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禁断の箱庭と融合する前の世界(73)
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「衣装はこれでいいとして、これからどうするのかしら?」
目をキラキラさせるリツとヘカティニスに囲まれて困惑するイグナを見て、フランは笑いながらルビィに聞いた。
「後は邪悪な存在を倒す依頼でも冒険者ギルドで受けて、その様子を魔法水晶にでも撮れれば言うことなしなんだけどな」
「そんな都合のいい依頼があるかしらねぇ?」
それを聞いたヘカティニスが「ホイ、キタ!」と声を上げて外に向かって駆け、庭に立てかけてあった台車を勢い良く押して部屋に入ってきた。
「おで、ちょうどいい依頼を知ってるどーっ!」
「何で勢い良く台車を押して入ってきたんですの?」
「ヒジリが昔、都合のいい話がある時は台車を勢い良く押しながら報告するのがマナーだって言ってた」
「???」
そんなマナーが星の国ではあるのかしらと頭を傾げるリツにイグナは言う。
「ヒジリは時々、訳の分からない事を言うので気にしなくていい。変人だから」
「そうですわね」
変人だから、で誰もが納得した事に杖は滑稽さを感じ、短くカカカと笑った。
シルビィは紅茶を上品に一口飲んでヘカティニスに聞く。
「で、どんな依頼なんだ?」
「グランデモニウム王国を任されてる・・・そう・・総督の・・・え~っど、名前忘れだ」
「ゲルシだな。彼はダーリンに頼まれて国籍を帝国に移して、そのまま役職を引き継いでいる。ゲルシがどうした?」
「そう。そのゲルシシが外国から、いみ・・いみ・・移民を呼び寄せる、せい・・政策をとっているんだが、ミト湖の対岸の国から呼び寄せた闇樹族の移民を住まわせている地区で、ゆく・・ゆく、行方不明者が相次いでるんだ。どこかに誘拐犯がいるんじゃないかって話だど」
とても難しい話をなんとか伝え終えたヘカティニスは額の汗を拭ってソファーに座った。
「誘拐か・・・。まぁ下らん小物の盗賊が人攫いをやっているのだろう。モティ神聖国に示す茶番劇には持って来いの相手だ。で、一緒に行ってくれる者は?」
「私は明日から学校があるから行けないわ」
ナンベルの孤児院で基本的な戦い方や生活に必要な知恵を教わっているフランが申し訳なさそうに言う。
彼女が同行できるのは週末と休日だけだったとシルビィは思い出して、視線をフラン以外に向ける。
「おでも店の手伝いがある。それに子供を身籠っているからな。そういえばシルビィもお腹に子供がいるんだろ?無茶は出来ないんじゃないのか?」
「うむ・・・確かに」
「私も帝国での仕事がありますから無理ですわねぇ」
リツも鉄騎士団団長なので平日は忙しい。となると、と言ってシルビィの視線は自分の夫に向かう。
「俺だって領地の政務で忙しいぜ?それに俺とイグナだけで行けってか?メイジ二人でか?」
シオは驚いて肩をすくめる。
「ゴデにも冒険者ギルドはあるだろう?そこで前衛を雇えばいい」
「砦の戦士は?強そうなのがいっぱいいるじゃん」
シルビィは首を横に振って夫の提案を拒否した。
「ダメだ。これは我が国だけに限らないが、どこの国も復興でお金が飛んでいるのだ。そこまで高額な傭兵を雇う余裕は今の樹族国にはない」
「確かにヘカティニスとか砦の戦士は百戦錬磨なだけあって雇い賃が糞高いよなぁ・・・。ヒジリはよく払えたな」
「まぁヒジリは仲間だから割引サービスがあったけどお前には無いど」
「へいへい。ギルドで探しますよ!」
そう言ってシオはイグナの腰に手を回し、ギルドに向かおうと促した。
「おい!イグナに変な事するんじゃないぞ!」
