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禁断の箱庭と融合する前の世界(37)
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遺跡にある石の大扉を友人が訪ねてきたよという感じでタスネは叩いている。叩く度に静かな洞窟にペチペチと音が響く。
「おーい!ダンティラスさん!アタシだよ!」
「扉を叩くのは何処のどいつかね?」
君など知らない、といった感じの下手くそな芝居をするダンティラスの呼びかけに、ウメボシがまた前振りかと思ったのか小さい声で言う。
「アタイだよ!ニシ○カ・スミコだよー!」
ヒジリは優しい目でウメボシを撫でた。なんとギャグセンスのある愛おしいドローン型アンドロイドか。
ウメボシも目を細めて嬉しそうに撫でられている。
扉が音もなく少しだけ開く。隙間からは赤い瞳がタスネをじっと見ていた。
「どうやって・・・ここに帰ってきたのだ!記憶は消したはずである!馬鹿者め!」
タスネが録音の指輪を擦るとダンティラスとの会話が扉前の広い空間に響き渡った。
吸魔鬼は額に手の甲を当てて自分の失敗を悔いる仕草をしているが、ヒジリの顔を見て内心は跳び上がるほど喜んでいる。
タスネが帰ってからダンティラスはがっくりと肩を落とし、また今までどおり鳥籠の中の生活が始まるだけだと自分を騙してソファーで不貞寝をしていたのだ。
しかしたった数日でまた彼女が現れたのだから喜ばないはずが無い。かといってまだ手放しで喜べる状況でも無い。
ぬか喜びにならないように、胸に沸き立つ期待を諫め、ダンティラスは扉を開いてタスネと後方に立つ星のオーガを招き入れた。
「ようこそ、聖下」
「お邪魔する。中々創意工夫を凝らした良い場所だな、ダンティラス殿」
限られた材料で遺跡を家らしくしていることにヒジリはほぉと感嘆した。
遺跡の壁のブロックで出来たかまど、背もたれの有る石の長椅子に蜘蛛の糸を沢山集めて敷き詰めクッションにして、壁にかかっていた垂れ幕を被せて作ったソファー、天井の空気穴までブロックを積んで煙突にした暖炉。
「そうであろう。自慢の我が家だ。早速で悪いのだが、今すぐにでも呪いを解いてもらえないだろうか?聖下が本当に星のオーガであるのであれば」
彼の言葉に悪意はない。せっかちなだけなのだとタスネは思う。録音内容にもそのような話があった。
「勿論。ただし、私が解けるのは魔法に寄る呪いだけだ。それから、もし呪いが溶けたなら緊急時以外は人を襲ってマナを吸わないようにしてくれ」
「それならば問題はないぞ!この呪いは魔法による強制だ。吾輩の魔力にジクジクと干渉する力を感じるからな。自由になった暁には人をなるべく襲わず動物からマナを吸うと誓おう!」
「よろしい。では呪いを解くぞ。偉大なる神の力、とくと味わうが良い!」
タスネは肩をすくめて呆れる。普段は自分は神ではないと言っているのに場合によっては神を名乗るヒジリの二枚舌に。
ウメボシがエフェクトを掛けダンティラスを触るヒジリの手を光らせた。
しかし最初こそは期待で上気したダンティラスの顔が徐々に冷めていき、いつもの陰鬱な目が地面を見つめていた。
「確かに一時は呪いは消えたが、新たに呪いが魔力に干渉する感覚が有る。吾輩自身に呪いが宿っているのでは無さそうだ。どうやらこの遺跡が原因なのだな」
がっくりと肩を落としていつものように顔を押さえてダンティラスは落胆する。
暫くヒジリは考えた後、ダンティラスの肩を触って語りかけた。
「私が触りながら遺跡から出れば良いのでは無いのかな?吸魔鬼殿」
ダンティラスの背筋がピーン!と伸び、クマのある目が輝いた。
「我輩も今それを考えていたのだ!」
嘘くせー、な~んか嘘くせーとタスネは思いながらもダンティラスの喜ぶ顔を見て嬉しくなる。
「では行くぞ?」
「よろしく頼む、聖下」
ヒジリはダンティラスの肩に手を置き一歩一歩扉に向かって歩き出した。星のオーガの能力なのか、肩からマナを吸われる感覚が呪いを消していると解る。
一歩進む度に、ダンティラスの脳裏に過去の退屈な日々が次々と現れては消える。
先住者が住んでいた頃は尽きる事無く湧き出ていたであろうマナの噴水を飢えた目で見つめる毎日。
壁のブロックを取った後の土から、ジャイアントモールが顔を出すのを待つ毎日。
コウモリが迷い込んで来たら自身の体を霧状にして近寄り実体化して捕まえる毎日。
あれこれ試行錯誤しながら日々の暮らしを快適にしようと工夫する毎日。しかし、知識不足で上手くいかない事も多く、石像に八つ当たりしそうになって思いとどまる事もあった。
その石像達に名前と性格を付け一人で喋る毎日。
それも終わりだ。この扉をくぐれば・・・!
