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禁断の箱庭と融合する前の世界(142)
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ヒジリ達が森を進んでいくと、大きなイバラの群生地に出くわした。
イバラには獣人や小さな種族が通れる大きさの通り道があり、ヒジリが通るには一見して無理だと解る。
「これははぐれメイジがいた頃に張り巡らせた対大型魔物の防御壁みたいなもんです。塔を囲むように分厚く群生しています」
「ほう。君達はその道を行ってくれ。私は上から行って様子を見てくる」
「上から・・・?」
ニッチモが頭にクエスチョンマークを浮かべていると、ヒジリもヘルメスブーツと呼ばれる反重力浮遊装置の入ったブーツで浮き上がって党に向かって進んでいった。
「な?!あの人オーガメイジなんですか?というか浮遊は神の証・・・彼は何者なんですか?闇魔女様」
迂闊なヒジリにイグナは目を閉じてぐぬぬと呻き、何か適当な嘘を考える。
「か、彼はオーガメイジで、彼が履いているブーツは神に由来する貴重なマジックアイテム・・・」
「へぇ珍しいものを見た」
賢いオーガが生まれるのがまず稀で賢いオーガがメイジを目指すのも稀なのである。更に貴重なマジックアイテムを持っているという事なので、ニッチモはライジンという男は幸運の塊だなと思い感心する。
「まるでヒジリ聖下のようですね。確か浮き上がる魔法なんてこの世に無いのに・・・。【浮遊】って名前の魔法はありますが、あれはゆっくり落下するだけの魔法ですからねぇ。あのブーツはどういう魔法が使われているのですか?闇魔女さま」
「私にも判らない」
「闇魔女さまにも判らない魔法か・・・。凄いな」
ニッチモとサッチモは感心しながら、地走り族であれば難なく通れるイバラのトンネルを進んだ。
「俺もここを通るのか?」
地走り族にしては背の高いドゥニモは嫌そうにイバラトンネルの入り口に立ち止まって言う。
「当たり前だろ!文句言わずに来いよ。まだまだお前の母ちゃんの埋葬費や墓代は残っているんだぞ!屈んで歩け!」
「うるさいな。解ってるよ」
ドゥニモは新入りとして二人に軽く扱われるのが嫌だったが、借金を返す為には従うしか無い。チッと舌打ちをして屈んで一番最後にイバラのトンネルに入っていった。
皆、時折イバラの棘に引っかかれて痛い思いをしながら進むと、あっさりと塔の前に出た。
「迷路みたいになってると思ったけど一本道だったな・・・」
「当たり前だろ。俺らを防ぐようにはなってないんだから」
双子の兄弟は塔を見上げながら、喋っている。
ヒジリは既に塔の周りを調べていたのか、塔の裏側からスッと現れた。
「中々大きな塔だな。これであれば私も入ることが出来るだろう」
そう言って大きな扉をノックしたが、勿論反応はない。
ヒジリが拳に力を籠めて力任せに扉をぶち壊そうとしたが、イグナが魔法で開けてしまった。
「よし、各自警戒して進め」
扉を進むと直ぐに広間になっており、一階は食堂と厨房があるのか、妙に生活臭が漂っていた。
「ふむ。食堂の規模からして10人位か?」
ヒジリが敵の規模を推測していると、上の階に続く階段から足音が聞こえてきた。
「ハギー姉さん、おかえり!」
階段から降りてくるのは盗賊ではなく、ヤイバと同じ年齢位の数人の子供たちだった。地走り族にしては大きく、オーガにしては小さい。
「だ、誰だ!あんた達!」
ボロボロだが明らかに日本の学生服を来た男子が壁に立てかけてあった棍棒を握りしめて威嚇した。
「君たちはもしや・・・。私は―――」
ヒジリが自己紹介をしようとしたその時、背後で悲鳴が上がった。
「うわぁ!離せ!」
先程の犬人が唸りながら、ドゥニモを抱きかかえて首にダガーを突きつけている。
彼女はイグナの【読心】を掻い潜る程の隠遁術の手練だった。
「その子達から離れな!このギョロ目の喉に新しい口が出来ない内にね!」
「待て、敵意はない。それよりも話を聞かせて欲しい。この六人の子供たちはどこからやって来た?」
男子三人、女子三人。
「話が聞きたいなら、まずその子らから離れるこったね!」
「解った」
ヒジリは両手を上げて、子供たちから離れて犬人のいる入口に向かって歩きだした。
犬人の女はドゥニモを抱えたまま、ヒジリの横を走り抜け子供たちの方に駆け寄った。
「怪我は無いかい?」
「うん、まだ何もされていない」
「姉さん、あの人達は?」
「金を寄越せと脅した教会の者と冒険者だろうね。貧乏教会の癖に冒険者なんて雇いやがって」
「ねぇ、あの後ろのメイジ、魔法水晶で見たことあるよ!闇魔女だ!」
犬人は、そう言った女子に笑ってみせた。
「馬鹿言っちゃいけないよ。闇魔女を雇えるのは金持ちだけだよ。帝国みたいなね。貧乏教会に雇えるわけないだろう?」
「その子達は日本人だな?」
ヒジリがそう言うも反応はない。
「ニホンジン?そうなのかい?お前達。そういう種族なのかい?」
「わからないよ・・・。僕達には記憶がないって言ったろ?」
子供たちは困惑し顔を見合わせて肩を竦める。
「(記憶がないのか・・・)ドゥニモを開放してくれないか?落ち着いて話をしよう」
ヒジリはいつもの囁くような優しい声で盗賊の犬人を落ち着かせようとする。
「いいだろう。武器はその場に起きな。あと食べ物を全部寄越すんだ。早く!」
獣人の言う通りにして、皆武器を床に置いた。
ヤイバは元々丸腰なので何も置かず、肩のポケットを探ってニューっと携帯食料を一ダース取り出して犬人に投げた。
犬人は携帯食料の入った大袋を掴むとクンクンと匂う。