夫がイグナの腰に手を回した事にシルビィは嫉妬して、指をさしてそう忠告する。
「するかよ!馬鹿!」
二人のやり取りに聖なる杖が笑う。
「カカカ、夫婦揃って嫉妬深いなぁ。ごっそさん」
オーガの酒場に二人はやって来るとシオはぶつくさと呟く。
「そういえば、冒険者ギルドっでここだったんだ。新鮮味も何も無いな・・・。普段から砦の戦士やオークが居座ってコーヒーを飲んでいるから、ただの喫茶店兼酒場兼宿屋だと思ってぜ。あいつら皆冒険者で仕事待ちだったんだな。となると先に依頼を取られているかもしれないな」
シオは急いで酒場に入り、依頼の紙が貼ってある掲示板を見る。
「誰も引き受けていない依頼があった!なんだこりゃ!依頼料安すぎるだろ・・・。道理で誰も受けて無いわけだ」
「銀貨一枚じゃなぁ・・・。鉱山で半日働けば手に入る額じゃねぇですか。命を懸ける対価としてはタダ同然だな、カカッ」
シオと聖なる杖が掲示板の前で文句をいっていると視線を感じる。
ベンキがいつも座っているカウンター席から何度も振り向いてこちらを窺っているのだ。
「どうした?ベンキのおっさん?依頼が気になるのか?」
杖が呼びかけると、「何でもない」と答えて前を向いてコーヒーを啜った。
「もしかして、この依頼を受けようかどうか迷ってるんじゃねぇのか?」
「砦の戦士にとって銀貨一枚なんて端金だろ。あいつら莫大な財産を持ってるって噂だぞ?」
「カカカ。でもゴールキ将軍が散財するから火の車とも聞いたけどな」
「イグナ、誘ってみろよ」
「わかった」
「待った。魔法水晶でイメージ映像を撮る時の練習として、可愛く好感が持てる感じで誘ってみ、お嬢ちゃん」
聖なる光の杖の無茶振りにイグナは暫く何かを考えて沈黙したが、頷くとトコトコとベンキのもとに向かっていった。
「ベーンキ、移民村の誘拐事件の調査に一緒に行って欲しいニャン」
イグナは猫人に変装した時にネコキャットとドワイトのウケが良かった事を思い出して、語尾にニャンを付けてベンキの顔を覗き込んだ。
ベンキはまさか闇魔女がこんな可愛い仕草をするとは思っていなかったので、ブッとコーヒーを吹き出して自分の眼鏡を汚してしまった。
ワナワナと震えるベンキを見て、シオと聖なる杖は口をあんぐりと開け(杖に口はないが)ハワワーと恐怖する。
「しまったーっ!ベンキを怒らせたぞ!」
「相棒、【眠れ】の魔法の用意しろ!」
「百戦錬磨のオーガに【眠れ】なんて効くのか?」
「いいからやれ!」
シオが手で【眠れ】の魔法の呪印を結ぼうとしていると、思いもよらない返事が帰ってきた。
「いいぞ」
「え?」
「へ?」
眼鏡を拭きながら、あっさりと承諾したベンキを見てシオと杖は拍子抜けする。
「その代わり条件がある。依頼料は要らんが仕事が済んだら、イグナには俺の手伝いをしてもらう。内容は帰ってから話す」
「わかった」
シオは心の中でベンキに限って無いとは思うが、と呟きながら一応聞く。
「いかがわしい手伝いじゃないだろうな?イグナはまだ子供だぞ?」
「そんな事はしない」
磨き上げられた光る瓶底眼鏡をクイッと上げて視線でシオに抗議をすると、背を向けてミカティニスにコーヒーのお代わりを頼んだ。
「相棒、盾役が一人ってのは心許無いぞ。もう一人欲しいな」
「無茶言うなよ、誰がタダ同然の依頼を受けてくれるんだよ」
「ドォスンなら受けてくれるかも。優しいから」
イグナはそう言って混雑する酒場の中からドォスンを探す。
「ドォスンなら、コロネとツィガルとの境の山へ行ったぞ。あそこは洞窟が沢山あるからな。宝探しにでも行ったんだろう」
「明日から学校なのに・・・。それにコロネは変なアイテムばかり見つけてくる」