とうとうダンティラスは扉の外に出た。これまでも扉の外に出る事はできたが、ある程度遺跡から離れると引き戻される。しかし今はそれがない。
「自由だ!吾輩は自由の身になった!呪いの感覚はもうない!フハハハハハ!」
―――キューン!キューン!キューン!―――
ダンティラスが扉から出て守護者が居なくなった事で遺跡の警報が鳴り出した。
「何事であるか?」
ダンティラスもこのシステムを知らないのかキョロキョロと周りを不安げに見ている。
扉の外の石像よりも更に隅に置いてあった転移石の近くに何者かが姿を現した。
そこには見たこともない民族衣装を纏ったメイジが三人現れたのだ。遠い外国のメイジだと思われる。
オリエンタルな青い刺繍の入った赤いローブを着た老婆が不思議そうに共通語で語りかけて来る。
「ホホホ、どうやって遺跡の呪縛を解いたのじゃ?まさか、そこのオーガの仕業かい?チャビンはどうしたのかのう?」
ヒジリは彼らがチャビンの死を知らないことから、仲間同士で情報共有はしていないのだなと知る。
「ヒヒヒ。殺されたんじゃ無いのか?あ奴は遺跡防衛四天王の中でも最弱・・・。ここを任せるべきでは無かったな。ヒッヒッヒ!」
やたらと長いターバンのような物を頭に被った老人が、アニメか漫画のテンプレのようなセリフを吐くので、思わずブフーッ!とウメボシとヒジリは笑ってしまった。
「何がおかしい?ああ、ヴィジャイの被り物を笑ったのだ。きっとそうに違いない」
体中包帯が巻かれたマミーのようなメイジが胡座をかいて浮遊し、ターバンを被ったビジャイを指差して笑う。
(ほう?【浮遊】と違ってずっと浮いていられるのか)
ヒジリは包帯姿のメイジを見て少し驚いた。確かこの星では体を浮かせられる者は神と認識されると聞いたからだ。しかし、強力なメイジになれば体を浮かせる術を知っていてもおかしくはないだろうとも思う。
如何にも大物!という感じで現れたこの三人の樹族にヒジリは話しかける。
「遺跡防衛四天王(笑)がいるということは重要な遺跡が少なくとも世界中に四つ有るということか。なるほど。その場所を教えてくれないかね?教えてくれれば命までは取らない。私は君たちのような秘密裏に動く組織があまり好きではなくてな。あまり焦らすようなら容赦はできんぞ?”裏側“程度の隠密行動なら潜んでいてもすぐに解ってしまうから可愛いが、君達はどこで何をやっているのか判りにくい」
笑いながらチラリと後方の闇にヒジリは視線を流した。
メイジ達が聞く、その優しく囁くような声には確固たる自信が含まれていた。
ヒジリの態度に困惑するメイジ達は誰も喋らず、暫く沈黙が遺跡を支配する。
ここまで自信があるということはもしかしたら外に情報を漏らす手段、あるいは何かしらの対抗策があるかもしれない。
老婆は周辺に魔法水晶がないか確かめた。妨害魔法を物ともしない魔法水晶が何処かにあるのかもしれぬと警戒する。遺跡の情報はなんとしても漏らしてはならない。
「我らを相手にして生き残った者はおらぬ。そこの吸魔鬼や地走り族を含めてもワシ一人で十分事足りる。お前たちが纏めてかかってきたとしても・・・」
「御託は良いのでさっさと来たまえ。ご老人方。私は寂しい老人の喋り相手をしにここへ来たわけではない」
ターバンを被るヴィジャイと呼ばれた男が長々と話をしそうな気がしたので、ヒジリは来い来いというポーズをして挑発している。ヒジリの後方の闇で誰かが笑ったような気がしたが気にはしなかった。
「マスター、長いターバンの男がノームのビームダガーを二つ持っております!気をつけて下さい。それから通信不能でカプリコン様にも頼れません」
「ハッ!あんな旧世紀の遺物、対抗策さえ知っていればどうということはないさ。前回はその存在も知らなかったからな。カプリコンの力も必要ない。ウメボシ、自身の防御も怠るなよ?」
「はい」
抑制チップの不具合で日に日に性格が荒々しくなっていくヒジリの言動も荒々しい。最近は誰かの死を見て吐くことも無くなった。
「戦いは弱きから叩くが定石ゆえ。死んでくりゃれや、地走り族の少女」
老婆が見たこともない小さな黒い玉を指先に灯らせている。黒く光っているのだ。
「この玉は恐ろしいぞえ?【苦輪の玉】と言ってな、当たれば瞬時に死に、魂はそこに縛られたまま。そして死んでも尚、体が朽ちていく苦痛を永遠に味わうのじゃ。あたしゃ、その魂の苦痛に歪む顔を見るのが好きでねえ。それを見ると腰痛が和らぐようなきがするんじゃて。ヒッヒッヒ!」
塔婆の瞳のない白目がカッ!と開くと玉は瞬時にタスネ目掛けて飛んで行った。
ヒジリもウメボシもバクバクもタスネを庇う間がないほどの一瞬だった。
が、タスネの左手に装備されている盾が自動的にその玉を弾いた。弾いた本人も何故自分の左腕が動いたのか解っていない程、盾は素早く反応した。
弾いた玉は跳ね返って飛んでいき、「まずは一殺」と言って笑っていた老婆に当たる。
その瞬間、彼女の軽いからだがカサリと音を立てて崩れ落ちた。
魔法の盾の事を知らないヒジリはそれが修練の賜物だと勘違いしてタスネを褒める。
「素晴らしい!主殿がそこまで強くなっていたとは知らなかったぞ!見えぬところで努力していたのは知っていたがここまでとは!」
「いや、あのこれは・・・」
他の二人は老婆の魂が見えるのか、永遠の苦しみを味わうその姿を見て馬鹿なと狼狽している。
「イアンパヌがこうも簡単にやられるとはの。油断しすぎたか」
「これは本気でかからんといかぬな。これまでのような経験ばかり積んだ小賢しいだけの冒険者とはわけが違うぞ」
