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ロケート団のクローネ
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「待った!」
ネコキャットは、クローネがいる部屋の手前で何かに気が付く。
「罠だ、動くな」
ウメボシにデュプリケイトして出してもらったレイピアで床を突っつくと、何もなかった床にフラフープのような大きな輪っかが現れた。その輪の中を覗くと、真っ赤な溶岩が煮えたぎっている。
「いったいどうやって溶岩のある洞窟の天井に、この罠を仕掛けたんだよ。たくっ」
そう言ってネコキャットは輪っかをレイピアで突き刺して壊すと、転移床は消えてしまった。
「流石はネコキャットねぇ。その程度の罠じゃ簡単だったかしら。それから、ようこそ自由騎士様。どうぞお入りなって下さいな」
部屋の中から気怠い声が聞こえてくる。
ヒジリが部屋に一歩踏み込むとネコキャットが大声をで喚いた。
「しまった! 部屋の中にも罠が!」
しかし、ヒジリが転移罠自体を踏んでいたようで作動はしなかった。
「お! 流石は魔法無効化のオーガ様だな! でも罠の中に足を踏み入れてたら、きっとやばかったぞ」
ネコキャットは額の汗を拭いて、ヒューと息を吐く。
「罠自体は魔法で隠されていないのか。床の微妙な凹凸でネコキャットは察知しているのだな? 次からはウメボシにも警戒させよう」
ウメボシに目配せするヒジリの後頭部を、いきなりクローネのしなりの利いた蹴りが襲う。
しかしフォースシールドで簡単に蹴りを弾いてしまう。
「チッ! 化物が!」
悪態をついてクローネは部屋の真ん中まで飛び退った。
ヒジリはちらりと猫人の女を見て、理解できないという顔をする。
「なんだ? 彼女はいきなり間合いを詰めてきたように見えたが」
セイバーが大盾で床を擦りながら部屋へ勢い良く入ってきた。そうすることで罠の有無を確認しているのだ。
「クローネは恐らく時間操作系の能力持ちかと! これは厄介ですよ!」
狭い部屋でセイバーは大盾に身を隠し、壁を背にして立つ。
「そう、このクローネ様を相手にしたの運の尽き。例え自由騎士様でも、私の攻撃を避けることは不可能!」
いつの間にか脇に立つクローネが、ビームダガーでセイバーの腿当ての覆っていない部分を抉っていた。部屋中に肉の焼ける匂いが漂う。
「うぐっ! いつの間に!」
大盾がクローネを薙ぎ払おうとしたが、既に彼女は部屋の真ん中に戻っていた。
「おや? ノームの強力な武器でも、自由騎士様の脚は斬れなかったねぇ。残念! でも怖いだろう? 防御が出来ないってのは!」
ビームダガーは一度限りなのか、柄の部分だけになったのでクローネは投げ捨てた。
「まぁいい。お前らが泣きながら許しを請うまで痛めつけてやる。で、血塗れになったお前たちは、外の冒険者どもに言うのさ。ミャロス達を解放しろとな」
エリムスに透明になる魔法をかけてもらっていたフランは、すぐにセイバーの近くまで走り寄り、回復の祈りで傷を癒そうとした。
しかし、移動以外の行動を取ると【透明化】の魔法は解けてしまうのでフランの姿が顕になる。
「おや? 可愛いヒーラーさんだこと。ヒーラーを真っ先に叩くのは戦いの定石! 悪いが痛い目見てもらうよ? お嬢ちゃん!」
「えっ?」
驚くフランの顔が固まった。時は緩やかに流れ、クローネ以外の動きが緩慢になる。
自分の能力に絶対の自信を持つクローネは、鋭い爪でフランの腕を狙い、ニヤリと笑った。
が、どこからか真面目そうな女性の声が聞こえてくる。
「ウメボシ☆ビーム!」
皆の動きが止まる中、いつの間にか部屋の奥にいたウメボシだけは動いている。
彼女の光る一つ目からバシュっと音がして、クローネの腕が弾け飛んだ。
「チィ!」
