料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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現人神と重ねる体

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「ほら、また感情が先走っている!」

 パワードスーツを着ていない現人神に注意を受け、突き出した拳を躱されて肘を叩かれた。

 腕に痺れが走り、反射的に手を引っ込めると、ヒジリのパンチが俺の顔面にめり込む。

「君は一撃が軽いのだから、手数で攻めなければならないのに、直ぐにムキになって隙を作ってしまう。本当に地球人なのかね?」

 ジャイアンに殴られたのび太のような顔の穴を、一息つかずにナノマシンが修復する。それでも鼻がじんじんと痛い。普通の地球人なら即死するパンチを、ヒジリは容赦なく叩き込んでくる。腹が立つなぁ、もう。

「感性特化型なんて、大体こんなもんじゃないですかね? 割とナチュラルに寄せられてデザインされますよ?」

「そうか。周りに感性特化型はいなかったものでね。私のような万能型よりレアだな」

「それにしても、似非戦士の俺を鍛えて意味あるんすか?」

 俺はヒジリの懐に飛び込み、背負投を狙う。

「マナの穴は、マナを寄せ付けない者にとっては、なんでもない場所だが、君が持つナノマシンは違う」

 見事背負投が成功して、ヒジリが飛ばされながら返事をした。

「俺のナノマシンは、どんな状態なんですか?」

 飛ばされるヒジリを見て油断していると、どうやったのか現人神は空中で体を捻って、こちらに向きを変え、ドリルのようなキックを繰り出してきた。

 今のは慣性の法則を無視した動きだったぞ、どうやったんだ? あの裸の背中にはバーニアでも付いているのか?

 咄嗟に両腕でドリルキックをガードすると、ナノマシンが硬質化して、より防御力を上げてくれた。

「それなのだよ、オビオ。君のその適応能力の高いナノマシンを見て、わからんかね?」

 そういえば、最初の頃はこれほどナノマシンが適応してくれなかったな。

「正直に言うと、その安物のナノマシンの成長や適応能力は異常だ。そこまでいくと、最早マナ粒子が作用しているとしか思えない。そんな君が、マナの噴出孔に近づくとどうなると思うかね?」

 そういや、そんな事考えた事もなかった。今までマナとか魔法はスゲェとしか思ってなかったからな。

「どうなるんです?」

「ナノマシン及び、細胞が癌化すると私は予想する。今日の特訓はこれぐらいでいいだろう」

 汗一つかかない俺とヒジリは、東屋に座って会話を続けることにした。

「癌化・・・。つまり細胞が膨れ上がって俺は死ぬんですか?」

「膨れ上がると言うよりは、細胞とナノマシンが増殖して、だな。君にはサブ人工知能が埋め込まれているだろう? 今、癌化していないのは、あれが動作しているお陰だ。この星のどこかで作り出される遮蔽フィールド下にいると、我々は時間が経つにつれ壊れていく。私やウメボシは定期的にカプリコンの中で、メンテナンスを受けているから問題はないが、君はどうだ? いくら低性能なナノマシンが、遮蔽フィールドの影響を受けにくいとはいえ、やはり君は壊れてきているのだ」

「だから俺を鍛えて、ナノマシンをなるべく使わないようにしよう、というわけですね?」

「そういう事だ。君と一緒に大穴に行きたいのだが、あいにく私は王という立場。人を導く身でね。そうそう時間を作る事ができないのだ。しかも私が、コズミック・ノートのしおりとやらに触れれば、その効果を消しかねない。頼みの綱はバトルコック団しかいないのだよ」

「でも、サヴェリフェ姉妹や砦の戦士に頼む事も出来るじゃないですか」

 そう言うとヒジリは片眉を上げて、若干傲慢な顔になった。

「あれらは貴重な人材なのだ。姉妹はこの星に来て最初にコンタクトした者。愛着がある。しかも今や国際的に影響力を持つ大物となった。おいそれと姉妹を危険なマナの穴には送れん。それに砦の戦士は治安維持としての役目がある。最近は樹族や地走り族の流入も多い。闇側の魔物は光側の者を襲うからな。それらから守らねばならんのだ」

