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禁断の箱庭と融合する前の世界(101)
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光り輝くウメボシはイグナにニッコリ笑うと、ウェイロニーに近づき手をかざす。
過去にウメボシが他者を回復する時に見せた柔らかな光がサキュバスを包みこんだ。
二度と飛ぶことは出来ないだろうと思われた黒焦げのコウモリ羽は綺麗になり、焼けただれた肌も以前の白い肌へと戻っていた。
「おおお!ウメボシ殿!感謝しますぞ!」
ヴァーンズは両手を組んで跪き、目の前の神の使いに感謝をしている。
イグナがもう一度ウメボシの名を呼ぼうとしたが、召喚時間が過ぎたのか彼女は舞い散る天使の羽と共にすぐに消えてしまった。
「ウメボシと何も話せなかった・・・」
十数年ぶりの再開は白昼夢のごとく瞬く間であった。
がっかりするイグナの横でマサヨシは歌舞伎のような見得を切って寄り目で言う。
「どぅ~だ!俺様の召喚術は!どうぅ~だぁ!」
「さっきまでウェイロニーって叫びながら泣いていたくせに・・・」
「否定はしない!だが、あの涙が天使を呼び寄せたのだッ!俺様の愛の涙とッ!ジジィの怒りがッ!天使を降臨させたッ!」
「天使じゃない・・・ウメボシ」
ハハッ!と張りのない高い声で年老いたゴブリンは笑う。
「しかし神であるヒジリ様の使い魔なのだから、天使ではあるな。それにしても・・・。こういう時に神の御業が使える僧侶や神官の大事さが解った。一度見覚えの闇魔女も神の御業は習得できないのだから。マサヨシ殿。我が使い魔をウメボシ殿を召喚することで救ってい頂き、本当に感謝しております」
「ナハハッ!いいのですよ、当然のことをしたまで!お気になさらず」
「左様ですか。では気にしないでおこう」
「ちょ!もっと俺様を褒め称えてよ!褒め称えよぉ!褒め称えよぉ!」
マサヨシの言葉を無視してヴャーンズは気を失ったままのウェイロニーの顔を見つめ思う。
(バートラの霧の発生頻度が高くなっている・・・。しかも魔法を弾く壁で出来た施設の内側だろうがお構い無しで発生しよる・・・。何故バートラだけ?面倒な事にならなければいいが・・・)
倉庫の壁の上部にある小さな小窓から差し込む朝日でヤイバは目が覚めた。
「うっ!重いな・・・」
ヤイバの体の上に可愛い妹が仰向けで眠っており、その上にフランが眠っていた。
「親子亀か!」
「亀がどうしたの?お兄ちゃん。・・・あっ!直ぐに退くね?」
「一体どう寝れば、積石のような寝方になるんだ?」
ワロティニスは両手でフランを持ち上げたまま、スルリと隣にある自分のマットに落ちた。が、途中でバランスを崩してアッ!と言ってフランを兄の上に置く。
フランはうつ伏せの状態でヤイバの体の上で寝る形になり、そのまま目が覚める。
「やだぁ、素敵な胸板・・・」
フランはヤイバの黒いシャツから伝わってくる体温と引き締まった鋼のような筋肉の感触に、寝ぼけながらうっとりして顔を擦りつけている。
「ちょっと!お兄ちゃん!」
そう言ってやきもちを焼くワロティニスはヤイバの頬を抓る。
「いたた!何でお兄ちゃんなんだよ!フランさんも、起きて下さい」
そう言ってヤイバは自分の体の上からフランを持ち上げると、床に立たせた。
それから自分の脂ぎった青黒い髪を触る。
「そう言えばお風呂に入っていない・・・。せめて髪だけでも洗いたいな・・・」
「そういえば、そうねぇ・・・」
フランは自分の腕をクンクンと匂って臭くないかを確かめている。
「この世界に一緒に飛んできたエミさんの小屋に行けば、お風呂場で行水くらいなら出来そうだから使わせてもらおうよ」
三人して小屋に行き、風呂場を使わせて欲しいと言うとエミは快く快諾した。
ヤイバは風呂場に行き、大きな木桶に水が入っている事に気が付き一旦外に出た。
「お兄ちゃんどこに行くの?」
「石を焼いてくる」
「石?(石を焼くくらいなら、いつも私にヤキモチを焼いてよ!)」