「マスターも皆と同じように時間が止まっているという事は、貴方の能力は魔法ではない何かなのでしょう。ですが、どうやら一つだけ弱点があるようですね。貴方の能力は効果範囲が狭い。精々二メートル以内といったところです」
クローネはだからどうしたという顔をして今度はウメボシを襲った。鋭いネコ科の爪がイービルアイの一番の弱点である目を狙う。
「ヒジリ☆サンダー!」
「ギャッ!」
バリバリと音を立てて電撃がクローネの背中を襲った。
動体視力と瞬間的な把握能力に長けるヒジリは、時が流れてすぐに現状を理解し、クローネの背中へと電撃を放ったのだ。
グローブから放たれた雷流は、背中から腕に伝ってクローネの残っていた二の腕を小さく爆発させた。
「機械の腕・・・」
ヒジリは彼女の肩から伸びるチューブを見てそう呟いた。
胴体は生身なのか火傷を負って気を失い、うつ伏せで倒れるクローネをウメボシは静かに見つめる。
「便利な能力があるというのに、どうして最初から前線に出てきて戦わないのでしょう? 狭い部屋で待ち構えていた事を考えると、能力の範囲が限られているとウメボシは予想しました。更に長時間、時を緩やかにする事も出来ないのではと考えて、セイバー様には悪いのですが、攻撃を受けている間の緩やかな時間を録画再生して観察し、結論を出しました」
「流石はウメボシだな。緩やかな時間の中では、我々には何も見えていないのも同じ。しっかりと録画していたとは素晴らしい」
主に褒められてウメボシは頬を赤くして目を伏せた。
「後でたっぷりとウメボシを撫でてくださいまし、マスター」
「うむ、いいとも。どうやら冒険者たちも勝ったようだ。外から勝利の雄叫びが聞こえてくる」
セイバーも外から聞こえてくる冒険者たちの声を聞いて微笑んだ。それから大盾を壁に立てかけて、フランに脚を差し出した。
「フランさ・・・フランの最初の回復の祈りの相手が僕だなんて。光栄だな」
フランは顔を赤くしてセイバーの裏腿に手をかざした。
「光栄だなんて・・・。痛くなぁい?」
「ああ、大丈夫だよ。(うう、十二歳のフランさんは可愛い過ぎる。未来のフランさんも綺麗だけど、オバサンだからな)」
「うう、十二歳のフランさんは可愛い過ぎる・・・」
イグナがセイバーの心を読んだのか、彼の心の声を棒読みしだした。
「ちょっと!イグナさ・・・イグナ! 【読心】は止めてください!」
セイバーはフルヘルムを被っている事を神に感謝した。そうでなければ耳まで真っ赤だった事が皆にバレただろう。
(息苦しいフルヘルムも時には役に立つ)
セイバーが染み染みとそう思っていると、突然ウメボシがヒジリを下から光を照らした。
すると、ヒジリの顔に迫力が増う。どこか脅しているような無表情がセイバーを睨む。
それからヒジリはヘルメスブーツで五十センチだけ浮くと、セイバーの肩に手を置いた。メキョッと鎧が凹む。
「君は常識あるオーガだから間違いは無いとは思うが、フランはまだ十二歳であることを忘れないでもらおう」
(ヒ、ヒエッ! 僕の強化魔法金の鎧が・・・・)
「解っていますよ、とう・・・ヒジリさん。自分で言うのもなんですが、僕ほど自制心のあるオーガはそうそういません」
「ならいいのだ」
品格と実力がなければなれない自由騎士がそういうのだからと安心し、ヒジリはスッと地面に立つ。
フランは好意を寄せてくれるセイバーの腿に手をかざしてモジモジしながらも、回復効果が異常な事に気がついた。
「凄い! この回復力は、私の祈りの効果だけじゃないわぁ。セイバーさん自体の治癒能力が高いのね」
普通であれば回復しても暫くは傷口は開きやすく、激しく動くとまた血が吹き出したりするが、セイバーの傷はもう完璧に治っていた。
「それでもフランのお陰ですよ。ありがとうフラン!」
ヒジリと結婚すると宣言したフランだったが、ヒジリを上回る魅力を持つセイバーに心奪われそうになっていた。指先をちょんちょんと合わせて照れる。
「ど、どういたしましてぇ」
イグナがジト目で姉を見ていた。わざとジーーーと声に出してフランを見つめている。
