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チェリーボーイ・ヒジリ
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自分を紹介したいという弟の我儘に付き合ってくれたオーガの王が、ナンベル学校の食堂に入ってきたのを見てホクベルは恐縮する。
王が部屋に入ってくるとホクベルはただ一人立って王に敬意を示す体勢(右手で左肩を触るようなポーズ)をとる。
緊張しているせいか、自分を見る他者の顔が驚いている事には気づかなかった。ただ国王が身近にいるという現実で頭がいっぱいなのだ。
ナンベルは兄を見て静かに頷く。それから、王が来ても座っている皆を咎めるように言う。
「兄の態度こそ、王を敬う平民として、正しい態度なんですよねぇ・・・」
と言うものの道化師は立ち上がろうともしないし、兄と同じポーズも取らない。
「そう言うのであれば、ナンベル様は真っ先に立つべきですね」
ヒジリの左横に浮くウメボシが、すぐにナンベルの矛盾を指摘した。
コロネが珍しく真面目な顔で勢い良く立ち、椅子を後ろに跳ね飛ばしてから、ホクベルと同じようなポーズを取った。
そんなコロネを見て、ヒジリはハハッと笑う。
「楽にしたまえ、諸君。コロネはずっとそうしてていいぞ。そのポーズがしたいだけなのだろう?」
ホクベルは王の笑顔を見て、威圧的な人物ではないと感じる。
大抵の国のトップは面子を気にして偉そうにするものだ。しかし、彼は誰も自分に敬意を示さない事に腹を立てたりはしない。知り合いばかりの席だからという事もあるが、親しき中にこそ礼儀はあるべきだとホクベルは思う。
(王は度量が広過ぎるのでしょうか? 人々は彼を、お人好し王とか、貧乏王と呼んでいます。闇側において優しさというのは、弱さと捉えられる傾向にあります。優しさを誰彼構わず見せる者は、大海の中で弱った魚の如く、寄って集って食われるのが闇側の常。この王は一体どういう王なのです? 何も判らなくなってきましたよ・・・)
弟が自分を紹介してくれている間、ホクベルは失礼にならない程度に王を観察した。
オーガなので身長は自分よりは高いが、横に並ぶ帝国のエリートオーガよりは小さい。黒い服のような、鎧のようなよく判らない召し物の肩には、雷のマークが入っている。筋肉も細く引き締まっているように見える。
王はまるで自宅の食卓にやってきたという顔で椅子に座ると、テーブルに肘をついてナンベルの話に「ハハハ」と笑っている。
「で、兄はその時盗賊にこう言ったのです。『符魔道具一式を盗むぐらいなら、僕も盗めばいい! そうすれば、高い金を払って符魔師を雇う必要がなくなるぞ! 私はこれこの通り丸腰だ! さぁ盗みなさい!』ってね。盗賊はたじろぎました。何せ服を全て脱いだ丸裸の魔人族が、両手を広げて迫ってくるのですよ? 盗賊は貞操の危機を感じて恐ろしくなったのか、何も盗らずに逃げていったのです。こうして彼は、符魔師を続ける事ができ、今に至るというわけなんでしゅ。キュキュキュー!」
ホクベルがぼんやりと考え事に没頭している間、弟は話さなくていいエピソードまで話してしまった。
「ちょっと! そんな話までしなくていいでしょうが!」
今の話を聞いて、ヘカティニスが手を叩いて笑う。
「あははぁ! おまえ、今も符魔師をやってんのか! おもしどい!」
「いや、そこは面白いポイントではないでしょう・・・」
ずれたポイントで笑うヘカティニスに、ホクベルが静かにツッコむ。