ヤイバは握りこぶし大の石を幾つか集め、【業火】で暫く焼くと石は真っ赤になった。
「この世界にサラマンダー石が有ればもっと楽なんだけど」
真っ赤になった石をその辺にあった鉄のシャベルで掬い、風呂場まで向う。水の張った大きな桶に焼けた石を入れると水蒸気を上げてお湯が沸き立った。
「お!考えたな、ヤイバ。そうだ、これで頭を洗うとさっぱりするぞ。ここを押すとシャンプーが出て来る」
廃屋で見つけたジーパンとスプリングセーターを着たタカヒロが、倉庫から見つけてきたシャンプーボトルのポンプを押して見せる。
「シャンプー?」
「まぁ頭を洗う石鹸みたいなものだ。これはリンス。髪をサラサラにしてくれる。二つとも倉庫にあったから持ってきていたんだ」
「ああ、椿油みたいなものですね?」
「そうだな。この世界では椿油は高価だからこれを使うのだ」
「え?椿油が?あんなものはゴブリンが安くで売っているのに・・・」
「まぁ国によっても物の価値が違うのだから、世界が変われば尚更だ」
「確かに」
ヤイバはシャンプーとリンスを受け取ると風呂場に消えていった。ワロティニスは名残惜しそうに兄の背中を見ている。一緒にお風呂に入りたいのだ。
「ワロちゃん、お兄ちゃんの裸を覗いちゃ駄目よ?」
フランがクスクス笑っている。
ワロティニスはモー!と憤慨してポカポカとフランを殴ろうとするが、体の華奢な地走り族がそれをまともに喰らえば大ダメージを受けてしまう。
なのでフランは密かにスキルを発動してニコニコしながら裏側の長のようにシュッシュと回避した。
「ねぇ?もしかしてこっちじゃダイヤモンドって価値があるんじゃない?」
ワロティニスの攻撃が止むのを待って、急に何かを思いついたようにフランは懐から大きなダイヤモンドを取り出した。
「これ、能力アップ系の魔法が篭められていたんだけど効果が無くなっちゃたのよね。宝石類は金属と違って装飾以外の実用性が低いし、結構大量に出回っているから私達の世界では価値が低いけど、もしかしたらこっちの世界じゃ価値が高いんじゃないかなって思ったの。だってここは椿油なんかが高価なんでしょぉ?」
タカヒロの目が見開かれる。何か金の足しになるものを東京に売りに行こうとは思っていたが奴隷であった自分の革袋にはクズのような宝石しかはいっていなかったので頭を悩ましていたのだ。
「確かにこの世界ではダイヤモンドはかなりの価値がある!そんなに大きければ尚更だ!明日、早速売りに行こう!この世界で君達を養うには十分なお金が手に入る!」
「やった!」
ワロティニスとフランはハイタッチをしてお金の事よりも、大都会に行ける事を喜んだ。そして風呂場のドアを勢い良く開け、兄に明日東京に行く事を伝えた。
丁度髪を洗っていたヤイバは乙女のような悲鳴を上げて股間と胸を手で隠した。
「何も荷台に乗せないまま着いちゃいましたけど、本当にいいんですか?」
トラックの運転手は荷台を開けてくれと言われて開けたが、何も無い荷台を見てからタカヒロを怪訝な顔で見つめた。
「良いんだ。験担ぎみたいなものだと思ってくれればいい。お金はちゃんと支払う」
「そうですか・・・。(どういった験担ぎなんだか)」
少しトラックが揺れた気がし、不思議がる運転手はタカヒロからお金を渡されて領収書を切る。
「毎度あり!」
「帰りもよろしく。また連絡するよ」
「はい!」
運転手はお辞儀して顔を上げる時にタカヒロの横に立つ、とてつもないフェロモンを放つフランを舐め回すように見てから鼻の下を伸ばし、トラックに乗ると去っていった。
「あの人、いやらしい目をしてた!」
透明化したワロティニスが立ち去った運転手を見てそう言い捨てる。
「まぁフランさん相手じゃ仕方ないかと」
「でも魅力値ならお兄ちゃんのほうが遥かに上なのに」
「能力値が必ずしも数値通りの結果を出すとは限らないよ。特に魅力なんてのは、どんだけ高くても好みは人それぞれだから」
(お兄ちゃんがフランさんに靡かないのはタイプじゃないからかしら?だとしたら何か嬉しいかも!)