コロネはちょくちょくイグナやフランに会いに行くという名目で、家の馬車でゴデの街まで来てはドォスンとつるんでいる。ドォスンと何処かに出かけると必ずと言っていいほど、奇妙なアイテムを持って帰ってくるのだ。
適正職業がレンジャーとスカウトなので、ほぼ毎回宝を見事見つけて帰ってくるがどのアイテムも何の役立つのか判らない物ばかりだった。
それでもタスネ曰く、サヴェリフェ家で一番の稼ぎ頭らしい。珍妙で役立たずのアイテムは何故かマニアが高額で買い取っていく。その界隈では若き新星としてコロネは有名になりつつあった。
「仕方ねぇ。ベンキ一人に前衛を任すか。俺はベンキのサポートをするからイグナは攻撃をメインで」
イグナはシオの役割分担に同意する。
「まぁ聖なる杖の俺様を含めると、僧侶と司祭とメイジがいるようなもんだしな」
「お前は時々寝てしまうから、僧侶として数には入れねぇぞ?」
「あ、そういうこと言うの?ピンチの時、助けてやらねぇからな」
シオは杖を無視して移民村の場所を依頼票で確認している。
「ミト湖の近くだな。ドォスン達が向かった洞窟のある山の近くじゃね?何で移民を直ぐにゴデの街に呼び寄せなかったんだろうか?」
近くで皿を拭いていたミカティニスが答える。
「直ぐにゴデの街に呼ぶと、あつ・・・あつ・・・軋轢を生むからって役人が言ってたど」
「そっか。まぁいいや。直ぐに向かうぞ、ベンキ。準備してくれ」
シオに言われてベンキはカウンターから立ち上がった。砦の戦士の中では非力な彼だが、やはり百戦錬磨の戦士だけあって背は高かった。三メートルほど上から静かな声が聞こえてくる。
「じゃあ行ってくるわ、母ちゃん」
「いってらっさい」
砦の戦士達はミカティニスを母と呼ぶ。今の砦の戦士達はゴールキとミカティニスがまだ夫婦だった頃に拾われた孤児なのだ。ミカティニスも息子同様にベンキ達を扱っている。
ベンキは特に装備などの用意をすることもなく、普段着の白い学生服に似た服装のままで出てきた。
シオは「へ?」と驚いて、澄まし顔のベンキに聞く。
「いつもの毛皮の鎧とか着てこなくていいのか?」
「ああ、問題ない。この服には魔法がかかってある。高い防御力と魔法耐性があるので平気だ」
「武器は?砦の戦士って皆、格闘家なんだっけ?」
「いいや。俺は戦士だ。砦の戦士ギルドの中で格闘家は親父とスカーとヒジリとドォスンだけだ。他は皆戦士。基本的に素手で挑んで戦いの最中、敵から得物を奪って戦うスタイルの者がうちには多い」
「そっか。盾役、よろしく頼むぜ?俺達は貧弱なメイジだからよ」
「任せとけ」
砦の戦士の中では非力な方とはいえ、体力や耐久力は樹族や血走り族の何倍もある。オーガの「任せとけ」は頼りになる事を知っているシオは、依頼が楽にこなせる事を確信した。
ミト湖近くの移民村で、巨体同士が死闘を繰り広げていた。
「ドォスン!右からパンチが来るよ!」
コロネが回避行動を促すとドォスンの右から見知らぬオーガの重くて素早い一撃が飛んでくる。
ヒジリと似た戦闘スタイルのドォスンはそれを右手で往なして、頭突きを食らわせるも何かに遮られたような感じがして手応えはない。
ドォスンは一旦距離を起き、敵を観察する。
攻撃自体は素人のそれだが、高い身体能力でゴリ押しをしてくるほっそりとしたオーガからは覇気のようなものを感じない。
「生きているのか?こいつは。あの服、どことなくヒジリに似ているど」
白地に水色の幾何学模様が入った所々装甲の付いた全身スーツを着るオーガは、黒いハーフマスクで口元を覆っていて表情が読みずらい。しかし目が笑っているのでマスクの下で笑っている事は解った。
コロネのショートボウから矢が放たれ、正体不明のオーガを狙うもオーガは避ける素振りすら見せない。
