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禁断の箱庭と融合する前の世界(36)
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「総督が来たぞ!」
サヴェリフェ家の庭に入ってきた馬車の窓際に座る人物を見て外で遊んでいたコロネは大声を上げる。
ヒジリがツィガル帝国の皇帝になったことでグランデモニウムの総督を辞職し、その後釜に就いた新総督が馬車のタラップから降りてきた。
ヒジリの主であるタスネに引き継ぎの挨拶に来た豪勢な空色のビロードのローブを着た樹族の男は、シルクのハンカチで額の汗を拭いた。禿げているのでどこまでが額なのかは謎だが。
「ふぅ~。これまでの努力は無駄ではなかった。私は帰って来たぞ!王都に!・・・一時だけだけど。後で絵草紙買いに行こうっと」
後半は小さく呟いたつもりだったが待っていたタスネに聞こえており、ゲルシは白眼視される。
「ゲルシさん・・・。またアタシとヒジリの変な絵草紙買いに行くんじゃないでしょうね?」
「ハハハ。今度のはシオ侯爵とヒジリ聖下の・・・おっと。ゲフンゲフン!」
「お暑い中ご苦労様ですぅ。中へどうぞ、総督」
フランが助け舟を出すような形で屋敷に招いた。
(んんん!可愛いなぁ!フランちゃんは!私がもう少し若ければなぁ・・・。昔は髪がフッサフサのイケメンだったんだけど今やぽっちゃりさんだし・・・。あ~!あのポニーテールで顔を叩かれたい!)
彼が一度足りともイケメンだったことは無く、大人になってから髪がフサフサだった時期も短い。
ゲルシが部屋に入ると応接間は涼しい空気で満たされていた。汗がスーッと引いていき、驚きながらタスネに聞く。
「氷室から氷を?王族が氷を持って来いとうるさくないですか?」
「これはね~、ヒジリが涼しくなる箱を設置してくれたんですよ。”えあこん“とかいう名前だったかしら?だから氷室じゃないので氷はありません。そういえば総督就任と同時に子爵になったそうですね、おめでとうございますゲルシ総督」
「まぁ殆ど聖下の強力な推薦があったからこそなんですがね。子爵になっても名ばかり貴族ですよぉ」
「お互い領地を貰って左団扇で生活したいもんですねぇ。ゲルシさんは死者の大行進の時に北門で大活躍されてましたし、ようやく評価してもらえて良かったですね」
「ははっ!まぁいくら活躍しても聖下の足元にも及びませんがね。これは、管轄移譲に関する書類です」
「はぁ~。助かった~。正直、クロス地方の仕事で精一杯でヒジリがグランデモニウムの総督を辞めた時は不安で震えたものですけど、ゲルシさんが引き継いでくれて助かりました~」
「私も話が来た時は足が震えましたよ。雪原砦の将軍も聖下の知り合いの私なら、と言う事で納得してくれましたけど。彼らは治安維持部隊という名目で雇わせて頂きました。時々ならず者や盗賊がどこからともなくやって来て悪さをしますから。それに砦の戦士達が狩ってくる大きな牛も物凄く高値で取引されています。ですから街の経済活性化にも貢献しています。ほんと有り難いことです。まだまだ問題が多く、アルカディアの貴族たちからは化外の地と言われ馬鹿にされておりますが、目下は牛を買いに来る商人と巡礼者を相手に商売していこうと思っています」
ゲルシはゴデの街の近況を話しながらタスネの右手に指輪が付いている事に気がつく。
「おや?タスネさん、恋人でも出来たのですか?その指輪は主に女性が男性に送る浮気防止の魔法が篭った指輪で有名なんですが・・・。大昔からあるよくある指輪ですね」
「え?そうなんですか?どこで拾ったのかは覚えていないんですよねぇ、これ。ジャイアントスケルトン討伐後には既に指にはまっていたから、多分その時の物だと思います。呪いもなさそうだし、気に入ってるから指にはめたままにしているけど。あ!そういえば魔法の盾も手に入れたんですよ!見てもらっていいですか?ゲルシさんは【知識の欲】は得意ですよね?」
「ええ、大得意ですよ。なにせ元拷問官ですから。フッフッフ」
ゲルシは凄く悪い顔をしたが、凄味は無くタスネはフフフと笑いながら、飾ってあった盾と手の指輪をテーブルの上に置いた。
ゲルシが呪文を唱えそれぞれに手をかざし指輪の解説から始める。
「やはり、浮気防止用の録音指輪ですね。はめている間の会話はずっと録音されています。擦れば会話内容を聞けますよ。あと・・・この盾!これは相当な値打ち物ですよ!飛来物を何でも必ず弾き返す盾です。魔法ですら!ただし、自分に投げて寄越した食べ物等の有益な物も必ず弾き返します」