最初に包帯の男がそう言い、次にターバンを被るヴィジャイがそれに応じて気を引き締めた。
二人共直ぐに次の一手をどうするかを考えて思考を巡らす。取り敢えず、怪物使いの地走り族は無視だ。使役する土喰トカゲも潜って逃げてしまったように見えるので攻撃手段はあまりないだろう。それに彼女に攻撃をしなければ痛い目を見ることも無さそうだと判断した。
タスネは老人二人の目が此方に向いていない事に胸を撫でた。バクバクも怯えて何処かに逃げ去ってしまい攻撃手段がない。種族としての”敵からのヘイトを稼ぎ難い“という特性も相俟ってターゲットになる事から免れたのだ。
何もしてこなくなった老人二人に対し、ヒジリは少し情報を聞き出そうと思って話しかけた。
「どうかね?他の遺跡の場所を教える気になったかね?何故そこまで頑なに遺跡を守り、タブーを犯す者を監視するのだ?」
「それをチャビンから聞き出してこの遺跡にやって来たのではないのかな?賢きオーガよ」
「生憎私はその場にいなかったのでね。チャビンを殺したのは別の若きメイジだ」
「そうか・・・弱いあ奴でも独自の魔法を編み出しそれなりに強かった。その強いメイジを上回るメイジがいようとはな・・・。まぁお前が遺跡について何も知らぬなら、それはそれで好都合!」
不意をつくようにヴィジャイが光と炎の複合魔法【黒点】を唱えた。タスネを見て警戒したのか弾かれるような魔法ではない。【闇の炎】のように任意の場所に小さな四千度のエネルギー球を発生させる単体最強魔法だ。
ヒジリはお構いなしで距離を詰めていく。
「術者の唱える魔法に術者自身を巻き込むつもりか?子爵のイメージの中の彼は魔法が効かないとあったが本当に大丈夫であろうか?」
霧化して様子を窺っていたダンティラスはハラハラしながら星のオーガの行動を見守っている。しかしこのまま何もしないのも恩知らずの恥知らずという気持ちになり実体化してストンと地面に降り立つと背中からうねる黒い触手を地面に潜らせていつでもメイジ達からマナを吸えるように準備した。
「ほう?ワシを巻き添えにするつもりかえ?【黒点】はターゲットだけを灰も残さず焼き尽くす魔法なのじゃが?」
「長年積んできた経験や常識が役に立たないという事はザラにある。気にしなくてもいいぞ、老人」
詠唱が間に合ったとニンマリ笑うヴィジャイの口に電撃の拳が飛ぶ。拳は老人の口を掠めただけだが歯が数本折れ、唇が切れ痺れる。
「ふぇいひょうのひっはいか?(詠唱の失敗か・・・?)」
魔法が掻き消えた事に驚き、今の拳がまともに打ち込まれていたなら、と背筋に冷たい汗が伝った。
後方に下がって逃げるヴィジャイの戦意を更に折ろうと掴みかかろうとしたその時、ヒジリの首を目掛けて刀の一撃が一閃する。
ウメボシのフォースシールドは確かに刀を弾いたがヒジリは喉に打撃のような衝撃を味わった。
そしてパスッと音がしてパワードスーツが衝撃を吸収したのが解った。
何もない空中から突如現れて、ヒジリの首の高さで横薙ぎで刀を振ったのはどう見ても古代日本の侍であった。
「故は知らぬが、貴様を討たねばならん。鬼の子よ」
侍の額の立物は重ね合わせた刀を模している。それはキラリと魔法灯の光に反射した。
侍は背も高く、鎧も実用的な事から戦国時代から来たのだと解る。
チャキっと刀を下段に構え、地面の下から現れたダンティラスのうねる触手を断ち斬った。
他の触手が老人二人を絡めとるも、侍はそれらも間を置かず斬った。
「吾輩の触手を絶ち斬っただと?あの刀が光魔法を帯びているようには見えんが・・・」
吸魔鬼は光に弱い。日差し程度であれば問題はないが、集約された光ではダメージを受けるので普段は宿主の体の中で黒い生身を隠している。
真っ黒くうねる剥き身になれば触れた者のマナや能力を吸い取る攻撃力も大幅に増すが、弱点も剥き出しになるのだ。ダンティラスはファナと違って生身を小出しにしか出さない。戦いにおいては慎重な性格をしているのだ。むき身になって、あの光属性を帯びているであろう刀で斬られると大ダメージを喰らうのは必至だ。
「隙を窺う。少し任せるぞヒジリ聖下」
そう言ってダンティラスは【姿隠し】を唱えた。吸魔鬼になってから覚えたこの魔法はどういうわけかまともに効果が作用せず、霧状の姿になってしまうのだ。なので多少周辺の影響を受けたり与えたり出来るが大したことは出来ない。
「うむ。この戦士はダンティラス殿とは相性が悪いようだ。出来ればメイジ二人の相手を頼む」
「引き受けた」
侍はパワードスーツやフォースシールドの存在を知ってか知らずか何も装備していないヒジリの頭ばかりを狙って突いてくる。
フォースシールドがそれらを防ぐも衝撃波が遅れてやってくるのでその衝撃波を躱す。頭にまともに衝撃波を受ければ脳震盪も有り得るからだ。
「蒸着!」
ヒジリがそう言うと頭に旧式のパワード・フルフェイスヘルメットが現れた。これで弱点はほぼ無くなったと言える。
侍はざっと下がって突きのポーズのまま刀を後ろに下げ力を溜めると、まだ間を詰め切れていないヒジリの胃辺りに向かって刀を突き出した。
「真剣白刃取り!」
ヒジリはそう言ってタイミングの遅い、失敗ともいえる真剣白刃取りをする。
フォースフィールドで弾かれた刀を追って両手で挟んで折ろうとしたのだが刀は折れず、ぐにゃりと曲がった。刀を掴む事に集中していたので後からくる衝撃波を回避出来ず、それはヒジリの腹部を襲う。
「ぐぅむ・・・」
胃の中の物を吐きそうになるも何とか堪え、唇を手の甲で拭う。