飛んでくる矢を目の前にしたオーガは矢を見ることもなく右手で弾いてしまった。
「何で村人を消すんだ!消した村人はどこやった!」
「・・・」
オーガは答えない。
地表を滑空するように走って謎のオーガはターゲットをコロネに変えた。
初期のドォスンしか知らない者は彼を愚鈍だと言うが、幾多の戦いを経験してきた今の彼の動きは非常に素早い。
ドォスンは跳躍すると、コロネに向かう謎のオーガの前に立ちはだかり吠えた。
「貫通撃!」
謎のオーガにとってそれは、腰をどっしりと下ろしたただの正拳突きにしか見えなかったが、愚鈍そうで角の有るオーガのパンチは自分の防御障壁を貫通して腹にめり込んだ。
謎のオーガは衝撃に驚き、苦痛に顔を歪ませ、思わず胃の中の物を吐瀉する。
ハーフマスクの端から溢れた胃液を零し、苦しむ謎のオーガの後頭部へドォスンの両手を組んだ一撃が振り下ろされた。
今度も謎のオーガが纏う物理防御障壁を突き抜け見事クリーンヒットした。
ドラゴンの頭をも打ち砕くドォスンの一撃を受ければ普通の者であれば頭蓋骨が粉々になっていてもおかしくないはずだが、謎のオーガは頭を地面にめり込ましたまま動かなくなっただけであった。
動かなくなったオーガの黒い髪を掴んで持ち上げ、顔を確認しようとすると彼は光の粒となって消えてしまいドォスンは困惑する。
困惑するドォスンの後ろから、同じく困惑した顔でコロネが近づいてくる。
「顔はヒジリに似てないけど、色々似てるところも多かった・・・。攻撃が中々貫通しないところや、服装、光の粒子になって転移するところとか。もしかして星のオーガだったのかなぁ?ドォスン」
「ヒジリはもっともっと強い。今戦ったオーガは星のオーガの出来損ないみたいな感じがしだ」
人間のいる異世界から迫害されてやってきたドォスンにとって、あの謎のオーガは間違いなくこの星に存在しないはずの”人間“だと解る。
「何だか、人形を相手にしているような感じだった」
後味の悪い感触を残した拳をドォスンは見つめて、なんともいえない不気味さを感じていると、遠くから男とも女とも取れる声が聞こえてきた。
「おーーーい!」
「シオだ!ベンキとイグナお姉ちゃんもいる!」
コロネは自慢の駆け足でイグナに飛びついた。
足跡で乱れた地面や、何かを叩きつけたような穴を見てベンキは眼鏡をクイッと上げてドォスンに聞く。
「何があった?ドォスン」
「宝探しの帰りに、この街道沿いの村で悲鳴が聞こえてきたから様子を見に来たら、一匹の人間・・・オーガが村人を捕まえて光の粒にしてるのを見たんだ。だかだ、村人を助けるためにソイツと戦って勝った。そしたらソイツも光の粒になって消えた」
シオが拍子抜けした顔で聞く。
「じゃあ、ドォスンがギルドの依頼を達成しちゃったのか?」
「なんだ?依頼が出てたのか?おでたちが横取りしてしまったか」
申し訳ないという顔をするドォスンにベンキは冷静に答える。
「気にしなくていい。こっちの話だ」
シオは気を取り直して村の様子を入り口の門から調べた。
「何にもねぇ。貧しそうな村だな」
「まぁ移民なんて大概、新天地に夢見てやって来る貧者さね。村人が出した依頼料の銀貨一枚もなけなしの金だったんだろうよ」
潜んでいた闇樹族の村人が樹族のシオを見て安心したのか、家から出て来る。
「助けに来てくれたのか?」
闇落ちした樹族である闇樹族は元同族に不安そうに聞いた。
「まぁそんなところだ。何があった?」
シオの前に集まった闇樹族の移民たちは顔を見合わせると、リーダーらしき男が前に出て言う。
「星のオーガが、俺達を連れ去ろうとしたんだ!」
目をキラキラさせるリツとヘカティニスに囲まれて困惑するイグナを見て、フランは笑いながらルビィに聞いた。