「なんだいこれは?」
「食べ物だ。一日一個で十分な栄養と満腹感を得られる」
犬人はドゥニモをドンと突き放すと、床の携帯食料を拾って包を剥いて少しだけ齧った。
「毒は無さそうだね。お前ら食べていいよ」
子供たちは一斉に携帯食料に飛びつくと貪り食った。みるみるお腹が膨れて満足したようだ。
「余程お腹が減っていたのだな」
「まぁね」
犬人の女はクィっと顎で食堂のテーブルを指した。座れという事だ。
ヒジリ達は椅子に座ると、犬人が口を開くのを待った。
「アタイはここを根城にして時折、アルケディアで貴族たちを狙ってスリをやって暮らしてたチンケな盗賊さ。名前はハギー。で、ある日スリに失敗しちまってね。魔法でズタボロにされて街道を逃げているところをこの子達に助けて貰ったのさ。この子達は魔法が全く効かなくてさ貴族たちは怖くなったのか、金を取り戻しただけで逃げていったんだ。アタイはこの子らに命を救われた上に肩を貸してもらってこの塔まで戻ってこれたんだ」
ヒジリは話を聞きながら肩から炭酸水の入ったボトルを出すと、ぐびっと飲んだ。
「それ、酒かい?アタイにも寄越しな」
「いや酒ではない。ただの炭酸水だ」
よく判らないという顔をする犬人に炭酸水を渡すと、彼女は口に含んで直ぐに吐き出した。
「酸じゃないか!馬鹿オーガ。お前達の胃袋は丈夫過ぎてついていけないね」
ハギーはテーブルの上でボトルを滑らせてヒジリに水を返す。
「それでさ、この子達がどこから来たのか、何者なのか色々と聞いたんだけど全く判らないんだ。元々十二人くらいいたらしいんだけど、病気で死んだり、魔物に襲われたりで六人になったらしい」
一人の女子高生が自分の肩を抱いて震えだした。
「私達、気がつくと森のなかにいて・・・。何でそこにいるかも解らなくて、下手に動くと危険だと思ったから暫く森で皆と自給自足しながら暮らしていたわ。でも仲間達の何人かは、急に石みたいになって死んだり、高熱を出して死んだ子もいて・・・。それでも生きなきゃって思って動物を狩ったり食べられそうな野草を見つけて何とか生きていたの。そしたら生活していた場所の近くに角の生えた狼が群れでやって来て・・・何人かは喉を食いちぎられて死んだ・・・。狼が仲間を食べている間に私たちは泣きながら・・・必死に逃げて・・・。気がつくとハギーさんの前にいたの」
「ふむ。私はこの子達を知っている。異世界人だ。異世界からやって来たニンゲンという種族だ」
「お前はオーガメイジか?やけに詳しいじゃないか」
「きっと霧の渦を通ってやって来たのだろう。可哀想に・・・。君たちの荷物を見せてもらえるかな?」
子供たちは頷くと異世界からずっと持っていた品々を持ってきてくれた。数は多くない。襲われた時に取り敢えず手に持ったものしかないからだ。
スマートホン、漫画、ライトノベル、マネキュア、鏡、学生手帳。
それらはどれも傷があったり、血が染み付いていたりと絶望の中を必死に生き抜いてきた証が生々しく見て取れ、この子供たちがどれ程必死にこの世界で足掻いてきたのかを想像し、ヒジリは同情した。
何気なくライトノベルを手にとって見ると、タイトルにはこう書かれていた。
『異世界に転移したら下痢するほどモテた!』
何ともチープなタイトルだが何度も何度も読み返されたであろうページは折れ曲がり、薄い文庫本が辞書のように分厚くなっていた。
「それ・・・たかしの本なんだ・・・」
髪が伸び放題の男子が悔しそうにそう言う。
「たかしはその本が大好きでさ、この本に書かれている事は現実の話で俺達はこれから下痢をするほどモテるんだ!って訳の分からない事を言ってた。で、俺たちもその気になって、捨ててあった錆びた剣を何とか研いで、いっちょ前に剣の訓練とかして・・・。弱い魔物ならそれで何とかなったからさ・・・いい気になって・・・ウグッ!ううう!魔犬も平気だとか言ってたら・・たかしや他の皆が喉を食い千切られて・・・うわあぁ」
そう言ってハギーの横でテーブルに突っ伏して男子高校生は泣き出した。ハギーは肉球の部分で優しく彼を撫でている。
(現実はこうなのだ。彼らと同じ異世界人のマサヨシが特別なのであって・・・。マサヨシはああ見えて、生き抜く能力は高いからな。私だって、この子らのように何のスキルも知識もなく突然、危険な森に放り出されたら一晩も生き抜けたかどうか・・・)
ライトノベルのように甘くないこの星の現実を彼らは身をもって体現している。
ハギーはトラウマで泣く異世界の若者たちに気を使いつつも話を続ける。
「この子らは、そこそこやれる子なんだ。鬼イノシシや巨大ネズミぐらいなら簡単に倒しちゃうんだよ。だからさ、アタイもスリなんてやらずともこの子らと生きていけたのさ。余った肉や野草やキノコを売るだけで結構なんとかなってね。アルケディアは田舎と違って何でも高値で買ってくれるからね」
「で、皆が塔に閉じこもっているということは、何かが起きたと?食べ物に飛びついていたところを見ると、狩猟や採取が出来なくなったということかね?」
「そう。この子らを襲った魔犬がこの辺にも現れるようになってね」
「何故、子供を襲った魔犬だと解るのかね?」
「あんた、メイジなのにそんな事も知らないのかい?呆れた!魔犬は野良犬なんかより賢くてさ。殺した相手の武器を口に咥えて次の獲物を狩る。で、たかしとやらが持っていた剣をこの辺に出没するようになった魔犬の一匹が咥えていたってわけさ」
「なるほど。で、魔犬をやり過ごせるスキルがある君が皆の為に金を稼いで食料を持ち帰っていたというわけか」