「で、久々に見たゴデの街はどうだったかね?」
ヒジリ王が期待の篭った目でこちらを見てくる。これは良い回答を期待している顔だが、ホクベルは胡麻をすったりせず、見たままを言おうと心がけた。
「僕が数十年前に見たゴデの街の北部は、貴族街で綺麗でしたが、門の南側ときたら、肥溜めかと思うぐらい酷い有様でした。バラック小屋が所狭しと建ち並び、道と呼べないゴミだらけの道は、仕事も何もない貧民で溢れかえっていました・・・」
前置きを終えて、これから街の評価を言おうとしていた兄を遮って、ナンベルが話に割り込んできた。
「確かに昔は酷かったですねぇ。小生も幾らかこの街に投資をして、環境を良くしようと頑張りましたが、渡した金は持ち逃げされるわ(持ち逃げした奴は、見つけ次第殺しましたが)、花壇を作れば花を盗んでいくわ、街灯を建てれば、壊して中の光石を盗んでいくわで大変でしたヨ」
「ほぅ。ケチな君がそんな事をしていたとは驚きだな。君は強いし、恐れられているのだから、皆言う事を聞いても良さそうなのだがね」
ヒジリは目の前で、どちらが自分にステーキの一切れを食わすかで言い争っているウメボシとリツのフォークに顔を近づけて、二人が差し出していた肉を続けざまに食べる。
「残念な事に、小生には人望がないのです。人をイライラさせたり、欺くのは得意なのですが、人心を掴む事にかけてはまるで駄目でした。そのせいか小生に関わる、ならず者達は酷い目に遭う事を知りながら、簡単に小生を裏切ってしまいます。人望の無さを知りつつも、やらないよりはマシかと思って貧民街を良くしようと頑張りましたが、無駄に終わりました」
「そんな街を陛下は変えたのですから、凄いことだと思いますよぉ!」
一瞬、双子のどちらが喋ったのかヒジリには判らなかったが、ホクベルが自分を賞賛したのだと解ると嬉しそうに微笑んだ。弟のナンベルが自分を褒めるとどうしても皮肉に聞こえてしまうからだ。
「中々やり甲斐はあった。貧民街に頑なに残ろうとする者もいて、彼らを説得するのは大変だったからな」
「あ、小生もその様子は陰から見ていましたよぉ。特にウメボシさんの活躍が大きかったですねぇ。時に住民を優しく説得し、時には厳しく脅しつける。飴と鞭の使い分けがとても上手でしたよぉ。流石はヒー君の一番妻」
人に不和をもたらす事が大好きなナンベルは、狙ってウメボシを一番妻と呼んだ。
(さぁて! 場が荒れますよぉ! キヒヒヒ!)
と内心で笑うも予想は外れ、ヘカティニスやリツも「自分こそがヒジリの一番妻だ!」的な事を言って怒る素振りも見せなかった。
怒るどころか、ヘカティニスは隣のマサヨシと下らない話をしているし、リツはフランの光魔法の話に興味を示している。
(あれ?)
ビシャア! と突然ナンベルの全身を電撃が襲う。
「良妻だなんて本当の事、皆様の前で言わないで下さいまし、ナンベル様ぁ! 恥ずかしいじゃないですか。でもウメボシは住民を脅したりなどしていません。デタラメを言わないで下さいね」
ウメボシが照れながら電撃を飛ばしてきたのだ。ナンベルは電撃耐性があるのでダメージを食らわないが、多少は手が痺れる。
(いつもならヘカティニスとリツと・・・、なんならウメボシの取っ組み合いの喧嘩が始まるのに。あれぇ・・・?おかしいですねぇ)
あれこれ考える内に、思考が一つにまとまった。
ハッとした顔で、ナンベルはヘカティニスとリツを見る。
(あの二人の心に余裕があるように見えます。そして何処と無く彼女達から妙な色気が立ち昇っているような・・・。以前はあんな色気、出ていませんでしたよぉ?)