「後は邪悪な存在を倒す依頼でも冒険者ギルドで受けて、その様子を魔法水晶にでも撮れれば言うことなしなんだけどな」
「そんな都合のいい依頼があるかしらねぇ?」
それを聞いたヘカティニスが「ホイ、キタ!」と声を上げて外に向かって駆け、庭に立てかけてあった台車を勢い良く押して部屋に入ってきた。
「おで、ちょうどいい依頼を知ってるどーっ!」
「何で勢い良く台車を押して入ってきたんですの?」
「ヒジリが昔、都合のいい話がある時は台車を勢い良く押しながら報告するのがマナーだって言ってた」
「???」
そんなマナーが星の国ではあるのかしらと頭を傾げるリツにイグナは言う。
「ヒジリは時々、訳の分からない事を言うので気にしなくていい。変人だから」
「そうですわね」
変人だから、で誰もが納得した事に杖は滑稽さを感じ、短くカカカと笑った。
シルビィは紅茶を上品に一口飲んでヘカティニスに聞く。
「で、どんな依頼なんだ?」
「グランデモニウム王国を任されてる・・・そう・・総督の・・・え~っど、名前忘れだ」
「ゲルシだな。彼はダーリンに頼まれて国籍を帝国に移して、そのまま役職を引き継いでいる。ゲルシがどうした?」
「そう。そのゲルシシが外国から、いみ・・いみ・・移民を呼び寄せる、せい・・政策をとっているんだが、ミト湖の対岸の国から呼び寄せた闇樹族の移民を住まわせている地区で、ゆく・・ゆく、行方不明者が相次いでるんだ。どこかに誘拐犯がいるんじゃないかって話だど」
とても難しい話をなんとか伝え終えたヘカティニスは額の汗を拭ってソファーに座った。
「誘拐か・・・。まぁ下らん小物の盗賊が人攫いをやっているのだろう。モティ神聖国に示す茶番劇には持って来いの相手だ。で、一緒に行ってくれる者は?」
「私は明日から学校があるから行けないわ」
ナンベルの孤児院で基本的な戦い方や生活に必要な知恵を教わっているフランが申し訳なさそうに言う。
彼女が同行できるのは週末と休日だけだったとシルビィは思い出して、視線をフラン以外に向ける。
「おでも店の手伝いがある。それに子供を身籠っているからな。そういえばシルビィもお腹に子供がいるんだろ?無茶は出来ないんじゃないのか?」
「うむ・・・確かに」
「私も帝国での仕事がありますから無理ですわねぇ」
リツも鉄騎士団団長なので平日は忙しい。となると、と言ってシルビィの視線は自分の夫に向かう。
「俺だって領地の政務で忙しいぜ?それに俺とイグナだけで行けってか?メイジ二人でか?」
シオは驚いて肩をすくめる。
「ゴデにも冒険者ギルドはあるだろう?そこで前衛を雇えばいい」
「砦の戦士は?強そうなのがいっぱいいるじゃん」
シルビィは首を横に振って夫の提案を拒否した。
「ダメだ。これは我が国だけに限らないが、どこの国も復興でお金が飛んでいるのだ。そこまで高額な傭兵を雇う余裕は今の樹族国にはない」
「確かにヘカティニスとか砦の戦士は百戦錬磨なだけあって雇い賃が糞高いよなぁ・・・。ヒジリはよく払えたな」
「まぁヒジリは仲間だから割引サービスがあったけどお前には無いど」
「へいへい。ギルドで探しますよ!」
そう言ってシオはイグナの腰に手を回し、ギルドに向かおうと促した。
「おい!イグナに変な事するんじゃないぞ!」
夫がイグナの腰に手を回した事にシルビィは嫉妬して、指をさしてそう忠告する。
「するかよ!馬鹿!」
二人のやり取りに聖なる杖が笑う。
「カカカ、夫婦揃って嫉妬深いなぁ。ごっそさん」
オーガの酒場に二人はやって来るとシオはぶつくさと呟く。
「そういえば、冒険者ギルドっでここだったんだ。新鮮味も何も無いな・・・。普段から砦の戦士やオークが居座ってコーヒーを飲んでいるから、ただの喫茶店兼酒場兼宿屋だと思ってぜ。あいつら皆冒険者で仕事待ちだったんだな。となると先に依頼を取られているかもしれないな」