 要は自国の人材の消費を避けたいという事か。ヒジリらしいや。

「でもコロネちゃんと砦の戦士のドォスンは、自由にダンジョン探索に行かせているじゃないですか、聖下」

「あの二人は私の目の届く範囲にいるから問題ない。危険になったら即座に転移して助ける」

 遮蔽フィールド下での転送は相当危険だが、そのリスクを負ってでもその二人は助けるが、バトルコック団は助けないと。ほうほう。

「俺にも監視ナノマシンを付着させているくせに、酷い扱いだ」

「まぁ、そう言うな。その代わりこうやって、特訓の手伝いをしているじゃないか」

 ニヤリと笑うヒジリの顔は憎たらしい。

「そりゃ、あるかどうかも分からない物を探しに行くんですから、俺たちのような使い捨て冒険者の方が、最適ですよね。しおりを見つけたら監視ナノマシンからデータを収集して、地球に送るんでしょ? また地球での名声が上がりますね、大神聖博士」

「嫌味かね? フフフ」

 そりゃ嫌味も言いたくなるさ。「フフフ」じゃねぇよ。こっちは命張ってんだぞ。

「しおりを見つけたら、約束してもらえるんでしょうね? 滞在許可を」

「八割の確率で滞在許可を出すと言っておこう。残りの二割は君のナノマシン次第だ。それに一度、地球に帰って正規の入星許可証を貰ったほうがいい。このままだと、君は地球において犯罪者のままだからな」

「ヴィラン遺伝子を持ったナチュラルが作ったゲートに、放り込まれた事も証言しといてくださいよ」

「それはまた別の話だな。さてその件で何を頼もうか・・・」

 この糞神!

「ずるぃ! そ、そうだ! 相撲! 相撲で決着をつけましょう!」

 何言ってんだ。俺。咄嗟に出た言葉が相撲ってなんだよ。カッパか!

「ほう? あの国技とよく間違えられていた神事で、物事を決めると言うのかね? いいだろう」

 いいんかーい! へぇ、相撲って国技じゃなかったんだ?

 今の俺なら相撲でヒジリに勝てるかもしれねぇ。なんせ、この一週間で実力値が45まで上がったからな。相撲は力押しだけじゃあない。舞の海のように、技でも勝負できる世界だ。

 俺はそそくさと、桃色城の庭に丸い円を描いて四股を踏んだ。するとヒジリも同じように四股を踏む。即席土俵の外で。しかも明後日の方向を向いて。

「外で四股ってんじゃねぇよ!」

 ヒジリも時々ボケよるんよ。パーティでもツッコミ役、ここでもツッコミ役。疲れるわっ!

「シコってねぇよ!」

 遠くからピーターの声が聞こえたが、無視する。

「すまんすまん。相撲なんて初めてだからな」

 ヒジリは土俵に入ってきて、塩の代わりに土を投げつけてきた。

「せめて塩にしてくれ! ぺっぺ。ってか、塩は相手に投げつけるもんじゃねぇ!」

「悪い。それではいくとするか。ハッケヨイ」

「ノコッタ!」

 パワーファイターのヒジリとまともにぶつかり合えば、弾き飛ばされて土俵外に出るのは必至。

 俺は張り手を封じるべく、四手になって外掛けで押し倒す。

「むっ?」

 相撲が初めてだというのは本当だったのか。ヒジリはあっさりと倒れた。

「やった!」

 四手でヒジリに重なるように倒れたまま、俺が喜びを噛み締めていると、城の方から複数人の気配がした。

「まぁ! なんて美しい光景なのでしょう!」

 ウメボシが目を輝かせて、半裸で重なり合う俺達を見て感激している。

「オビッ! オビビビビッ! ビチクソォ!」

 サーカが口を∞にして、顔を怒りで歪ませている。

「クハハ! おめぇらに、そんな趣味があったとはな! ウメボシ、しっかり記録しとけよ!」

「言われるまでもありません」

 キ、キリマル! しかも、初期人修羅の頃の姿!

「重なる肉の悦びッ! それは愛ッ!」

 ビャクヤまで何言ってんだ。

「神に対して、不敬なりぃ~!」

 笑顔だが、不穏な空気を漂わせるメリィが、胸の前で剣を掲げた。帰ってきてたんだ?

「わぁぁ! 誤解だ!」

「オビオに手篭めにされた。私はもう、お嫁に行けないだろう」

 はぁ? ヒジリまで何言ってんの? そもそも、お前はお嫁に行かないだろ。
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