「魔法も弾く!?凄い・・・。ゴクリ。【火球】も【氷の槍】も【大火球】も?」
「ええ、ただ闇魔法とは相性が悪いですね。闇魔法は任意の場所に霧や雲、闇の炎を発生させますので弾けません。あと近接魔法にも効果はありません」
「光側だとかなり有用じゃないですか!やったー!」
「売れば、屋敷が十件ほど立ちますかね」
「キャーー!家宝にします!」
タスネはサヴェリフェ家初の家宝に喜びを隠せない。一頻り喜んだ後、指輪を念入りに擦り始めた。
「何が録音されているんだろ。アタシはつまんない会話しかしてないからなぁ~」
指輪からはいきなり言い争う声が聞こえてきた。
「ダンティラス!私のことが好きならその指輪の録音内容を聞かせて頂戴!」
「そんなに吾輩の事が信じられないのかね!ならば指輪の会話内容を聞くのである!」
―――カサコソ―――
「・・・・・・・・・・・・・」
「何も録音されてないじゃないの!指輪を外していたのね!馬鹿!バチーン!」
「アダーッ!待て!待つのである!カトリーナ!」
「知らない!さよなら!ダンティラス!」
「ええい!カトリーナの焼き餅焼きめ!吸魔鬼が付けても強力な魔力が干渉して効果があやふやになると吾輩は以前に言ったぞ!自分で試していないのか!馬鹿者が!こんな物は要らんのである!折角、面白そうな遺跡に誘ってやったというのに!」
そこから指輪を外したのか暫く無音が続いた。
「ハハハ、まさか吸魔鬼の痴話喧嘩が録音されていたなんて・・・」
「ん?まだ何か録音されているようですよ?」
指輪からガサガサと音がする。
「どうやらここまでのようですね。きっと仕掛けがあるか、鍵で開けるか、或いは聖下のような力持ちが開けるのか。扉を開く術を知らない我らはこれ以上助けにはなりません。一度戻りましょうか」
修道騎士のキミの優しい声がする。タスネは首を傾げる。こんな会話をしただろうか?
「誰かに会うのは千年ぶりかな。もう言葉を忘れるところであった・・・」
先ほどの吸魔鬼に似たバリトンの低い声がリバーブし、そこが広い空間であることが解る。
「命運尽きたか?いや、まだ吸魔鬼と戦った事の有る英雄子爵様がおられる!」
「ひぃぃ!」
タスネの情けない悲鳴が聞こえる。
「アタシ、こんなの知らない!本当にこれ録音の指輪なんですか?」
ゲルシは会話の続きを聞こうとタスネに黙るよう手で合図し、聞き耳を立てる。そして最後まで吸魔鬼の会話を聞いてふぅ~っと溜息をついて冷えた部屋の中で汗を拭った。
「何てことだ・・・・。タスネさんは吸魔鬼に出会っている!そして樹族のタブーに触れながらも生きて帰ってきた。恐ろしい!そして奇跡だ・・・」
ゲルシはガクガクと震えて自分の肩を抱き、泳ぐ目でタスネを見た。
タスネも驚いて動けない。その間にも録音内容は流れていく。他愛もないサヴェリフェ家の会話やタスネの昼寝のイビキの音。普段なら笑って録音を止めるところだが、最早それは二人の耳には入っていない。二人共タブーである樹族の遺跡の場所を知ってしまい恐怖で固まっているのだ。
「アタシ、吸魔鬼にパンを焼いて出してお話を聞いてあげてたなんて・・・。凄く優しい吸魔鬼だったから良かったけど、普通の吸魔鬼なら確実に殺されていたよね・・・」
少しずつ恐怖に縛られていた体の感覚が戻ってくる。
優しい吸魔鬼がいた・・・胸のモヤモヤはこれだったんだ。裏切りに嘆きつつも最後の最後まで友を疑いきらず、その友の幸せを知って涙する優しい吸魔鬼ダンティラス。
「聖下にお知らせしたほうが良いのでは?タスネさん」
「うん・・・。でも、もしヒジリが呪いを解けなくてダンティラスさんと戦う事になったらどうしよう。どう考えてもダンティラスさんに勝ち目は無いよ・・・」
「聖下なら何とかしてくれますよ。いつだってそうだったでしょう?」
「そうだよね・・・。きっとなんとかしてくれるよね!」
今回はヒジリに頼るしか無い。以前のような他力本願な気持ちから彼を頼るのではないと自分に言い聞かせ、タスネは召使に使いを送るよう指示を出し、再び指輪を擦って再生音を止めた。
二日後、ヒジリはカプリコンの転移でサヴェリフェ家の屋敷にやってきた。直ぐにでも話を聞きたかったのかタスネの部屋に直接転移してきたのだ。
ヒジリが現れた事で部屋の空気が移動し、風が巻き起こる。
丁度タスネは水浴びをした後だったので下着姿でベッドに座り、髪をタオルで拭いていた時の出来事だった。
タスネもイグナ同様お洒落に気を使うようになったのかカボチャのようなズロースではなく、生地の少ない下着を履いている。
「ふむ。大きいな」
いきなり現れて何もつけていない自分の胸を見てそう言うオーガに、タスネは悲鳴を上げ、ギャーギャーと罵声を浴びせながらヒジリの背中を押して部屋から追い出した。