ワロティニスは嬉しくなって兄の腕に抱きつく。
透明化した者同士は薄っすらと存在が見えるが、タカヒロたちには全く見えないのでヤイバがいるだろうと思う場所へ顔を向けて出発の合図を出した。
「ここは少し繁華街から外れた場所なんだけど、先に寄りたい場所があるんだ。いいかな?」
タカヒロがそう言って返事も聞かずに歩き出した。
暫く歩くと、住宅街にある小さなアパートの前に着いた。
ヤイバ達を下で待たせてタカヒロはさも当然のように部屋に入っていく。部屋に入るとパソコンを付け真っ先に確認したのは西暦と日付だった。
―――2016年 4月24日―――
「やっぱり・・・。母さん、まだ部屋はそのまんまだよ。僕たちは十年以上もあちらの世界で過ごしていたのに、こちらの世界じゃまだ一ヶ月も経っていないなんて・・・」
「はぁ・・・。帰ってこれたのはいいけど、あれこれと事情を説明しないとね・・・。異世界に居たなんて言えないし、何て説明しようかしら・・・。本当ならタカヒロはまだ小学生なのに・・・」
「取り敢えず、身分証を持って宝石を売りに行こう」
「そうね」
二人は部屋から身分証やスマホなどの必要な物を持って出てきた。
「さぁ行こう」
渋谷の交差点を見てヤイバ達は驚く。
「こんなに人がいるなんてお祭りなのかな?それに高い塔がこんなに沢山!」
「セブレでも人は多かったけど、ここまでじゃなかったわよ」
「人が多すぎて少し気分が悪くなりますね・・・」
建物を背にしてヤイバとワロティニスが立つ場所は空いており、両脇をタカヒロ達が囲んでいる。が、それでも人がそこに入り込もうとして何もない空間にある何かにぶつかり首を傾げながら立ち去っていく。
「時々、奇妙な格好をした人がいますが、道化師か何かでしょうか?」
ヤイバは交差点を闊歩するコスプレイヤーに不思議そうな顔をする。
今もタカヒロの前を三人のフリー○が「ホッホッホ」と高笑いしながら通り過ぎていく。
「ん・・・。これは大丈夫かもしれないな・・・」
タカヒロはコスプレイヤー達を見て何かを思いついたのか、ヤイバ達に透明化を解けと言った。
「しかし・・大丈夫なんですか?」
「失敗して大騒ぎになったらもう一回消えろ」
「結構適当な性格していますね、タカヒロさん・・・。ええぃ、ままよ!」
ヤイバとワロティニスは【透明】の魔法を解くと、渋谷の人通りの多い場所で三メートルと二メートル半のオーガが姿を現した。
「うわぁ!何だ!あれ!でけぇ!」
直ぐに人々が取り囲みスマホで撮影を始めた。
「ヤイバとワロティニス!笑って手を振れ!コスプレイヤーを気取るんだ!」
「コ、コスプレイヤー?」
「良いからやれ!」
ヤイバは戸惑いながらも、魅力値二十一の爽やかな笑顔で手を振る。続いてワロティニスもぎこちなく笑う。
「キャーーーー!なにあの男の子!かっこ良すぎなんですけどぉー?」
「隣の女の子もめっちゃ可愛い!でかいけど!」
「あの兄ちゃん、ガタイいいなぁ」
「ばっか。ありゃあオーバーボディだよ。キ○肉マンとかでもビッグ・ザ・武道が着てただろ?身長三メートルもある人間がいるかよ」
女になる前のマサヨシに似たオタクが眼鏡をクイクイと上げながら勝手に解説しだした。
「あのコスプレは、恐らく80年代に流行った『宇宙巨人伝説』のゴリムキーのコスプレなりね!帝国の黒いコートの制服、青黒い髪。正しくゴリムキー!女の子の方は映画版に出ていたオリジナルキャラのウッホーネでごわす。中々マイナーで渋いところを突いてくるンゴ!通な外国人と見た!やるじゃん!」
周りに居た若者達も通りすがりのオタクの解説に納得した。
「へぇ!あれ、宇宙巨人伝説ってアニメのコスプレなんだ?」
「まぁオタクのオッサンがそう言うんだから、そうじゃね?」
「なんか、かっこいいな。今でも通じるデザインしてんじゃん」
スマホでヤイバ達は撮影されているが、本人たちは何故あんな四角い石版のようなものをこちらに向けているのかが判らないのでタカヒロに聞いた。
「こちらに向けているあの小さくて薄い石版は何ですか?」
「ああ、あれはスマートホンと言って、遠くの人と会話したり、思い出の石版のような事が出来たり、暇つぶしのゲームが出来たりする便利アイテムだ。俺も母さんも持っていないけどな」
「汎用性の高いアイテムですね。やっぱり凄いな・・・異世界は」