「武士の魂を曲げたぞ!君の負けだ。敗北を認めるのだな」
「これを使え!」
ヴィジャイは長いターバンからバラバラと未使用のビームダガーを二本投げる。
内一本をウメボシはビームで貫き破壊したが、一本は撃ち損じ侍の手に渡る。
ウメボシは撃ち損じた事を誤魔化すように魔法使いたちに向けてレーザービームの短矢を撃ちまくっている。
ヴィジャイの唱えた【水の壁】がそれを遮った。慢心して水の壁に歪んだ笑みを映す彼らは攻撃をしてこない。イービルアイを舐めているのだ。所詮は使い魔如きと。
「それならば!!マスターは後方に下がって下さい」
ヒジリは言われるがまま後方に下がる。
それをビームダガーを持った侍が追いかけてくるが、フォースシールドが有る上にパワードスーツにはビームコーティングがしてある。前回のように防御のエネルギーを全てヒジリに回し無防備となったウメボシが不意を突かれて貫かれるということもない。
ウメボシの瞳からエネルギーを収束させた強力な極太レーザービームが放たれ、水蒸気爆発を起こしながら水の壁を貫いた。爆発は包帯の男を巻き込み、そのままの勢いでヴィジャイの腹の7割程を焼き削った。
レーザービームと水蒸気爆発で遺跡の壁までメイジ二人は吹き飛び、一人は既に息絶えていた。
「おのれぇぇぇぇ!!おのれ!おのれ!おのれぇぇぇぇ!!」
明らかに詰んだと思える包帯の男は悔しさから叫んでいる。
彼は静かに懐の包帯の内側から取り出した宝珠を頭上に掲げヒヒヒと笑った。どこと無くエルフのモシューがもっていた世界渡りの宝珠に似ている。
ビームダガーを叩き落とし侍を取り押さえながら、何かをしようとする包帯のメイジをヒジリは見た。
―――ドゥーン―――
重低音があたり一面に響いた。
「宝珠よ!この国の者らごと、異次元の狭間へと誘え!代償はワシの命じゃ!」
捨て鉢となった包帯の男はゆっくりと宝珠から広がる闇に身を委ね、またヒヒヒと笑った。
ウメボシのビームが宝珠を狙うも時空が歪んでいるせいかまともに当たらず闇に消えていく。
ダンティラスは触手を何本も背中から出し、鞭のようにしならせて攻撃をしたが効果は皆無だった。寧ろ触手を闇に削り取られてしまった。
ヒジリは歩行を阻害しようと縋ってくる侍をそのまま引きずって何とか接近して宝珠を壊そうと目論むも間に合いそうもない。
「異次元の狭間などに行けば生き返ることも死ぬことも出来ないぞ・・・。私のこの星での生涯研究もこれまでか・・・」
ヒジリが諦めたその時、地面からバクバクが包帯の男の足元に現れ彼の下半身を飲み込むように噛み付いた。丁度宝珠から広がる闇の隙間を突いたような形でバクバクは現れたのだ。
「フヒヒ!無駄・・・無駄!もう宝珠は発動してしまっている。カハッ!」
そう言って笑う彼の前に突然忍者のような男がパッと現れ、分身して次々と魔法を纏わせた手刀で宝珠に攻撃を仕掛けていく。
半身となって息絶えたメイジの持つ宝珠は依然として異次元の向こう側を映す闇を放っている。包帯の男は浮いたまま宝珠を掲げ、死して尚不気味な笑みを残したままだった。
何者かの分身は攻撃の度に異次元の闇に消えていく。
「あれは裏側の長?!」
タスネは紺色の装束の男を見て叫ぶ。
ゲルシがジュウゾに事の顛末を報告していたのだ。遺跡に入る前からずっと彼はヒジリ達の後をつけて様子を窺っていた。
「私はよくよく遺跡守りのメイジ達と縁があるようだ」
そう言いながら印を結んで次々と分身を作り出し、宝珠に攻撃をさせている。ジュウゾに迷いも躊躇もない。闇に巻き込まれる事も覚悟で彼は分身を出し続けている。
(そろそろ、使用回数上限に達する。ええい!早く宝珠を壊さんか!我が分身共!)
―――ピキッ!―――
遂に宝珠にヒビが入った。
「皆離れろ!」
ジュウゾがそう叫ぶと、ヒジリは脚に縋り付く侍をガッシと掴み上げ、彼の主のもとへ放り投げてその場から離れた。
「さようならだ、日ノ本の戦士よ」
自分を召喚した主が死亡した事で侍は元の世界へ帰っていくだろう、と走りながらヒジリは考える。
実際、彼は異次元の闇とは関係なく存在が薄まり消えていった。
広がっていた闇は宝珠のひび割れにどんどんと吸い込まれ、その闇は包帯の男の亡骸を包み込んでヒビ割れに潜り込んでいった。
逃げそこなったジュウゾが宝珠に吸い込まれそうになるもダンティラスが触手を伸ばして素早く引き寄せる。
そしてさいごには宝珠自体もヒビ割れに飲み込まれて消え、後には静かな遺跡があるだけだった。
ふぅ~と大きなため息をついてタスネがへたり込む。
「イグナはこんな恐ろしいメイジと戦ったのね・・・」
ヒジリは大喜びしながらジュウゾに抱きついた。抱きついたというよりはベアハグのようだったが。
「やってくれたな!ジュウゾ殿!今回ばかりは私も諦めの境地にいたのだぞ!美味しいところを全部持っていくとは!・・・少々憎い」
ジュウゾはヒジリのベアハグにウググと呻いた後、シュッと抜けていつもの皮肉めいた冷たい口調で言う。
「マギンの件での借りは返したぞ、ヒジリ」
「うむ、確かに返してもらった」
ジュウゾはヒジリを神だとは思っていない。依然奴隷オーガだと思っている。だから公の場以外では聖下とは呼ばない。
「今回、私は殆ど役に立っていないな。三人のメイジの内二人は主殿とバクバクが倒したし、一人はウメボシが倒した。あの危険な宝珠はジュウゾ殿が破壊してしまったし。私は侍に手を焼いていただけであった」
「吾輩も見せ場が無かったのである・・・」