「そういう事。アタイだって皆と以前のように稼げりゃリスクの高いスリや脅しなんてしないんだよ。でも魔犬が森の中に居着いているんだから仕方ないだろ?魔犬は森から出ないし、街道を通る奴らを襲いはしないから討伐命令も出ていない。賢い奴らだよ。誰を襲えば危険かそうでないかを解ってるみたいなんだ」
「では魔犬を倒せばいい」
「簡単に言ってくれるね。魔犬は単体だと簡単に倒せるけど大きな群れ相手だと上位冒険者でも死ぬことがあるんだ。あんたらが討伐してくれるならアタイは文句言わないけどさ」
「勿論、皆でだ」
それを聞いたイグナはワンドでヒジリの腰をツンツンした。不意を疲れたヒジリはウォ!と小さな悲鳴を上げる。
「ヒジリはまた面白がってる。魔犬の群れくらいなら私一人で簡単に倒せるのに。ヒジリはこれまでもっとシンプルでストレートに物事を終わらせる事が多かったのにどうして?」
「君なら子供たちの心の声が聞こえるだろう?私は彼らのトラウマを少しでも軽くさせたいのだ。トラウマを癒すにはその根源である魔犬と対峙させ倒させるのが一番だ」
「・・・。それはそうかもしれないけど、危ない。この子達は六人でようやく魔犬一匹と同じくらいの強さ。それに誰かを守るのはとても難しい」
「君がいるだろう?闇魔女殿。私には見えないが君は弱い冒険者でもある程度強くする補助魔法を沢山知っているはずだ」
「勿論それはするけど・・・。やはり危ない」
「それに私はパワードスーツの性能を大幅に向上させている」
「解った。そこまで言うなら信じる」
「ありがとうイグナ。では諸君、これより魔犬の討伐に向かう。教会の諸君らは木の上に昇って援護射撃や牽制をしてくれ。遠隔回復が出来る者は?」
教会の下男と言っても彼らも僧侶みたいなものなので、ニッチモとサッチモは手を上げて頷く。
「では子供たちを優先して回復してくれたまえ。私は前衛をして魔犬の敵意を集める。ハギーはそれから漏れた魔犬から子供たちを守ってくれ。それでも追いつかない時はイグナが援護する。それから子供たちには槍を持たせろ」
トラウマの原因と対峙する事となった子供たちの顔に緊張が走る中、ヒジリは外に出て置いてあった薪にするはずだった然程太くない丸太の山を見て何かを閃いた。
ヒジリをヒョイヒョイと丸太を幾つか持ち上げると、地面にクロスさせながら突き刺していく。先の尖っていない丸太を簡単に地面に刺していくオーガに子供たちは驚いた。
「オーガは怪力だって聞いてたけど、凄いな・・・」
ヤイバは深く刺さっているかどうかを軽く押して確認すると、また丸太を地面に突き刺していく。
そして上から見ると英語のCの字のような形のバリケードを完成させた。バリケードの入り口は狭く、子供たちが横になって通れる狭さなので魔犬もそう簡単には通れないだろう。
ヒジリが作業をしだした頃からニッチモ達は木に登り、魔犬の気配を探っている。
「よし、後は魔犬を待つだけだな」
ヒジリが辺りを見回して待ったが、大して待つことはなかった。
作業をしている音を聞きつけて、縄張りを巡回中の魔犬達が直ぐに現れたからだ。
「周囲に魔犬が十五匹ほど!警戒されたし!」
魔犬達はイバラの下からゆっくりと現れて唸り声を上げながら包囲網を狭めていった。
バリケードの中から高校生たちは心配そうにヒジリを見る。彼は何もない場所で腕を組んで仁王立ちをしているだけだからだ。
「大丈夫かな?あのオーガ。オーガって強いって聞いたけど、数に圧倒されたら敵わない気がする・・・」
高校生たちと同じくバリケードの中にいるイグナは静かにそれに答えた。
「彼は問題ない。あなた達は自分の心配をした方がいい」
魔犬達は唸り声を上げて一斉にヒジリに襲いかかった。
が、牙がヒジリに届く前にバチンと電撃が走ったかと思うと、いつの間にか十匹ほどが弾かれて地面に叩きつけられていた。
「え?何が起きたの?ハギー姉さん」
「アタイの目でも彼の動きを追うのは難しかったね。ただひたすら素早いパンチを魔犬に当てていっただけだよ」
「あの一瞬で?」
「そう、あの一瞬で」
残った数匹はヒジリを無視してバリケードに走りだした。
ヒジリに敵わないのならせめて弱い者の肉を食いちぎって逃げようという算段なのだろうが、あえなく三匹はニッチモ達の弓矢に仕留められてしまう。
「後二匹だ!」
ドゥニモの声が飛ぶと、子供たちの士気が上がった。
「死んでいった皆の恨みだ!」
狭いバリケードの入り口から身をよじって侵入してくる魔犬だが、動きに制限があるにも関わらず、子供たちの槍をウナギのようにヌラヌラと躱して迫ってくる。
子供たちには勿論イグナの補助魔法が掛かっており能力が向上している。
にも関わらずこちらの攻撃を回避して喉元に噛み付こうと牙を見せる魔犬に対し、子供たちの間に恐怖が走る。
「【鈍なる動き】」
後方からイグナの魔法が魔犬を捕らえた。それまで素早かった魔犬の動きが半分ほどになったが、それでも普通の犬並に素早い。
ヤイバは戦闘を終え構えを解くと、静かに子供たちを見守る。
「大丈夫だ!君たちならやれる!落ち着いて魔犬の動きを見極めるのだ!」
その声が後押しをしたのか、真っ先に恐怖を克服した長髪の男子が腰を落として槍を突き出す。しかし魔犬の頬をかすっただけで致命傷には至らない。
「うわぁぁ!助けて!」
再び恐怖に飲み込まれた長髪の男子の槍に沿うようにして体を動かし牙で襲いかかる魔犬の横腹を、ポニーテールの女子高生が持つ槍先が深く突き刺した。
「たかしの仇だ!」
「ギャワワン!」
急所に刺さったのか、魔犬はその一撃で動かなくなった。
「やった!」
「まだだ!もう一匹がいる!」
木の上からニッチモの声がまだ警戒を解くなと忠告する。
先程までバリケードを突破しようとしていたリーダー格の魔犬は、一旦バリケードから離れると広い場所を陣取り、たかしの剣を地面に突き刺した。そして遠吠えを始める。