移動する度に人集りが出来てタカヒロは少し後悔した。今更消えてくれと言って消えられるとそれはそれで大騒ぎになる。
「人が多くて移動もままならないな・・・。俺と母さんは宝石買取店に行ってくる。直ぐ近くだから時間は掛からない。悪いがヤイバ達はここで待っていてくれ。」
そう言うとタカヒロと店のテラスに座るよう言った。そして何か店員と話すとタカヒロとエミは路地裏に消えていった。
取り残されて少し不安なヤイバ達がテーブルの前でそわそわしていると、いきなり目の前にご馳走が並べられた。椅子はオーガの大きなお尻でも座れる切り出した丸太だったので二人は座る。
「これ、食べても良いのかな?お兄ちゃん・・・」
「さぁ、どうだろうか・・・。そうだ!僕は【翻訳】の魔法を覚えていたんだった。滅多に使わないから、この魔法の事をすっかり忘れていたよ」
「なに、そのご都合主義な魔法。でも流石お兄ちゃんだね!殆どの魔法を知っているんじゃないの?」
「師匠がイグナさんだからな。世界でも五本の指に入るメイジに教わっていたんだ。その環境で沢山の魔法を覚えていなかったら僕は何をしていたんだって事になる」
そう言ってヤイバは自分とワロティニスとフランに魔法をかけていく。
「効果時間は丸一日だから安心して」
お腹をグーッと鳴らしたワロティニスは口に湧き上がる涎を飲み込みながら、店員に聞く。
「これ全部食べてもいいの?」
「はい、先にお金を頂いております。お預かりになった金額が許すまで何なりとご注文下さい。メニューはそこにありますから決まりましたら、そこのボタンを押して頂けると直ぐに注文を取りに伺います」
「やったー!」
ヤイバもワロティニスもフランも野次馬の視線も気にせず料理にがっつき始めた。
過去にウメボシが他者を回復する時に見せた柔らかな光がサキュバスを包みこんだ。
二度と飛ぶことは出来ないだろうと思われた黒焦げのコウモリ羽は綺麗になり、焼けただれた肌も以前の白い肌へと戻っていた。
「おおお!ウメボシ殿!感謝しますぞ!」
ヴァーンズは両手を組んで跪き、目の前の神の使いに感謝をしている。
イグナがもう一度ウメボシの名を呼ぼうとしたが、召喚時間が過ぎたのか彼女は舞い散る天使の羽と共にすぐに消えてしまった。
「ウメボシと何も話せなかった・・・」
十数年ぶりの再開は白昼夢のごとく瞬く間であった。
がっかりするイグナの横でマサヨシは歌舞伎のような見得を切って寄り目で言う。
「どぅ~だ!俺様の召喚術は!どうぅ~だぁ!」
「さっきまでウェイロニーって叫びながら泣いていたくせに・・・」
「否定はしない!だが、あの涙が天使を呼び寄せたのだッ!俺様の愛の涙とッ!ジジィの怒りがッ!天使を降臨させたッ!」
「天使じゃない・・・ウメボシ」
ハハッ!と張りのない高い声で年老いたゴブリンは笑う。
「しかし神であるヒジリ様の使い魔なのだから、天使ではあるな。それにしても・・・。こういう時に神の御業が使える僧侶や神官の大事さが解った。一度見覚えの闇魔女も神の御業は習得できないのだから。マサヨシ殿。我が使い魔をウメボシ殿を召喚することで救ってい頂き、本当に感謝しております」
「ナハハッ!いいのですよ、当然のことをしたまで!お気になさらず」
「左様ですか。では気にしないでおこう」
「ちょ!もっと俺様を褒め称えてよ!褒め称えよぉ!褒め称えよぉ!」
マサヨシの言葉を無視してヴャーンズは気を失ったままのウェイロニーの顔を見つめ思う。
(バートラの霧の発生頻度が高くなっている・・・。しかも魔法を弾く壁で出来た施設の内側だろうがお構い無しで発生しよる・・・。何故バートラだけ?面倒な事にならなければいいが・・・)
倉庫の壁の上部にある小さな小窓から差し込む朝日でヤイバは目が覚めた。
「うっ!重いな・・・」
ヤイバの体の上に可愛い妹が仰向けで眠っており、その上にフランが眠っていた。
「親子亀か!」
「亀がどうしたの?お兄ちゃん。・・・あっ!直ぐに退くね?」
「一体どう寝れば、積石のような寝方になるんだ?」
ワロティニスは両手でフランを持ち上げたまま、スルリと隣にある自分のマットに落ちた。が、途中でバランスを崩してアッ!と言ってフランを兄の上に置く。
フランはうつ伏せの状態でヤイバの体の上で寝る形になり、そのまま目が覚める。
