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禁断の箱庭と融合する前の世界(150)
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「でかした!ヤイバ!」
王座から立ち上がると、小さな王は小躍りしながら喜んだ。癖っ毛の強い栗色の猫毛がフワフワと跳ねている。
ヤイバは跪いたまま頭を軽く下げて、王の賛辞を黙って受け入れた。
「それにしても、お主らには失望したぞ?ワンドリッター、グリーンブライト」
「黙れ!腰抜けの王!」
「見苦しいぞ、ワンドリッター卿。口を慎め!」
玉座の間でも武器の装備が許されている王国近衛兵騎士団団長リューロック・ウォールは魔法の金棒を床に叩きつけゴンと音を響かせる。
シュラスは王座に座り直し、顔の前で手を組んで顎を乗せた。
「そなたらが以前から、政策の指針に不満を持っていたのは知っていたが謀反を起こす程とはの。そこまでお主らを駆り立てるものは何じゃ?」
ワンドリッターは両手を後ろ手に縛られて跪いているので顔を上に向け辛く、玉座に座る王を睨むよう見た。
「闇側の住人が誉れ高き樹族の国に堂々と入って来るのが気に入らない。盗人、人殺し、詐欺師。犯罪者が流入しているのに王はそれを防ごうとはしていないではないか!」
「そうなのか?リューロック」
「いえ、交流が無かった頃と然程変わりはありませぬ。犯罪を犯す者はどの道、不法入国をして問題を起こしております。帝国と樹族国の往来が可能となったとはいえ、依然厳しい審査を国境で実施しておりますゆえ」
「だそうだ、ワンドリッター」
「逆を言えば、昔から闇側住民の犯罪を防げていないという事ではないか!何故もっと防ぐ努力をしないのか!」
グリーンブライトがワンドリッターの横で難癖をつける。
そのグリーンブライトにシュラスは問いかけた。
「お主、ポルロンド国に行った事はあるか?」
「有るが?」
「あそこは周辺国の傀儡国家だったとはいえ、闇側も光側も関係なく受け入れておった。お陰で経済は活性化し、大陸随一の経済大国になったのじゃ。あの小さな国が」
「ええ、知っていますとも?その代わりにスラムには暗殺集団やカルト集団がのさばっておりましたがな。我らが樹族の神の化身が単体で乗り込んで壊滅させたのだ」
「何事も表があれば裏もあるんもんじゃ。我が国はポルロンドに比べて移民の恩恵も少ないが犯罪も少ない。これに何の不満があると?ところでお主らの言う樹族の神とは誰じゃ?」
「・・・」
リューロックは髭を捻りながら、ジュウゾを呼んだ。
シュッと音がして裏側の長がリューロックの背後に現れる。
「彼等の部下の自供では、アンドラスという貴族の男だそうです」
低く響く声にリューロックは髭を手で押さえつけて考える。
「アンドラス?はて・・・?陛下、アンドラスという貴族をご存知ですかな?」
「さぁな。どうせ木っ端貴族じゃろ」
「無礼者め!樹族の神に名は無い。アンドラスと名乗ったのは我らが名を呼びやすいように配慮してくださったのだ!」
「で、そのアンドラスとやらは何と言ってお前らを惑わせたのだ?」
「ここに我らが樹族の国を作ると言ってくださったのだ!それを聞いて最初は我らも一笑に付した。しかし、アンドラス様はそれを気にもとめず行動で示した。単身で我が国の暗殺集団を壊滅させて力を顕示したのだ。それだけでなく、ポルロンドのセブレの本拠地も壊滅させた!」
「それだけか?我らが神は何とも規模が小さいのう・・・。もっとこう、エルダーリッチを追い返すとか、世界を終わらせようとする邪神を倒すとかしないのかのう?」
ウッ!と樹族崇拝者の二人は小さく呻く。確かにスター・オーガに比べればやることが小さい。
「し、しかし、国でも成し得なかった暗殺集団の壊滅は偉業だ!」
「もういいわい。シルビィの娘に罪をなすり付けたのもどうせお前らじゃろう。ワシの周りから瓦解させるつもりだったのだろうが、残念だったな。彼女を直ぐに修道院から呼び戻せ。すまんかったな、リューロック。お前の可愛い孫を疑ってしまって」
「いえ、そうでもしないと元老院が煩かったでしょう。当然の対応かと」
「さてワンドリッター、グリーンブライト。お前らはもう少し裏側や独立部隊の事情徴収を受けてもらうぞ?ワシも少し立ち会おうかの」
「陛下がそこまでせずとも・・・」
「いいんじゃ、リューロック。こいつらの言う胡散臭い樹族の神とやらには興味があるのでな」
「では仰せのままに」
シュラス王はヤイバに向くと肩書で名を呼んだ。
「さて自由騎士ヤイバ殿。この度は素晴らしい働きに感謝する。しかし、もう少し彼等の取り調べがあるので数日はかかる。その間待って貰えるかな?」
「はい、僕も樹族国の正式な見解を頂くまでは帝国に帰れません」
「そうか!(やったぞ!食事に誘って彼の武勇伝が聞ける!絵師にカードを作らせることも出来るぞ!)ではそのように頼む」
シュラス王は王座から立ち上がると、軽い足取りでリューロックと共に謁見の間から出ていった。
暫くして近衛兵に謀反者達も連行されていく。
「ふぅ。これでほぼ解決したかな?隊長が提出した転移石が決め手になればいいけど。それにしてもあの石は一体どこに繋がっているのだろうか?それに父さんはどこに行ったんだ?」
一人ぶつくさ言いながら、謁見の間を出て待合室で待つマーのもとへと行った。