「仲間でも呼ぶのか?」
ヒジリは周りを警戒したがその気配はない。
ニッチモとサッチモが魔犬を狙って同時に弓矢を放ったが難なく避けられてしまった。
よく見ると魔犬の一本角が光っている。死んだ仲間達からモヤのような光が浮かび立つとリーダー格の魔犬の角に集まり始めた。
「なんだ?産毛がゾワゾワする・・・」
角刈りの男子がそう言うとイグナはハッとして詠唱を開始する。
「ヒジリ、ニッチモ達を守って!」
と、同時に上空から野太い雷が何本も落ちてきた。イグナは直ぐに魔法を完成させ、障壁を張り巡らせて雷から子供たちを守る。
雷はニッチモ達の木にも落ちるが、ヒジリが素早く木の上までジャンプをしてその身に雷を受けて庇った。
驚いたドゥニモが木から落ち、すかさず魔犬が咥えた剣で彼に襲いかかった。
「わぁ!ヒジリ様!助けてーー!」
ドゥニモは頭を抱えてうつ伏せになり、自分を祝福したまま放置してこの世界から消え去った現人神の名を思わず叫んでしまった。
あれほど憎んでいた神の名が咄嗟に出るのは、まだ彼が心のどこかでヒジリを信じているからだ。
どこからか声が聞こえてくる。
―――君の声は届いた―――
それは直ぐ近くで聞こえたように思う。
ドゥニモは恐る恐る目を開けるとライジンが彼の前に立っており、魔犬は彼のパンチの一撃を心臓に食らって絶命していた。
カランカランと魔犬の口からたかしの剣が落ちる。
「ヒジリ・・・様?」
「・・・ライジンだ」
子供たちが喜び、泣きながらヒジリの元へ集まってくる。
「たかし・・・たかし・・・」
たかしの事が好きだったと思しきポニーテールの女子が剣を拾い上げて抱きしめて泣いている。
「やった・・・俺たちやったんだ!皆の仇討ちをしたんだ!」
喜ぶ子供たちを見てハギーも顔が綻んでいる。
そう言えば・・・と犬人はライジンを見つめた。
「あんた、雷が直撃していたけど大丈夫なのかい?」
「ああ、問題ない」
「ポニテールがチリチリになってるから問題はある」
イグナはヒジリの自慢のポニーテールがチリチリになっているのを残念に見つめた。
「何、切ってしまえばいい」
「あの髪型はイヤだ。あの後、ヒジリは死んだから」
ハギーはイグナがライジンに向かってヒジリと呼んでいたのが聞こえたが、聞き間違いだろうと気にはしなかった。この世界を去った現人神がこんな場所にいるわけがないからだ。
しかしドゥニモがその会話をしっかり聞いており、驚きの表情でヒジリににじり寄った。
「やっぱりヒジリ様じゃないですか!俺です!昔、馬車に轢かれそうになっていた所を貴方に助けていただいた!その時、俺は貴方に祝福をしていただきました!」
ヒジリは眉間に皺を寄せてイグナを睨んだ。といってもマスクで表情は見えないが、イグナはそう感じた。
「ごめんなさい・・・」
素直に謝るイグナに胸がキュンとするが、彼女を抱きしめたい気持ちをヒジリは堪えてドゥニモに向き直った。
「今はその話はなしだ。後で話そう」
幸い、他の皆喜んで抱き合っていたためドゥニモ以外はライジンがヒジリであるとは気がついていない。
「さて、君らはこれからどうするね?」
「これからって・・・ずっとここでハギー姉さんと暮らしていくよ?」
「そうか。でも自分が何者か、知りたくはないか?」
お互い顔を見合わせて戸惑う子供たちは、どうしようかとただ悩むだけだ。
急に言われても決心がつくはずもない事をヒジリも解っている。
「もし知りたくなったら、いつでも帝国のツィガル城まで来たまえ。ライジンの知り合いだと言えば城の中へ通してくれるだろう」
「はい、その時は帝国を尋ねます。それから・・・魔犬の仇討ちを手伝ってくれてありがとうございました!」
皆を代表してお辞儀をするポニーテールの女子にヒジリはニッコリと微笑むと、教会の男たちに帰ろうと促した。
「さて帰るとするか、ニッチモ、サッチモ、ドゥニモ」
「はい!」
ハギーもヒジリにお礼を言いに歩み寄る。
「ありがとうよ、オーガメイジのライジン。アタイがオーガだったら間違いなくあんたに惚れてるよ」
「ハハッ!嬉しい事を言う。そうだ、最後に聞かせてくれ。君は何故そこまでこの子供たちの世話をするのかね?いつでも見捨てていけただろう?」
「別れ際にする話じゃないけどさ、アタイの母ちゃんは魔物使いだったんだ。でも世間では名の知れた悪党でね。奴隷売買に手を貸してたらしくてさ、今も監獄にいる。当時子供だったアタイら兄弟姉妹には母ちゃんしかいなかったからさ、急に大黒柱を失ってひもじい思いしながら生きていたんだ。この子らを見てたらその時のことを思い出しちまってさ・・・。見捨ててはいけなかったのさ。勿論、皆でいることのメリットもあるから一緒にいるんだけどね」
「そうか・・・。君の母親はアギーだろう?」
「知ってるのかい?って有名な悪党だったから知ってて当たり前か。ハハッ!じゃあね!ライジン!私たちはこれから真っ当に生きていくからさ、通報はしないでくれよ?」
「ああ、それでいいかね?ニッチモ」
「ええ、寛容さも神の教え。ハギーの言葉を信じましょう」
昔、ヒジリはハギーの母親の罠にかかって捕まり、闘技場の奴隷になった事がある。その闘技場での出来事は樹族国の歴史書に既にも掲載されており、ヒジリがいなければ樹族国は滅んでいたと書かれている。
ぼんやりと過去を思い出しながらヒジリは思う。
(人の出会いはどこかしらで繋がりがあるのだな)
ハギーにしてもドゥニモにしても、いずれも過去に出来た縁が直接的であったり、形を変えたりして巡ってきたものである。普通であれば一生彼らと出会うこと無く人生を終える可能性のほうが高い。