吸魔鬼は失った触手の何本かを撫でて遺跡の暗がりから現れる。誰かからマナを吸いたそうな顔をしていたが、約束を思い出してまた触手を撫でて我慢した。
タスネは急にハッとしてバクバクを呼ぶ。
「まさか、あの闇に連れて行かれたんじゃ!?バクバクー!」
直ぐにモコっとタスネの下の地面が盛り上がる。
「キュ?」
バクバクは野生の土喰いトカゲと違って顔が穏やかで可愛らしい。
「もぉ~!心配させて!!」
「キュキュー」
お互い抱き合って喜ぶ。タスネはバクバクが可愛くて仕方がないといった様子だった。
「今日はここまでにして、一旦外に出ようか、主殿」
「そうね。そういえば、シオ侯爵の別荘は返還されたそうだし、今日は皆でそこで休ませてもらいましょうよ」
「うむ、中々厚かましい提案だな。流石は主殿」
「あら?あまり活躍しなかった今回のドンビリさんがそんな事言っていいのかなぁ?・・・これ、ヒジリ。アタシは喉が乾いたぞよ。お水を差し出すのじゃ」
完全に調子に乗るタスネに、ヒジリは笑いながら亜空間ポケットから出した水のペットボトルを投げて寄越した。
―――パーン!―――
水しぶきが辺り一面に飛ぶ。
タスネの左手の盾は水の入ったペットボトルを見事弾いたのであった。
「おーい!ダンティラスさん!アタシだよ!」
「扉を叩くのは何処のどいつかね?」
君など知らない、といった感じの下手くそな芝居をするダンティラスの呼びかけに、ウメボシがまた前振りかと思ったのか小さい声で言う。
「アタイだよ!ニシ○カ・スミコだよー!」
ヒジリは優しい目でウメボシを撫でた。なんとギャグセンスのある愛おしいドローン型アンドロイドか。
ウメボシも目を細めて嬉しそうに撫でられている。
扉が音もなく少しだけ開く。隙間からは赤い瞳がタスネをじっと見ていた。
「どうやって・・・ここに帰ってきたのだ!記憶は消したはずである!馬鹿者め!」
タスネが録音の指輪を擦るとダンティラスとの会話が扉前の広い空間に響き渡った。
吸魔鬼は額に手の甲を当てて自分の失敗を悔いる仕草をしているが、ヒジリの顔を見て内心は跳び上がるほど喜んでいる。
タスネが帰ってからダンティラスはがっくりと肩を落とし、また今までどおり鳥籠の中の生活が始まるだけだと自分を騙してソファーで不貞寝をしていたのだ。
しかしたった数日でまた彼女が現れたのだから喜ばないはずが無い。かといってまだ手放しで喜べる状況でも無い。
ぬか喜びにならないように、胸に沸き立つ期待を諫め、ダンティラスは扉を開いてタスネと後方に立つ星のオーガを招き入れた。
「ようこそ、聖下」
「お邪魔する。中々創意工夫を凝らした良い場所だな、ダンティラス殿」
限られた材料で遺跡を家らしくしていることにヒジリはほぉと感嘆した。
遺跡の壁のブロックで出来たかまど、背もたれの有る石の長椅子に蜘蛛の糸を沢山集めて敷き詰めクッションにして、壁にかかっていた垂れ幕を被せて作ったソファー、天井の空気穴までブロックを積んで煙突にした暖炉。
「そうであろう。自慢の我が家だ。早速で悪いのだが、今すぐにでも呪いを解いてもらえないだろうか?聖下が本当に星のオーガであるのであれば」
彼の言葉に悪意はない。せっかちなだけなのだとタスネは思う。録音内容にもそのような話があった。
「勿論。ただし、私が解けるのは魔法に寄る呪いだけだ。それから、もし呪いが溶けたなら緊急時以外は人を襲ってマナを吸わないようにしてくれ」
「それならば問題はないぞ!この呪いは魔法による強制だ。吾輩の魔力にジクジクと干渉する力を感じるからな。自由になった暁には人をなるべく襲わず動物からマナを吸うと誓おう!」
「よろしい。では呪いを解くぞ。偉大なる神の力、とくと味わうが良い!」
タスネは肩をすくめて呆れる。普段は自分は神ではないと言っているのに場合によっては神を名乗るヒジリの二枚舌に。
ウメボシがエフェクトを掛けダンティラスを触るヒジリの手を光らせた。
しかし最初こそは期待で上気したダンティラスの顔が徐々に冷めていき、いつもの陰鬱な目が地面を見つめていた。
「確かに一時は呪いは消えたが、新たに呪いが魔力に干渉する感覚が有る。吾輩自身に呪いが宿っているのでは無さそうだ。どうやらこの遺跡が原因なのだな」
がっくりと肩を落としていつものように顔を押さえてダンティラスは落胆する。
暫くヒジリは考えた後、ダンティラスの肩を触って語りかけた。
「私が触りながら遺跡から出れば良いのでは無いのかな?吸魔鬼殿」
ダンティラスの背筋がピーン!と伸び、クマのある目が輝いた。
「我輩も今それを考えていたのだ!」
嘘くせー、な~んか嘘くせーとタスネは思いながらもダンティラスの喜ぶ顔を見て嬉しくなる。
「では行くぞ?」
「よろしく頼む、聖下」
ヒジリはダンティラスの肩に手を置き一歩一歩扉に向かって歩き出した。星のオーガの能力なのか、肩からマナを吸われる感覚が呪いを消していると解る。
一歩進む度に、ダンティラスの脳裏に過去の退屈な日々が次々と現れては消える。
先住者が住んでいた頃は尽きる事無く湧き出ていたであろうマナの噴水を飢えた目で見つめる毎日。
壁のブロックを取った後の土から、ジャイアントモールが顔を出すのを待つ毎日。
コウモリが迷い込んで来たら自身の体を霧状にして近寄り実体化して捕まえる毎日。
あれこれ試行錯誤しながら日々の暮らしを快適にしようと工夫する毎日。しかし、知識不足で上手くいかない事も多く、石像に八つ当たりしそうになって思いとどまる事もあった。
その石像達に名前と性格を付け一人で喋る毎日。
それも終わりだ。この扉をくぐれば・・・!