「シュラス陛下はなんと?」
マーは待つのが退屈だったのか、ヤイバを見かけると嬉しそうに駆け寄ってくる。
「取り調べに時間が掛かるから正式な見解は数日後になるそうです」
「そうか。待っている間にナンベル陛下から、速達でお前を手伝えと」
「速いですね。銀貨二枚の価値はありましたね」
待合室の扉がガチャと開いて、見知った顔がそれに答える。
「当然よ、なんせアタシが使役するハヤブサを飛ばしたんだから」
自国ではもう素性を隠していないのか、白目が黒く瞳の赤い英雄子爵のタスネが入ってきた。
タスネはヤイバとマーの為に用意された部屋へと案内する。部屋に着くとタスネは一応触手をあちこちに伸ばして暗殺者などがいないかを確かめた。
そして安全を確認すると二人を部屋に招き入れる。
「どうぞ」
「まさかタスネさんが来るとは思っていませんでした」
「一応ウォール家は王都に住んでいるけどクロス地方の領主だからね。雇われ子爵のアタシは命令があれば、お客様のお相手もさせられるの。お相手つっても変な意味じゃないわよ!」
「微塵にも思っていませんよ、そんな事・・・」
相変わらず狭量で勝手にキレる人だなぁとヤイバは思う。少し苦手意識もある。
マーは現人神の主に少し緊張して、腰折って樹族のような優雅な挨拶をした。
「初めまして、英雄子爵殿。帝国鉄騎士団マー隊の隊長をしております、スリャット・マーです。貴方は聖下に唯一命令が出来る方と聞いております。こんな偉大な方と出会えて、私は光栄です」
「誰よ?そんな事言っているのは。ヒジリは私の命令なんて聞きやしないわよ。ただ協力してくれるだけ」
「それでも凄いかと・・・。今は亡き我らが神、偉大なるスター・オーガを、魔法での契約も無しで使役していたのですから」
「(あっ!この人、ヒジリが蘇ったの知らないんだ?)そ、そうかな?うふふふ」
マーはお辞儀をして顔をあげる時に、タスネの吸魔鬼の顔を見てヒッ!と小さな悲鳴を上げた。よく見ると白目に黒い何かが蠢いているからだ。
「し、失礼しました。間近で吸魔鬼の顔を見た事が無いもので」
「最初は皆そういう反応をするから慣れているわよ。それに最近は樹族国の皆はアタシ達吸魔鬼を認知してくれようになったから、そういう反応は久しぶりだわね。まぁ主にダンティラスのお陰だけどね。長年、各地で暴れる冒険者の手に負えない魔物を退治してきたからさ。冒険者の手に負えない魔物って大抵大型なのが多いから、巨獣殺しっていう二つ名が付いているわよ」
「他の吸魔鬼の皆は元気ですか?」
ヤイバはサヴェリフェ夫婦の他にも吸魔鬼が樹族国にいる事を知っている。イワンコフ、カロリーヌ、元カルト教団の司祭(名前失念)。
「元気よ。もしものときに備えて戦闘技術を磨いているわ。戦争になったら吸魔鬼の一隊が奥の手として控えているからね」
それを聞いてマーは苦い顔をした。
「それは恐ろしい・・・。今、どう戦うかをシミュレートしてみましたが、ヤイバ以外光魔法の使えない帝国軍では吸魔鬼隊に相当苦戦しますよ」
「光魔法の効かない方もいますがね・・・カロリーヌさんが・・・」
「そっちは反則的な存在のヤイバがいるから大丈夫でしょ」
「いいえ、僕はエナジードレインを受けますよ?大丈夫なわけないじゃないですか」
「効くつっても吸い難いでしょうが、あんたは!一ミリもない穴の開いた火吹き竹で水を吸うようなもんよ!小さい頃ヤイバが悪戯した時、怒った私がマナを吸ったの憶えてないの?」
「さぁ・・・」
コンコンとドアがノックされた。
「昼食をお持ちしました」
召使いがゾロゾロと入ってきて部屋のテーブルに食事の用意をする。
しかし、ドジなメイドが絨毯に足を取られヤイバに抱きついてしまった。
「ひゃあ!大変申し訳ありません!」
メイドは怯えて縮こまる。
権力の有る神学庁や神職達が崇拝の対象とする人物に抱きついてしまったからだ。
「大丈夫ですよ。星のオーガであるマサヨシさんは貴方みたいな方をドジっ娘と呼んで好んでおりました。神が好むという事はきっと悪い事ではないのです。だから気にしないでください」
ピカァー!と世界が白むかと思うほどの、爽やかな笑顔がメイドの樹族に向けられる。
「ふぁぁ!好きです!結婚して下さい!」
メイドは魅了され更に抱きついた。が、慌てる同僚に即座に引き剥がされて部屋から連れ出されてしまった。
タスネは料理を見ていてヤイバの顔を見ておらず魅了はされていないが、何が起こったかは解る。
「あんたね!自分の魅力値を自覚しなさいよ!食事の世話をしてくれる他の召使いまで慌てて出て行っちゃったでしょうが!あんたが本気を出したら色ボケ乳デカオバケのフランを上回るのよ!小さい頃、あんたの爽やか笑顔で年増のおばちゃん達に連れ去られそうになったのを忘れたの?」
「記憶にないです。す、すみません・・・」
「ふぁぁぁぁ!大好きだぁぁぁ!!」
マーはヤイバの笑顔を見ていたので魅了され、目をハートにしてタックルして抱きついた。
不意打ちで尚且つヤイバは椅子に座っていたので二人とも絨毯の上にゴロゴロと転がる。
「もう!何やってんのよ!ゴリ・・・隊長さんまで!」
タスネの背中から黒くうねる触手が飛び出て、二人を掴むと立たせた。正気に戻す為、マーのマナを少し吸う。
マーはびゃあ!と変な声を上げて正気に戻った。
「申し訳ない・・・。なんだかもう、わけが解らなくなってしまって」
