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禁断の箱庭と融合する前の世界(123)
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「おっはよー!お兄ちゃん!あれ?どうしたの?装備一式着こんで」
ワロティニスは部屋から出てきた兄に挨拶するも返事はなかった。
「もう!お兄ちゃん!ぼんやりして!・・・何かあったの?」
「僕は神の子なんだ・・・。僕が何とかしなくちゃ・・・」
思いつめるように呟く兄を見て、ただ事ではないと感じたワロティニスは心配そうに見つめる。
視線に気が付いたヤイバはすぐに愛しの妹に挨拶をした。
「お、おはよう!ワロ(フランさんの事を言うべきかどうか・・・。無駄な心配をさせたくないけど、やっぱり正直に言おう)あのさ、ワロ。昨日の夜、突然フランさんが消えたんだ。魔法の罠とか稀に自然発生する転移の渦が原因ではなくて、本当に消えてしまったんだ。何でこうなったのかお兄ちゃんにもさっぱりで・・・。モシューさんにフランさんの事を聞こうと思ってね。万が一に備えてどんな状況にでも対応できるように鎧を着ているのさ」
「フランさん?誰?その人。まさか!お兄ちゃんの恋人?ギニニニニ!」
妹が嫉妬で顔を怒らせて地団駄を踏み始めた。
「今はふざけている時じゃないんだよ、ワロ。本当にフランさんが・・・」
しかしワロティニスは嫉妬したままだった。ヤイバはフルヘルムを脱ぐとペロッと妹の頬を舐める。
(おかしい・・・。この汗の味、ワロはふざけてはいないッ!)
「も、もう!お兄ちゃんったら・・・」
怒っていた顔が今はデレている。オーガが異性の頬を舐めるのは愛情表現だからだ。
ヤイバは嫌な予感がした。
照れる妹を置いて急いでイグナの部屋に急ぐ。
「イグナ母さん!モシュ―さんの所に急ぎましょう!(どうしよう、イグナ母さんまでフランさんの事を忘れていたら・・・)」
部屋の中でゴソゴソと音がしてイグナが扉を開ける。
「わかった」
扉の隙間から見えたイグナの部屋の中は沢山の書物が散らかっていた。夜中の間、ずっと解決策がないかを調べていたのだろう。
「(どうやらイグナ母さんはフランさんの事を忘れてなさそうだ。良かった・・・)聞いた相手がワロだけですから何とも言えないのですが、どうもフランさんの存在そのものが消えているような気がするんです。イグナ母さんは覚えていますよね?聖騎士フランさんの事を」
「忘れていない。お姉ちゃんのあの消え方、普通じゃなかったからそんな気はしていた・・・」
イグナは泣きそうになったが、息を吸ってい堪える。今は泣いている時ではないからだ。何としても姉の手がかりを見つけ救いださねばという気持ちが気力を与えた。
「行こう、ヤイバ」
普段はナンベル魔法学校で教師をしているモシュ―は、日曜などの休日になると副業としてゴデの街の多目的広場で占い師をやっている。
「どうなんです?水晶には何が映りましたか?」
広場を子供たちが走り回り、大道芸人が色んな芸を披露する中、真剣な顔つきで心配そうにこちらを見つめる闇魔女と鉄騎士にどう答えるべきかエルフは悩んでいる。
「う~ん、そのフランという人を占うと、なぜかこの怪しいシャーマンが見えてくるのだよね」
水晶にはオークらしき男が目深にフードを被って映っていた。
「この男が犯人なんですかね?」
「どうだろうね。関係がある男だとは思うが、犯人と断定するのはどうかな?そんな怪しい男が日の明るい内から広場をウロウロはしないだろうし」