とうとうダンティラスは扉の外に出た。これまでも扉の外に出る事はできたが、ある程度遺跡から離れると引き戻される。しかし今はそれがない。
「自由だ!吾輩は自由の身になった!呪いの感覚はもうない!フハハハハハ!」
―――キューン!キューン!キューン!―――
ダンティラスが扉から出て守護者が居なくなった事で遺跡の警報が鳴り出した。
「何事であるか?」
ダンティラスもこのシステムを知らないのかキョロキョロと周りを不安げに見ている。
扉の外の石像よりも更に隅に置いてあった転移石の近くに何者かが姿を現した。
そこには見たこともない民族衣装を纏ったメイジが三人現れたのだ。遠い外国のメイジだと思われる。
オリエンタルな青い刺繍の入った赤いローブを着た老婆が不思議そうに共通語で語りかけて来る。
「ホホホ、どうやって遺跡の呪縛を解いたのじゃ?まさか、そこのオーガの仕業かい?チャビンはどうしたのかのう?」
ヒジリは彼らがチャビンの死を知らないことから、仲間同士で情報共有はしていないのだなと知る。
「ヒヒヒ。殺されたんじゃ無いのか?あ奴は遺跡防衛四天王の中でも最弱・・・。ここを任せるべきでは無かったな。ヒッヒッヒ!」
やたらと長いターバンのような物を頭に被った老人が、アニメか漫画のテンプレのようなセリフを吐くので、思わずブフーッ!とウメボシとヒジリは笑ってしまった。
「何がおかしい?ああ、ヴィジャイの被り物を笑ったのだ。きっとそうに違いない」
体中包帯が巻かれたマミーのようなメイジが胡座をかいて浮遊し、ターバンを被ったビジャイを指差して笑う。
(ほう?【浮遊】と違ってずっと浮いていられるのか)
ヒジリは包帯姿のメイジを見て少し驚いた。確かこの星では体を浮かせられる者は神と認識されると聞いたからだ。しかし、強力なメイジになれば体を浮かせる術を知っていてもおかしくはないだろうとも思う。
如何にも大物!という感じで現れたこの三人の樹族にヒジリは話しかける。
「遺跡防衛四天王(笑)がいるということは重要な遺跡が少なくとも世界中に四つ有るということか。なるほど。その場所を教えてくれないかね?教えてくれれば命までは取らない。私は君たちのような秘密裏に動く組織があまり好きではなくてな。あまり焦らすようなら容赦はできんぞ?”裏側“程度の隠密行動なら潜んでいてもすぐに解ってしまうから可愛いが、君達はどこで何をやっているのか判りにくい」
笑いながらチラリと後方の闇にヒジリは視線を流した。
メイジ達が聞く、その優しく囁くような声には確固たる自信が含まれていた。
ヒジリの態度に困惑するメイジ達は誰も喋らず、暫く沈黙が遺跡を支配する。
ここまで自信があるということはもしかしたら外に情報を漏らす手段、あるいは何かしらの対抗策があるかもしれない。
老婆は周辺に魔法水晶がないか確かめた。妨害魔法を物ともしない魔法水晶が何処かにあるのかもしれぬと警戒する。遺跡の情報はなんとしても漏らしてはならない。
「我らを相手にして生き残った者はおらぬ。そこの吸魔鬼や地走り族を含めてもワシ一人で十分事足りる。お前たちが纏めてかかってきたとしても・・・」
「御託は良いのでさっさと来たまえ。ご老人方。私は寂しい老人の喋り相手をしにここへ来たわけではない」
ターバンを被るヴィジャイと呼ばれた男が長々と話をしそうな気がしたので、ヒジリは来い来いというポーズをして挑発している。ヒジリの後方の闇で誰かが笑ったような気がしたが気にはしなかった。
「マスター、長いターバンの男がノームのビームダガーを二つ持っております!気をつけて下さい。それから通信不能でカプリコン様にも頼れません」
「ハッ!あんな旧世紀の遺物、対抗策さえ知っていればどうということはないさ。前回はその存在も知らなかったからな。カプリコンの力も必要ない。ウメボシ、自身の防御も怠るなよ?」
「はい」
抑制チップの不具合で日に日に性格が荒々しくなっていくヒジリの言動も荒々しい。最近は誰かの死を見て吐くことも無くなった。
「戦いは弱きから叩くが定石ゆえ。死んでくりゃれや、地走り族の少女」
老婆が見たこともない小さな黒い玉を指先に灯らせている。黒く光っているのだ。
「この玉は恐ろしいぞえ?【苦輪の玉】と言ってな、当たれば瞬時に死に、魂はそこに縛られたまま。そして死んでも尚、体が朽ちていく苦痛を永遠に味わうのじゃ。あたしゃ、その魂の苦痛に歪む顔を見るのが好きでねえ。それを見ると腰痛が和らぐようなきがするんじゃて。ヒッヒッヒ!」
塔婆の瞳のない白目がカッ!と開くと玉は瞬時にタスネ目掛けて飛んで行った。
ヒジリもウメボシもバクバクもタスネを庇う間がないほどの一瞬だった。
が、タスネの左手に装備されている盾が自動的にその玉を弾いた。弾いた本人も何故自分の左腕が動いたのか解っていない程、盾は素早く反応した。
弾いた玉は跳ね返って飛んでいき、「まずは一殺」と言って笑っていた老婆に当たる。
その瞬間、彼女の軽いからだがカサリと音を立てて崩れ落ちた。
魔法の盾の事を知らないヒジリはそれが修練の賜物だと勘違いしてタスネを褒める。
「素晴らしい!主殿がそこまで強くなっていたとは知らなかったぞ!見えぬところで努力していたのは知っていたがここまでとは!」
「いや、あのこれは・・・」
他の二人は老婆の魂が見えるのか、永遠の苦しみを味わうその姿を見て馬鹿なと狼狽している。
「イアンパヌがこうも簡単にやられるとはの。油断しすぎたか」
「これは本気でかからんといかぬな。これまでのような経験ばかり積んだ小賢しいだけの冒険者とはわけが違うぞ」
最初に包帯の男がそう言い、次にターバンを被るヴィジャイがそれに応じて気を引き締めた。
二人共直ぐに次の一手をどうするかを考えて思考を巡らす。取り敢えず、怪物使いの地走り族は無視だ。使役する土喰トカゲも潜って逃げてしまったように見えるので攻撃手段はあまりないだろう。それに彼女に攻撃をしなければ痛い目を見ることも無さそうだと判断した。