「あら!どうしたの?ヒジリ」
タスネの部屋から現れたヒジリを見て、たまたま通りかかったフランが言う。
「主殿の部屋に転移したら、下着姿だったのだ」
「あー、それでギャーギャー騒いでいたのね。下着姿ぐらい別に気にしなくてもいいのにね。私だったら幾らでも見せてあげるわぁ」
「見せるだけかね?」
「やだぁ~!ヒジリったらやらしい~!もう少し大人になるまで待ってよ~。うふふふ」
「マスター、フランはまだ十三歳ですよ!全く!いやらしくなった!マスターは実にいやらしくなった!」
「度量の広いフランだからこそ言える冗談だ。本気にするなウメボシ」
確かにフランは姉と違って心が広い。同級生男子からの結構な頻度の下ネタも軽くいなし笑いに変えて返す程だ。処世術を心得ているというか。
暫くしてガチャと扉が開いてジト目のタスネが此方を見る。ジト目をするとイグナに似ている。
「狭量で悪かったわね!どうぞ」
中に入るとヒジリはさも当然のようにベッドの下を調べ出す。
「薄い絵草紙なんて持ってないわよ!男子じゃあるまいし!」
「いや・・・。そんな幼馴染の男子の部屋に来た女子のような事はしない。もしかしたら盗聴系のアイテムが仕掛けられているかと思ってね。タブーに敏感なのはイグナが倒したチャビン老師だけとは限らないだろう」
「だったらウメボシに”すきゃん”させればいいじゃないの」
「それもそうだな。ハハハ」
「この部屋に怪しいと思えるものはありません、マスター」
厳密に言うと老師を倒したのは”オリジナル”のイグナだ。今はもうこの世にはいない。心を壊した末に戦場に現れて黒竜に食い殺されてしまった。それを思い出して刹那的な悲しみと邪悪な黒竜への怒りが湧く。
ウメボシが心配するので直ぐに感情を制御をしたが、ふとイグナが心配になり一緒に部屋に入ってきたフランに聞く。
「イグナはいないのかね?」
「イグナはね~。今日はデートよぉ?キウピー君と魔法遊園地に行ったわ」
「そうか。それは楽しそうで何よりだ」
自分の事を好きだと言ってくれた可愛いイグナはどんどんと巣立ちの準備をしている。ヒジリは最初から解っていたのだ。彼女がヒジリに求めていたのは、当たり前だが恋人ではなく父親であるという事を。
フランも恐らくそうだろう。自分は彼女らが甘えたい時期に甘えられなかった父親の代用なのだ。
まだ私は二十歳なんだがなと心で笑い、もし自分に子供ができればいつかこんな気分を味わうのだろうか?自分の父や母は今、それを味わっているのだろうか?
寂しさで物思いに耽るヒジリをよそにタスネは指輪を擦った。
「グォォオー!フガッフガッ!スピー!」
いまいち指輪の操作が判らず昼寝のイビキのところで再生してしまいタスネは慌てる。
「怪獣かね?怪獣が現れたのかね?」
「もう!煩い!馬鹿ヒジリ!」
クスクスとフランは笑いながら邪魔にならないように部屋から出て行った。何となく廊下突き当りの窓から外を見る。
今日も庭の銅像には大勢の信者がやって来ていた。
巡礼はサヴェリフェ家の銅像から始まり、エポ村の教会の内壁に誰かが勝手に描いたヒジリ降臨の神々しい絵を眺め、最後にゴデの街で美味しい牛肉を食べながら、ヒジリが放った神の御柱について語りあうというルートが有る。
聖地巡礼の旅をせずに一生を終えるなかれ、という標語が出来るほどヒジリの軌跡を辿る旅は人気なのだ。
彼が闇側の神にも関わらず、信仰する者が多いのは闇側の神が光側に味方をしてくれているギャップの他、貧民出身の英雄子爵のサクセス・ストーリーも関係している。凄まじい速さで出世したタスネを見て現実的な恩恵があると信者は思っているのだ。
元々全ての神を一纏めにして信仰対象にしていたが、いつの頃からか宗派ができ、主に樹族の神とオーガの神の二大主神を信仰対象とするようになっていた。
その崇め奉られる星のオーガをタスネは馬鹿と罵って再び指輪を擦ると、丁度ダンティラスの会話から始まった。タスネの顔がぱっと明るくなりドヤァ!という顔をする。
ヒジリはタスネの大きなベッドに腰掛け、顔の前で手を組んで静かに聞いた。
そして最後まで聞き終わるとポツリと呟く。
「ダンティラスは良い奴だな。彼の恋人も過去にこの地で悪さをしていないようだ。吸魔鬼も個体差が大きいのだろう。まぁ悪さをする吸魔鬼ばかりに目が行き、吸魔鬼イコール国滅ぼしをする邪悪な存在と語り継がれ、大人しくひっそりと暮らす吸魔鬼が取り上げられないのは当然だが。ファナも憎しみに囚われなければ良い母親だった」
自分の吐いた言葉にズキリと心が痛む。あの時、他に何か策はなかったのか、虚無の渦に追いやる以外に良い術があったのではないか?