「やだぁ、素敵な胸板・・・」
フランはヤイバの黒いシャツから伝わってくる体温と引き締まった鋼のような筋肉の感触に、寝ぼけながらうっとりして顔を擦りつけている。
「ちょっと!お兄ちゃん!」
そう言ってやきもちを焼くワロティニスはヤイバの頬を抓る。
「いたた!何でお兄ちゃんなんだよ!フランさんも、起きて下さい」
そう言ってヤイバは自分の体の上からフランを持ち上げると、床に立たせた。
それから自分の脂ぎった青黒い髪を触る。
「そう言えばお風呂に入っていない・・・。せめて髪だけでも洗いたいな・・・」
「そういえば、そうねぇ・・・」
フランは自分の腕をクンクンと匂って臭くないかを確かめている。
「この世界に一緒に飛んできたエミさんの小屋に行けば、お風呂場で行水くらいなら出来そうだから使わせてもらおうよ」
三人して小屋に行き、風呂場を使わせて欲しいと言うとエミは快く快諾した。
ヤイバは風呂場に行き、大きな木桶に水が入っている事に気が付き一旦外に出た。
「お兄ちゃんどこに行くの?」
「石を焼いてくる」
「石?(石を焼くくらいなら、いつも私にヤキモチを焼いてよ!)」
ヤイバは握りこぶし大の石を幾つか集め、【業火】で暫く焼くと石は真っ赤になった。
「この世界にサラマンダー石が有ればもっと楽なんだけど」
真っ赤になった石をその辺にあった鉄のシャベルで掬い、風呂場まで向う。水の張った大きな桶に焼けた石を入れると水蒸気を上げてお湯が沸き立った。
「お!考えたな、ヤイバ。そうだ、これで頭を洗うとさっぱりするぞ。ここを押すとシャンプーが出て来る」
廃屋で見つけたジーパンとスプリングセーターを着たタカヒロが、倉庫から見つけてきたシャンプーボトルのポンプを押して見せる。
「シャンプー?」
「まぁ頭を洗う石鹸みたいなものだ。これはリンス。髪をサラサラにしてくれる。二つとも倉庫にあったから持ってきていたんだ」
「ああ、椿油みたいなものですね?」
「そうだな。この世界では椿油は高価だからこれを使うのだ」
「え?椿油が?あんなものはゴブリンが安くで売っているのに・・・」
「まぁ国によっても物の価値が違うのだから、世界が変われば尚更だ」
「確かに」
ヤイバはシャンプーとリンスを受け取ると風呂場に消えていった。ワロティニスは名残惜しそうに兄の背中を見ている。一緒にお風呂に入りたいのだ。
「ワロちゃん、お兄ちゃんの裸を覗いちゃ駄目よ?」
フランがクスクス笑っている。
ワロティニスはモー!と憤慨してポカポカとフランを殴ろうとするが、体の華奢な地走り族がそれをまともに喰らえば大ダメージを受けてしまう。
なのでフランは密かにスキルを発動してニコニコしながら裏側の長のようにシュッシュと回避した。
「ねぇ?もしかしてこっちじゃダイヤモンドって価値があるんじゃない?」
ワロティニスの攻撃が止むのを待って、急に何かを思いついたようにフランは懐から大きなダイヤモンドを取り出した。
「これ、能力アップ系の魔法が篭められていたんだけど効果が無くなっちゃたのよね。宝石類は金属と違って装飾以外の実用性が低いし、結構大量に出回っているから私達の世界では価値が低いけど、もしかしたらこっちの世界じゃ価値が高いんじゃないかなって思ったの。だってここは椿油なんかが高価なんでしょぉ?」
タカヒロの目が見開かれる。何か金の足しになるものを東京に売りに行こうとは思っていたが奴隷であった自分の革袋にはクズのような宝石しかはいっていなかったので頭を悩ましていたのだ。
「確かにこの世界ではダイヤモンドはかなりの価値がある!そんなに大きければ尚更だ!明日、早速売りに行こう!この世界で君達を養うには十分なお金が手に入る!」
「やった!」
ワロティニスとフランはハイタッチをしてお金の事よりも、大都会に行ける事を喜んだ。そして風呂場のドアを勢い良く開け、兄に明日東京に行く事を伝えた。
丁度髪を洗っていたヤイバは乙女のような悲鳴を上げて股間と胸を手で隠した。
「何も荷台に乗せないまま着いちゃいましたけど、本当にいいんですか?」
トラックの運転手は荷台を開けてくれと言われて開けたが、何も無い荷台を見てからタカヒロを怪訝な顔で見つめた。
「良いんだ。験担ぎみたいなものだと思ってくれればいい。お金はちゃんと支払う」
「そうですか・・・。(どういった験担ぎなんだか)」
