームがある。
プレートにパンと卵焼きとスープのお椀を乗せて皆に配る。
「頂きます!」
俺はいつものように手を合わせてそう言うと、リュウグの両親も同じ様に手を合わせている。
「キュル!」
「キュル!」
きっと食事前の祈りなんだろうな。キュルしか言ってないけど、長いお祈りの言葉を言ったに違いない。ノームは早口だからな。
「この卵料理は変わっているね。樹族の”千枚の葉“というお菓子に似ているよ」
ミルフィーユ的なやつか?
「優しい味だ。寝起きに濃い味の料理は食べたくないのだが、これなら無理なく食べられる。オビオは料理人なのかね?」
ウィングが鼻声で訊いてくる。
「そうだ」
「パン、とても美味しいよ! 外は香ばしく焼けているのに中はふわふわだ。僕はこのようなパンを初めて食べるね。いつも食べる白パンはもっとギュッと詰まっていて重い。でもこのパンは軽くていいね」
うぐぅ・・・。ウィングが褒めてくれている。さっきまでこの金髪野郎に対する猜疑心でいっぱいだったのに、もう心がほぐれてきた。こいつの魅力の高さは厄介だぞ!
「そりゃどうも。ところでリュウグはどうするんだ? 両親も見つかったし、帰るのか?」
リュウグが寂しそうな顔をした。やめろ、俺まで寂しくなる。
「・・・うん、そうなるけどな。でも飛空艇乗り場は、ポルロンドまで行かんとないねん」
「まぁ最初からリュウグの両親を探しにポルロンドに行く予定だったし、俺らが護衛するよ。でも先にブラッドに寄っていい?」
「ええの? まだもうちょっとだけオビオと一緒にいれるのは嬉しいわ! お父さん、ブラッドに寄ってからでいい?」
「キュル!」
なんで翻訳機使わねぇんだよ。ってかまた使うの忘れてるな? ノームってうっかりさんなんだな。
「やった! ええって!」
「じゃあ朝ごはんを食べたら早速出発だな」
「うん!」
ブラッド辺境伯には剣を返すだけだし、厄介なことには巻き込まれないだろう。あそこは霧の魔物がよく出るらしいけど、それはエリート種の皆さんに任せますか。
「僕もついて行くよ。僕の任務はノームの家族を無事帰国させる事だからね」
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