料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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エリートの街

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 オーガでも乗れる大きな馬車は、小さなノームが三人増えたところで狭くなる事はないけどさ・・・。

「おい、ウィング。なんでお前が俺の膝の上に座っているんだよ。馴れ馴れしいぞ」

 イケメン樹族のウィングは窓の外の風景を見て俺の話を無視した。

「もうすぐブラッドだね。ブラッド名物の高い城壁が見えてきたよ」

「聞いてんのか? 隣に座れるスペースがあるだろうが」

「煩いオーガだね、君は。ではこのまま座らせたくなるようにしてみせようか?」

 ん? ウィングの体が一回り小さくなったような・・・。体も柔らかい。

「どうかね? 美女が膝の上に座っている気分は」

 女に変身しやがった。ちょっと俺の股間がふっくらとしてしまう。

「まぁ確かに美女だけどよ、ベースがお前だから何とも思わねぇわ。さっさとどけ」

 張りのある尻を俺の股間に押し付けるな。糞が。

「オビオの言う通りやで! 最初から男やって解ってるのに、欲情するわけないやろ。聖職者やのにエロイな! はよどき! そこには私が座る!」

 そうだぞ、リュウグの言う通りだぞ。・・・なに? 俺の膝に座るだと? リュウグは本物の女子だから膝に座られると興奮してしまう可能性がある。駄目だ。

「いいから自分の席に座れよ、お前ら。もう着くぞ」

 股間の微かな膨らみを気付かれまいと気取っていると、城門が見えてきた。

 城門前は大きな空き地があり、駅馬車が並んでいたのでそこで俺たちは降りる事にした。

 財布袋から金貨一枚を出して御者に渡し礼を言うと、御者の地走り族は嬉しそうな顔で「毎度あり」と言って休むことなくアルケディアへと戻っていった。金貨一枚は破格だったかな? 色を付け過ぎたかもしれない。まぁいいか。

「やっと着いたな・・・。さぁさっさと魔剣蛇殺しを返しに行こう」

 エリート種の住む街、ブラッド。賑やかなこの街を行きかう人々は普通の樹族や地走り族にしか見えないけどな。

 オーガやノームはやはり珍しいのか、人々は俺たち一行をジロジロと見ている。特に俺に対して嫌悪の表情を向ける輩が多い。しかし傍にメリィやサーカがいるのを見てその顔を緩める。

「オーガって余程嫌われてんだな・・・」

「当たり前だろう。我ら樹族の者がオーガを見る時は戦場か、つい最近閉鎖された闘技場くらいだったからな。特にブラッドの領民は戦場に派遣される事が多い。国境での戦いならオーガと戦う事も、多々あっただろう」

 サーカはブラッド辺境伯の館を、道端の案内地図を見ながらそう答えた。

「なんだ。じゃあブラッドの領民は皆、傭兵みたいなもんか?」

「まぁ大雑把に言えばそうだな。上級傭兵というか。領主同士のイザコザがあると、ここのエリート部隊を雇った領主が必ず勝つ。貴重な人材であるブラッド領民の同士討ちを避ける為にも、ブラッド辺境伯も片方にしか派遣しない」

「じゃあ人材派遣で成り立っている国なのか?」

「いや、そうでもない。地下資源が豊富だから派遣はその次ぐらいだな。ブラッド領は主に霧の魔物を相手にする為にある。ここが崩れると霧の魔物が王都へと侵攻してくるからな」

「まじか。それって、辺境伯だけがめっちゃくちゃ負担を強いられてね?」

「そうだな。その代わり強力な軍隊や魔法を持つ事を許されているし、他の領主もブラッド辺境伯と事を構えるのを避けている」

「だろうな。エリート種ばかりなら、どこの軍隊よりも強いだろうし。強力な霧の魔物を相手できるのも、こいつらしかいねぇんだろ? でもさ、そんだけ力があるなら、王様に従う必要もなさそうだけど?」