モシュ―はヤイバとイグナの後ろでウロウロするその男を見ていた。
二人はモシュ―の視線を追って振り返り、シャーマンを見る。
盲目のシャーマンは杖を突いて椅子を探してウロウロしていたが、二人の視線を感じ取ったのか、動きをピタリと止めた。
「おや、誰かあっしを見てやすね。誰です?あっしを見るのは。視るのはあっしの仕事なんでやすが・・・」
「どうやら彼は同業者のようだね。彼の方が見通す力が上のようだ。悔しいが彼に聞いてみてはどうかな?」
悔しそうな顔をするモシューに銀貨を渡すとヤイバとイグナはオークのシャーマンのもとへ向かった。
二人の影に感づき、シャーマンは顔を上げて杖で地面を突く。
「ヒッヒッヒ。解っておりやすよ。探し人ですね?あぁ、視える!視えます!探し人はもうこの世界に存在しやせん。死んだも同然なのです!」
「くそ!やっぱり・・・」
「しかぁし!しかしでやす!その運命を無かった事でできる男がいでヤン・・・いるでやす!」
「誰です?」
ヤイバは期待を込めた目で盲目のオークの片手を両手で包み込んだ。
「虚無の力を纏いし神の子。彼は急激に変わりつつある過去の世界へと行く手段を持つ唯一人のオーガ」
「過去が変わる?どういう事?」
イグナがそんな事はあり得ないという顔で驚く。
「ケヒヒッ!それはあっしにもわかりやせん。しかし何らかの理由で新たなる過去が生まれ、現在に影響を与えているのは確かです。そして現在を生きる者の中で過去に干渉できる唯一無二の存在は神の子ヤイバ様だけということ」
「ぼ、僕が・・・?」
「ええ、ヤイバ様唯一人」
シャーマンの言葉にヤイバの頭にはフランの存在を取り戻す以外にもう一つの願望が生まれた。
(過去に干渉できるなら・・・。父上も・・・!)
「僕はやりますよ!イグナ母さん!フランさんの存在を元通りにします!」
「決心してくれてありがとう、ヤイバ。ところで、どうやって過去へ行くの?」
イグナは黒ローブのシャーマンに過去へ行く方法を聞いた。
「・・・」
しかし彼は何も言わなかった。何かを期待しているように見える。
イグナはハッとして気が付く。黒ローブを着ているこの男は自分の利益に忠実なシャーマンだという事だ。この手の魔法使いは信用ならないが金を出せば喜んで力を貸してくれる。
闇色のローブを着る自分も黒ローブのメイジだと間違えられて、ちょっとした依頼でもお金を先に握らされる事があった。
世間では黒ローブのメイジに何かを頼むには金を渡せば手っ取り早いという認識なのだ。
イグナは盲目のシャーマンのローブの袖袋に金貨の詰まった小袋を入れて彼の言葉を待った。
「へへ、ありがとうございやす、闇魔女様。方法は簡単。ヤイバ様が虚無の力を発動させて、消えた探し人を思いながら転移石で適当に転移する事でヤン・・でげす」
これらの知識をこのオークはどこで得たのだろうかと疑いつつも、今ここでやれば嘘か本当か直ぐに解る事だとイグナは自分で買っておいた転移石を腰のポーチから二つ取りだす。
「あ!ちょっと待つでげす、闇魔女様。新たなる過去は現在と同時に進んでるんで、ヤイバ様が飛んだ先が必ずしも探し人の消えた原因になった時間とは限りやせん。徒労に終わる覚悟を持っておいてくだせぇ」
「わかった。でも私はヤイバが上手くやると信じている。何故なら私は星のオーガと運命の神の信者だから」
それを聞いたシャーマンは少し俯いて申し訳なさそうな雰囲気を出したような気がしたがイグナは気にせずヤイバに転移石を渡した。
「お願いね、ヤイバ。もし危なくなったら急いで転移石で戻って来て」
「はい!」