「いいから、昼食を食べちゃいましょうよ。召使がいないから自分で取り分けてね。おぉ?このワイン・・・。異世界の上物じゃん!隊長はお酒はいける口?」
「ええ、嗜む程度には・・・」
稀に魔物の霧から飛び出てくるワインは凄まじく価値が高い。実際この世界の物より美味しく、希少性も相まって見つけた者は一財産を築ける程だ。
「これ飲んどいた方が良いわよ。異世界のワインだから」
「え!そんな高級な物を私が飲んでもいいのですか?」
「いいのよ、きっとヤイバの上司がいるからって特別に持ってきてくれたのよ!」
「シュラス陛下のお気遣いに感謝します!では頂きます!」
タスネはマーの持つワイングラスに表面張力が出来るほど注ぐと、自分のグラスにも同じように注いだ。
「うっかり波々注いじゃったわ・・・。テヘッ!これじゃあグラスを持っての乾杯は無理だから、エアかんぱーい!」
「タスネさん・・・、その一杯だけにしてくださいよ。酒癖が悪いのですから・・・」
英雄子爵は心配するヤイバの言葉など聞いてはいない。
キラキラと輝く目はグラスを見ているので少し寄り目でマヌケに見える。その間抜け顔でテーブルに置いたワインをズズっと啜るのでヤイバは笑いを堪えられず、ブフーっと吹き出した。
マーもこれが樹族国の正式な飲み方なのだと思って、真似をする。
「おぉぉ・・・。私はこんなに飲みやすいワインを今まで飲んだことはない!口に含むと、夏の高原の爽やかな風のような清涼感が喉を駆け、次にぶどうの酸味と甘み、そして微かな渋みが残る。これは・・・何杯でもいけるぞ!美味い!」
ヤイバはワインの瓶を手に取り、【翻訳】の魔法を試みる。
「チリ産ワイン・・・。チリという産地なのかな?(よくマサヨシさんがゴロツキにお酒を集られた時に、お前みたいな底辺はチリ産ワインでも飲んでろ!って言っていたな・・・。罵倒に使うって事は安酒なんじゃないかな?)」
ラベルから目を離し、瓶を置くとすぐにタスネの手が伸びてきた。
ヤイバはすかさずタスネのグラスを見る。
「もうグラスが空・・・。駄目ですよ!タスネさん!一杯だけですからね!」
「わ、解ってるわよ。隊長さんに注ごうと思っただけよ」
そう言ってからマーのグラスに注ぎ、席に座ると読めもしないのにラベルの文字を見つめだした。
(読めもしないのに・・・)
ヤイバはそう思いながら、魚のバターソテーにナイフとフォークを通した・・・その瞬間!
タスネは瓶の口を咥えてラッパ飲みをしだした。
笛を吹くかのように、瓶を持つ指をピロピロさせながら一気に飲んでいく。
「アーーーッ!こらー!タスネさん!」
しかし時既に遅し。ワインの瓶は空になっていた。
「ウィーーー!もう一本!」
「ちょ!」
地走り族にしては素早さの低いタスネだったが、ヤイバの掴みかかる腕を掻い潜り、ワインの乗ったカートへと触手を伸ばす。
「ヤイバも飲め!」
触手は器用に瓶からコルクを外すと、ヤイバの口に突っ込んだ。
ワインは滑らかにヤイバの喉を通っていく。
「ごぽぉ!おごぽぉ!」
マーは目の前でゴポゴポとワインを飲まされるヤイバを助けるべきかどうか悩んでいた。
が、迂闊な事をして英雄子爵の機嫌を損ねると厄介な事になるかもしれない。これは親しい二人がいつもやっているじゃれ合いなのだと自分に言い聞かせて、成り行きを見守った。
たらふくワインを飲まされたヤイバだが、ナノマシンはヒジリのものより高度に進化している為、ある程度のアルコールを毒と認識しない。嗜好の一つだとちゃんと認識するのだ。
ヤイバは上を向いたまま椅子に座ると動かなくなった。
「どぉしたどぉしたぁ!神の子ヤイバ様がワイン一本でグデングデンかぁ?」
そう言うタスネ殿は一本飲まない内にベロンベロンではないか、とマーは心の中で突っ込んだ。
「おい!タスネ!」
静かだったヤイバが急にタスネを呼び捨てにした。眼鏡の奥の目が据わっており、頬は真っ赤で酔っ払っているのが解る。
「お前、未成年の俺様に酒を飲ますと何事か!罰が必要だな!尻を出して四つん這いになれ!蹴ってやる!」
「はっ?ヤイバ・・・。相手は子爵様だぞ!国滅ぼしの吸魔鬼だぞ!怒らせると大変な事になるんだぞ!(っていうか、ヤイバも酒癖が悪かったのか!)」
「あぁぁ?このアタシに尻を出せだと?」
「ああ、そうだ!出せぃ!」
画して怯えるマーの前で、怪獣のような二人の対決は始まった。
「アタシのお尻はダンちゃんのものだから、見せることは出来ませ~ん!」
「いいから出せ!その汚い尻を蹴ってやるって言っているんだ!酔っ払いめ!」
マーは二人の豹変ぶりにオロオロする。
片や吸魔鬼で尚且つ実力のある高レベルの魔物使い。片や化け物級のエリートオーガ。化物同士が争えば大事になるのは間違いない。下手をすれば自分も巻き添えを食って牢屋にぶち込まれるかもしれない。
「ヤイバぁ・・・。早く酔いから覚めてよぉ・・・」
いつもは強気の隊長が不安で素の顔に戻っている。
「いくぞ!タスネ!」
「返り討ちにしてやるわ!」
ヤイバの【氷の槍】がブレスレットから放たれた。
タスネをは自分の全身程も有る大きな氷の槍を、当然のように魔法のバックラーで弾く。
飛んでくるものは例え魔法だろうが、なんでも弾く魔法の盾の存在をヤイバは失念していたのだ。
「カーカッカッカ!お前の負けだ!ヤイバ!」