運命の神は本当にいるのかもしれないと、科学こそ全てのヒジリも自分の計り知れない存在がいる事を感じ取っていた。
イバラには獣人や小さな種族が通れる大きさの通り道があり、ヒジリが通るには一見して無理だと解る。
「これははぐれメイジがいた頃に張り巡らせた対大型魔物の防御壁みたいなもんです。塔を囲むように分厚く群生しています」
「ほう。君達はその道を行ってくれ。私は上から行って様子を見てくる」
「上から・・・?」
ニッチモが頭にクエスチョンマークを浮かべていると、ヒジリもヘルメスブーツと呼ばれる反重力浮遊装置の入ったブーツで浮き上がって党に向かって進んでいった。
「な?!あの人オーガメイジなんですか?というか浮遊は神の証・・・彼は何者なんですか?闇魔女様」
迂闊なヒジリにイグナは目を閉じてぐぬぬと呻き、何か適当な嘘を考える。
「か、彼はオーガメイジで、彼が履いているブーツは神に由来する貴重なマジックアイテム・・・」
「へぇ珍しいものを見た」
賢いオーガが生まれるのがまず稀で賢いオーガがメイジを目指すのも稀なのである。更に貴重なマジックアイテムを持っているという事なので、ニッチモはライジンという男は幸運の塊だなと思い感心する。
「まるでヒジリ聖下のようですね。確か浮き上がる魔法なんてこの世に無いのに・・・。【浮遊】って名前の魔法はありますが、あれはゆっくり落下するだけの魔法ですからねぇ。あのブーツはどういう魔法が使われているのですか?闇魔女さま」
「私にも判らない」
「闇魔女さまにも判らない魔法か・・・。凄いな」
ニッチモとサッチモは感心しながら、地走り族であれば難なく通れるイバラのトンネルを進んだ。
「俺もここを通るのか?」
地走り族にしては背の高いドゥニモは嫌そうにイバラトンネルの入り口に立ち止まって言う。
「当たり前だろ!文句言わずに来いよ。まだまだお前の母ちゃんの埋葬費や墓代は残っているんだぞ!屈んで歩け!」
「うるさいな。解ってるよ」
ドゥニモは新入りとして二人に軽く扱われるのが嫌だったが、借金を返す為には従うしか無い。チッと舌打ちをして屈んで一番最後にイバラのトンネルに入っていった。
皆、時折イバラの棘に引っかかれて痛い思いをしながら進むと、あっさりと塔の前に出た。
「迷路みたいになってると思ったけど一本道だったな・・・」
「当たり前だろ。俺らを防ぐようにはなってないんだから」
双子の兄弟は塔を見上げながら、喋っている。
ヒジリは既に塔の周りを調べていたのか、塔の裏側からスッと現れた。
「中々大きな塔だな。これであれば私も入ることが出来るだろう」
そう言って大きな扉をノックしたが、勿論反応はない。
ヒジリが拳に力を籠めて力任せに扉をぶち壊そうとしたが、イグナが魔法で開けてしまった。
「よし、各自警戒して進め」
扉を進むと直ぐに広間になっており、一階は食堂と厨房があるのか、妙に生活臭が漂っていた。
「ふむ。食堂の規模からして10人位か?」
ヒジリが敵の規模を推測していると、上の階に続く階段から足音が聞こえてきた。
「ハギー姉さん、おかえり!」
階段から降りてくるのは盗賊ではなく、ヤイバと同じ年齢位の数人の子供たちだった。地走り族にしては大きく、オーガにしては小さい。
「だ、誰だ!あんた達!」
ボロボロだが明らかに日本の学生服を来た男子が壁に立てかけてあった棍棒を握りしめて威嚇した。
「君たちはもしや・・・。私は―――」
ヒジリが自己紹介をしようとしたその時、背後で悲鳴が上がった。
「うわぁ!離せ!」
先程の犬人が唸りながら、ドゥニモを抱きかかえて首にダガーを突きつけている。
彼女はイグナの【読心】を掻い潜る程の隠遁術の手練だった。
「その子達から離れな!このギョロ目の喉に新しい口が出来ない内にね!」
「待て、敵意はない。それよりも話を聞かせて欲しい。この六人の子供たちはどこからやって来た?」
男子三人、女子三人。
「話が聞きたいなら、まずその子らから離れるこったね!」
「解った」
ヒジリは両手を上げて、子供たちから離れて犬人のいる入口に向かって歩きだした。
犬人の女はドゥニモを抱えたまま、ヒジリの横を走り抜け子供たちの方に駆け寄った。
「怪我は無いかい?」
「うん、まだ何もされていない」
「姉さん、あの人達は?」
「金を寄越せと脅した教会の者と冒険者だろうね。貧乏教会の癖に冒険者なんて雇いやがって」
「ねぇ、あの後ろのメイジ、魔法水晶で見たことあるよ!闇魔女だ!」
犬人は、そう言った女子に笑ってみせた。
「馬鹿言っちゃいけないよ。闇魔女を雇えるのは金持ちだけだよ。帝国みたいなね。貧乏教会に雇えるわけないだろう?」
「その子達は日本人だな?」
ヒジリがそう言うも反応はない。
「ニホンジン?そうなのかい?お前達。そういう種族なのかい?」
「わからないよ・・・。僕達には記憶がないって言ったろ?」
子供たちは困惑し顔を見合わせて肩を竦める。
「(記憶がないのか・・・)ドゥニモを開放してくれないか?落ち着いて話をしよう」
ヒジリはいつもの囁くような優しい声で盗賊の犬人を落ち着かせようとする。
「いいだろう。武器はその場に起きな。あと食べ物を全部寄越すんだ。早く!」
獣人の言う通りにして、皆武器を床に置いた。
ヤイバは元々丸腰なので何も置かず、肩のポケットを探ってニューっと携帯食料を一ダース取り出して犬人に投げた。
犬人は携帯食料の入った大袋を掴むとクンクンと匂う。
「なんだいこれは?」
「食べ物だ。一日一個で十分な栄養と満腹感を得られる」
犬人はドゥニモをドンと突き放すと、床の携帯食料を拾って包を剥いて少しだけ齧った。
「毒は無さそうだね。お前ら食べていいよ」