シオは急いで酒場に入り、依頼の紙が貼ってある掲示板を見る。
「誰も引き受けていない依頼があった!なんだこりゃ!依頼料安すぎるだろ・・・。道理で誰も受けて無いわけだ」
「銀貨一枚じゃなぁ・・・。鉱山で半日働けば手に入る額じゃねぇですか。命を懸ける対価としてはタダ同然だな、カカッ」
シオと聖なる杖が掲示板の前で文句をいっていると視線を感じる。
ベンキがいつも座っているカウンター席から何度も振り向いてこちらを窺っているのだ。
「どうした?ベンキのおっさん?依頼が気になるのか?」
杖が呼びかけると、「何でもない」と答えて前を向いてコーヒーを啜った。
「もしかして、この依頼を受けようかどうか迷ってるんじゃねぇのか?」
「砦の戦士にとって銀貨一枚なんて端金だろ。あいつら莫大な財産を持ってるって噂だぞ?」
「カカカ。でもゴールキ将軍が散財するから火の車とも聞いたけどな」
「イグナ、誘ってみろよ」
「わかった」
「待った。魔法水晶でイメージ映像を撮る時の練習として、可愛く好感が持てる感じで誘ってみ、お嬢ちゃん」
聖なる光の杖の無茶振りにイグナは暫く何かを考えて沈黙したが、頷くとトコトコとベンキのもとに向かっていった。
「ベーンキ、移民村の誘拐事件の調査に一緒に行って欲しいニャン」
イグナは猫人に変装した時にネコキャットとドワイトのウケが良かった事を思い出して、語尾にニャンを付けてベンキの顔を覗き込んだ。
ベンキはまさか闇魔女がこんな可愛い仕草をするとは思っていなかったので、ブッとコーヒーを吹き出して自分の眼鏡を汚してしまった。
ワナワナと震えるベンキを見て、シオと聖なる杖は口をあんぐりと開け(杖に口はないが)ハワワーと恐怖する。
「しまったーっ!ベンキを怒らせたぞ!」
「相棒、【眠れ】の魔法の用意しろ!」
「百戦錬磨のオーガに【眠れ】なんて効くのか?」
「いいからやれ!」
シオが手で【眠れ】の魔法の呪印を結ぼうとしていると、思いもよらない返事が帰ってきた。
「いいぞ」
「え?」
「へ?」
眼鏡を拭きながら、あっさりと承諾したベンキを見てシオと杖は拍子抜けする。
「その代わり条件がある。依頼料は要らんが仕事が済んだら、イグナには俺の手伝いをしてもらう。内容は帰ってから話す」
「わかった」
シオは心の中でベンキに限って無いとは思うが、と呟きながら一応聞く。
「いかがわしい手伝いじゃないだろうな?イグナはまだ子供だぞ?」
「そんな事はしない」
磨き上げられた光る瓶底眼鏡をクイッと上げて視線でシオに抗議をすると、背を向けてミカティニスにコーヒーのお代わりを頼んだ。
「相棒、盾役が一人ってのは心許無いぞ。もう一人欲しいな」
「無茶言うなよ、誰がタダ同然の依頼を受けてくれるんだよ」
「ドォスンなら受けてくれるかも。優しいから」
イグナはそう言って混雑する酒場の中からドォスンを探す。
「ドォスンなら、コロネとツィガルとの境の山へ行ったぞ。あそこは洞窟が沢山あるからな。宝探しにでも行ったんだろう」
「明日から学校なのに・・・。それにコロネは変なアイテムばかり見つけてくる」
コロネはちょくちょくイグナやフランに会いに行くという名目で、家の馬車でゴデの街まで来てはドォスンとつるんでいる。ドォスンと何処かに出かけると必ずと言っていいほど、奇妙なアイテムを持って帰ってくるのだ。
適正職業がレンジャーとスカウトなので、ほぼ毎回宝を見事見つけて帰ってくるがどのアイテムも何の役立つのか判らない物ばかりだった。
それでもタスネ曰く、サヴェリフェ家で一番の稼ぎ頭らしい。珍妙で役立たずのアイテムは何故かマニアが高額で買い取っていく。その界隈では若き新星としてコロネは有名になりつつあった。