この十数年間、魔物使いのセンスを磨きに磨き上げてきたタスネが口笛を短く吹くと、窓の外を大きな影が横切った。彼女の使役するアラクネのレディが城の外壁を這いずり回っていたのだ。
開いた窓から膨らんだ腹部をヤイバに向けると、あっという間に彼を包み込んでしまった。
「モガモガー」
「能力の高さよりも、経験が物を言うのよ。フヒヒー!ワインは頂くぞぃ!」
もうキャラが滅茶苦茶だなとマーは酔っ払ったタスネを見て思う。
タスネがワインに手を伸ばそうとしたその時。
―――ボワッ!―――
ヤイバに巻き付くアラクネの糸が【闇の炎】で燃えた。
「しぶといなぁ!ヤイバは!」
今度は糸ではなく触手がヤイバに巻き付き、ギリギリと神の子の首を締め上げる。
「ググググ!」
「ちょっと!タスネ殿!本気でヤイバを殺す気か?」
マーはいよいよヤイバを助けようと触手に掴みかかろうとしたが、複数の触手が彼女のぴっちりとした服を引き裂いた。
「きゃあ!」
鉄騎士団の男たちからゴリラと揶揄され、鎧の下は引き締まった鉄のような筋肉があるという噂とは逆に実に女らしい滑らかな体が顕になった。
「ええ体しとるやないのー、隊長~!」
うへへへと手をワキワキさせながらタスネは隊長に近寄る。
触手でハムのように締め付けられているヤイバの横を通った時、彼の体から光が放たれた。
「ぎゃああ!【聖光】か!闇側のオーガが光魔法を使えるなんてずるいよ!」
触手を解いてタスネは目を押さえジタバタと転げ回った。フランがよく使う【閃光】の上位魔法はアンデッドや吸魔鬼の目を焼いて更にダメージを与える。
「恨むのなら、僕に沢山の魔法を教えてくれたイグナ母さんをを恨むんだな!ヒャッハー!」
ヤイバはタスネを捕まえると、青いドレスのスカートをめくって下着をずらし尻を剥いた。
ぷりんとした可愛らしい白いお尻が見える。
そのお尻に向かってヤイバは能の小鼓のように持って叩きだした。
「一つ叩いては母のため~♪」
「ギャース!」
「二つ叩いては父のため~♪」
「ギャース!」
「三つ叩いては人のため~♪」
「ギャース!」
「四つ・・・え~っと・・・ドォォォォン!」
「ホゲーーーー!」
最後にヤイバがタスネに虚無の平手を打ち込んだのをマーは見逃さなかった。
タスネの体に異常はなかったが、パタリと気絶して静かになった。
「お、おい・・。ヤイバ・・。虚無の攻撃はやり過ぎじゃないかな?」
「あ~?俺様に指図するのはだ~れだ~?」
「私だ!マーだ!目を覚ませヤイバ!」
ヤイバはガラスのボウルに入っていたサラダのドレッシングをいきなりマーにかけた。
白いドレッシングがマーの全身を覆う。
「俺様はな!サラダが好きなんだ!でもよくよく考えたら野菜が好きなんじゃなくてドレッシングが好きな事に気がついたのだ!いっただきま~す!」
「言ってることが支離滅裂だぞ、ヤイバ!いい加減に・・・目を覚ませーー!」
マーの鋭い拳がヤイバの顔面に迫る。
しかしヤイバは、その拳を掴むとマーを引き寄せ首筋を舐めた。
「あふ!」
「ん~?おかしいな~?ドレッシングの他に味がするなぁ~?少し塩気がきつい」
「当たり前だ、私はサラダではないからな!馬鹿!」
ヤイバは顔を真赤にするマーを横四方固めにして倒すとへその辺りを舐めだした。
「あぶない!私は下着姿なのだぞ!その手の位置はあぶない!それ以上そこを触るな!ふわっ!あぁぁぁぁーーーー!」
ヤイバは目が覚めると窓の外にアラクネのレディーがいるのに気がついた。彼女はヤイバと目が合うとビクッと体を震わして、スササササと壁を歩いて逃げていった。
「何だ?何故レディは逃げた?」
ヤイバは自分の黒い制服が白い液体塗れな事に気が付き、え?っと驚く。そして傍らに虚ろな顔で寝転がる下着姿のマーを見てもっと驚く。
彼女は白い液体に塗れていたからだ。虚ろな目で天井を見つめてブツブツと何かを言っていた。
その異様な光景にヤイバは背筋がサーッと冷たくなる。
「なん・・・だと?」
プルプル震えながらマーの反対側を向くと、タスネがむき出しの尻を高々と上げて気絶していた。
「ま・・・・まさか・・・!僕は酔っ払ってとんでもない事をしでかしたのでは!人妻を手篭めにし、隊長を汁塗れにして・・・。やったのか?やってしまったのか?と、取り敢えず現状をなんとかしないと・・・」
ヤイバはまずタスネの尻をしまおうとした。真っ赤になって焼けた尻は、溶鉱炉の中の鉄を思い起こさせる。グイッグイッと下着を上げてから、ドレスのスカートで見えないようにした。
「ふぅ・・・。問題は隊長だ・・・。服はどこだ?」
触手で破かれたのだから有る分けがない。
「ぼ・・僕のし・・・絞り汁を拭かないと・・・隊長の体を綺麗にしないと・・・」
ヤイバはドレッシングを自分の体液だと勘違いして、ふきんでマーの体を拭いていく。するとマーは突然泣き出した。
「ふぇぇぇ~」
「うわぁ!すみません!隊長!」
ヤイバは後方に飛び退って土下座をした。
「責任取って~!」
「責任・・・ぐむむ・・・。(すまないワロ・・・。お兄ちゃんはワロと結婚できないかもしれない)」
「弁償して~」
「弁償?」
「お気に入りのブランド服と下着、弁償して~」
「(え?結婚とかしなくていいのかな?)解りました。隊長の好きな服と下着を僕が弁償します」
「二着ずつ~」
「はい、二着ずつですね、解りました」
「ふえぇぇ~・・・気持ちよかった・・・。またやってね・・・」
「はい・・・えっ?」