「自分を責めないでください、マスター。鼓動が早まっております。彼女はもう既にあの時、心を失っておりました。憎しみに囚われており、正気に戻ったのは死に際のほんの僅かな時間です。あの時はあれが最善だったのです」
「そうだと良いのだがな・・・。それにしてもエポ村の近くに遺跡があったとは驚きだな。どうして広域スキャンに引っかからなかったのだろうか?」
「答えは簡単です。遺跡は地上にあると思い込んでいたウメボシに原因があります。申し訳ありませんマスター。地中までは調べておりませんでした」
「カプリコンに搭乗している時にエポ村周辺を地中まで調べたが、遺跡を見つけ出すことは出来なかった。どの道ウメボシに落ち度はないさ」
さて、とヒジリは言ってタスネに視線を移す。
「主殿も来てくれると助かるのだが。向こうは主殿の事を知っており、軽く好意も抱いてくれているようだ。交渉や説得が容易になる可能性は高い」
「それは別にいいけど、絶対にダンティラスさんと戦わないでよ?」
「最善を尽くそう」
屋敷から出るとタスネはモンスターの準備をするために走り去っていった。
遊んでくれと纏わりつくコロネをヒジリは片手に乗せて立たせ、バランスを取る遊びをする。
「わぁー!しっかり持っててよ!ヒジリ!これおもしれー!」
落ちそうで落ちない。ヒジリも落ちないように手でバランスを取っているからだ。
ヒジリがコロネを手に乗せたまま、タスネのモンスターが住む大きな建物の様子を見に行く。
が、途中で信者たちに見つかり大騒ぎになった。
しかし信者たちは銅像の拝観を許可された敷地から出る事は許されない。そんな事をすれば警備の者に直ぐに捕まってしまうからだ。なので遠くからペンダントを掲げて祈っている。
建物に着くと、レディがゴネていた。最近は美味しいドラゴンフライを食べさせてもらっていないと。レディの部屋は、バクバクの牛舎のような部屋と違って普通の女子の部屋だった。扉もついておりプライバシーはしっかりと守られている。
「そんな事言ったって、今はドラゴンフライが多い時期じゃないでしょうが!ジゴクオニヤンマで我慢しなよ!秋まで待ちなさい!」
「ジゴクオニヤンマは大きくて食べ応えあるけど、味が普通過ぎるシュー!」
「じゃあもういいわよ!レディには頼まないわよ!行くよバクバク!」
「キュー!」
魔法印があっても絶対服従するわけではないのかとヒジリは内心驚く。じゃあ何だ?魔法印は何の為にある?