「あぁ! わかるりました! 小生! わかるりましたよ! 二人を食いましたね? ヒー君!」
すぐに逞しい右腕がナンベルの頭を締め付ける。
「唐突になんだね? この場には子供もいるのだぞ。度の過ぎる下ネタは遠慮願おうか、ナンベル。それに私はやましい事は、何一つしていない!」
イケメンマサヨシが真ん中分けのミドルヘアーを掻き分け、クスっと笑う。
「ということは! ヒジリ氏はまだチェリーボーイってっわけですな。オフフッ!」
「四十一世紀の地球においてッ! それは普通の事だ! マサヨシ!」
ヒジリはナンベルをヘッドロックしたまま歩いて、今度はマサヨシの頭を左腕が締め付けた。
「あだだだ! 離してよぉ! ヒジリ氏! この場の男の中で、唯一の童貞が生意気だぞ! 童貞はイケメンカーストの中で、最下層なんですぞ!」
ギリリとマサヨシの頭を締め付けて、ヒジリは悔し紛れにホクベルを見て言う。
「ホクベル殿も山に篭っていたのだろう? だったら私と同じではないのかね?」
ヒジリはそう言ってから、しまったと思った。以前ナンベルから兄には子供がいる事を聞かされていたからだ。記憶力は良い方だが、ここ最近忙しかったせいか、すっかりと失念していた。
ホクベルは妙な方向へ話が進んだので、戸惑って言葉を失う。
その代わりに酒で滑りが良くなったナンベルが口を開く。
ナンベルは兄に子供がいる事をひた隠しにすると決めたはずなのに、とうとうその話題に触れてしまったのだ。
「それがですねぇ・・・。キュッキューー!」
ヘッドロックを続けるヒジリが、喋るなという意味を篭めて更に頭を絞めつけたが、ナンベルはそのサインに全く気づいていなかった。
アダダダと言いながらもナンベルは、顔にヒジリをからかう快感を滲ませて笑う。
「兄さんにはハナという幼馴染の恋人がいますし、子供もいま~す! なのでチェリーボーイではありませーん! チェリーボーイはヒー君だけ・・・・、アッ!」
ナンベルはうっかりと喋ってしまい、ハナとの約束を破った事を即座に後悔した。そしてヒジリの腕の隙間から叱られた犬のような目で兄を見る。
「なんだって? 僕に・・・、僕にハナとの子供がいるというのですかッ? ナンベル!」
兄は驚きに身を震わせてこちらを見ている。
(しまった。小生としたことが。兄の訪問に浮かれて、酒を飲み過ぎてしまいました・・・)
ナンベルはいつものように詰めが甘い自分を恨み、咄嗟に嘘をつこうか迷った末、諦めて兄に全てを話す事にした。
王が部屋に入ってくるとホクベルはただ一人立って王に敬意を示す体勢(右手で左肩を触るようなポーズ)をとる。
緊張しているせいか、自分を見る他者の顔が驚いている事には気づかなかった。ただ国王が身近にいるという現実で頭がいっぱいなのだ。
ナンベルは兄を見て静かに頷く。それから、王が来ても座っている皆を咎めるように言う。
「兄の態度こそ、王を敬う平民として、正しい態度なんですよねぇ・・・」
と言うものの道化師は立ち上がろうともしないし、兄と同じポーズも取らない。
「そう言うのであれば、ナンベル様は真っ先に立つべきですね」
ヒジリの左横に浮くウメボシが、すぐにナンベルの矛盾を指摘した。
コロネが珍しく真面目な顔で勢い良く立ち、椅子を後ろに跳ね飛ばしてから、ホクベルと同じようなポーズを取った。
そんなコロネを見て、ヒジリはハハッと笑う。
「楽にしたまえ、諸君。コロネはずっとそうしてていいぞ。そのポーズがしたいだけなのだろう?」
ホクベルは王の笑顔を見て、威圧的な人物ではないと感じる。
大抵の国のトップは面子を気にして偉そうにするものだ。しかし、彼は誰も自分に敬意を示さない事に腹を立てたりはしない。知り合いばかりの席だからという事もあるが、親しき中にこそ礼儀はあるべきだとホクベルは思う。
(王は度量が広過ぎるのでしょうか? 人々は彼を、お人好し王とか、貧乏王と呼んでいます。闇側において優しさというのは、弱さと捉えられる傾向にあります。優しさを誰彼構わず見せる者は、大海の中で弱った魚の如く、寄って集って食われるのが闇側の常。この王は一体どういう王なのです? 何も判らなくなってきましたよ・・・)
弟が自分を紹介してくれている間、ホクベルは失礼にならない程度に王を観察した。