虚無の力のコントロールのコツをいくらか習得したヤイバは、脳内で妹が賊に殺されるシーンを想像して意図的に怒りの精霊を見に宿す。
途端にヤイバの拳が光を集め出して周囲が少し薄暗くなったので、遊んでいた子供たちは不安そうな顔をして動きを止めた。異様な灰色の光を放つ自由騎士を見て人々は何事かと見守る。
「じゅ、準備が出来ました。では行ってきます!イグナ母さん!」
そう言うと彼は転移して消えてしまった。
シャーマンが祈る。
「運命の神の恩恵を!」
イグナは利己的な黒ローブの魔法使いが他人の為に祈る姿を見て違和感を覚えたが、彼は祈り終わるとさっさとどこかへと行ってしまった。
「ヤイバ・・・」
広場に佇むイグナをヤンスは木陰から申し訳なさそうな顔で見つめる。
「これしか方法がなかったでヤンス。あっしには力がありませんから。虚無の力で禁断の箱庭に入り込む事が出来るヤイバに頼むしか、もう方法がないのでヤンス・・・。彼はきっとフランちゃんだけでなく・・・父親も・・・。ヒジリさんも蘇らせようともするはず。彼さえいれば・・・」
夜中、転移石を置いていた部屋の空気が揺れた事をイグナは感じた。
急いで部屋に行くと、ヤイバがそこにいた。
「転移石を通じて帰るように催促してから随分と時間が経っている。何をしていたの?ヤイバ」
「そんな事より、フランさんはどうです?」
ヤイバは浮かれた声でそう言うと部屋を出た。父親に会えた事が余程うれしかったのだろう。
二人してフランの部屋をノックすると中からのんびりとした声が眠たそうに返事をした。
「だぁれ?こんな夜中にぃ~」
その声を聞いてヤイバの過去への旅が無駄でなかった事に二人は声を殺して喜んで抱き合う。
フランがドアを開けると、鎧姿のヤイバとイグナが抱き合って頬ずりしあっていたので驚く。
「ちょっと~、二人とも何イチャイチャしてるのぉ~?夜中に抱き合う姿を見せる為に私を起こしたのかしらぁ?」
「うふふふ!」
「あははは!やったぁ!」
二人はフランにも抱き着く。
フランは二人の様子があまりにおかしいと思ったので咄嗟に成仏の祈りを唱える。
「ははっ!大丈夫ですよ!フランさん!僕達に悪霊なんてついていません!ね、イグナさん!」
「うん。お姉ちゃんに会えて嬉しい」
「も~、なんなのよぉ~!」
二人に抱き着かれてフランは嬉しかったが、結局彼らが立ち去るまで何のことかわからず仕舞いだった。
ワロティニスは部屋から出てきた兄に挨拶するも返事はなかった。
「もう!お兄ちゃん!ぼんやりして!・・・何かあったの?」
「僕は神の子なんだ・・・。僕が何とかしなくちゃ・・・」
思いつめるように呟く兄を見て、ただ事ではないと感じたワロティニスは心配そうに見つめる。
視線に気が付いたヤイバはすぐに愛しの妹に挨拶をした。
「お、おはよう!ワロ(フランさんの事を言うべきかどうか・・・。無駄な心配をさせたくないけど、やっぱり正直に言おう)あのさ、ワロ。昨日の夜、突然フランさんが消えたんだ。魔法の罠とか稀に自然発生する転移の渦が原因ではなくて、本当に消えてしまったんだ。何でこうなったのかお兄ちゃんにもさっぱりで・・・。モシューさんにフランさんの事を聞こうと思ってね。万が一に備えてどんな状況にでも対応できるように鎧を着ているのさ」
「フランさん?誰?その人。まさか!お兄ちゃんの恋人?ギニニニニ!」
妹が嫉妬で顔を怒らせて地団駄を踏み始めた。
「今はふざけている時じゃないんだよ、ワロ。本当にフランさんが・・・」
しかしワロティニスは嫉妬したままだった。ヤイバはフルヘルムを脱ぐとペロッと妹の頬を舐める。
(おかしい・・・。この汗の味、ワロはふざけてはいないッ!)