子供たちは一斉に携帯食料に飛びつくと貪り食った。みるみるお腹が膨れて満足したようだ。
「余程お腹が減っていたのだな」
「まぁね」
犬人の女はクィっと顎で食堂のテーブルを指した。座れという事だ。
ヒジリ達は椅子に座ると、犬人が口を開くのを待った。
「アタイはここを根城にして時折、アルケディアで貴族たちを狙ってスリをやって暮らしてたチンケな盗賊さ。名前はハギー。で、ある日スリに失敗しちまってね。魔法でズタボロにされて街道を逃げているところをこの子達に助けて貰ったのさ。この子達は魔法が全く効かなくてさ貴族たちは怖くなったのか、金を取り戻しただけで逃げていったんだ。アタイはこの子らに命を救われた上に肩を貸してもらってこの塔まで戻ってこれたんだ」
ヒジリは話を聞きながら肩から炭酸水の入ったボトルを出すと、ぐびっと飲んだ。
「それ、酒かい?アタイにも寄越しな」
「いや酒ではない。ただの炭酸水だ」
よく判らないという顔をする犬人に炭酸水を渡すと、彼女は口に含んで直ぐに吐き出した。
「酸じゃないか!馬鹿オーガ。お前達の胃袋は丈夫過ぎてついていけないね」
ハギーはテーブルの上でボトルを滑らせてヒジリに水を返す。
「それでさ、この子達がどこから来たのか、何者なのか色々と聞いたんだけど全く判らないんだ。元々十二人くらいいたらしいんだけど、病気で死んだり、魔物に襲われたりで六人になったらしい」
一人の女子高生が自分の肩を抱いて震えだした。
「私達、気がつくと森のなかにいて・・・。何でそこにいるかも解らなくて、下手に動くと危険だと思ったから暫く森で皆と自給自足しながら暮らしていたわ。でも仲間達の何人かは、急に石みたいになって死んだり、高熱を出して死んだ子もいて・・・。それでも生きなきゃって思って動物を狩ったり食べられそうな野草を見つけて何とか生きていたの。そしたら生活していた場所の近くに角の生えた狼が群れでやって来て・・・何人かは喉を食いちぎられて死んだ・・・。狼が仲間を食べている間に私たちは泣きながら・・・必死に逃げて・・・。気がつくとハギーさんの前にいたの」
「ふむ。私はこの子達を知っている。異世界人だ。異世界からやって来たニンゲンという種族だ」
「お前はオーガメイジか?やけに詳しいじゃないか」
「きっと霧の渦を通ってやって来たのだろう。可哀想に・・・。君たちの荷物を見せてもらえるかな?」
子供たちは頷くと異世界からずっと持っていた品々を持ってきてくれた。数は多くない。襲われた時に取り敢えず手に持ったものしかないからだ。
スマートホン、漫画、ライトノベル、マネキュア、鏡、学生手帳。
それらはどれも傷があったり、血が染み付いていたりと絶望の中を必死に生き抜いてきた証が生々しく見て取れ、この子供たちがどれ程必死にこの世界で足掻いてきたのかを想像し、ヒジリは同情した。
何気なくライトノベルを手にとって見ると、タイトルにはこう書かれていた。
『異世界に転移したら下痢するほどモテた!』
何ともチープなタイトルだが何度も何度も読み返されたであろうページは折れ曲がり、薄い文庫本が辞書のように分厚くなっていた。
「それ・・・たかしの本なんだ・・・」
髪が伸び放題の男子が悔しそうにそう言う。
「たかしはその本が大好きでさ、この本に書かれている事は現実の話で俺達はこれから下痢をするほどモテるんだ!って訳の分からない事を言ってた。で、俺たちもその気になって、捨ててあった錆びた剣を何とか研いで、いっちょ前に剣の訓練とかして・・・。弱い魔物ならそれで何とかなったからさ・・・いい気になって・・・ウグッ!ううう!魔犬も平気だとか言ってたら・・たかしや他の皆が喉を食い千切られて・・・うわあぁ」
そう言ってハギーの横でテーブルに突っ伏して男子高校生は泣き出した。ハギーは肉球の部分で優しく彼を撫でている。
(現実はこうなのだ。彼らと同じ異世界人のマサヨシが特別なのであって・・・。マサヨシはああ見えて、生き抜く能力は高いからな。私だって、この子らのように何のスキルも知識もなく突然、危険な森に放り出されたら一晩も生き抜けたかどうか・・・)
ライトノベルのように甘くないこの星の現実を彼らは身をもって体現している。
ハギーはトラウマで泣く異世界の若者たちに気を使いつつも話を続ける。
「この子らは、そこそこやれる子なんだ。鬼イノシシや巨大ネズミぐらいなら簡単に倒しちゃうんだよ。だからさ、アタイもスリなんてやらずともこの子らと生きていけたのさ。余った肉や野草やキノコを売るだけで結構なんとかなってね。アルケディアは田舎と違って何でも高値で買ってくれるからね」
「で、皆が塔に閉じこもっているということは、何かが起きたと?食べ物に飛びついていたところを見ると、狩猟や採取が出来なくなったということかね?」
「そう。この子らを襲った魔犬がこの辺にも現れるようになってね」
「何故、子供を襲った魔犬だと解るのかね?」
「あんた、メイジなのにそんな事も知らないのかい?呆れた!魔犬は野良犬なんかより賢くてさ。殺した相手の武器を口に咥えて次の獲物を狩る。で、たかしとやらが持っていた剣をこの辺に出没するようになった魔犬の一匹が咥えていたってわけさ」
「なるほど。で、魔犬をやり過ごせるスキルがある君が皆の為に金を稼いで食料を持ち帰っていたというわけか」
「そういう事。アタイだって皆と以前のように稼げりゃリスクの高いスリや脅しなんてしないんだよ。でも魔犬が森の中に居着いているんだから仕方ないだろ?魔犬は森から出ないし、街道を通る奴らを襲いはしないから討伐命令も出ていない。賢い奴らだよ。誰を襲えば危険かそうでないかを解ってるみたいなんだ」
「では魔犬を倒せばいい」