「お姉ちゃんは気が多い。ヒジリも好き、セイバーも好き」
「イグナ!」
むくれるフランを見て皆が笑う中、エリムスはワンドをクローネに向けていた。
ネコキャットは、クローネがいる部屋の手前で何かに気が付く。
「罠だ、動くな」
ウメボシにデュプリケイトして出してもらったレイピアで床を突っつくと、何もなかった床にフラフープのような大きな輪っかが現れた。その輪の中を覗くと、真っ赤な溶岩が煮えたぎっている。
「いったいどうやって溶岩のある洞窟の天井に、この罠を仕掛けたんだよ。たくっ」
そう言ってネコキャットは輪っかをレイピアで突き刺して壊すと、転移床は消えてしまった。
「流石はネコキャットねぇ。その程度の罠じゃ簡単だったかしら。それから、ようこそ自由騎士様。どうぞお入りなって下さいな」
部屋の中から気怠い声が聞こえてくる。
ヒジリが部屋に一歩踏み込むとネコキャットが大声をで喚いた。
「しまった! 部屋の中にも罠が!」
しかし、ヒジリが転移罠自体を踏んでいたようで作動はしなかった。
「お! 流石は魔法無効化のオーガ様だな! でも罠の中に足を踏み入れてたら、きっとやばかったぞ」
ネコキャットは額の汗を拭いて、ヒューと息を吐く。
「罠自体は魔法で隠されていないのか。床の微妙な凹凸でネコキャットは察知しているのだな? 次からはウメボシにも警戒させよう」
ウメボシに目配せするヒジリの後頭部を、いきなりクローネのしなりの利いた蹴りが襲う。
しかしフォースシールドで簡単に蹴りを弾いてしまう。
「チッ! 化物が!」
悪態をついてクローネは部屋の真ん中まで飛び退った。
ヒジリはちらりと猫人の女を見て、理解できないという顔をする。
「なんだ? 彼女はいきなり間合いを詰めてきたように見えたが」
セイバーが大盾で床を擦りながら部屋へ勢い良く入ってきた。そうすることで罠の有無を確認しているのだ。
「クローネは恐らく時間操作系の能力持ちかと! これは厄介ですよ!」
狭い部屋でセイバーは大盾に身を隠し、壁を背にして立つ。
「そう、このクローネ様を相手にしたの運の尽き。例え自由騎士様でも、私の攻撃を避けることは不可能!」
いつの間にか脇に立つクローネが、ビームダガーでセイバーの腿当ての覆っていない部分を抉っていた。部屋中に肉の焼ける匂いが漂う。
「うぐっ! いつの間に!」
大盾がクローネを薙ぎ払おうとしたが、既に彼女は部屋の真ん中に戻っていた。
「おや? ノームの強力な武器でも、自由騎士様の脚は斬れなかったねぇ。残念! でも怖いだろう? 防御が出来ないってのは!」
ビームダガーは一度限りなのか、柄の部分だけになったのでクローネは投げ捨てた。
「まぁいい。お前らが泣きながら許しを請うまで痛めつけてやる。で、血塗れになったお前たちは、外の冒険者どもに言うのさ。ミャロス達を解放しろとな」
エリムスに透明になる魔法をかけてもらっていたフランは、すぐにセイバーの近くまで走り寄り、回復の祈りで傷を癒そうとした。
しかし、移動以外の行動を取ると【透明化】の魔法は解けてしまうのでフランの姿が顕になる。
「おや? 可愛いヒーラーさんだこと。ヒーラーを真っ先に叩くのは戦いの定石! 悪いが痛い目見てもらうよ? お嬢ちゃん!」
「えっ?」
驚くフランの顔が固まった。時は緩やかに流れ、クローネ以外の動きが緩慢になる。
自分の能力に絶対の自信を持つクローネは、鋭い爪でフランの腕を狙い、ニヤリと笑った。
が、どこからか真面目そうな女性の声が聞こえてくる。
「ウメボシ☆ビーム!」
皆の動きが止まる中、いつの間にか部屋の奥にいたウメボシだけは動いている。
彼女の光る一つ目からバシュっと音がして、クローネの腕が弾け飛んだ。
「チィ!」
「マスターも皆と同じように時間が止まっているという事は、貴方の能力は魔法ではない何かなのでしょう。ですが、どうやら一つだけ弱点があるようですね。貴方の能力は効果範囲が狭い。精々二メートル以内といったところです」