「も、もう!お兄ちゃんったら・・・」
怒っていた顔が今はデレている。オーガが異性の頬を舐めるのは愛情表現だからだ。
ヤイバは嫌な予感がした。
照れる妹を置いて急いでイグナの部屋に急ぐ。
「イグナ母さん!モシュ―さんの所に急ぎましょう!(どうしよう、イグナ母さんまでフランさんの事を忘れていたら・・・)」
部屋の中でゴソゴソと音がしてイグナが扉を開ける。
「わかった」
扉の隙間から見えたイグナの部屋の中は沢山の書物が散らかっていた。夜中の間、ずっと解決策がないかを調べていたのだろう。
「(どうやらイグナ母さんはフランさんの事を忘れてなさそうだ。良かった・・・)聞いた相手がワロだけですから何とも言えないのですが、どうもフランさんの存在そのものが消えているような気がするんです。イグナ母さんは覚えていますよね?聖騎士フランさんの事を」
「忘れていない。お姉ちゃんのあの消え方、普通じゃなかったからそんな気はしていた・・・」
イグナは泣きそうになったが、息を吸ってい堪える。今は泣いている時ではないからだ。何としても姉の手がかりを見つけ救いださねばという気持ちが気力を与えた。
「行こう、ヤイバ」
普段はナンベル魔法学校で教師をしているモシュ―は、日曜などの休日になると副業としてゴデの街の多目的広場で占い師をやっている。
「どうなんです?水晶には何が映りましたか?」
広場を子供たちが走り回り、大道芸人が色んな芸を披露する中、真剣な顔つきで心配そうにこちらを見つめる闇魔女と鉄騎士にどう答えるべきかエルフは悩んでいる。
「う~ん、そのフランという人を占うと、なぜかこの怪しいシャーマンが見えてくるのだよね」
水晶にはオークらしき男が目深にフードを被って映っていた。
「この男が犯人なんですかね?」
「どうだろうね。関係がある男だとは思うが、犯人と断定するのはどうかな?そんな怪しい男が日の明るい内から広場をウロウロはしないだろうし」
モシュ―はヤイバとイグナの後ろでウロウロするその男を見ていた。
二人はモシュ―の視線を追って振り返り、シャーマンを見る。
盲目のシャーマンは杖を突いて椅子を探してウロウロしていたが、二人の視線を感じ取ったのか、動きをピタリと止めた。
「おや、誰かあっしを見てやすね。誰です?あっしを見るのは。視るのはあっしの仕事なんでやすが・・・」
「どうやら彼は同業者のようだね。彼の方が見通す力が上のようだ。悔しいが彼に聞いてみてはどうかな?」
悔しそうな顔をするモシューに銀貨を渡すとヤイバとイグナはオークのシャーマンのもとへ向かった。
二人の影に感づき、シャーマンは顔を上げて杖で地面を突く。
「ヒッヒッヒ。解っておりやすよ。探し人ですね?あぁ、視える!視えます!探し人はもうこの世界に存在しやせん。死んだも同然なのです!」
「くそ!やっぱり・・・」
「しかぁし!しかしでやす!その運命を無かった事でできる男がいでヤン・・・いるでやす!」
「誰です?」
ヤイバは期待を込めた目で盲目のオークの片手を両手で包み込んだ。
「虚無の力を纏いし神の子。彼は急激に変わりつつある過去の世界へと行く手段を持つ唯一人のオーガ」
「過去が変わる?どういう事?」
イグナがそんな事はあり得ないという顔で驚く。
「ケヒヒッ!それはあっしにもわかりやせん。しかし何らかの理由で新たなる過去が生まれ、現在に影響を与えているのは確かです。そして現在を生きる者の中で過去に干渉できる唯一無二の存在は神の子ヤイバ様だけということ」
「ぼ、僕が・・・?」
「ええ、ヤイバ様唯一人」
シャーマンの言葉にヤイバの頭にはフランの存在を取り戻す以外にもう一つの願望が生まれた。
(過去に干渉できるなら・・・。父上も・・・!)