隊長は不気味な笑いをヤイバに向けた後、フラフラと立ち上がり、部屋に備え付けの風呂場に向かって歩いて行った。
「わあぁぁぁ!僕は一体何をしでかしたんだぁぁぁ!」
主を心配してもう一度部屋を覗いたレディは、頭を抱えて蹲る神の子の姿を見た。
王座から立ち上がると、小さな王は小躍りしながら喜んだ。癖っ毛の強い栗色の猫毛がフワフワと跳ねている。
ヤイバは跪いたまま頭を軽く下げて、王の賛辞を黙って受け入れた。
「それにしても、お主らには失望したぞ?ワンドリッター、グリーンブライト」
「黙れ!腰抜けの王!」
「見苦しいぞ、ワンドリッター卿。口を慎め!」
玉座の間でも武器の装備が許されている王国近衛兵騎士団団長リューロック・ウォールは魔法の金棒を床に叩きつけゴンと音を響かせる。
シュラスは王座に座り直し、顔の前で手を組んで顎を乗せた。
「そなたらが以前から、政策の指針に不満を持っていたのは知っていたが謀反を起こす程とはの。そこまでお主らを駆り立てるものは何じゃ?」
ワンドリッターは両手を後ろ手に縛られて跪いているので顔を上に向け辛く、玉座に座る王を睨むよう見た。
「闇側の住人が誉れ高き樹族の国に堂々と入って来るのが気に入らない。盗人、人殺し、詐欺師。犯罪者が流入しているのに王はそれを防ごうとはしていないではないか!」
「そうなのか?リューロック」
「いえ、交流が無かった頃と然程変わりはありませぬ。犯罪を犯す者はどの道、不法入国をして問題を起こしております。帝国と樹族国の往来が可能となったとはいえ、依然厳しい審査を国境で実施しておりますゆえ」
「だそうだ、ワンドリッター」
「逆を言えば、昔から闇側住民の犯罪を防げていないという事ではないか!何故もっと防ぐ努力をしないのか!」
グリーンブライトがワンドリッターの横で難癖をつける。
そのグリーンブライトにシュラスは問いかけた。
「お主、ポルロンド国に行った事はあるか?」
「有るが?」
「あそこは周辺国の傀儡国家だったとはいえ、闇側も光側も関係なく受け入れておった。お陰で経済は活性化し、大陸随一の経済大国になったのじゃ。あの小さな国が」
「ええ、知っていますとも?その代わりにスラムには暗殺集団やカルト集団がのさばっておりましたがな。我らが樹族の神の化身が単体で乗り込んで壊滅させたのだ」
「何事も表があれば裏もあるんもんじゃ。我が国はポルロンドに比べて移民の恩恵も少ないが犯罪も少ない。これに何の不満があると?ところでお主らの言う樹族の神とは誰じゃ?」
「・・・」
リューロックは髭を捻りながら、ジュウゾを呼んだ。
シュッと音がして裏側の長がリューロックの背後に現れる。
「彼等の部下の自供では、アンドラスという貴族の男だそうです」
低く響く声にリューロックは髭を手で押さえつけて考える。
「アンドラス?はて・・・?陛下、アンドラスという貴族をご存知ですかな?」
「さぁな。どうせ木っ端貴族じゃろ」
「無礼者め!樹族の神に名は無い。アンドラスと名乗ったのは我らが名を呼びやすいように配慮してくださったのだ!」
「で、そのアンドラスとやらは何と言ってお前らを惑わせたのだ?」
「ここに我らが樹族の国を作ると言ってくださったのだ!それを聞いて最初は我らも一笑に付した。しかし、アンドラス様はそれを気にもとめず行動で示した。単身で我が国の暗殺集団を壊滅させて力を顕示したのだ。それだけでなく、ポルロンドのセブレの本拠地も壊滅させた!」
「それだけか?我らが神は何とも規模が小さいのう・・・。もっとこう、エルダーリッチを追い返すとか、世界を終わらせようとする邪神を倒すとかしないのかのう?」
ウッ!と樹族崇拝者の二人は小さく呻く。確かにスター・オーガに比べればやることが小さい。
「し、しかし、国でも成し得なかった暗殺集団の壊滅は偉業だ!」
「もういいわい。シルビィの娘に罪をなすり付けたのもどうせお前らじゃろう。ワシの周りから瓦解させるつもりだったのだろうが、残念だったな。彼女を直ぐに修道院から呼び戻せ。すまんかったな、リューロック。お前の可愛い孫を疑ってしまって」
「いえ、そうでもしないと元老院が煩かったでしょう。当然の対応かと」
「さてワンドリッター、グリーンブライト。お前らはもう少し裏側や独立部隊の事情徴収を受けてもらうぞ?ワシも少し立ち会おうかの」
「陛下がそこまでせずとも・・・」
「いいんじゃ、リューロック。こいつらの言う胡散臭い樹族の神とやらには興味があるのでな」
「では仰せのままに」
シュラス王はヤイバに向くと肩書で名を呼んだ。
「さて自由騎士ヤイバ殿。この度は素晴らしい働きに感謝する。しかし、もう少し彼等の取り調べがあるので数日はかかる。その間待って貰えるかな?」
「はい、僕も樹族国の正式な見解を頂くまでは帝国に帰れません」
「そうか!(やったぞ!食事に誘って彼の武勇伝が聞ける!絵師にカードを作らせることも出来るぞ!)ではそのように頼む」
シュラス王は王座から立ち上がると、軽い足取りでリューロックと共に謁見の間から出ていった。
暫くして近衛兵に謀反者達も連行されていく。
「ふぅ。これでほぼ解決したかな?隊長が提出した転移石が決め手になればいいけど。それにしてもあの石は一体どこに繋がっているのだろうか?それに父さんはどこに行ったんだ?」
一人ぶつくさ言いながら、謁見の間を出て待合室で待つマーのもとへと行った。
「シュラス陛下はなんと?」