少しトラックが揺れた気がし、不思議がる運転手はタカヒロからお金を渡されて領収書を切る。
「毎度あり!」
「帰りもよろしく。また連絡するよ」
「はい!」
運転手はお辞儀して顔を上げる時にタカヒロの横に立つ、とてつもないフェロモンを放つフランを舐め回すように見てから鼻の下を伸ばし、トラックに乗ると去っていった。
「あの人、いやらしい目をしてた!」
透明化したワロティニスが立ち去った運転手を見てそう言い捨てる。
「まぁフランさん相手じゃ仕方ないかと」
「でも魅力値ならお兄ちゃんのほうが遥かに上なのに」
「能力値が必ずしも数値通りの結果を出すとは限らないよ。特に魅力なんてのは、どんだけ高くても好みは人それぞれだから」
(お兄ちゃんがフランさんに靡かないのはタイプじゃないからかしら?だとしたら何か嬉しいかも!)
ワロティニスは嬉しくなって兄の腕に抱きつく。
透明化した者同士は薄っすらと存在が見えるが、タカヒロたちには全く見えないのでヤイバがいるだろうと思う場所へ顔を向けて出発の合図を出した。
「ここは少し繁華街から外れた場所なんだけど、先に寄りたい場所があるんだ。いいかな?」
タカヒロがそう言って返事も聞かずに歩き出した。
暫く歩くと、住宅街にある小さなアパートの前に着いた。
ヤイバ達を下で待たせてタカヒロはさも当然のように部屋に入っていく。部屋に入るとパソコンを付け真っ先に確認したのは西暦と日付だった。
―――2016年 4月24日―――
「やっぱり・・・。母さん、まだ部屋はそのまんまだよ。僕たちは十年以上もあちらの世界で過ごしていたのに、こちらの世界じゃまだ一ヶ月も経っていないなんて・・・」
「はぁ・・・。帰ってこれたのはいいけど、あれこれと事情を説明しないとね・・・。異世界に居たなんて言えないし、何て説明しようかしら・・・。本当ならタカヒロはまだ小学生なのに・・・」
「取り敢えず、身分証を持って宝石を売りに行こう」
「そうね」
二人は部屋から身分証やスマホなどの必要な物を持って出てきた。
「さぁ行こう」
渋谷の交差点を見てヤイバ達は驚く。
「こんなに人がいるなんてお祭りなのかな?それに高い塔がこんなに沢山!」
「セブレでも人は多かったけど、ここまでじゃなかったわよ」
「人が多すぎて少し気分が悪くなりますね・・・」
建物を背にしてヤイバとワロティニスが立つ場所は空いており、両脇をタカヒロ達が囲んでいる。が、それでも人がそこに入り込もうとして何もない空間にある何かにぶつかり首を傾げながら立ち去っていく。
「時々、奇妙な格好をした人がいますが、道化師か何かでしょうか?」
ヤイバは交差点を闊歩するコスプレイヤーに不思議そうな顔をする。
今もタカヒロの前を三人のフリー○が「ホッホッホ」と高笑いしながら通り過ぎていく。
「ん・・・。これは大丈夫かもしれないな・・・」
タカヒロはコスプレイヤー達を見て何かを思いついたのか、ヤイバ達に透明化を解けと言った。
「しかし・・大丈夫なんですか?」
「失敗して大騒ぎになったらもう一回消えろ」
「結構適当な性格していますね、タカヒロさん・・・。ええぃ、ままよ!」
ヤイバとワロティニスは【透明】の魔法を解くと、渋谷の人通りの多い場所で三メートルと二メートル半のオーガが姿を現した。
「うわぁ!何だ!あれ!でけぇ!」
直ぐに人々が取り囲みスマホで撮影を始めた。
「ヤイバとワロティニス!笑って手を振れ!コスプレイヤーを気取るんだ!」
「コ、コスプレイヤー?」
「良いからやれ!」
ヤイバは戸惑いながらも、魅力値二十一の爽やかな笑顔で手を振る。続いてワロティニスもぎこちなく笑う。
「キャーーーー!なにあの男の子!かっこ良すぎなんですけどぉー?」
「隣の女の子もめっちゃ可愛い!でかいけど!」
「あの兄ちゃん、ガタイいいなぁ」
「ばっか。ありゃあオーバーボディだよ。キ○肉マンとかでもビッグ・ザ・武道が着てただろ?身長三メートルもある人間がいるかよ」
女になる前のマサヨシに似たオタクが眼鏡をクイクイと上げながら勝手に解説しだした。
「あのコスプレは、恐らく80年代に流行った『宇宙巨人伝説』のゴリムキーのコスプレなりね!帝国の黒いコートの制服、青黒い髪。正しくゴリムキー!女の子の方は映画版に出ていたオリジナルキャラのウッホーネでごわす。中々マイナーで渋いところを突いてくるンゴ!通な外国人と見た!やるじゃん!」