タスネは老人二人の目が此方に向いていない事に胸を撫でた。バクバクも怯えて何処かに逃げ去ってしまい攻撃手段がない。種族としての”敵からのヘイトを稼ぎ難い“という特性も相俟ってターゲットになる事から免れたのだ。
何もしてこなくなった老人二人に対し、ヒジリは少し情報を聞き出そうと思って話しかけた。
「どうかね?他の遺跡の場所を教える気になったかね?何故そこまで頑なに遺跡を守り、タブーを犯す者を監視するのだ?」
「それをチャビンから聞き出してこの遺跡にやって来たのではないのかな?賢きオーガよ」
「生憎私はその場にいなかったのでね。チャビンを殺したのは別の若きメイジだ」
「そうか・・・弱いあ奴でも独自の魔法を編み出しそれなりに強かった。その強いメイジを上回るメイジがいようとはな・・・。まぁお前が遺跡について何も知らぬなら、それはそれで好都合!」
不意をつくようにヴィジャイが光と炎の複合魔法【黒点】を唱えた。タスネを見て警戒したのか弾かれるような魔法ではない。【闇の炎】のように任意の場所に小さな四千度のエネルギー球を発生させる単体最強魔法だ。
ヒジリはお構いなしで距離を詰めていく。
「術者の唱える魔法に術者自身を巻き込むつもりか?子爵のイメージの中の彼は魔法が効かないとあったが本当に大丈夫であろうか?」
霧化して様子を窺っていたダンティラスはハラハラしながら星のオーガの行動を見守っている。しかしこのまま何もしないのも恩知らずの恥知らずという気持ちになり実体化してストンと地面に降り立つと背中からうねる黒い触手を地面に潜らせていつでもメイジ達からマナを吸えるように準備した。
「ほう?ワシを巻き添えにするつもりかえ?【黒点】はターゲットだけを灰も残さず焼き尽くす魔法なのじゃが?」
「長年積んできた経験や常識が役に立たないという事はザラにある。気にしなくてもいいぞ、老人」
詠唱が間に合ったとニンマリ笑うヴィジャイの口に電撃の拳が飛ぶ。拳は老人の口を掠めただけだが歯が数本折れ、唇が切れ痺れる。
「ふぇいひょうのひっはいか?(詠唱の失敗か・・・?)」
魔法が掻き消えた事に驚き、今の拳がまともに打ち込まれていたなら、と背筋に冷たい汗が伝った。
後方に下がって逃げるヴィジャイの戦意を更に折ろうと掴みかかろうとしたその時、ヒジリの首を目掛けて刀の一撃が一閃する。
ウメボシのフォースシールドは確かに刀を弾いたがヒジリは喉に打撃のような衝撃を味わった。
そしてパスッと音がしてパワードスーツが衝撃を吸収したのが解った。
何もない空中から突如現れて、ヒジリの首の高さで横薙ぎで刀を振ったのはどう見ても古代日本の侍であった。
「故は知らぬが、貴様を討たねばならん。鬼の子よ」
侍の額の立物は重ね合わせた刀を模している。それはキラリと魔法灯の光に反射した。
侍は背も高く、鎧も実用的な事から戦国時代から来たのだと解る。
チャキっと刀を下段に構え、地面の下から現れたダンティラスのうねる触手を断ち斬った。
他の触手が老人二人を絡めとるも、侍はそれらも間を置かず斬った。
「吾輩の触手を絶ち斬っただと?あの刀が光魔法を帯びているようには見えんが・・・」
吸魔鬼は光に弱い。日差し程度であれば問題はないが、集約された光ではダメージを受けるので普段は宿主の体の中で黒い生身を隠している。
真っ黒くうねる剥き身になれば触れた者のマナや能力を吸い取る攻撃力も大幅に増すが、弱点も剥き出しになるのだ。ダンティラスはファナと違って生身を小出しにしか出さない。戦いにおいては慎重な性格をしているのだ。むき身になって、あの光属性を帯びているであろう刀で斬られると大ダメージを喰らうのは必至だ。
「隙を窺う。少し任せるぞヒジリ聖下」
そう言ってダンティラスは【姿隠し】を唱えた。吸魔鬼になってから覚えたこの魔法はどういうわけかまともに効果が作用せず、霧状の姿になってしまうのだ。なので多少周辺の影響を受けたり与えたり出来るが大したことは出来ない。
「うむ。この戦士はダンティラス殿とは相性が悪いようだ。出来ればメイジ二人の相手を頼む」
「引き受けた」
侍はパワードスーツやフォースシールドの存在を知ってか知らずか何も装備していないヒジリの頭ばかりを狙って突いてくる。
フォースシールドがそれらを防ぐも衝撃波が遅れてやってくるのでその衝撃波を躱す。頭にまともに衝撃波を受ければ脳震盪も有り得るからだ。
「蒸着!」
ヒジリがそう言うと頭に旧式のパワード・フルフェイスヘルメットが現れた。これで弱点はほぼ無くなったと言える。
侍はざっと下がって突きのポーズのまま刀を後ろに下げ力を溜めると、まだ間を詰め切れていないヒジリの胃辺りに向かって刀を突き出した。
「真剣白刃取り!」
ヒジリはそう言ってタイミングの遅い、失敗ともいえる真剣白刃取りをする。
フォースフィールドで弾かれた刀を追って両手で挟んで折ろうとしたのだが刀は折れず、ぐにゃりと曲がった。刀を掴む事に集中していたので後からくる衝撃波を回避出来ず、それはヒジリの腹部を襲う。
「ぐぅむ・・・」
胃の中の物を吐きそうになるも何とか堪え、唇を手の甲で拭う。
「武士の魂を曲げたぞ!君の負けだ。敗北を認めるのだな」
「これを使え!」
ヴィジャイは長いターバンからバラバラと未使用のビームダガーを二本投げる。
内一本をウメボシはビームで貫き破壊したが、一本は撃ち損じ侍の手に渡る。
ウメボシは撃ち損じた事を誤魔化すように魔法使いたちに向けてレーザービームの短矢を撃ちまくっている。
ヴィジャイの唱えた【水の壁】がそれを遮った。慢心して水の壁に歪んだ笑みを映す彼らは攻撃をしてこない。イービルアイを舐めているのだ。所詮は使い魔如きと。
「それならば!!マスターは後方に下がって下さい」
ヒジリは言われるがまま後方に下がる。
それをビームダガーを持った侍が追いかけてくるが、フォースシールドが有る上にパワードスーツにはビームコーティングがしてある。前回のように防御のエネルギーを全てヒジリに回し無防備となったウメボシが不意を突かれて貫かれるということもない。