マーは待つのが退屈だったのか、ヤイバを見かけると嬉しそうに駆け寄ってくる。
「取り調べに時間が掛かるから正式な見解は数日後になるそうです」
「そうか。待っている間にナンベル陛下から、速達でお前を手伝えと」
「速いですね。銀貨二枚の価値はありましたね」
待合室の扉がガチャと開いて、見知った顔がそれに答える。
「当然よ、なんせアタシが使役するハヤブサを飛ばしたんだから」
自国ではもう素性を隠していないのか、白目が黒く瞳の赤い英雄子爵のタスネが入ってきた。
タスネはヤイバとマーの為に用意された部屋へと案内する。部屋に着くとタスネは一応触手をあちこちに伸ばして暗殺者などがいないかを確かめた。
そして安全を確認すると二人を部屋に招き入れる。
「どうぞ」
「まさかタスネさんが来るとは思っていませんでした」
「一応ウォール家は王都に住んでいるけどクロス地方の領主だからね。雇われ子爵のアタシは命令があれば、お客様のお相手もさせられるの。お相手つっても変な意味じゃないわよ!」
「微塵にも思っていませんよ、そんな事・・・」
相変わらず狭量で勝手にキレる人だなぁとヤイバは思う。少し苦手意識もある。
マーは現人神の主に少し緊張して、腰折って樹族のような優雅な挨拶をした。
「初めまして、英雄子爵殿。帝国鉄騎士団マー隊の隊長をしております、スリャット・マーです。貴方は聖下に唯一命令が出来る方と聞いております。こんな偉大な方と出会えて、私は光栄です」
「誰よ?そんな事言っているのは。ヒジリは私の命令なんて聞きやしないわよ。ただ協力してくれるだけ」
「それでも凄いかと・・・。今は亡き我らが神、偉大なるスター・オーガを、魔法での契約も無しで使役していたのですから」
「(あっ!この人、ヒジリが蘇ったの知らないんだ?)そ、そうかな?うふふふ」
マーはお辞儀をして顔をあげる時に、タスネの吸魔鬼の顔を見てヒッ!と小さな悲鳴を上げた。よく見ると白目に黒い何かが蠢いているからだ。
「し、失礼しました。間近で吸魔鬼の顔を見た事が無いもので」
「最初は皆そういう反応をするから慣れているわよ。それに最近は樹族国の皆はアタシ達吸魔鬼を認知してくれようになったから、そういう反応は久しぶりだわね。まぁ主にダンティラスのお陰だけどね。長年、各地で暴れる冒険者の手に負えない魔物を退治してきたからさ。冒険者の手に負えない魔物って大抵大型なのが多いから、巨獣殺しっていう二つ名が付いているわよ」
「他の吸魔鬼の皆は元気ですか?」
ヤイバはサヴェリフェ夫婦の他にも吸魔鬼が樹族国にいる事を知っている。イワンコフ、カロリーヌ、元カルト教団の司祭(名前失念)。
「元気よ。もしものときに備えて戦闘技術を磨いているわ。戦争になったら吸魔鬼の一隊が奥の手として控えているからね」
それを聞いてマーは苦い顔をした。
「それは恐ろしい・・・。今、どう戦うかをシミュレートしてみましたが、ヤイバ以外光魔法の使えない帝国軍では吸魔鬼隊に相当苦戦しますよ」
「光魔法の効かない方もいますがね・・・カロリーヌさんが・・・」
「そっちは反則的な存在のヤイバがいるから大丈夫でしょ」
「いいえ、僕はエナジードレインを受けますよ?大丈夫なわけないじゃないですか」
「効くつっても吸い難いでしょうが、あんたは!一ミリもない穴の開いた火吹き竹で水を吸うようなもんよ!小さい頃ヤイバが悪戯した時、怒った私がマナを吸ったの憶えてないの?」
「さぁ・・・」
コンコンとドアがノックされた。
「昼食をお持ちしました」
召使いがゾロゾロと入ってきて部屋のテーブルに食事の用意をする。
しかし、ドジなメイドが絨毯に足を取られヤイバに抱きついてしまった。
「ひゃあ!大変申し訳ありません!」
メイドは怯えて縮こまる。
権力の有る神学庁や神職達が崇拝の対象とする人物に抱きついてしまったからだ。
「大丈夫ですよ。星のオーガであるマサヨシさんは貴方みたいな方をドジっ娘と呼んで好んでおりました。神が好むという事はきっと悪い事ではないのです。だから気にしないでください」
ピカァー!と世界が白むかと思うほどの、爽やかな笑顔がメイドの樹族に向けられる。
「ふぁぁ!好きです!結婚して下さい!」
メイドは魅了され更に抱きついた。が、慌てる同僚に即座に引き剥がされて部屋から連れ出されてしまった。
タスネは料理を見ていてヤイバの顔を見ておらず魅了はされていないが、何が起こったかは解る。
「あんたね!自分の魅力値を自覚しなさいよ!食事の世話をしてくれる他の召使いまで慌てて出て行っちゃったでしょうが!あんたが本気を出したら色ボケ乳デカオバケのフランを上回るのよ!小さい頃、あんたの爽やか笑顔で年増のおばちゃん達に連れ去られそうになったのを忘れたの?」
「記憶にないです。す、すみません・・・」
「ふぁぁぁぁ!大好きだぁぁぁ!!」
マーはヤイバの笑顔を見ていたので魅了され、目をハートにしてタックルして抱きついた。
不意打ちで尚且つヤイバは椅子に座っていたので二人とも絨毯の上にゴロゴロと転がる。
「もう!何やってんのよ!ゴリ・・・隊長さんまで!」
タスネの背中から黒くうねる触手が飛び出て、二人を掴むと立たせた。正気に戻す為、マーのマナを少し吸う。
マーはびゃあ!と変な声を上げて正気に戻った。
「申し訳ない・・・。なんだかもう、わけが解らなくなってしまって」