「簡単に言ってくれるね。魔犬は単体だと簡単に倒せるけど大きな群れ相手だと上位冒険者でも死ぬことがあるんだ。あんたらが討伐してくれるならアタイは文句言わないけどさ」
「勿論、皆でだ」
それを聞いたイグナはワンドでヒジリの腰をツンツンした。不意を疲れたヒジリはウォ!と小さな悲鳴を上げる。
「ヒジリはまた面白がってる。魔犬の群れくらいなら私一人で簡単に倒せるのに。ヒジリはこれまでもっとシンプルでストレートに物事を終わらせる事が多かったのにどうして?」
「君なら子供たちの心の声が聞こえるだろう?私は彼らのトラウマを少しでも軽くさせたいのだ。トラウマを癒すにはその根源である魔犬と対峙させ倒させるのが一番だ」
「・・・。それはそうかもしれないけど、危ない。この子達は六人でようやく魔犬一匹と同じくらいの強さ。それに誰かを守るのはとても難しい」
「君がいるだろう?闇魔女殿。私には見えないが君は弱い冒険者でもある程度強くする補助魔法を沢山知っているはずだ」
「勿論それはするけど・・・。やはり危ない」
「それに私はパワードスーツの性能を大幅に向上させている」
「解った。そこまで言うなら信じる」
「ありがとうイグナ。では諸君、これより魔犬の討伐に向かう。教会の諸君らは木の上に昇って援護射撃や牽制をしてくれ。遠隔回復が出来る者は?」
教会の下男と言っても彼らも僧侶みたいなものなので、ニッチモとサッチモは手を上げて頷く。
「では子供たちを優先して回復してくれたまえ。私は前衛をして魔犬の敵意を集める。ハギーはそれから漏れた魔犬から子供たちを守ってくれ。それでも追いつかない時はイグナが援護する。それから子供たちには槍を持たせろ」
トラウマの原因と対峙する事となった子供たちの顔に緊張が走る中、ヒジリは外に出て置いてあった薪にするはずだった然程太くない丸太の山を見て何かを閃いた。
ヒジリをヒョイヒョイと丸太を幾つか持ち上げると、地面にクロスさせながら突き刺していく。先の尖っていない丸太を簡単に地面に刺していくオーガに子供たちは驚いた。
「オーガは怪力だって聞いてたけど、凄いな・・・」
ヤイバは深く刺さっているかどうかを軽く押して確認すると、また丸太を地面に突き刺していく。
そして上から見ると英語のCの字のような形のバリケードを完成させた。バリケードの入り口は狭く、子供たちが横になって通れる狭さなので魔犬もそう簡単には通れないだろう。
ヒジリが作業をしだした頃からニッチモ達は木に登り、魔犬の気配を探っている。
「よし、後は魔犬を待つだけだな」
ヒジリが辺りを見回して待ったが、大して待つことはなかった。
作業をしている音を聞きつけて、縄張りを巡回中の魔犬達が直ぐに現れたからだ。
「周囲に魔犬が十五匹ほど!警戒されたし!」
魔犬達はイバラの下からゆっくりと現れて唸り声を上げながら包囲網を狭めていった。
バリケードの中から高校生たちは心配そうにヒジリを見る。彼は何もない場所で腕を組んで仁王立ちをしているだけだからだ。
「大丈夫かな?あのオーガ。オーガって強いって聞いたけど、数に圧倒されたら敵わない気がする・・・」
高校生たちと同じくバリケードの中にいるイグナは静かにそれに答えた。
「彼は問題ない。あなた達は自分の心配をした方がいい」
魔犬達は唸り声を上げて一斉にヒジリに襲いかかった。
が、牙がヒジリに届く前にバチンと電撃が走ったかと思うと、いつの間にか十匹ほどが弾かれて地面に叩きつけられていた。
「え?何が起きたの?ハギー姉さん」
「アタイの目でも彼の動きを追うのは難しかったね。ただひたすら素早いパンチを魔犬に当てていっただけだよ」
「あの一瞬で?」
「そう、あの一瞬で」
残った数匹はヒジリを無視してバリケードに走りだした。
ヒジリに敵わないのならせめて弱い者の肉を食いちぎって逃げようという算段なのだろうが、あえなく三匹はニッチモ達の弓矢に仕留められてしまう。
「後二匹だ!」
ドゥニモの声が飛ぶと、子供たちの士気が上がった。
「死んでいった皆の恨みだ!」
狭いバリケードの入り口から身をよじって侵入してくる魔犬だが、動きに制限があるにも関わらず、子供たちの槍をウナギのようにヌラヌラと躱して迫ってくる。
子供たちには勿論イグナの補助魔法が掛かっており能力が向上している。
にも関わらずこちらの攻撃を回避して喉元に噛み付こうと牙を見せる魔犬に対し、子供たちの間に恐怖が走る。
「【鈍なる動き】」
後方からイグナの魔法が魔犬を捕らえた。それまで素早かった魔犬の動きが半分ほどになったが、それでも普通の犬並に素早い。
ヤイバは戦闘を終え構えを解くと、静かに子供たちを見守る。
「大丈夫だ!君たちならやれる!落ち着いて魔犬の動きを見極めるのだ!」
その声が後押しをしたのか、真っ先に恐怖を克服した長髪の男子が腰を落として槍を突き出す。しかし魔犬の頬をかすっただけで致命傷には至らない。
「うわぁぁ!助けて!」
再び恐怖に飲み込まれた長髪の男子の槍に沿うようにして体を動かし牙で襲いかかる魔犬の横腹を、ポニーテールの女子高生が持つ槍先が深く突き刺した。
「たかしの仇だ!」
「ギャワワン!」
急所に刺さったのか、魔犬はその一撃で動かなくなった。
「やった!」
「まだだ!もう一匹がいる!」
木の上からニッチモの声がまだ警戒を解くなと忠告する。
先程までバリケードを突破しようとしていたリーダー格の魔犬は、一旦バリケードから離れると広い場所を陣取り、たかしの剣を地面に突き刺した。そして遠吠えを始める。
「仲間でも呼ぶのか?」
ヒジリは周りを警戒したがその気配はない。
ニッチモとサッチモが魔犬を狙って同時に弓矢を放ったが難なく避けられてしまった。