オーガなので身長は自分よりは高いが、横に並ぶ帝国のエリートオーガよりは小さい。黒い服のような、鎧のようなよく判らない召し物の肩には、雷のマークが入っている。筋肉も細く引き締まっているように見える。
王はまるで自宅の食卓にやってきたという顔で椅子に座ると、テーブルに肘をついてナンベルの話に「ハハハ」と笑っている。
「で、兄はその時盗賊にこう言ったのです。『符魔道具一式を盗むぐらいなら、僕も盗めばいい! そうすれば、高い金を払って符魔師を雇う必要がなくなるぞ! 私はこれこの通り丸腰だ! さぁ盗みなさい!』ってね。盗賊はたじろぎました。何せ服を全て脱いだ丸裸の魔人族が、両手を広げて迫ってくるのですよ? 盗賊は貞操の危機を感じて恐ろしくなったのか、何も盗らずに逃げていったのです。こうして彼は、符魔師を続ける事ができ、今に至るというわけなんでしゅ。キュキュキュー!」
ホクベルがぼんやりと考え事に没頭している間、弟は話さなくていいエピソードまで話してしまった。
「ちょっと! そんな話までしなくていいでしょうが!」
今の話を聞いて、ヘカティニスが手を叩いて笑う。
「あははぁ! おまえ、今も符魔師をやってんのか! おもしどい!」
「いや、そこは面白いポイントではないでしょう・・・」
ずれたポイントで笑うヘカティニスに、ホクベルが静かにツッコむ。
「で、久々に見たゴデの街はどうだったかね?」
ヒジリ王が期待の篭った目でこちらを見てくる。これは良い回答を期待している顔だが、ホクベルは胡麻をすったりせず、見たままを言おうと心がけた。
「僕が数十年前に見たゴデの街の北部は、貴族街で綺麗でしたが、門の南側ときたら、肥溜めかと思うぐらい酷い有様でした。バラック小屋が所狭しと建ち並び、道と呼べないゴミだらけの道は、仕事も何もない貧民で溢れかえっていました・・・」
前置きを終えて、これから街の評価を言おうとしていた兄を遮って、ナンベルが話に割り込んできた。
「確かに昔は酷かったですねぇ。小生も幾らかこの街に投資をして、環境を良くしようと頑張りましたが、渡した金は持ち逃げされるわ(持ち逃げした奴は、見つけ次第殺しましたが)、花壇を作れば花を盗んでいくわ、街灯を建てれば、壊して中の光石を盗んでいくわで大変でしたヨ」
「ほぅ。ケチな君がそんな事をしていたとは驚きだな。君は強いし、恐れられているのだから、皆言う事を聞いても良さそうなのだがね」
ヒジリは目の前で、どちらが自分にステーキの一切れを食わすかで言い争っているウメボシとリツのフォークに顔を近づけて、二人が差し出していた肉を続けざまに食べる。
「残念な事に、小生には人望がないのです。人をイライラさせたり、欺くのは得意なのですが、人心を掴む事にかけてはまるで駄目でした。そのせいか小生に関わる、ならず者達は酷い目に遭う事を知りながら、簡単に小生を裏切ってしまいます。人望の無さを知りつつも、やらないよりはマシかと思って貧民街を良くしようと頑張りましたが、無駄に終わりました」
「そんな街を陛下は変えたのですから、凄いことだと思いますよぉ!」
一瞬、双子のどちらが喋ったのかヒジリには判らなかったが、ホクベルが自分を賞賛したのだと解ると嬉しそうに微笑んだ。弟のナンベルが自分を褒めるとどうしても皮肉に聞こえてしまうからだ。
「中々やり甲斐はあった。貧民街に頑なに残ろうとする者もいて、彼らを説得するのは大変だったからな」
「あ、小生もその様子は陰から見ていましたよぉ。特にウメボシさんの活躍が大きかったですねぇ。時に住民を優しく説得し、時には厳しく脅しつける。飴と鞭の使い分けがとても上手でしたよぉ。流石はヒー君の一番妻」
人に不和をもたらす事が大好きなナンベルは、狙ってウメボシを一番妻と呼んだ。
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と内心で笑うも予想は外れ、ヘカティニスやリツも「自分こそがヒジリの一番妻だ!」的な事を言って怒る素振りも見せなかった。
怒るどころか、ヘカティニスは隣のマサヨシと下らない話をしているし、リツはフランの光魔法の話に興味を示している。
(あれ?)