ウメボシの瞳からエネルギーを収束させた強力な極太レーザービームが放たれ、水蒸気爆発を起こしながら水の壁を貫いた。爆発は包帯の男を巻き込み、そのままの勢いでヴィジャイの腹の7割程を焼き削った。
レーザービームと水蒸気爆発で遺跡の壁までメイジ二人は吹き飛び、一人は既に息絶えていた。
「おのれぇぇぇぇ!!おのれ!おのれ!おのれぇぇぇぇ!!」
明らかに詰んだと思える包帯の男は悔しさから叫んでいる。
彼は静かに懐の包帯の内側から取り出した宝珠を頭上に掲げヒヒヒと笑った。どこと無くエルフのモシューがもっていた世界渡りの宝珠に似ている。
ビームダガーを叩き落とし侍を取り押さえながら、何かをしようとする包帯のメイジをヒジリは見た。
―――ドゥーン―――
重低音があたり一面に響いた。
「宝珠よ!この国の者らごと、異次元の狭間へと誘え!代償はワシの命じゃ!」
捨て鉢となった包帯の男はゆっくりと宝珠から広がる闇に身を委ね、またヒヒヒと笑った。
ウメボシのビームが宝珠を狙うも時空が歪んでいるせいかまともに当たらず闇に消えていく。
ダンティラスは触手を何本も背中から出し、鞭のようにしならせて攻撃をしたが効果は皆無だった。寧ろ触手を闇に削り取られてしまった。
ヒジリは歩行を阻害しようと縋ってくる侍をそのまま引きずって何とか接近して宝珠を壊そうと目論むも間に合いそうもない。
「異次元の狭間などに行けば生き返ることも死ぬことも出来ないぞ・・・。私のこの星での生涯研究もこれまでか・・・」
ヒジリが諦めたその時、地面からバクバクが包帯の男の足元に現れ彼の下半身を飲み込むように噛み付いた。丁度宝珠から広がる闇の隙間を突いたような形でバクバクは現れたのだ。
「フヒヒ!無駄・・・無駄!もう宝珠は発動してしまっている。カハッ!」
そう言って笑う彼の前に突然忍者のような男がパッと現れ、分身して次々と魔法を纏わせた手刀で宝珠に攻撃を仕掛けていく。
半身となって息絶えたメイジの持つ宝珠は依然として異次元の向こう側を映す闇を放っている。包帯の男は浮いたまま宝珠を掲げ、死して尚不気味な笑みを残したままだった。
何者かの分身は攻撃の度に異次元の闇に消えていく。
「あれは裏側の長?!」
タスネは紺色の装束の男を見て叫ぶ。
ゲルシがジュウゾに事の顛末を報告していたのだ。遺跡に入る前からずっと彼はヒジリ達の後をつけて様子を窺っていた。
「私はよくよく遺跡守りのメイジ達と縁があるようだ」
そう言いながら印を結んで次々と分身を作り出し、宝珠に攻撃をさせている。ジュウゾに迷いも躊躇もない。闇に巻き込まれる事も覚悟で彼は分身を出し続けている。
(そろそろ、使用回数上限に達する。ええい!早く宝珠を壊さんか!我が分身共!)
―――ピキッ!―――
遂に宝珠にヒビが入った。
「皆離れろ!」
ジュウゾがそう叫ぶと、ヒジリは脚に縋り付く侍をガッシと掴み上げ、彼の主のもとへ放り投げてその場から離れた。
「さようならだ、日ノ本の戦士よ」
自分を召喚した主が死亡した事で侍は元の世界へ帰っていくだろう、と走りながらヒジリは考える。
実際、彼は異次元の闇とは関係なく存在が薄まり消えていった。
広がっていた闇は宝珠のひび割れにどんどんと吸い込まれ、その闇は包帯の男の亡骸を包み込んでヒビ割れに潜り込んでいった。
逃げそこなったジュウゾが宝珠に吸い込まれそうになるもダンティラスが触手を伸ばして素早く引き寄せる。
そしてさいごには宝珠自体もヒビ割れに飲み込まれて消え、後には静かな遺跡があるだけだった。
ふぅ~と大きなため息をついてタスネがへたり込む。
「イグナはこんな恐ろしいメイジと戦ったのね・・・」
ヒジリは大喜びしながらジュウゾに抱きついた。抱きついたというよりはベアハグのようだったが。
「やってくれたな!ジュウゾ殿!今回ばかりは私も諦めの境地にいたのだぞ!美味しいところを全部持っていくとは!・・・少々憎い」
ジュウゾはヒジリのベアハグにウググと呻いた後、シュッと抜けていつもの皮肉めいた冷たい口調で言う。
「マギンの件での借りは返したぞ、ヒジリ」
「うむ、確かに返してもらった」
ジュウゾはヒジリを神だとは思っていない。依然奴隷オーガだと思っている。だから公の場以外では聖下とは呼ばない。
「今回、私は殆ど役に立っていないな。三人のメイジの内二人は主殿とバクバクが倒したし、一人はウメボシが倒した。あの危険な宝珠はジュウゾ殿が破壊してしまったし。私は侍に手を焼いていただけであった」
「吾輩も見せ場が無かったのである・・・」
吸魔鬼は失った触手の何本かを撫でて遺跡の暗がりから現れる。誰かからマナを吸いたそうな顔をしていたが、約束を思い出してまた触手を撫でて我慢した。
タスネは急にハッとしてバクバクを呼ぶ。
「まさか、あの闇に連れて行かれたんじゃ!?バクバクー!」
直ぐにモコっとタスネの下の地面が盛り上がる。
「キュ?」
バクバクは野生の土喰いトカゲと違って顔が穏やかで可愛らしい。
「もぉ~!心配させて!!」
「キュキュー」
お互い抱き合って喜ぶ。タスネはバクバクが可愛くて仕方がないといった様子だった。
「今日はここまでにして、一旦外に出ようか、主殿」
「そうね。そういえば、シオ侯爵の別荘は返還されたそうだし、今日は皆でそこで休ませてもらいましょうよ」
「うむ、中々厚かましい提案だな。流石は主殿」
「あら?あまり活躍しなかった今回のドンビリさんがそんな事言っていいのかなぁ?・・・これ、ヒジリ。アタシは喉が乾いたぞよ。お水を差し出すのじゃ」
完全に調子に乗るタスネに、ヒジリは笑いながら亜空間ポケットから出した水のペットボトルを投げて寄越した。
―――パーン!―――
水しぶきが辺り一面に飛ぶ。
タスネの左手の盾は水の入ったペットボトルを見事弾いたのであった。
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