「いいから、昼食を食べちゃいましょうよ。召使がいないから自分で取り分けてね。おぉ?このワイン・・・。異世界の上物じゃん!隊長はお酒はいける口?」
「ええ、嗜む程度には・・・」
稀に魔物の霧から飛び出てくるワインは凄まじく価値が高い。実際この世界の物より美味しく、希少性も相まって見つけた者は一財産を築ける程だ。
「これ飲んどいた方が良いわよ。異世界のワインだから」
「え!そんな高級な物を私が飲んでもいいのですか?」
「いいのよ、きっとヤイバの上司がいるからって特別に持ってきてくれたのよ!」
「シュラス陛下のお気遣いに感謝します!では頂きます!」
タスネはマーの持つワイングラスに表面張力が出来るほど注ぐと、自分のグラスにも同じように注いだ。
「うっかり波々注いじゃったわ・・・。テヘッ!これじゃあグラスを持っての乾杯は無理だから、エアかんぱーい!」
「タスネさん・・・、その一杯だけにしてくださいよ。酒癖が悪いのですから・・・」
英雄子爵は心配するヤイバの言葉など聞いてはいない。
キラキラと輝く目はグラスを見ているので少し寄り目でマヌケに見える。その間抜け顔でテーブルに置いたワインをズズっと啜るのでヤイバは笑いを堪えられず、ブフーっと吹き出した。
マーもこれが樹族国の正式な飲み方なのだと思って、真似をする。
「おぉぉ・・・。私はこんなに飲みやすいワインを今まで飲んだことはない!口に含むと、夏の高原の爽やかな風のような清涼感が喉を駆け、次にぶどうの酸味と甘み、そして微かな渋みが残る。これは・・・何杯でもいけるぞ!美味い!」
ヤイバはワインの瓶を手に取り、【翻訳】の魔法を試みる。
「チリ産ワイン・・・。チリという産地なのかな?(よくマサヨシさんがゴロツキにお酒を集られた時に、お前みたいな底辺はチリ産ワインでも飲んでろ!って言っていたな・・・。罵倒に使うって事は安酒なんじゃないかな?)」
ラベルから目を離し、瓶を置くとすぐにタスネの手が伸びてきた。
ヤイバはすかさずタスネのグラスを見る。
「もうグラスが空・・・。駄目ですよ!タスネさん!一杯だけですからね!」
「わ、解ってるわよ。隊長さんに注ごうと思っただけよ」
そう言ってからマーのグラスに注ぎ、席に座ると読めもしないのにラベルの文字を見つめだした。
(読めもしないのに・・・)
ヤイバはそう思いながら、魚のバターソテーにナイフとフォークを通した・・・その瞬間!
タスネは瓶の口を咥えてラッパ飲みをしだした。
笛を吹くかのように、瓶を持つ指をピロピロさせながら一気に飲んでいく。
「アーーーッ!こらー!タスネさん!」
しかし時既に遅し。ワインの瓶は空になっていた。
「ウィーーー!もう一本!」
「ちょ!」
地走り族にしては素早さの低いタスネだったが、ヤイバの掴みかかる腕を掻い潜り、ワインの乗ったカートへと触手を伸ばす。
「ヤイバも飲め!」
触手は器用に瓶からコルクを外すと、ヤイバの口に突っ込んだ。
ワインは滑らかにヤイバの喉を通っていく。
「ごぽぉ!おごぽぉ!」
マーは目の前でゴポゴポとワインを飲まされるヤイバを助けるべきかどうか悩んでいた。
が、迂闊な事をして英雄子爵の機嫌を損ねると厄介な事になるかもしれない。これは親しい二人がいつもやっているじゃれ合いなのだと自分に言い聞かせて、成り行きを見守った。
たらふくワインを飲まされたヤイバだが、ナノマシンはヒジリのものより高度に進化している為、ある程度のアルコールを毒と認識しない。嗜好の一つだとちゃんと認識するのだ。
ヤイバは上を向いたまま椅子に座ると動かなくなった。
「どぉしたどぉしたぁ!神の子ヤイバ様がワイン一本でグデングデンかぁ?」
そう言うタスネ殿は一本飲まない内にベロンベロンではないか、とマーは心の中で突っ込んだ。
「おい!タスネ!」
静かだったヤイバが急にタスネを呼び捨てにした。眼鏡の奥の目が据わっており、頬は真っ赤で酔っ払っているのが解る。
「お前、未成年の俺様に酒を飲ますと何事か!罰が必要だな!尻を出して四つん這いになれ!蹴ってやる!」
「はっ?ヤイバ・・・。相手は子爵様だぞ!国滅ぼしの吸魔鬼だぞ!怒らせると大変な事になるんだぞ!(っていうか、ヤイバも酒癖が悪かったのか!)」
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「ああ、そうだ!出せぃ!」
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「ヤイバぁ・・・。早く酔いから覚めてよぉ・・・」
いつもは強気の隊長が不安で素の顔に戻っている。
「いくぞ!タスネ!」
「返り討ちにしてやるわ!」
ヤイバの【氷の槍】がブレスレットから放たれた。
タスネをは自分の全身程も有る大きな氷の槍を、当然のように魔法のバックラーで弾く。
飛んでくるものは例え魔法だろうが、なんでも弾く魔法の盾の存在をヤイバは失念していたのだ。
「カーカッカッカ!お前の負けだ!ヤイバ!」
この十数年間、魔物使いのセンスを磨きに磨き上げてきたタスネが口笛を短く吹くと、窓の外を大きな影が横切った。彼女の使役するアラクネのレディが城の外壁を這いずり回っていたのだ。
開いた窓から膨らんだ腹部をヤイバに向けると、あっという間に彼を包み込んでしまった。
「モガモガー」
「能力の高さよりも、経験が物を言うのよ。フヒヒー!ワインは頂くぞぃ!」