「僕はやりますよ!イグナ母さん!フランさんの存在を元通りにします!」
「決心してくれてありがとう、ヤイバ。ところで、どうやって過去へ行くの?」
イグナは黒ローブのシャーマンに過去へ行く方法を聞いた。
「・・・」
しかし彼は何も言わなかった。何かを期待しているように見える。
イグナはハッとして気が付く。黒ローブを着ているこの男は自分の利益に忠実なシャーマンだという事だ。この手の魔法使いは信用ならないが金を出せば喜んで力を貸してくれる。
闇色のローブを着る自分も黒ローブのメイジだと間違えられて、ちょっとした依頼でもお金を先に握らされる事があった。
世間では黒ローブのメイジに何かを頼むには金を渡せば手っ取り早いという認識なのだ。
イグナは盲目のシャーマンのローブの袖袋に金貨の詰まった小袋を入れて彼の言葉を待った。
「へへ、ありがとうございやす、闇魔女様。方法は簡単。ヤイバ様が虚無の力を発動させて、消えた探し人を思いながら転移石で適当に転移する事でヤン・・でげす」
これらの知識をこのオークはどこで得たのだろうかと疑いつつも、今ここでやれば嘘か本当か直ぐに解る事だとイグナは自分で買っておいた転移石を腰のポーチから二つ取りだす。
「あ!ちょっと待つでげす、闇魔女様。新たなる過去は現在と同時に進んでるんで、ヤイバ様が飛んだ先が必ずしも探し人の消えた原因になった時間とは限りやせん。徒労に終わる覚悟を持っておいてくだせぇ」
「わかった。でも私はヤイバが上手くやると信じている。何故なら私は星のオーガと運命の神の信者だから」
それを聞いたシャーマンは少し俯いて申し訳なさそうな雰囲気を出したような気がしたがイグナは気にせずヤイバに転移石を渡した。
「お願いね、ヤイバ。もし危なくなったら急いで転移石で戻って来て」
「はい!」
虚無の力のコントロールのコツをいくらか習得したヤイバは、脳内で妹が賊に殺されるシーンを想像して意図的に怒りの精霊を見に宿す。
途端にヤイバの拳が光を集め出して周囲が少し薄暗くなったので、遊んでいた子供たちは不安そうな顔をして動きを止めた。異様な灰色の光を放つ自由騎士を見て人々は何事かと見守る。
「じゅ、準備が出来ました。では行ってきます!イグナ母さん!」
そう言うと彼は転移して消えてしまった。
シャーマンが祈る。
「運命の神の恩恵を!」
イグナは利己的な黒ローブの魔法使いが他人の為に祈る姿を見て違和感を覚えたが、彼は祈り終わるとさっさとどこかへと行ってしまった。
「ヤイバ・・・」
広場に佇むイグナをヤンスは木陰から申し訳なさそうな顔で見つめる。
「これしか方法がなかったでヤンス。あっしには力がありませんから。虚無の力で禁断の箱庭に入り込む事が出来るヤイバに頼むしか、もう方法がないのでヤンス・・・。彼はきっとフランちゃんだけでなく・・・父親も・・・。ヒジリさんも蘇らせようともするはず。彼さえいれば・・・」
夜中、転移石を置いていた部屋の空気が揺れた事をイグナは感じた。
急いで部屋に行くと、ヤイバがそこにいた。
「転移石を通じて帰るように催促してから随分と時間が経っている。何をしていたの?ヤイバ」
「そんな事より、フランさんはどうです?」
ヤイバは浮かれた声でそう言うと部屋を出た。父親に会えた事が余程うれしかったのだろう。
二人してフランの部屋をノックすると中からのんびりとした声が眠たそうに返事をした。
「だぁれ?こんな夜中にぃ~」
その声を聞いてヤイバの過去への旅が無駄でなかった事に二人は声を殺して喜んで抱き合う。
フランがドアを開けると、鎧姿のヤイバとイグナが抱き合って頬ずりしあっていたので驚く。
「ちょっと~、二人とも何イチャイチャしてるのぉ~?夜中に抱き合う姿を見せる為に私を起こしたのかしらぁ?」
「うふふふ!」
「あははは!やったぁ!」
二人はフランにも抱き着く。
フランは二人の様子があまりにおかしいと思ったので咄嗟に成仏の祈りを唱える。
「ははっ!大丈夫ですよ!フランさん!僕達に悪霊なんてついていません!ね、イグナさん!」
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