プンスカと怒りながら召使に指示を出してバクバクに鞍を付けさせるタスネに聞いてみた。
「え?魔法印?勿論強制的に命令出来るよ?でもアタシはなるべくそれをしたくないの。レディは今まで散々嫌な目に遭ってきたからね。慰み者にされたり、食べたくもない亜人種の肉を食べさせられたり。だからアタシは強制命令はしないの」
ウメボシがレディの今までの境遇を想像して涙目になる。
「狭量なタスネ様だと思っておりましたが、心の広い一面もお有りだったのですね。ウメボシは感動しております」
「もーウメボシまで!悪かったわね!狭量で!ええ!そうですよ!トウモロコシの一粒一粒をせせこましく歯で剥がして食べるタイプですよ!アタシは!」
それは狭量さと関係あるだろうか?とヒジリがそう思っていると、プンスカがプンプン丸ぐらいになったタスネがバクバクに乗ってさっさと先に行ってしまった。
ヒジリは退屈そうにして自分を見送るコロネに手を振って別れ、バクバクに乗る主の後を追ってヘ遺跡へ向かうのだった。
サヴェリフェ家の庭に入ってきた馬車の窓際に座る人物を見て外で遊んでいたコロネは大声を上げる。
ヒジリがツィガル帝国の皇帝になったことでグランデモニウムの総督を辞職し、その後釜に就いた新総督が馬車のタラップから降りてきた。
ヒジリの主であるタスネに引き継ぎの挨拶に来た豪勢な空色のビロードのローブを着た樹族の男は、シルクのハンカチで額の汗を拭いた。禿げているのでどこまでが額なのかは謎だが。
「ふぅ~。これまでの努力は無駄ではなかった。私は帰って来たぞ!王都に!・・・一時だけだけど。後で絵草紙買いに行こうっと」
後半は小さく呟いたつもりだったが待っていたタスネに聞こえており、ゲルシは白眼視される。
「ゲルシさん・・・。またアタシとヒジリの変な絵草紙買いに行くんじゃないでしょうね?」
「ハハハ。今度のはシオ侯爵とヒジリ聖下の・・・おっと。ゲフンゲフン!」
「お暑い中ご苦労様ですぅ。中へどうぞ、総督」
フランが助け舟を出すような形で屋敷に招いた。
(んんん!可愛いなぁ!フランちゃんは!私がもう少し若ければなぁ・・・。昔は髪がフッサフサのイケメンだったんだけど今やぽっちゃりさんだし・・・。あ~!あのポニーテールで顔を叩かれたい!)
彼が一度足りともイケメンだったことは無く、大人になってから髪がフサフサだった時期も短い。
ゲルシが部屋に入ると応接間は涼しい空気で満たされていた。汗がスーッと引いていき、驚きながらタスネに聞く。
「氷室から氷を?王族が氷を持って来いとうるさくないですか?」
「これはね~、ヒジリが涼しくなる箱を設置してくれたんですよ。”えあこん“とかいう名前だったかしら?だから氷室じゃないので氷はありません。そういえば総督就任と同時に子爵になったそうですね、おめでとうございますゲルシ総督」
「まぁ殆ど聖下の強力な推薦があったからこそなんですがね。子爵になっても名ばかり貴族ですよぉ」
「お互い領地を貰って左団扇で生活したいもんですねぇ。ゲルシさんは死者の大行進の時に北門で大活躍されてましたし、ようやく評価してもらえて良かったですね」
「ははっ!まぁいくら活躍しても聖下の足元にも及びませんがね。これは、管轄移譲に関する書類です」
「はぁ~。助かった~。正直、クロス地方の仕事で精一杯でヒジリがグランデモニウムの総督を辞めた時は不安で震えたものですけど、ゲルシさんが引き継いでくれて助かりました~」
「私も話が来た時は足が震えましたよ。雪原砦の将軍も聖下の知り合いの私なら、と言う事で納得してくれましたけど。彼らは治安維持部隊という名目で雇わせて頂きました。時々ならず者や盗賊がどこからともなくやって来て悪さをしますから。それに砦の戦士達が狩ってくる大きな牛も物凄く高値で取引されています。ですから街の経済活性化にも貢献しています。ほんと有り難いことです。まだまだ問題が多く、アルカディアの貴族たちからは化外の地と言われ馬鹿にされておりますが、目下は牛を買いに来る商人と巡礼者を相手に商売していこうと思っています」
ゲルシはゴデの街の近況を話しながらタスネの右手に指輪が付いている事に気がつく。
「おや?タスネさん、恋人でも出来たのですか?その指輪は主に女性が男性に送る浮気防止の魔法が篭った指輪で有名なんですが・・・。大昔からあるよくある指輪ですね」
「え?そうなんですか?どこで拾ったのかは覚えていないんですよねぇ、これ。ジャイアントスケルトン討伐後には既に指にはまっていたから、多分その時の物だと思います。呪いもなさそうだし、気に入ってるから指にはめたままにしているけど。あ!そういえば魔法の盾も手に入れたんですよ!見てもらっていいですか?ゲルシさんは【知識の欲】は得意ですよね?」
「ええ、大得意ですよ。なにせ元拷問官ですから。フッフッフ」
ゲルシは凄く悪い顔をしたが、凄味は無くタスネはフフフと笑いながら、飾ってあった盾と手の指輪をテーブルの上に置いた。