周りに居た若者達も通りすがりのオタクの解説に納得した。
「へぇ!あれ、宇宙巨人伝説ってアニメのコスプレなんだ?」
「まぁオタクのオッサンがそう言うんだから、そうじゃね?」
「なんか、かっこいいな。今でも通じるデザインしてんじゃん」
スマホでヤイバ達は撮影されているが、本人たちは何故あんな四角い石版のようなものをこちらに向けているのかが判らないのでタカヒロに聞いた。
「こちらに向けているあの小さくて薄い石版は何ですか?」
「ああ、あれはスマートホンと言って、遠くの人と会話したり、思い出の石版のような事が出来たり、暇つぶしのゲームが出来たりする便利アイテムだ。俺も母さんも持っていないけどな」
「汎用性の高いアイテムですね。やっぱり凄いな・・・異世界は」
移動する度に人集りが出来てタカヒロは少し後悔した。今更消えてくれと言って消えられるとそれはそれで大騒ぎになる。
「人が多くて移動もままならないな・・・。俺と母さんは宝石買取店に行ってくる。直ぐ近くだから時間は掛からない。悪いがヤイバ達はここで待っていてくれ。」
そう言うとタカヒロと店のテラスに座るよう言った。そして何か店員と話すとタカヒロとエミは路地裏に消えていった。
取り残されて少し不安なヤイバ達がテーブルの前でそわそわしていると、いきなり目の前にご馳走が並べられた。椅子はオーガの大きなお尻でも座れる切り出した丸太だったので二人は座る。
「これ、食べても良いのかな?お兄ちゃん・・・」
「さぁ、どうだろうか・・・。そうだ!僕は【翻訳】の魔法を覚えていたんだった。滅多に使わないから、この魔法の事をすっかり忘れていたよ」
「なに、そのご都合主義な魔法。でも流石お兄ちゃんだね!殆どの魔法を知っているんじゃないの?」
「師匠がイグナさんだからな。世界でも五本の指に入るメイジに教わっていたんだ。その環境で沢山の魔法を覚えていなかったら僕は何をしていたんだって事になる」
そう言ってヤイバは自分とワロティニスとフランに魔法をかけていく。
「効果時間は丸一日だから安心して」
お腹をグーッと鳴らしたワロティニスは口に湧き上がる涎を飲み込みながら、店員に聞く。
「これ全部食べてもいいの?」
「はい、先にお金を頂いております。お預かりになった金額が許すまで何なりとご注文下さい。メニューはそこにありますから決まりましたら、そこのボタンを押して頂けると直ぐに注文を取りに伺います」
「やったー!」
ヤイバもワロティニスもフランも野次馬の視線も気にせず料理にがっつき始めた。
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それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
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転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
貧弱の英雄
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この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
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氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
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大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
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かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
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