よく見ると魔犬の一本角が光っている。死んだ仲間達からモヤのような光が浮かび立つとリーダー格の魔犬の角に集まり始めた。
「なんだ?産毛がゾワゾワする・・・」
角刈りの男子がそう言うとイグナはハッとして詠唱を開始する。
「ヒジリ、ニッチモ達を守って!」
と、同時に上空から野太い雷が何本も落ちてきた。イグナは直ぐに魔法を完成させ、障壁を張り巡らせて雷から子供たちを守る。
雷はニッチモ達の木にも落ちるが、ヒジリが素早く木の上までジャンプをしてその身に雷を受けて庇った。
驚いたドゥニモが木から落ち、すかさず魔犬が咥えた剣で彼に襲いかかった。
「わぁ!ヒジリ様!助けてーー!」
ドゥニモは頭を抱えてうつ伏せになり、自分を祝福したまま放置してこの世界から消え去った現人神の名を思わず叫んでしまった。
あれほど憎んでいた神の名が咄嗟に出るのは、まだ彼が心のどこかでヒジリを信じているからだ。
どこからか声が聞こえてくる。
―――君の声は届いた―――
それは直ぐ近くで聞こえたように思う。
ドゥニモは恐る恐る目を開けるとライジンが彼の前に立っており、魔犬は彼のパンチの一撃を心臓に食らって絶命していた。
カランカランと魔犬の口からたかしの剣が落ちる。
「ヒジリ・・・様?」
「・・・ライジンだ」
子供たちが喜び、泣きながらヒジリの元へ集まってくる。
「たかし・・・たかし・・・」
たかしの事が好きだったと思しきポニーテールの女子が剣を拾い上げて抱きしめて泣いている。
「やった・・・俺たちやったんだ!皆の仇討ちをしたんだ!」
喜ぶ子供たちを見てハギーも顔が綻んでいる。
そう言えば・・・と犬人はライジンを見つめた。
「あんた、雷が直撃していたけど大丈夫なのかい?」
「ああ、問題ない」
「ポニテールがチリチリになってるから問題はある」
イグナはヒジリの自慢のポニーテールがチリチリになっているのを残念に見つめた。
「何、切ってしまえばいい」
「あの髪型はイヤだ。あの後、ヒジリは死んだから」
ハギーはイグナがライジンに向かってヒジリと呼んでいたのが聞こえたが、聞き間違いだろうと気にはしなかった。この世界を去った現人神がこんな場所にいるわけがないからだ。
しかしドゥニモがその会話をしっかり聞いており、驚きの表情でヒジリににじり寄った。
「やっぱりヒジリ様じゃないですか!俺です!昔、馬車に轢かれそうになっていた所を貴方に助けていただいた!その時、俺は貴方に祝福をしていただきました!」
ヒジリは眉間に皺を寄せてイグナを睨んだ。といってもマスクで表情は見えないが、イグナはそう感じた。
「ごめんなさい・・・」
素直に謝るイグナに胸がキュンとするが、彼女を抱きしめたい気持ちをヒジリは堪えてドゥニモに向き直った。
「今はその話はなしだ。後で話そう」
幸い、他の皆喜んで抱き合っていたためドゥニモ以外はライジンがヒジリであるとは気がついていない。
「さて、君らはこれからどうするね?」
「これからって・・・ずっとここでハギー姉さんと暮らしていくよ?」
「そうか。でも自分が何者か、知りたくはないか?」
お互い顔を見合わせて戸惑う子供たちは、どうしようかとただ悩むだけだ。
急に言われても決心がつくはずもない事をヒジリも解っている。
「もし知りたくなったら、いつでも帝国のツィガル城まで来たまえ。ライジンの知り合いだと言えば城の中へ通してくれるだろう」
「はい、その時は帝国を尋ねます。それから・・・魔犬の仇討ちを手伝ってくれてありがとうございました!」
皆を代表してお辞儀をするポニーテールの女子にヒジリはニッコリと微笑むと、教会の男たちに帰ろうと促した。
「さて帰るとするか、ニッチモ、サッチモ、ドゥニモ」
「はい!」
ハギーもヒジリにお礼を言いに歩み寄る。
「ありがとうよ、オーガメイジのライジン。アタイがオーガだったら間違いなくあんたに惚れてるよ」
「ハハッ!嬉しい事を言う。そうだ、最後に聞かせてくれ。君は何故そこまでこの子供たちの世話をするのかね?いつでも見捨てていけただろう?」
「別れ際にする話じゃないけどさ、アタイの母ちゃんは魔物使いだったんだ。でも世間では名の知れた悪党でね。奴隷売買に手を貸してたらしくてさ、今も監獄にいる。当時子供だったアタイら兄弟姉妹には母ちゃんしかいなかったからさ、急に大黒柱を失ってひもじい思いしながら生きていたんだ。この子らを見てたらその時のことを思い出しちまってさ・・・。見捨ててはいけなかったのさ。勿論、皆でいることのメリットもあるから一緒にいるんだけどね」
「そうか・・・。君の母親はアギーだろう?」
「知ってるのかい?って有名な悪党だったから知ってて当たり前か。ハハッ!じゃあね!ライジン!私たちはこれから真っ当に生きていくからさ、通報はしないでくれよ?」
「ああ、それでいいかね?ニッチモ」
「ええ、寛容さも神の教え。ハギーの言葉を信じましょう」
昔、ヒジリはハギーの母親の罠にかかって捕まり、闘技場の奴隷になった事がある。その闘技場での出来事は樹族国の歴史書に既にも掲載されており、ヒジリがいなければ樹族国は滅んでいたと書かれている。
ぼんやりと過去を思い出しながらヒジリは思う。
(人の出会いはどこかしらで繋がりがあるのだな)
ハギーにしてもドゥニモにしても、いずれも過去に出来た縁が直接的であったり、形を変えたりして巡ってきたものである。普通であれば一生彼らと出会うこと無く人生を終える可能性のほうが高い。
運命の神は本当にいるのかもしれないと、科学こそ全てのヒジリも自分の計り知れない存在がいる事を感じ取っていた。
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