ゲルシが呪文を唱えそれぞれに手をかざし指輪の解説から始める。
「やはり、浮気防止用の録音指輪ですね。はめている間の会話はずっと録音されています。擦れば会話内容を聞けますよ。あと・・・この盾!これは相当な値打ち物ですよ!飛来物を何でも必ず弾き返す盾です。魔法ですら!ただし、自分に投げて寄越した食べ物等の有益な物も必ず弾き返します」
「魔法も弾く!?凄い・・・。ゴクリ。【火球】も【氷の槍】も【大火球】も?」
「ええ、ただ闇魔法とは相性が悪いですね。闇魔法は任意の場所に霧や雲、闇の炎を発生させますので弾けません。あと近接魔法にも効果はありません」
「光側だとかなり有用じゃないですか!やったー!」
「売れば、屋敷が十件ほど立ちますかね」
「キャーー!家宝にします!」
タスネはサヴェリフェ家初の家宝に喜びを隠せない。一頻り喜んだ後、指輪を念入りに擦り始めた。
「何が録音されているんだろ。アタシはつまんない会話しかしてないからなぁ~」
指輪からはいきなり言い争う声が聞こえてきた。
「ダンティラス!私のことが好きならその指輪の録音内容を聞かせて頂戴!」
「そんなに吾輩の事が信じられないのかね!ならば指輪の会話内容を聞くのである!」
―――カサコソ―――
「・・・・・・・・・・・・・」
「何も録音されてないじゃないの!指輪を外していたのね!馬鹿!バチーン!」
「アダーッ!待て!待つのである!カトリーナ!」
「知らない!さよなら!ダンティラス!」
「ええい!カトリーナの焼き餅焼きめ!吸魔鬼が付けても強力な魔力が干渉して効果があやふやになると吾輩は以前に言ったぞ!自分で試していないのか!馬鹿者が!こんな物は要らんのである!折角、面白そうな遺跡に誘ってやったというのに!」
そこから指輪を外したのか暫く無音が続いた。
「ハハハ、まさか吸魔鬼の痴話喧嘩が録音されていたなんて・・・」
「ん?まだ何か録音されているようですよ?」
指輪からガサガサと音がする。
「どうやらここまでのようですね。きっと仕掛けがあるか、鍵で開けるか、或いは聖下のような力持ちが開けるのか。扉を開く術を知らない我らはこれ以上助けにはなりません。一度戻りましょうか」
修道騎士のキミの優しい声がする。タスネは首を傾げる。こんな会話をしただろうか?
「誰かに会うのは千年ぶりかな。もう言葉を忘れるところであった・・・」
先ほどの吸魔鬼に似たバリトンの低い声がリバーブし、そこが広い空間であることが解る。
「命運尽きたか?いや、まだ吸魔鬼と戦った事の有る英雄子爵様がおられる!」
「ひぃぃ!」
タスネの情けない悲鳴が聞こえる。
「アタシ、こんなの知らない!本当にこれ録音の指輪なんですか?」
ゲルシは会話の続きを聞こうとタスネに黙るよう手で合図し、聞き耳を立てる。そして最後まで吸魔鬼の会話を聞いてふぅ~っと溜息をついて冷えた部屋の中で汗を拭った。
「何てことだ・・・・。タスネさんは吸魔鬼に出会っている!そして樹族のタブーに触れながらも生きて帰ってきた。恐ろしい!そして奇跡だ・・・」
ゲルシはガクガクと震えて自分の肩を抱き、泳ぐ目でタスネを見た。
タスネも驚いて動けない。その間にも録音内容は流れていく。他愛もないサヴェリフェ家の会話やタスネの昼寝のイビキの音。普段なら笑って録音を止めるところだが、最早それは二人の耳には入っていない。二人共タブーである樹族の遺跡の場所を知ってしまい恐怖で固まっているのだ。
「アタシ、吸魔鬼にパンを焼いて出してお話を聞いてあげてたなんて・・・。凄く優しい吸魔鬼だったから良かったけど、普通の吸魔鬼なら確実に殺されていたよね・・・」
少しずつ恐怖に縛られていた体の感覚が戻ってくる。
優しい吸魔鬼がいた・・・胸のモヤモヤはこれだったんだ。裏切りに嘆きつつも最後の最後まで友を疑いきらず、その友の幸せを知って涙する優しい吸魔鬼ダンティラス。
「聖下にお知らせしたほうが良いのでは?タスネさん」
「うん・・・。でも、もしヒジリが呪いを解けなくてダンティラスさんと戦う事になったらどうしよう。どう考えてもダンティラスさんに勝ち目は無いよ・・・」
「聖下なら何とかしてくれますよ。いつだってそうだったでしょう?」
「そうだよね・・・。きっとなんとかしてくれるよね!」
今回はヒジリに頼るしか無い。以前のような他力本願な気持ちから彼を頼るのではないと自分に言い聞かせ、タスネは召使に使いを送るよう指示を出し、再び指輪を擦って再生音を止めた。
二日後、ヒジリはカプリコンの転移でサヴェリフェ家の屋敷にやってきた。直ぐにでも話を聞きたかったのかタスネの部屋に直接転移してきたのだ。
ヒジリが現れた事で部屋の空気が移動し、風が巻き起こる。
丁度タスネは水浴びをした後だったので下着姿でベッドに座り、髪をタオルで拭いていた時の出来事だった。
タスネもイグナ同様お洒落に気を使うようになったのかカボチャのようなズロースではなく、生地の少ない下着を履いている。