クローネはだからどうしたという顔をして今度はウメボシを襲った。鋭いネコ科の爪がイービルアイの一番の弱点である目を狙う。
「ヒジリ☆サンダー!」
「ギャッ!」
バリバリと音を立てて電撃がクローネの背中を襲った。
動体視力と瞬間的な把握能力に長けるヒジリは、時が流れてすぐに現状を理解し、クローネの背中へと電撃を放ったのだ。
グローブから放たれた雷流は、背中から腕に伝ってクローネの残っていた二の腕を小さく爆発させた。
「機械の腕・・・」
ヒジリは彼女の肩から伸びるチューブを見てそう呟いた。
胴体は生身なのか火傷を負って気を失い、うつ伏せで倒れるクローネをウメボシは静かに見つめる。
「便利な能力があるというのに、どうして最初から前線に出てきて戦わないのでしょう? 狭い部屋で待ち構えていた事を考えると、能力の範囲が限られているとウメボシは予想しました。更に長時間、時を緩やかにする事も出来ないのではと考えて、セイバー様には悪いのですが、攻撃を受けている間の緩やかな時間を録画再生して観察し、結論を出しました」
「流石はウメボシだな。緩やかな時間の中では、我々には何も見えていないのも同じ。しっかりと録画していたとは素晴らしい」
主に褒められてウメボシは頬を赤くして目を伏せた。
「後でたっぷりとウメボシを撫でてくださいまし、マスター」
「うむ、いいとも。どうやら冒険者たちも勝ったようだ。外から勝利の雄叫びが聞こえてくる」
セイバーも外から聞こえてくる冒険者たちの声を聞いて微笑んだ。それから大盾を壁に立てかけて、フランに脚を差し出した。
「フランさ・・・フランの最初の回復の祈りの相手が僕だなんて。光栄だな」
フランは顔を赤くしてセイバーの裏腿に手をかざした。
「光栄だなんて・・・。痛くなぁい?」
「ああ、大丈夫だよ。(うう、十二歳のフランさんは可愛い過ぎる。未来のフランさんも綺麗だけど、オバサンだからな)」
「うう、十二歳のフランさんは可愛い過ぎる・・・」
イグナがセイバーの心を読んだのか、彼の心の声を棒読みしだした。
「ちょっと!イグナさ・・・イグナ! 【読心】は止めてください!」
セイバーはフルヘルムを被っている事を神に感謝した。そうでなければ耳まで真っ赤だった事が皆にバレただろう。
(息苦しいフルヘルムも時には役に立つ)
セイバーが染み染みとそう思っていると、突然ウメボシがヒジリを下から光を照らした。
すると、ヒジリの顔に迫力が増う。どこか脅しているような無表情がセイバーを睨む。
それからヒジリはヘルメスブーツで五十センチだけ浮くと、セイバーの肩に手を置いた。メキョッと鎧が凹む。
「君は常識あるオーガだから間違いは無いとは思うが、フランはまだ十二歳であることを忘れないでもらおう」
(ヒ、ヒエッ! 僕の強化魔法金の鎧が・・・・)
「解っていますよ、とう・・・ヒジリさん。自分で言うのもなんですが、僕ほど自制心のあるオーガはそうそういません」
「ならいいのだ」
品格と実力がなければなれない自由騎士がそういうのだからと安心し、ヒジリはスッと地面に立つ。
フランは好意を寄せてくれるセイバーの腿に手をかざしてモジモジしながらも、回復効果が異常な事に気がついた。
「凄い! この回復力は、私の祈りの効果だけじゃないわぁ。セイバーさん自体の治癒能力が高いのね」
普通であれば回復しても暫くは傷口は開きやすく、激しく動くとまた血が吹き出したりするが、セイバーの傷はもう完璧に治っていた。
「それでもフランのお陰ですよ。ありがとうフラン!」
ヒジリと結婚すると宣言したフランだったが、ヒジリを上回る魅力を持つセイバーに心奪われそうになっていた。指先をちょんちょんと合わせて照れる。
「ど、どういたしましてぇ」
イグナがジト目で姉を見ていた。わざとジーーーと声に出してフランを見つめている。
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