「仕方ねぇ。ベンキ一人に前衛を任すか。俺はベンキのサポートをするからイグナは攻撃をメインで」
イグナはシオの役割分担に同意する。
「まぁ聖なる杖の俺様を含めると、僧侶と司祭とメイジがいるようなもんだしな」
「お前は時々寝てしまうから、僧侶として数には入れねぇぞ?」
「あ、そういうこと言うの?ピンチの時、助けてやらねぇからな」
シオは杖を無視して移民村の場所を依頼票で確認している。
「ミト湖の近くだな。ドォスン達が向かった洞窟のある山の近くじゃね?何で移民を直ぐにゴデの街に呼び寄せなかったんだろうか?」
近くで皿を拭いていたミカティニスが答える。
「直ぐにゴデの街に呼ぶと、あつ・・・あつ・・・軋轢を生むからって役人が言ってたど」
「そっか。まぁいいや。直ぐに向かうぞ、ベンキ。準備してくれ」
シオに言われてベンキはカウンターから立ち上がった。砦の戦士の中では非力な彼だが、やはり百戦錬磨の戦士だけあって背は高かった。三メートルほど上から静かな声が聞こえてくる。
「じゃあ行ってくるわ、母ちゃん」
「いってらっさい」
砦の戦士達はミカティニスを母と呼ぶ。今の砦の戦士達はゴールキとミカティニスがまだ夫婦だった頃に拾われた孤児なのだ。ミカティニスも息子同様にベンキ達を扱っている。
ベンキは特に装備などの用意をすることもなく、普段着の白い学生服に似た服装のままで出てきた。
シオは「へ?」と驚いて、澄まし顔のベンキに聞く。
「いつもの毛皮の鎧とか着てこなくていいのか?」
「ああ、問題ない。この服には魔法がかかってある。高い防御力と魔法耐性があるので平気だ」
「武器は?砦の戦士って皆、格闘家なんだっけ?」
「いいや。俺は戦士だ。砦の戦士ギルドの中で格闘家は親父とスカーとヒジリとドォスンだけだ。他は皆戦士。基本的に素手で挑んで戦いの最中、敵から得物を奪って戦うスタイルの者がうちには多い」
「そっか。盾役、よろしく頼むぜ?俺達は貧弱なメイジだからよ」
「任せとけ」
砦の戦士の中では非力な方とはいえ、体力や耐久力は樹族や血走り族の何倍もある。オーガの「任せとけ」は頼りになる事を知っているシオは、依頼が楽にこなせる事を確信した。
ミト湖近くの移民村で、巨体同士が死闘を繰り広げていた。
「ドォスン!右からパンチが来るよ!」
コロネが回避行動を促すとドォスンの右から見知らぬオーガの重くて素早い一撃が飛んでくる。
ヒジリと似た戦闘スタイルのドォスンはそれを右手で往なして、頭突きを食らわせるも何かに遮られたような感じがして手応えはない。
ドォスンは一旦距離を起き、敵を観察する。
攻撃自体は素人のそれだが、高い身体能力でゴリ押しをしてくるほっそりとしたオーガからは覇気のようなものを感じない。
「生きているのか?こいつは。あの服、どことなくヒジリに似ているど」
白地に水色の幾何学模様が入った所々装甲の付いた全身スーツを着るオーガは、黒いハーフマスクで口元を覆っていて表情が読みずらい。しかし目が笑っているのでマスクの下で笑っている事は解った。
コロネのショートボウから矢が放たれ、正体不明のオーガを狙うもオーガは避ける素振りすら見せない。
飛んでくる矢を目の前にしたオーガは矢を見ることもなく右手で弾いてしまった。
「何で村人を消すんだ!消した村人はどこやった!」
「・・・」
オーガは答えない。
地表を滑空するように走って謎のオーガはターゲットをコロネに変えた。
初期のドォスンしか知らない者は彼を愚鈍だと言うが、幾多の戦いを経験してきた今の彼の動きは非常に素早い。
ドォスンは跳躍すると、コロネに向かう謎のオーガの前に立ちはだかり吠えた。
「貫通撃!」