ビシャア! と突然ナンベルの全身を電撃が襲う。
「良妻だなんて本当の事、皆様の前で言わないで下さいまし、ナンベル様ぁ! 恥ずかしいじゃないですか。でもウメボシは住民を脅したりなどしていません。デタラメを言わないで下さいね」
ウメボシが照れながら電撃を飛ばしてきたのだ。ナンベルは電撃耐性があるのでダメージを食らわないが、多少は手が痺れる。
(いつもならヘカティニスとリツと・・・、なんならウメボシの取っ組み合いの喧嘩が始まるのに。あれぇ・・・?おかしいですねぇ)
あれこれ考える内に、思考が一つにまとまった。
ハッとした顔で、ナンベルはヘカティニスとリツを見る。
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「あぁ! わかるりました! 小生! わかるりましたよ! 二人を食いましたね? ヒー君!」
すぐに逞しい右腕がナンベルの頭を締め付ける。
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イケメンマサヨシが真ん中分けのミドルヘアーを掻き分け、クスっと笑う。
「ということは! ヒジリ氏はまだチェリーボーイってっわけですな。オフフッ!」
「四十一世紀の地球においてッ! それは普通の事だ! マサヨシ!」
ヒジリはナンベルをヘッドロックしたまま歩いて、今度はマサヨシの頭を左腕が締め付けた。
「あだだだ! 離してよぉ! ヒジリ氏! この場の男の中で、唯一の童貞が生意気だぞ! 童貞はイケメンカーストの中で、最下層なんですぞ!」
ギリリとマサヨシの頭を締め付けて、ヒジリは悔し紛れにホクベルを見て言う。
「ホクベル殿も山に篭っていたのだろう? だったら私と同じではないのかね?」
ヒジリはそう言ってから、しまったと思った。以前ナンベルから兄には子供がいる事を聞かされていたからだ。記憶力は良い方だが、ここ最近忙しかったせいか、すっかりと失念していた。
ホクベルは妙な方向へ話が進んだので、戸惑って言葉を失う。
その代わりに酒で滑りが良くなったナンベルが口を開く。
ナンベルは兄に子供がいる事をひた隠しにすると決めたはずなのに、とうとうその話題に触れてしまったのだ。
「それがですねぇ・・・。キュッキューー!」
ヘッドロックを続けるヒジリが、喋るなという意味を篭めて更に頭を絞めつけたが、ナンベルはそのサインに全く気づいていなかった。
アダダダと言いながらもナンベルは、顔にヒジリをからかう快感を滲ませて笑う。
「兄さんにはハナという幼馴染の恋人がいますし、子供もいま~す! なのでチェリーボーイではありませーん! チェリーボーイはヒー君だけ・・・・、アッ!」
ナンベルはうっかりと喋ってしまい、ハナとの約束を破った事を即座に後悔した。そしてヒジリの腕の隙間から叱られた犬のような目で兄を見る。
「なんだって? 僕に・・・、僕にハナとの子供がいるというのですかッ? ナンベル!」
兄は驚きに身を震わせてこちらを見ている。
(しまった。小生としたことが。兄の訪問に浮かれて、酒を飲み過ぎてしまいました・・・)
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