料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

文字の大きさ
144 / 331

言うわけない

しおりを挟む
 領土境ごとに見せる必要のある手形を詰め所で提示し、書類にサインをして俺達は外に出た。

 そう、ようやくカクイ司祭のいるモティの田舎までやって来たのだ。

 崖の上に立つ首都モティに比べて、ここは実に長閑で空気も美味い。伸びをしながら俺は何気なく思っていた事を口に出した。

「あの話の流れからして、バガー兄弟に襲われると思ったんだけどなぁ」

「噂をしただけで、フラグが立ってたまるか!」

 サーカに怒鳴られたが、反論はしない。確かにフラグが立たれては困る。

 第一、バガー兄弟が相手にしそうなのは、ヒジリや、いつぞやの自由騎士のような気がする。

「けど興味あるなぁ。バガー兄弟って、どんな見た目なんだ? ピーター」

「兄は細長い顔をしていて、ちょっとしゃくれ顎のオカッパ。弟は四角い顔をしていて眼鏡のオカッパ。どちらもオークだから、下顎から長い牙が見えているよ」

「私と同じだね! オカッパ!」

 そこは喜ぶとこじゃないだろ、ムク。でも可愛いからツッコまない。

「そうだね~。良かったね~」

「うん! あの人達と同じだね!」

 えっ?

 ムクが指差した先に、バガー兄弟がいた。う、嘘だろ・・・。一瞬にしてパーティに緊張が走る。

 またバトルになるのか?

「兄者、こんな田舎にオーガがいるぞ」

 背が低く、顔の四角いオークが俺を指差している。

「弟者、ここは偏屈者の国、樹族国ではない。オーガはさして珍しくはない」

 下唇が飛び出たオークがそう答える。こちらへの敵意は、無さそうだな・・・。

「兄者、あれはバトルディック団ではないか?」

「弟者、正しくはバトルコック団だ」

「兄者は何でも知っているな」

「あんちゃん、偉いだろ?」

「兄者は偉い」

 なんだよ、そのしょうもない会話!

 そもそも暗殺者が真っ昼間に、堂々と街道を歩いてていいのかよ!

「あの~」

 ピーターが腰を折りつつ、ハエのように手を高速で擦りつけて、バガー兄弟に近づく。摩擦熱で手を火傷するぞ。

「もしかして、バトルコック団が標的になっていたりしませんよね?」

 こいつ、もしバトルコック団が標的になってたら、速攻影に潜んで逃げるつもりだな。現に踵が影に沈んでいる。

「我らが標的は、自由騎士」

 言って良いのかよ! そういうのって秘密事項でしょうが!

 ピーターの踵が、自分の影から浮き上がった。

「でしょうとも! あいつは良い子ちゃんぶってて、いけ好かない奴なんですよー」

 揉み手が凄い。塩でも揉み込んでいるのか? 良い味のおにぎりが作れそうだ。

「会ったことがあるのか? 地走り族」

 兄者の目が険しくなった。アホだなー、ピーターは。地雷踏んでやがんの。

「へ? ええ! じゅじゅじゅ、樹族国で会いました。そんでコテンパンにされました! な? オビオ!」

 俺に振るんじゃねぇよ! 巻き込むな!

「顔はどんなだった?」

「顔ですか? えぇっと。髪型は俺ぐらい短くて、頭の両端に短いアホ毛が二つありました!」

「髪色は?」

「青黒いです」

 おもっくそ情報与えてんじゃねぇかよ! ・・・まぁ自由騎士ヤイバなら何とかするだろ。

「ふむ。それはまごうことなき自由騎士だ。しかし、おかしい。樹族国には何度も足を運んだのだが・・・。そうだった。彼奴は神出鬼没。今一度、樹族国に向かうぞ、弟者」

「了解した、兄者」

 二人は顔を見合わせて頷くと、瞬時に消えた。

「おごぉ・・・。寿命が一年は縮んだ」

 ピーターは吐き気を抑えながら、そう呟いた。余程緊張していたのだろう。

「サーカの大好きな自由騎士様は、バガー兄弟に狙われているのか。こりゃ大変だな」

 トウスさんが少し茶化すような感じでサーカをからかう。

「ふん。自由騎士様は、ツィガル帝国の鉄騎士であり、強力なメイジでもある。防御術は西の大陸随一。接近戦を挑めば、バトルハンマーで即死。離れれば氷魔法が襲う。あんな暗殺者ごときにヤイバ様が負けるものか」

 くそ、なんか腹が立つ。サーカはヤイバ・フーリーに憧れを抱いている。それにあいつはイケメンだからなぁ。俺が奴に勝てるものといえば、料理の腕前だけだ・・・。

「それにしても、あの二人が撒き散らす恐怖のオーラは凄かったね。脚がすくんだよ」

 ウィングが脚を叩いて緊張を解している。

「格下が即死するオーラもあるらしいよ」

 ピーターが怖いことを言った。

「それは使い分けられるのか?」

「うん。キリマルだったら余裕で出せるだろうね。でもあの戦いのときは、恐怖のオーラで手加減してたみたいだけど」

 ブルブル。あいつの話をするなよ。ピーターも自分で言っておいて、一口ゲロ吐きそうになってんじゃねぇか。

「バガー兄弟か。戦ってみたかったな。あれらなら、俺とオビオとメリィだけで、何とかなったかもよ」

「冗談はよしてよ、トウスさん。あいつら、真っ先にメリィを狙うだろうし、そうそう上手くいかないって」

 ヒーラーを真っ先に潰すのは戦いの常套手段。

「メリィはオビオに守らせる。暗殺者は基本的に影から現れるからな。オビオは影を見張ってりゃいい。奴らが正面切って戦う時は、毒の遠距離武器を使う。それもオビオが受ける。おまえさんには毒が効かねぇしよ。後は俺があの二人を倒す。暗殺者は戦士に弱いからな」

 三すくみの法則か。戦士は盗賊に強く、盗賊はメイジに強く、メイジは戦士に強い。なんでこんな法則があるんだろうな。

「でもナンベルさんみたいに、戦士と真正面から戦える暗殺者もいるよ?」

「バガー兄弟はどう見ても、道化師じゃなかったろ。暗殺者だ。俺ならやれる」

「あっ!」

 急にメリィが声を上げた。どうした?

「あの人達に、依頼主の名前を聞いておけばよかったぁ!」

 そっか。暗殺の依頼主がモティの司祭だったら、確実に証拠を掴んだことになる。

 って、アホ! いくらバガー兄弟の頭が良くないとは言ってもさぁ・・・。

「依頼主の名前を言うわけないだろ!」

 とムク以外の全員から、メリィはツッコまれていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

スキル素潜り ~はずれスキルで成りあがる

葉月ゆな
ファンタジー
伯爵家の次男坊ダニエル・エインズワース。この世界では女神様より他人より優れたスキルが1人につき1つ与えられるが、ダニエルが与えられたスキルは「素潜り」。貴族としては、はずれスキルである。家族もバラバラ、仲の悪い長男は伯爵家の恥だと騒ぎたてることに嫌気をさし、伯爵家が保有する無人島へ行くことにした。はずれスキルで活躍していくダニエルの話を聞きつけた、はずれもしくは意味不明なスキルを持つ面々が集まり無人島の開拓生活がはじまる。

処理中です...