「ふむ。大きいな」
いきなり現れて何もつけていない自分の胸を見てそう言うオーガに、タスネは悲鳴を上げ、ギャーギャーと罵声を浴びせながらヒジリの背中を押して部屋から追い出した。
「あら!どうしたの?ヒジリ」
タスネの部屋から現れたヒジリを見て、たまたま通りかかったフランが言う。
「主殿の部屋に転移したら、下着姿だったのだ」
「あー、それでギャーギャー騒いでいたのね。下着姿ぐらい別に気にしなくてもいいのにね。私だったら幾らでも見せてあげるわぁ」
「見せるだけかね?」
「やだぁ~!ヒジリったらやらしい~!もう少し大人になるまで待ってよ~。うふふふ」
「マスター、フランはまだ十三歳ですよ!全く!いやらしくなった!マスターは実にいやらしくなった!」
「度量の広いフランだからこそ言える冗談だ。本気にするなウメボシ」
確かにフランは姉と違って心が広い。同級生男子からの結構な頻度の下ネタも軽くいなし笑いに変えて返す程だ。処世術を心得ているというか。
暫くしてガチャと扉が開いてジト目のタスネが此方を見る。ジト目をするとイグナに似ている。
「狭量で悪かったわね!どうぞ」
中に入るとヒジリはさも当然のようにベッドの下を調べ出す。
「薄い絵草紙なんて持ってないわよ!男子じゃあるまいし!」
「いや・・・。そんな幼馴染の男子の部屋に来た女子のような事はしない。もしかしたら盗聴系のアイテムが仕掛けられているかと思ってね。タブーに敏感なのはイグナが倒したチャビン老師だけとは限らないだろう」
「だったらウメボシに”すきゃん”させればいいじゃないの」
「それもそうだな。ハハハ」
「この部屋に怪しいと思えるものはありません、マスター」
厳密に言うと老師を倒したのは”オリジナル”のイグナだ。今はもうこの世にはいない。心を壊した末に戦場に現れて黒竜に食い殺されてしまった。それを思い出して刹那的な悲しみと邪悪な黒竜への怒りが湧く。
ウメボシが心配するので直ぐに感情を制御をしたが、ふとイグナが心配になり一緒に部屋に入ってきたフランに聞く。
「イグナはいないのかね?」
「イグナはね~。今日はデートよぉ?キウピー君と魔法遊園地に行ったわ」
「そうか。それは楽しそうで何よりだ」
自分の事を好きだと言ってくれた可愛いイグナはどんどんと巣立ちの準備をしている。ヒジリは最初から解っていたのだ。彼女がヒジリに求めていたのは、当たり前だが恋人ではなく父親であるという事を。
フランも恐らくそうだろう。自分は彼女らが甘えたい時期に甘えられなかった父親の代用なのだ。
まだ私は二十歳なんだがなと心で笑い、もし自分に子供ができればいつかこんな気分を味わうのだろうか?自分の父や母は今、それを味わっているのだろうか?
寂しさで物思いに耽るヒジリをよそにタスネは指輪を擦った。
「グォォオー!フガッフガッ!スピー!」
いまいち指輪の操作が判らず昼寝のイビキのところで再生してしまいタスネは慌てる。
「怪獣かね?怪獣が現れたのかね?」
「もう!煩い!馬鹿ヒジリ!」
クスクスとフランは笑いながら邪魔にならないように部屋から出て行った。何となく廊下突き当りの窓から外を見る。
今日も庭の銅像には大勢の信者がやって来ていた。
巡礼はサヴェリフェ家の銅像から始まり、エポ村の教会の内壁に誰かが勝手に描いたヒジリ降臨の神々しい絵を眺め、最後にゴデの街で美味しい牛肉を食べながら、ヒジリが放った神の御柱について語りあうというルートが有る。
聖地巡礼の旅をせずに一生を終えるなかれ、という標語が出来るほどヒジリの軌跡を辿る旅は人気なのだ。
彼が闇側の神にも関わらず、信仰する者が多いのは闇側の神が光側に味方をしてくれているギャップの他、貧民出身の英雄子爵のサクセス・ストーリーも関係している。凄まじい速さで出世したタスネを見て現実的な恩恵があると信者は思っているのだ。
元々全ての神を一纏めにして信仰対象にしていたが、いつの頃からか宗派ができ、主に樹族の神とオーガの神の二大主神を信仰対象とするようになっていた。
その崇め奉られる星のオーガをタスネは馬鹿と罵って再び指輪を擦ると、丁度ダンティラスの会話から始まった。タスネの顔がぱっと明るくなりドヤァ!という顔をする。
ヒジリはタスネの大きなベッドに腰掛け、顔の前で手を組んで静かに聞いた。
そして最後まで聞き終わるとポツリと呟く。
「ダンティラスは良い奴だな。彼の恋人も過去にこの地で悪さをしていないようだ。吸魔鬼も個体差が大きいのだろう。まぁ悪さをする吸魔鬼ばかりに目が行き、吸魔鬼イコール国滅ぼしをする邪悪な存在と語り継がれ、大人しくひっそりと暮らす吸魔鬼が取り上げられないのは当然だが。ファナも憎しみに囚われなければ良い母親だった」
自分の吐いた言葉にズキリと心が痛む。あの時、他に何か策はなかったのか、虚無の渦に追いやる以外に良い術があったのではないか?