謎のオーガにとってそれは、腰をどっしりと下ろしたただの正拳突きにしか見えなかったが、愚鈍そうで角の有るオーガのパンチは自分の防御障壁を貫通して腹にめり込んだ。
謎のオーガは衝撃に驚き、苦痛に顔を歪ませ、思わず胃の中の物を吐瀉する。
ハーフマスクの端から溢れた胃液を零し、苦しむ謎のオーガの後頭部へドォスンの両手を組んだ一撃が振り下ろされた。
今度も謎のオーガが纏う物理防御障壁を突き抜け見事クリーンヒットした。
ドラゴンの頭をも打ち砕くドォスンの一撃を受ければ普通の者であれば頭蓋骨が粉々になっていてもおかしくないはずだが、謎のオーガは頭を地面にめり込ましたまま動かなくなっただけであった。
動かなくなったオーガの黒い髪を掴んで持ち上げ、顔を確認しようとすると彼は光の粒となって消えてしまいドォスンは困惑する。
困惑するドォスンの後ろから、同じく困惑した顔でコロネが近づいてくる。
「顔はヒジリに似てないけど、色々似てるところも多かった・・・。攻撃が中々貫通しないところや、服装、光の粒子になって転移するところとか。もしかして星のオーガだったのかなぁ?ドォスン」
「ヒジリはもっともっと強い。今戦ったオーガは星のオーガの出来損ないみたいな感じがしだ」
人間のいる異世界から迫害されてやってきたドォスンにとって、あの謎のオーガは間違いなくこの星に存在しないはずの”人間“だと解る。
「何だか、人形を相手にしているような感じだった」
後味の悪い感触を残した拳をドォスンは見つめて、なんともいえない不気味さを感じていると、遠くから男とも女とも取れる声が聞こえてきた。
「おーーーい!」
「シオだ!ベンキとイグナお姉ちゃんもいる!」
コロネは自慢の駆け足でイグナに飛びついた。
足跡で乱れた地面や、何かを叩きつけたような穴を見てベンキは眼鏡をクイッと上げてドォスンに聞く。
「何があった?ドォスン」
「宝探しの帰りに、この街道沿いの村で悲鳴が聞こえてきたから様子を見に来たら、一匹の人間・・・オーガが村人を捕まえて光の粒にしてるのを見たんだ。だかだ、村人を助けるためにソイツと戦って勝った。そしたらソイツも光の粒になって消えた」
シオが拍子抜けした顔で聞く。
「じゃあ、ドォスンがギルドの依頼を達成しちゃったのか?」
「なんだ?依頼が出てたのか?おでたちが横取りしてしまったか」
申し訳ないという顔をするドォスンにベンキは冷静に答える。
「気にしなくていい。こっちの話だ」
シオは気を取り直して村の様子を入り口の門から調べた。
「何にもねぇ。貧しそうな村だな」
「まぁ移民なんて大概、新天地に夢見てやって来る貧者さね。村人が出した依頼料の銀貨一枚もなけなしの金だったんだろうよ」
潜んでいた闇樹族の村人が樹族のシオを見て安心したのか、家から出て来る。
「助けに来てくれたのか?」
闇落ちした樹族である闇樹族は元同族に不安そうに聞いた。
「まぁそんなところだ。何があった?」
シオの前に集まった闇樹族の移民たちは顔を見合わせると、リーダーらしき男が前に出て言う。
「星のオーガが、俺達を連れ去ろうとしたんだ!」
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「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
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戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
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