「王家の血筋を辿ればここだと言われてるから、ブラッド辺境伯も王族を親戚のように思っているのだろう」

「え? じゃあ魔法水晶で見た事ある、あのチンチクリンのシュラスだかシラスだかって名前の王様は、エリート種なのか?」

「プハハ! チンチクリンの王だと? 不敬だぞ。ああ、その通りだ。ああ見えて長生きをしているし、結構な魔法の使い手なのだ」

「不敬って言いながら、サーカも笑ってんじゃん」

 ふと気づくと、傍でリュウグ達がエリート種たちに囲まれていた。ほっぺたをプニプニされ、頭に乗っているコーンハットを取られて撫でられたりしている。

「やだぁ! ノーム可愛い!」

「初めて見たぁ! 持って帰りたい!」

 ノーム一家はおもに、樹族の女子に撫でまわされている。、リュウグたちは黙って堪えているけど、いつまでもつかな? 女の可愛い攻撃はしつこいぞ~?

 ピーターも可愛い顔をして自分も撫でてくれとアピールしていたが、スルーされている。ぬはは、馬鹿め。

 地走り族よりも小さく、変なコーンハットを被っているリュウグ達は、如何にも妖精さんといった見た目なので可愛く見えるのだろう。髭もじゃのお父さんですら、髭を扱かれている。いやらしい!

「もう! なによ! 馴れ馴れしく触らんといて!」

 しつこく撫でまわす取り巻きに、ついにリュウグが怒った。

「きゃー! 方言が可愛い!」

 樹族と一緒にいた可愛い地走り族にすら、可愛いと言われる始末である。

 ピーターが諦めて俺の方に寄ってきた。八つ当たりするようにして、邪悪な顔でこちらを睨んでいる。

「なんだよ。なんで俺を睨むんだよ。邪悪なるピーター君」

「ノームが可愛いからモテるのは解るけどよ。なんでお前までモテるんだよ!」

「へ? 俺が? いつ?」

 何言ってんだこいつ。俺には誰も近寄ってこねぇけど? 寧ろ嫌悪されてんだが?

「遠巻きにお前を見る女子の顔を見てみろ。皆、頬が赤いだろ。嫌悪しているのはその近くにいる男ばかりだ。彼女がうっとりとしてお前を見ているから、彼氏が嫉妬してんだよ」

「いや、俺じゃねぇだろ。ウィング見てんじゃね?」

「あほか、ウィングレベルの美貌ならこの領地には、掃いて捨てる程いるんだよ」

「じゃあなんでよ?」

「お前な、自分で出してる色気に気が付いてないのか? 顔こそ普通だが、お前は妙な匂いを出してんだよ。騎士様がお前と添い寝したがるのもそれのせいなんだ、きっと」

「そうなのか? サーカ」

「は? 寝ぼけた事を抜かすな。死ね! お前はぬいぐるみ代わりだと言っておろう」

 ピーターに負けないくらい憎たらしい顔をして、サーカは鼻に皺を寄せた。

「ほらみろ。死ねとか言われたじゃん。お前、俺を担いでまた悪さしようと企んでるな?」

「ちげぇって。前からお前が何でモテるのかわからなくて一生懸命考えて辿り着いた結果がこれなんだよ。オビオは確かに良い匂いがするんだよ。ねぇ? 修道騎士様」

「そうねぇ。いい匂いがするわぁ。食べ物の匂い!」

 メリィがドラクエのスライムみたいな口をして涎を垂らしたので、俺はその口にそっとチョコ菓子を突っ込んだ。メリィは嬉しそうにモグモグしている。

 この人に色気とかの話を訊くのは間違いだろ、ピーター。メリィは戦隊ものでいえば黄色。食いしん坊キャラだしさ・・・。

 グー。

「えへへ! お菓子を食べたら、私お腹がすいちゃったぁ」

 ほらな。でも正直で可愛いなぁ、メリィは。その赤ちゃんのように可愛い地走り族のほっぺにチューしたいわ。

「そうだ、たまには俺以外の料理が食べたいだろ? ブラッド辺境伯に会いに行く前に、レストランで食事をしようぜ!」

「いいな! エリート種が作る料理だし、きっと美味いぜ!」

 トウスさんが涎を拭った。

「たまにはオビオの作った料理以外を食べないと、俺たちは今までどんな料理を食っていたのか忘れちゃうしな」

 お前はこれまで教会で貧しい料理を食ってただろ、ピーター。なにグルメ気取ってんだ。

 という事で俺たちは近くのレストランに入る事にした。
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