「自分を責めないでください、マスター。鼓動が早まっております。彼女はもう既にあの時、心を失っておりました。憎しみに囚われており、正気に戻ったのは死に際のほんの僅かな時間です。あの時はあれが最善だったのです」
「そうだと良いのだがな・・・。それにしてもエポ村の近くに遺跡があったとは驚きだな。どうして広域スキャンに引っかからなかったのだろうか?」
「答えは簡単です。遺跡は地上にあると思い込んでいたウメボシに原因があります。申し訳ありませんマスター。地中までは調べておりませんでした」
「カプリコンに搭乗している時にエポ村周辺を地中まで調べたが、遺跡を見つけ出すことは出来なかった。どの道ウメボシに落ち度はないさ」
さて、とヒジリは言ってタスネに視線を移す。
「主殿も来てくれると助かるのだが。向こうは主殿の事を知っており、軽く好意も抱いてくれているようだ。交渉や説得が容易になる可能性は高い」
「それは別にいいけど、絶対にダンティラスさんと戦わないでよ?」
「最善を尽くそう」
屋敷から出るとタスネはモンスターの準備をするために走り去っていった。
遊んでくれと纏わりつくコロネをヒジリは片手に乗せて立たせ、バランスを取る遊びをする。
「わぁー!しっかり持っててよ!ヒジリ!これおもしれー!」
落ちそうで落ちない。ヒジリも落ちないように手でバランスを取っているからだ。
ヒジリがコロネを手に乗せたまま、タスネのモンスターが住む大きな建物の様子を見に行く。
が、途中で信者たちに見つかり大騒ぎになった。
しかし信者たちは銅像の拝観を許可された敷地から出る事は許されない。そんな事をすれば警備の者に直ぐに捕まってしまうからだ。なので遠くからペンダントを掲げて祈っている。
建物に着くと、レディがゴネていた。最近は美味しいドラゴンフライを食べさせてもらっていないと。レディの部屋は、バクバクの牛舎のような部屋と違って普通の女子の部屋だった。扉もついておりプライバシーはしっかりと守られている。
「そんな事言ったって、今はドラゴンフライが多い時期じゃないでしょうが!ジゴクオニヤンマで我慢しなよ!秋まで待ちなさい!」
「ジゴクオニヤンマは大きくて食べ応えあるけど、味が普通過ぎるシュー!」
「じゃあもういいわよ!レディには頼まないわよ!行くよバクバク!」
「キュー!」
魔法印があっても絶対服従するわけではないのかとヒジリは内心驚く。じゃあ何だ?魔法印は何の為にある?
プンスカと怒りながら召使に指示を出してバクバクに鞍を付けさせるタスネに聞いてみた。
「え?魔法印?勿論強制的に命令出来るよ?でもアタシはなるべくそれをしたくないの。レディは今まで散々嫌な目に遭ってきたからね。慰み者にされたり、食べたくもない亜人種の肉を食べさせられたり。だからアタシは強制命令はしないの」
ウメボシがレディの今までの境遇を想像して涙目になる。
「狭量なタスネ様だと思っておりましたが、心の広い一面もお有りだったのですね。ウメボシは感動しております」
「もーウメボシまで!悪かったわね!狭量で!ええ!そうですよ!トウモロコシの一粒一粒をせせこましく歯で剥がして食べるタイプですよ!アタシは!」
それは狭量さと関係あるだろうか?とヒジリがそう思っていると、プンスカがプンプン丸ぐらいになったタスネがバクバクに乗ってさっさと先に行ってしまった。
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