もうキャラが滅茶苦茶だなとマーは酔っ払ったタスネを見て思う。
タスネがワインに手を伸ばそうとしたその時。
―――ボワッ!―――
ヤイバに巻き付くアラクネの糸が【闇の炎】で燃えた。
「しぶといなぁ!ヤイバは!」
今度は糸ではなく触手がヤイバに巻き付き、ギリギリと神の子の首を締め上げる。
「ググググ!」
「ちょっと!タスネ殿!本気でヤイバを殺す気か?」
マーはいよいよヤイバを助けようと触手に掴みかかろうとしたが、複数の触手が彼女のぴっちりとした服を引き裂いた。
「きゃあ!」
鉄騎士団の男たちからゴリラと揶揄され、鎧の下は引き締まった鉄のような筋肉があるという噂とは逆に実に女らしい滑らかな体が顕になった。
「ええ体しとるやないのー、隊長~!」
うへへへと手をワキワキさせながらタスネは隊長に近寄る。
触手でハムのように締め付けられているヤイバの横を通った時、彼の体から光が放たれた。
「ぎゃああ!【聖光】か!闇側のオーガが光魔法を使えるなんてずるいよ!」
触手を解いてタスネは目を押さえジタバタと転げ回った。フランがよく使う【閃光】の上位魔法はアンデッドや吸魔鬼の目を焼いて更にダメージを与える。
「恨むのなら、僕に沢山の魔法を教えてくれたイグナ母さんをを恨むんだな!ヒャッハー!」
ヤイバはタスネを捕まえると、青いドレスのスカートをめくって下着をずらし尻を剥いた。
ぷりんとした可愛らしい白いお尻が見える。
そのお尻に向かってヤイバは能の小鼓のように持って叩きだした。
「一つ叩いては母のため~♪」
「ギャース!」
「二つ叩いては父のため~♪」
「ギャース!」
「三つ叩いては人のため~♪」
「ギャース!」
「四つ・・・え~っと・・・ドォォォォン!」
「ホゲーーーー!」
最後にヤイバがタスネに虚無の平手を打ち込んだのをマーは見逃さなかった。
タスネの体に異常はなかったが、パタリと気絶して静かになった。
「お、おい・・。ヤイバ・・。虚無の攻撃はやり過ぎじゃないかな?」
「あ~?俺様に指図するのはだ~れだ~?」
「私だ!マーだ!目を覚ませヤイバ!」
ヤイバはガラスのボウルに入っていたサラダのドレッシングをいきなりマーにかけた。
白いドレッシングがマーの全身を覆う。
「俺様はな!サラダが好きなんだ!でもよくよく考えたら野菜が好きなんじゃなくてドレッシングが好きな事に気がついたのだ!いっただきま~す!」
「言ってることが支離滅裂だぞ、ヤイバ!いい加減に・・・目を覚ませーー!」
マーの鋭い拳がヤイバの顔面に迫る。
しかしヤイバは、その拳を掴むとマーを引き寄せ首筋を舐めた。
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「ん~?おかしいな~?ドレッシングの他に味がするなぁ~?少し塩気がきつい」
「当たり前だ、私はサラダではないからな!馬鹿!」
ヤイバは顔を真赤にするマーを横四方固めにして倒すとへその辺りを舐めだした。
「あぶない!私は下着姿なのだぞ!その手の位置はあぶない!それ以上そこを触るな!ふわっ!あぁぁぁぁーーーー!」
ヤイバは目が覚めると窓の外にアラクネのレディーがいるのに気がついた。彼女はヤイバと目が合うとビクッと体を震わして、スササササと壁を歩いて逃げていった。
「何だ?何故レディは逃げた?」
ヤイバは自分の黒い制服が白い液体塗れな事に気が付き、え?っと驚く。そして傍らに虚ろな顔で寝転がる下着姿のマーを見てもっと驚く。
彼女は白い液体に塗れていたからだ。虚ろな目で天井を見つめてブツブツと何かを言っていた。
その異様な光景にヤイバは背筋がサーッと冷たくなる。
「なん・・・だと?」
プルプル震えながらマーの反対側を向くと、タスネがむき出しの尻を高々と上げて気絶していた。
「ま・・・・まさか・・・!僕は酔っ払ってとんでもない事をしでかしたのでは!人妻を手篭めにし、隊長を汁塗れにして・・・。やったのか?やってしまったのか?と、取り敢えず現状をなんとかしないと・・・」
ヤイバはまずタスネの尻をしまおうとした。真っ赤になって焼けた尻は、溶鉱炉の中の鉄を思い起こさせる。グイッグイッと下着を上げてから、ドレスのスカートで見えないようにした。
「ふぅ・・・。問題は隊長だ・・・。服はどこだ?」
触手で破かれたのだから有る分けがない。
「ぼ・・僕のし・・・絞り汁を拭かないと・・・隊長の体を綺麗にしないと・・・」
ヤイバはドレッシングを自分の体液だと勘違いして、ふきんでマーの体を拭いていく。するとマーは突然泣き出した。
「ふぇぇぇ~」
「うわぁ!すみません!隊長!」
ヤイバは後方に飛び退って土下座をした。
「責任取って~!」
「責任・・・ぐむむ・・・。(すまないワロ・・・。お兄ちゃんはワロと結婚できないかもしれない)」
「弁償して~」
「弁償?」
「お気に入りのブランド服と下着、弁償して~」
「(え?結婚とかしなくていいのかな?)解りました。隊長の好きな服と下着を僕が弁償します」
「二着ずつ~」
「はい、二着ずつですね、解りました」
「ふえぇぇ~・・・気持ちよかった・・・。またやってね・・・」
「はい・・・えっ?」
隊長は不気味な笑いをヤイバに向けた後、フラフラと立ち上がり、部屋に備え付けの風呂場に向かって歩いて行った。
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